ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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アクロマの研究

私の名前はアクロマ。

 

 以前の名前……もう忘れましたねぇ。

 興味がないことは忘れるようにしているんです。

 脳のメモリの無駄使いですから。

 

 確か動物実験だけに飽き足らず、人体実験にまで手を出し、研究機関から追い出されたはぐれ研究員だった……ま、それは今も変わりませんがね。

 

 新たにこの世界に転生した私ですが、ポケモンという不可思議な人間に比類する──いえ、それ以上の存在として生態系の頂点にいる生物の可能性、そして『アクロマ』という自分自身の天才的頭脳に驚愕していました。

 

 私の頭脳とポケモンを組み合わせればどんなことでもできる──そう考えたのです。

 

 別に私自身は地位や名誉など心底どうでも良いと考えてもいますが、自身の研究欲は収まることはありませんでした。

 

 そんな時に出会った一人の男。

 

 ゲーチス。

 

 一言で言えば野心の塊。

 

 権力に執着し、人の上に立つことを何よりの喜びとしている醜さに私は吐き気を催しましたが、その潔いまでの上昇志向精神には感心すらしていました。

 

 そんなゲーチスが一人の少女に敗れ、プラズマ団を壊滅させられてから1年後のある日。

 私は彼に呼び出されました。

 

「アクロマよ、私は諦めん。 

 今度は究極の武力をもってこのイッシュを、この世界を支配してやる」

 

「あなたも往生際が悪いですねぇ。 

 あの少女……ポケモンリーグチャンピオン以上の実力者になったトウコにあなたが敵う道理はありませんよ。

 例え伝説のポケモン──キュレムを手中に収めた今であってもね」

 

「そんなことは分かっている。 

 私はあの小娘と戦い、そして敗れたのだからな。

 忌々しいがあいつは強い……! 

 だが、その強さを利用するのだ」

 

「どういうことです?」

 

「お前科学者だろう? 

 あの小娘を洗脳する機械を作れ。 

 それで奴のゼクロムを奪い! キュレムと合体させることで最強のポケモンを作り出す」

 

 その言葉を聞き、私は深い嘆息を漏らしました。

 

「わざわざ呼び出したのはそんな戯言を聞かせる為ですか? 

 下らない……人を洗脳できる機械なんてそう簡単に作れるはずがないでしょう」

 

「では! 体の一部を奪うなり、意識を失わせるなり、やりようはいくらでもあるだろう!?

 それでも天才科学者か!? 金ならいくらでも出す! なんとかしろ!!」

 

 トウコに敗れ、Nが去り、プラズマ団が滅びました。

 正直、そこからゲーチスは正気を失っていたのです。

 

 それまでのゲーチスは激情の性格ではありましたが、理知的に合理的に考えられる知能は持ち合わせていました。

 

 だが、今は無理難題を喚き散らす老害に成り果ててしまいました。

 杖を付き、歯をむき出しにし、まだ10代の少女への怨みつらみを述べるだけの老人。

 

 既に彼に対する私の興味は失い始めていました。

 

 ゲーチスに背中を向け、帰ろうしたその刹那──私の脳内に天啓が降りたのです。

 

 無理難題……本当にそうでしょうか?

 

 確かに科学の力には限界があります。

 

 ですが、この世界には科学を超えた超常的な存在がいます。

 

 ポケモンの能力を科学の力で更に引き上げれば不可能なことなどないのではないか。

 

 私の頭の中には無数のアイデアが湯水のように湧いてきました。

 

 そして、1つの策を思いついたのです。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 遂に完成したプラズマフリゲート。

 裏社会で秘密裏に再びプラズマ団残党やならず者共をかき集め、結成した新生プラズマ団。

 

 勢力が広まりつつあった時、プラズマフリゲートにあの少女が乗り込んできました。

 

「アンタたちも懲りないねぇ。 まだコソコソと悪いことを考えていたの?」

 

 私がゲーチスと共にこの計画を考え、研究し約1年が過ぎました。

 

 この作戦の鍵を握る装置──アクロマシーンも完成済みです。

 

 あとは実践あるのみ。

 

 長い茶髪のポニーテールの少女、トウコは私とゲーチスを前にしても余裕の表情を浮かべています。

 その傍らには黒き竜、ゼクロム。

 

「何度やってもアンタじゃアタシには勝てないよ。 諦めて降参したら?」

 

「相変わらず年長者への礼儀も知らぬ、不躾で馬鹿なガキだ。 

 貴様だけは許さぬ」

 

「逆恨みはやめてよねー。

 まっ! さっさと終わらせようか」

 

「いえ……残念ですが。

 もうお終いです」

 

 私の言葉にトウコが眉間にシワを寄せる。

 

「どゆことさ」

 

「あなたが乗り込んでくること、それは想定済みでした。 

 その為にあえてプラズマ団の情報を流していましたから。

 この船にはサイコエネルギーを増幅させるサイコフィールドを既に展開済みです」

 

「何が言いたい」

 

「出てきなさい、オーベム。

 そして、このアクロマシーン」

 

 小さなエアコンのリモコンサイズの装置。

 

 私は装置のスイッチを押しました。

 

「このアクロマシーンはポケモンの能力を数倍にも増幅させます。 

さあ、オーベム。『サイコシフト』!」

 

 本来はポケモンの状態異常を移す効果のサイコシフト。

 しかし、アクロマシーンによって強化されたオーベムによって放たれる『サイコシフト』が入れ替えるのは状態異常ではありません。

 

「トウコさん。 

あなたとゲーチスの魂を入れ替えます!!」

 

 音もなく衝撃もなく僅かに空間が揺れました。

 

 そして実験は成功しました。

 

 数秒の沈黙を切り裂いたのは少女の声。

 

「くくくく」

 

 少女の体からは似つかわしくない穢れた、ざらついた声が漏れる。

 

「はぁーはっはっはっはっは!!!

 小娘!! 貴様の体は私が奪ってやったぞ!」

 

 両腕を広げ、歓喜の笑い声をあげるトウコ、いえ、ゲーチス。

 

 そして膝をつき、茫然自失となっているのがゲーチスの姿となったトウコです。

 

 これが私の科学とポケモンの力の融合。

 私が生み出したアクロマシーンによって、オーベムの能力が覚醒し、そのサイコパワーによってゲーチスとトウコの魂を入れ替えることに成功したのです。

 

「死ね。 小娘」

 

 トウコの姿のゲーチスが叫び、側に控えていたプラズマ団員が銃の引き金を引きました。

 

 銃弾はゲーチスの体を打ち抜き、ゲーチスは……いえ、トウコは絶命しました。

 

 このゲーチスの行動は私の予想外でした。

 私達の作戦は体を入れ替えるところまで。

 

 まさか実験成功のその瞬間に部下に命じ、自らの身体ごとトウコを殺す手立てを考えていたとは……。

 

 トウコが撃たれたその瞬間(ややこしいので今後はトウコ姿のゲーチスをトウコゲーチス、ゲーチス姿のトウコをゲーチストウコと記します)、トウコゲーチスの腰のモンスターボールが一斉に開き、トウコのポケモンたちは外へ逃げ出してしまいました。

 

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