ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜   作:くまっくす

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神を討て

「私に考えがあります。

 ただ、ここで話すのもちょっと……」

 

 中継の映像、そしてアイリスの言葉。

 

 それを聞き、人々はパニックに陥っていた。

 

 そしてそれに追い打ちをかけるように、

 

『速報です!

 キュ……キュレムが立ち上がりました!』

 

 ニュースレポーターの狼狽する声が街中に響く。

 

 スクリーンには胸を張り、翼を広げるブラックキュレムの姿。

 

 青い雷を纏い、そして、自身を雷エネルギーに変換させ──弾けた。

 

 その瞬間に映像は途切れる。

 

 カメラが壊れただけだと信じよう。

 

「おい、メイ! やべーぞ。

 多分キュレムのやつ、こっちに向かってる!」

 

 ヒメグマがキュレムの接近を察したらしい。

 

「ポケモンリーグを襲い、次にこっちに向かっている……。 もしかしたらレッドさんやリーフさんの存在を認知したのかもしれないですね。

 おそらくキュレムは本能的に強い相手を探している。

 ですが、これはチャンスです。

 向かい撃ちましょう」

 

「どこで?」

 

 バナナの問いに答える。

 

「古代の城です」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「こんなにすぐにここに戻ってくるとは思わなかったぜ」

 

 巨大な過去の建造物──古代の城。

 

 ヒメグマが見上げながら言った。

 

「ここに来たのってまさか……あいつを呼び出そうとしてないか……?」

 

 バナナが嫌な予感を覚えたのか苦虫を噛み潰したような表情を見せる。

 

「とりあえず中に入りましょ──」

 

 一瞬の出来事だった。

 

 雷がなったようにピカッと光が走ったと思った瞬間、轟音とともに超高密度の雷撃が降り注ぐ。

 

「ピカチュウ!! 『ボルテッカー』!!」

 

 瞬時に対応できたのはレッドただ一人。

 

 ピカチュウが雷撃との間に入り、私達を守ってくれる。

 

 エネルギーの衝突による衝撃波が発生する。

 

 暗い闇空に現れたのは青白いオーラを纏う漆黒のドラゴン、ブラックキュレム。

 

 好敵手と巡り会えたことを喜ぶようにニヤリと嗤っている。

 

 少し前までポケモンリーグにいたはずなのに……!

 

「『あおいほのお』!!」

 

 油断していたキュレムに青いレーザーのような強力な炎が横から直撃する。

 

 その衝撃で砂漠の地面を滑りながら吹き飛んでいくが、すぐにキュレムは体制を整える。

 

「メイ! 加勢する。

 こいつはここで倒さなければ駄目だ」

 

 ピンチに駆けつけてくれたのはやはり私の王子様であるNだ。

 

 レッドにリーフ、カミツレ、そしてN。

 強力な味方が増えてくる。

 あと1人……増えてくれれば理想なのだが。

 

 ただ、いよいよ最終決戦が近づいているのだと実感する。

 

「さて……どこまでやれるかやってみるか。

 リザードン!」

 

 レッドはリザードンを繰り出し、更に左手首に巻いているバンドを掲げる。

 

「メガシンカ」

 

 激しい光に包まれ、

二重螺旋のメガシンカマーク。

 

 黒きリザードン、メガリザードンXに進化した。

 

「なにか遺跡の中でやることがあるんだろう?

 ボクたちが時間を稼いでおくから先にいってきなよ」

 

 レッドとN、メガリザードンXとレシラムの夢のタッグバトル!!

 

 めちゃくちゃ見たい!

 

 だけど、駄目だ。

 

 私達にもやることがある。

 

「バナナさん、リーフさん、カミツレさん!

 行きましょう!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 遺跡の中を進んでいく。

 

 地下への入口を閉ざしていた扉は破壊された形跡が残っている。

 

「古代の城にこんな場所があったなんて知らなかったわ。 それで? そろそろ教えてくれる?

 ここでどうするの?」

 

「カミツレさん。 これまで言ったことなかったですけど、私には特性があります」

 

「はぁ? 急になに? 特性ってポケモンじゃなくて、トレーナーであるあなたが?」

 

「そうです」

 

「ちょっと何言っているか分からないんだけど」

 

 カミツレの疑問は最もだが、美人の狼狽える表情を見るのも悪くない。

 

「ちょっと見てください」

 

 私はモンスターボールを投げ、手持ちのブルンゲルを繰り出す。

 

「ブルンゲル! 私に向かって『シャドーボール』!!」

 

「ぶるぅーん!!」

 

 ブルンゲルの攻撃がこちらにまっすぐと飛んでくる。

 

「『クイーンズガード』!!」

 

 私は自身の特性でブルンゲルの技を防いでみせた。

 

「す、凄いけど……。 まさかキュレムの攻撃をそれで受けようとしているの?」

 

 カミツレの問に私は断言してみせる。

 

「そうです。 私達の特性は伝説のポケモンにも届きうる……そう考えています。

 そしてこの特性はリーフさんも持っているはずです」

 

「ちょっと……勝手に言わないで欲しいんだけど。 まぁ、いいか。

 別にもう隠すことでもないだろうし」

 

 そう。

 転生者とかそういうことを話すと話がややこしくなるが、特性について語るくらいなら、この先も特に面倒なことにはならないと判断した。

 

 それよりも私達の特性なくして、キュレムに対抗する手立てはない。

 

「みなさん。

 もうあまり時間はありません。

 行きましょう」

 

 私達は地下世界に続く階段を降りていく。

 

 降りた先は広大で神秘的な空間が広がっている。

 

「さて、バナナさん。 ギラティナを呼んでください」

 

「やっぱりここに来たのはギラティナを呼び起こすためか?」

 

 私は頷く。

 

 バナナからこの地下世界での修行の話を私は忘れていなかった。

 

 ここならギラティナの力をほぼ完全に発現できるはずだ。

 

 バナナは仕方ないなぁと頭をかき、そして大きく息を吸った。

 

「出てこい……っ!!

 ギラティナ!!」

 

 バナナの影が大きく伸びる。

 

 そしてその影は異形の姿の神を象る。

 

 3対6枚の翼。

 黄金の兜のような頭部。

 真っ赤な瞳。

 

 反転世界の神、オリジンギラティナ。

 

『人間が一匹、二匹、四匹か……。

 何だ? 俺に喰われに来たか』

 

 身体ごとギラティナに引き込まれそうになる。

 

 深淵に導くような暗く重たいオーラ。

 

「ギラティナ。

 久しぶりね」

 

 突如ギラティナに話しかけたのはなんとリーフだった。

 

「リーフさん? こいつのこと知っているんですか?」

 

 ギラティナを宿していたバナナですら寝耳に水の話だったらしい。

 

「……まあ、昔色々ね。

 

 さてギラティナ。 緊急事態なの。

 敵はあいつらではないけど、だからこそ、問題はより深刻。

 ブラックキュレム……人間のせいで理性を失った荒ぶる神がこの上にまで来てる。

 放っておけばこの世界そのものを崩壊させかねない。

 力を貸してほしい」

 

『利用されるのは気に入らんが、ここで貴様らが殺されては俺も困る……か。

 手を貸してやっても良いが、今の俺の力はそこの麦わらのガキの力に比例する。

 暴れ竜を抑えられる程の力はないぞ』

 

 ここまで恐ろしいオーラを放っているというのにまだこの上があるのか。

 

 とは言え作戦の準備は整ってきた。

 

 

 

 バリリリリィイイイっ!!

 

 花火のような青白い火花が散り、地下世界の天井が崩壊していく。

 

 メガリザードンXとレッドが氷を纏った雷撃を交わしつつ、地下世界に降りてくる。

 

「レッドさん! 大丈夫ですか?」

 

 バナナが駆け寄るが、レッドは右手でそれを制す。

 

「大丈夫だ。 だけど、キュレム……強いね。

 ボクの想像以上だ」

 

 そして頭上からは神秘的な光を纏うまさに神のような存在のブラックキュレムが降りてくる。

 

「くそっ!! と、とんでもないな。

 強すぎるっ!!」

 

 遅れて、あの基本能面のように表情を崩さないNが顔面に滝のような汗を流しながらやって来た。

 

 Nを背中に乗せたレシラムも全身に多数のキズを負っている。

 

『パワーをコントロールできていないのが幸運だな。 理性が残っていれば私が戦えるような相手ではない』

 

 レシラムの言葉に衝撃を受ける。

 

 レッドのメガリザードンXと伝説のポケモンレシラムを相手にして余裕そうなあいつがパワーをコントロールできていない?

 

 全くインフレし過ぎだ。

 

 そんなインフレの頂点にいるブラックキュレムは空中で身体を丸める。

 

 周囲が冷たい冷気を帯び始める。

 

「マズイ……『フリーズボルト』だ。

 早く防御姿勢に移るか、エネルギーを貯めさせないようにこちらから攻撃するしかない」

 

 Nはそう言うが、キュレムまでは距離がある。

 

 間に合わない……その時。

 

 隕石のような炎を纏った塊が地上から落ちてくる。

 

 そして、その塊はまっすぐにキュレムの頭部にぶつかっていく。

 

 その衝撃で溜めていた冷気のエネルギーが解けていく。

 

「全く……遅いですよ。

 でもこれで役者は全員揃いましたね」

 

 キュレムに恐れずぶつかっていく命知らずの人間を私は一人しか知らない。

 

 炎の塊──エンブオーの背中に乗っている少女は不敵な笑顔で微笑んだ。

 

「待たせたねぇー! ブラックキュレム!

 最終ラウンドと行こうか!」

 

 私が考えていたキュレム撃退の為の最後のピース。

 

 トウコが現れた。

 

 

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