ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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ガチだぜ! ガチグマくん

 光の柱から現れた3メートル近い巨大なポケモン、ガチグマ。

 

 四足歩行になり、額には雲がかかった満月模様。

 毛皮も分厚く、焦げ茶色になり、背中と四肢に灰色の泥が固まった状態で覆われている。

 

 私はポケモン図鑑を起動する。

 

『データなし。 未知のポケモン』

 

 初めて見るポケモン図鑑のエラーメッセージ。

 

「ポケモン図鑑にデータがない? こんなことは初めてですね……」

 

「ガチグマはシンオウ地方の遥か昔、ヒスイ地方だった頃にリングマが進化した姿だ。 おそらくこの時代には認知されていないポケモンなんだろう」

 

 バナナの解説に頷く。

 

 なるほど。ガチグマはこの世界ではまだ発見されていない、過去にリングマが地域限定で進化できたポケモンという扱いなわけか。

 

 それは理解できるが、そうなると何故このイッシュの地でガチグマに進化できたのかという疑問が生じてくる。

 

「うーん、これは仮説だが。

 メイ、Legendsアルセウスにおけるガチグマへの進化方法って覚えてるか?」

 

「確かに満月の夜に、ビートブロックで進化……でしたっけ」

 

「流石だな。 俺の記憶でもそうだ。

 となると普通に考えて同じ条件を満たしたと考えるのが自然だろう。

 ランドロスが攻撃前に発した巨大な地面エネルギーの球体が満月、叩き込まれた莫大な地面エネルギーがビートブロックの代わりとなった」

 

「無理矢理ですね。

 ただ、そんな奇跡のようなことが実際に起きてしまった。 そういうことなんでしょうね」

 

 

 

***

 

 

 

 

『素晴らしいパワーだ。 こう対峙しているだけで貴様の強さがよく分かる』

 

「ああ。 俺も自分の中から溢れ出るエネルギーに驚いてるよ。 

今ならお前にも勝てる!」

 

『もはや貴様を格下とは思わん。 

対等の存在として全力で叩き潰そう』

 

 2匹はニヤリと微笑む。

 

 戦いの喜びを噛み締めるように、戦いに終わりが近づいていることを憂うように。

 

『『じしん』!!』

 

 ランドロスが上空から大気を震わせることで、強力な重力の衝撃波を発生させる。

 

「ぐふっ!」

 

 地面が割れるほどの重力がガチグマを襲う。

 

 そして、攻撃は止まらない。

 

『『ねっさのあらし』』

 

 灼熱の熱を帯びた砂漠の砂が巻き上がり、ガチグマを包み込む。

 

「くっそ! 熱っちぃ!」

 

 ランドロスは追撃の手を緩ませない。

 

 空を駆け、加速する。

 

『終わりだ。

 

『だいばくはつ』』

 

 ランドロスに高密度のエネルギーが集中する。

 

 ガチグマも体制を整え、大地を踏みしめ──跳ぶ!

 

「すべての力をこの右腕に込める! 

 

『ぶちかまし』ぃぃいいい!」

 

 ガチグマの拳がランドロスの胴体を捉え、そのま抉るように腕を振り抜き、地面に叩きつける。

 

 これまで感じたことのないような爆弾が爆発したような衝撃。

 

「ジャローダ!」

 

 ジャローダがツルの網で防御壁を作り、爆風から守ってくれる。

 

 バナナはしれっとバンギラスの後ろに隠れている。

 

 バンギラスは動かざるもの岩の如し。

 ビクともしない。

 

 とんでもない衝撃と爆発。

 砂漠の砂が空高く舞い上がり、視界を覆い尽くす。

 

 やがて辺り一面の砂埃が薄れ、視界がクリアになる。

 

 目に飛び込んできたのは2匹のポケモン。

 

 ランドロスと……ヒメグマ!?

 

 2匹は肩で息をしながら向かい合っている。

 

「ガチグマからヒメグマに戻っている?

 どうして?」

 

「さっきも言ったろ。 ヒメグマのは進化じゃない、変身だ。

 エネルギーを使い果たして変身が解けたんだろ」

 

 いやいや、そんな平然とドラゴンボール理論をぶち込むなとツッコミを入れたくなるが、目の前で起きている以上そういうことなのだろう。

 

「……へへ、時間切れか。 やっぱりお前は強ぇなー。 もう、戦う力が残ってないや」

 

『……いや。この勝負、お前の勝ちだ』

 

「へ?」

 

 遠目にもフラフラのヒメグマ対してまだランドロスには余裕があるように見えるが。

 

『最後に俺が見せたのは瀕死覚悟の自爆攻撃だ。 これでお前を木っ端微塵にしてやるつもりだった。 この攻撃を耐えられ、あまつさえ立っていられるとは思わなかった。

 今俺がこうして動けているのは伝説としての最後の矜持だ。

 戦いは俺の負けだ』

 

「そうか。 釈然としねーが、そういうことにしておくか」

 

 ランドロスは倒れたトルネロス、ボルトロス、ラブトロスを自身の背中に乗せていく。

 

『さらばだ。 次にお前と戦う時は俺が勝つ』

 

「ああ。 今度は完全勝利してやるから覚悟しろよ」

 

 ヒメグマとランドロスはサッパリした笑顔を互いに見せると、ランドロスはゆっくりと飛んでいった。

 

「すごい戦いでした……。 まさか4神を退けられるとは思いませんでした」

 

 バナナのポケモンたちの強さに驚き、改めて短期間でここまでの強化を果たした謎に興味が移る。

 

「バナナさん。 詳しく教えてください。

 この数日で何があったのか。

 あなたのポケモンが短期間でパワーアップした理由はなんですか?」

 

「うーん。 ちょっと話は長くなるんだけどな」

 

 そう言うとバナナはここ数日の出来事を語りだした。

 

 探していたアクロマとの突如の接触、ウルガモスの捕獲、伸縮自在の虫取り網、そしてアクロマのオーベムによって遺跡に閉じ込められたこと。

 私もその間のソウリュウシティの惨劇、アクロマとトウコのことも伝える。

 

「俺が幸運だったのは古代の城の環境だ。

 過去のエネルギーに満ちているこの場所の、更に奥地の地下世界。

 あそこはギラティナの反転世界に容易に繋げることができた」

 

「……ギラティナ」

 

「ギラティナの力を使えば閉じ込められたあの世界からの脱出は正直いつでもできた。

 ただ、俺はチャンスだと考えた。

 自由に反転世界に行けるこの環境ならば俺のポケモンたちをもっと強化できるってな。

 正直、これから神と呼ばれる伝説のポケモンたちと戦うに当たって自分の実力不足を痛感してたし」

 

「さっき言ってた精神と時の部屋みたいな場所というのが、反転世界の環境ということですか」

 

「そうだ。 正確にはギラティナの意思で反転世界は自由に時間や空間をコントロールできる。

 俺はギラティナに頼んで、反転世界を外の世界よりも時の流れを遅くしてもらい、また体の負担を増やせるように重力も増やしてもらった。

 そんな環境でポケモンたちはずっとトレーニングをしたんだ」

 

「キツかったぜー、マジで!」

「ほんとほんと」

 

 カメックスとその肩に乗ったヒメグマが同時に頷いている。

 

 バナナのポケモンの急激なパワーアップの謎は解けた。

 

 しかし同時に私の頭の中にはフワフワとした情報の欠片が無秩序に漂っている。

 

 突如現れた、アクロマ。

 そして、バナナの封印。

 その後のソウリュウシティへの襲撃。

 

 トウコの豹変……アクロマ……そしてゲーチス。

 

 私の前に現れたポケモン。

 アルセウスに化けたゾロアーク、そしてドリュウズ。

 

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「バナナさん。 アクロマシーンのことは覚えてますか?」

 

「なんだよ、急に。

 えっと……たしかポケモンの能力を目覚めされる装置じゃなかったか」

 

 私は頷き、次にポケモン図鑑を起動する。

 

『オーベム。 ブレインポケモン。 リグレーの進化形態。 強い サイコパワーを 持っている。 3色に 光る 指で 相手を 操り 記憶を 書き換えてしまう』

 

「どういうことだ。 何が言いたい」

 

「アクロマシーンによって強化されたオーベムなら人の記憶を……いえ、魂すらも入れ替えることが可能なのではないでしょうか」

 

「おい……まさか!」

 

「そうです。 今のトウコさんの中にいるのはトウコさんじゃない! おそらくはゲーチス。

 トウコさんの持つゼクロムを力を奪いたかったアクロマがゲーチスとトウコさんの魂を入れ替え、トウコさんの体を奪ったのです。

 そう考えればすべての辻褄は合います」

 

「突拍子もない話な気もするが……納得はできるか。

 だけど、その話が真実だとすると今のゲーチスの体に入っているのはトウコってことになる。

 じゃあ、トウコはもう──」

 

 バナナはそこで言い淀んだ。

 

 ゲーチスの肉体は死んでいた。

 それは確かだ。

 

 であればその肉体に入ったトウコも死んだということになる……。

 

 果たしてそうだろうか。

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