ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
ブラックキュレムの大技である『フリーズボルト』の発動直前。
地上からの落下による重力が加算された、破壊力抜群の『フレアドライブ』を炸裂させたエンブオー、そしてその背中にいたのはなんとトウコだった。
「よっしゃ! 何とか間に合った!」
「トウコさん! 無事だったんですね!」
「まあ、色々あったけどなんとかね」
突如として現れたトウコに複雑な表情を示したのはカミツレ。
それもそのはずでカミツレは当然アイリスからプラズマ団によるソウリュウシティの襲撃、そしてそこにトウコがいたことを聞いていたはずだ。
「どういうこと? トウコはプラズマ団に寝返ったんじゃなかったの?」
「話は長くなるので結論からお伝えするとソウリュウシティを襲ったのはトウコさんではなく、ゲーチスです。
ゲーチスは殺されたのではなく、殺されたかのように見せかけ、トウコさんの肉体を奪ったのです。
詳細は分かりませんが、今は元の体に戻れた……そういうことでしょうか?」
私の推理を聞くとトウコは目を見開き、そしてニコッと笑う。
「さっすがだね、メイ。
アンタの頭脳なら分かってくれると思ったよ。
それと。アタシのポケモンたちはちゃんとメイを助けてくれた?」
「まぁ、分かりにくいヒントが多かったですけどね。
アルセウスに変身したゾロアーク、バナナが閉じ込められた場所を教えてくれたドリュウズ。
アルセウスはこの世界に私とトウコさんを連れてきた存在。
つまりアルセウスは私たちにとっての共通言語のようなものでした。
よって、わざわざアルセウスに化けたあのゾロアークはトウコさんのポケモンだと確信したわけです。
そうなると私の味方をしてくれたドリュウズもトウコさんのポケモンということになる。
ポケモンがいて、トレーナーがいない。
つまり、トレーナーに何か緊急事態が起きているということは想像できます。
だからこそ私は初めからソウリュウシティを襲ったトウコさんは本物ではない可能性があると思っていました」
「アンタねぇ……アタシはただ逃げさせたポケモンたちが少しでもメイを助けてくれたら嬉しいなーって思っただけなのに。
最高!」
近づいてぎゅっと抱きしめてくれる。
温かい……なんだコレ?
これが恋?
「話は分かったよ。
ただ、今は呑気にお話してる場合ではないんじゃない?」
リーフが頭上を見上げている。
上空ではブラックキュレムが青白い炎のような雷エネルギーを両腕に発現させている。
そして、それを両腕をぶつけ合わせることで弾かせ、炸裂させる──『クロスサンダー』だ。
「電気攻撃ならあたしに任せてっ!」
カミツレが繰り出したのはエレキブル。
そうか!
エレキブルの特性は電気技を無効にし、それを自身のエネルギーとして加速する電気エンジン。
いや──まて。
ブラックキュレムの特性はテラボルテージ。
特性を無効されてしまう。
「エレキブル!?」
ブラックキュレムの攻撃を直撃したエレキブルは真っ黒に焦げ焼けてしまった。
特性無効とは言え、同タイプで効果半減だと言うのに出鱈目な火力だ。
「でも、ここで怯むわけには行かないっつーの!!」
トウコはエンブオーに攻撃指示。
「俺もやるぜぇえええ!!
ワープ進化──ガァチィグマァァァ!!」
なんとヒメグマは一気にガチグマに進化。
ワープ進化は聞かなかったことにしよう。
(進化後に自分の名前を低い声で言うのも元ネタを感じさせる)
リーフはフシギバナを繰り出し、レッドもリザードン、Nはレシラムでブラックキュレムに総攻撃を仕掛ける。
「お願い! ブルンゲル!!
『シャドーボール』!!」
私もブルンゲルでブラックキュレムに攻撃。
トウコの言う通りだ。
ここで引くわけにはいかない。
一気に攻撃をしかける。
そんな私達の一斉攻撃に対し、ブラックキュレムは冷たい冷気のエネルギーを作り出し──
全身から氷の刃として発現!
それを四方八方に発射した。
無数の氷の刃がガトリング団のように高速スピードで放出されていく。
その氷の刃はブルンゲルの攻撃を掻き消し、そしてブルンゲルの身体を貫いていく。
その光景に言葉を失う。
その攻撃範囲、攻撃威力、どちらも規格外。
轟音と共に空から絶え間なく降り注ぐ氷の刃。
分かっていたけど……勝てるはずがない……。
駄目だ……死ぬ。
「勝手に諦めるんじゃないわよっ!!」
私を庇い、降り注ぐ氷の刃から守ってくれたのはリーフとフシギバナ。
フシギバナは『はなびらのまい』を出し続けることでなんとかブラックキュレムの猛攻を耐え凌いでいる。
「キミの覚悟はその程度なの!?
あいつの攻撃を自分に向けさせて、特性で凌ぐ……その隙にブラックキュレムを倒すというのがキミの策なんでしょう!?
今のキミはあいつの視界にすら入っていないよ。
根性見せなさい!」
お姉様の強力な叱咤激励で凍えきった身体にチカラが漲る。
「ブルンゲル……! ありがとう、休んでいて。
お願い! ジャローダ!」
「確かによく鍛えられているジャローダね。
でも、その程度じゃブラックキュレムには届かない」
「そんな!」
「キミだけの力ではね」
「え?」
リーフが軽く息を吸う。
周囲の空気が変わるのを感じる。
「《ブルームフィールド》」
リーフがそう呟いたの同時に私達の周囲には新緑と小さな花が芽吹き、咲いている。
「これがリーフさんの特性……」
グラスフィールド……いや! その程度のものではない!
ジャローダからは漲る生命力の高まりを感じる。
草タイプのポケモンに対して能力上昇バフがあるのだろう。
更に、リーフさんは左手首のキーストーンが取り付けられているバンドに触れる
「メガシンカ」
メガシンカのエネルギーに包まれ、
フシギバナが姿を変化させる。
背中の花や草木はより生い茂り、額には新たなピンクの花が咲いている。
大きくなった背中の花を支えるために足腰もより大きく屈強なものに変化していく。
これがメガフシギバナ。
「あたしの《ブルームフィールド》内部では草タイプのポケモンの相対的な能力上昇、そして任意のポケモンの体力やケガの回復ができる。
勿論、草タイプの技も強化させることができるわ」
「これならキュレムに目覚ましの一撃を叩き込めるかもしれませんね」
さあ! 気合を入れろ。
ここからの攻防でイッシュの未来が決まる。
「ジャローダ!」
「フシギバナ!」
「「『リーフストーム』」!!」
《ブルームフィールド》により強化されたジャローダとフシギバナの『リーフストーム』。
2匹の合体技は草エネルギーの竜巻となってキュレムに向かって真っ直ぐと突き進む。
キュレムの『つららばり』の嵐を突き破り、『リーフストーム』が炸裂する。
しかし、キュレムは大したダメージもないのか、すぐさま私達を睨みつけると攻撃モーションに入る。
全身に凍てつく氷エネルギーと迸る雷エネルギーを纏う。
「メイ! 来るわよ」
リーフが私を見る。
覚悟しなさい、その目はそう語っていた。
『ガアアアッ!!』
キュレムの咆哮と同時に私も特性を発動させる。
「《クイーンズガード》!」
私、リーフ、ジャローダ、フシギバナを覆う半円の防御壁。
絶対に耐え抜いてみせる!
ブラックキュレムの『フリーズボルト』が私達に襲いかかる。
凄まじい衝撃。
まるでビニール傘で災害級のスコールに抗っているそんな気分っ!
「ぐぎぎぎぎぎぎっ!!」
《クイーンズガード》を作るために前方に掲げている右腕がもげそうだ。
レシラムの『あおいほのお』を食らった時の衝撃を遥かに上回る。
「メイ! 『フリーズボルト』の出力が弱まってきている!
頑張って!」
ジャローダもフシギバナもリーフも私の身体を支えてくれている。
大丈夫!
私は倒れない。
「うおぉおおおお!!」
無限にも思える衝撃を耐え凌ぎ、遂に──
パァーン!
《クイーンズガード》が『フリーズボルト』を打ち消した。
「や、やった……」
私は安堵し、《クイーンズガード》を解いた。
「駄目だ! メイ! まだガードを解くなっ!!」
「え?」
バナナの絶叫が響く。
眼前には巨大な氷剣が迫っていた。
キュレムが『フリーズボルト』を解いたのはブラフ……!
直後に巨大な『つららばり』を発現させたのか。
駄目だ……もう動けない。
「ちょっ!!」
突如、ジェットコースターに揺られた時のような横への重力を感じる。
「ぐべべべべっ!!」
私とリーフさん、ポケモン2匹はギュッと纏まった状態で地面を滑っていく。
「ふぅーっ! 何とかセーフか?」
相変わらずデリカシーのない助け方。
黄金の虫取り網に包まれた私達は危機一髪のところで氷剣を交わすことができた。
次回、第3章最終回です!