ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
「メイ! 大丈夫か?」
虫取り網でレディー2人まとめてゲット作戦をしたとんでもない男だが、一応は気遣う気持ちもあるらしい。
「私は大丈夫です! それよりも今がチャンスです! 大技を放ったばかりの今が一番隙が生じているはずです!!」
「ああ! 分かっているよ!
カメックス!!」
「任せとけーい!
『しおふき』!!」
繰り出されたカメックスが上空に爆発的な水流を放出する。
その先にいたのはなんとガチグマ。
ガチグマは『しおふき』に乗り、高速で空高く突き上がる。
「サンキュー! カメックス!!」
ガチグマは空中でかえんだまを使用、特性の根性を発動させ、パワーアップ。
「いくぜぇえええっ!! 『ぶちかまし』ぃぃ!」
動きが鈍くなったキュレムは躱しきれずに左脇に思い切り、ガチグマの攻撃を受ける!
そして、攻撃は止まらない。
「ゼブライカ! 全力の『ワイルドボルト』!!」
ガチグマの攻撃で吹き飛ぶキュレムをカミツレのゼブライカの全力の突撃が地面に叩き落とす。
キュレムは両手両足で地面に着地する。
ただ、確実にダメージは蓄積している。
そんなキュレムの30メートル程先には2人の姿。
「さあ! 見せてやるよっ! これがあたしの特性だ!」
トウコが人差し指をキュレムに向けている。
「《捨て身の覚悟》!」
トウコを中心に炎のようなオーラが舞い上がる。
「おお! 凄いな。 僕のリザードンのパワーが上がっている」
トウコの側にいたレッドが感心している。
「あたしの特性に触れた炎タイプのポケモンは単純に火力2倍! そして、反動技の威力はさらに1.5倍っいいい!」
「いいねぇ。 分かりやすくて、そういうの好きだよ。
それじゃあ、やろうか!
リザードン!」
「エンブオー!」
「「『フレアドライブ』」!」
メガリザードンXとエンブオーの馬鹿火力の必殺技がキュレムの胸の中央部分に叩き込まれる。
貴重だと思われる遺跡を粉々に砕きながら、攻撃の衝撃に吹き飛ばされていくキュレム。
しかし──
「マジですか……」
ブラックキュレムの耐久値は私の想像を遥かに上回っていた。
翼を広げ、空へと飛躍する。
『クカッ……!』
「ダメージはかなり与えられてる!
もう一息のはずだ」
バナナが言うようにキュレムの動きはかなり鈍くなってきている。
『終わらせよう、キュレム。
せめて私の手で』
ブラックキュレムの前に現れたのはレシラムとN。
レシラムの口元には既に最大出力の『あおいほのお』が狼煙を上げる。
『グオォオオオオオオオオ!!』
言葉を持たぬ怪物が咆哮し、最後の力を振り絞る。
冷気と雷を組み合わせた必殺の『フリーズボルト』。
まだ、この大技を放つだけの余裕があるのか。
伝説を超えた伝説のポケモンの底力に驚くしかない。
だが、放たれた一撃はレシラムに当たることはなかった。
何が起きたのか分からず呆然としているキュレム。
そのキュレムの背後に突如現れたレシラム。
そう。
ここは既にギラティナの反転世界の領域内。
場所や位置の概念もギラティナの意のままだ。
「これが最後だ」
Nの言葉はキュレムに否、その中にいる男の魂に向けられた言葉だろう。
「さようなら──お父さん」
レシラムの『あおいほのお』の一閃がキュレムの額にあるいでんしの楔を撃ち抜いた。
眩い光が粒子状に飛び散り、地下世界が照らされていく。
やがて光の中からは横たわったキュレム、そしてゼクロムが姿を見せる。
「ゼクロム!」
トウコは倒れているゼクロムにすぐに駆け寄る。
「良かった! かなり体力を消耗しているだけで命に別状はなさそう。
キュレムも……生きている」
「さて、ゼクロムは問題がないとして、キュレムはどうする? このあと目を覚まして暴れたりしないか?」
バナナの疑問にNが答える。
「いでんしの楔も壊したし、その心配はないだろう。
元々キュレムは争いを好むようなポケモンじゃない。 ゼクロムとレシラムが争うようなことが今後なければ自ら行動を起こすことはないだろう」
イッシュの伝説のポケモンたちは良くも悪くも人間との距離が近い。
人間の掲げる理想の為に真実の為に、その力を貸してくれる。
だが、その理想も真実も全ての生き物にとってのものになることはない。
ゲーチスの掲げる真実や理想は私にとっては受け入れがたいものだった。
「父は……ゲーチスは己の野望の為に全てを捧げる男だった。
だけど、その狂気とも言える執念の強さは伝説のポケモンにも匹敵するものだった。
凄い人だよ」
Nは達成感と虚しさと……複雑な感情を合わせた表情で呟く。
彼には今かける言葉が浮かばない。
「バナナさん、レッドさん、リーフさん。
今回は力を貸して頂きありがとうございました。
皆さんのおかげでイッシュは救われました」
「僕としては久し振りにワクワクできる戦いができて満足しているよ。
まだまだ上には上がいる。
強くならなきゃね」
最強にしてこの向上心。
レッド、恐るべし。
「キミの作戦とキミの覚悟が切り開いた結果だよ。 あたし達は自分の役割を果たしただけ。
自分自身を誇りなさい」
リーフはそう言って私の髪を撫でてくれる。
転生者なのは分かるけど、この人一体精神年齢いくつなんだろうか……。
「メイを信じて正解だったよ」
バナナもカメックスをボールに戻し、虫取り網を背中に戻しながら笑顔を私に向ける。
「転生者の特性、レシラム、ギラティナの伝説のポケモンの力の活用、すべてを組み合わすことができたから何とか勝てた。
メイの作戦勝ちだ」
「いえ。 運が良かっただけです。
カミツレさんがレッドさん達を連れてきてくれた、Nさんが味方になってくれた、ギラティナが力を貸してくれた、全てが噛み合って何とか勝てた危ない策でした」
「ったく……素直じゃない奴だ。
それを含めてお前の力だって言うのに。
ま! とりあえず勝てて良かったよ」
そう言うとバナナは右手を掲げる。
「む」
ハイタッチということか。
陽キャのようでやや恥ずかしい。
私はうへへと照れながらも、右手をおずおずと上げる。
何故か周囲がニヤニヤしている生ぬるい空気の中、バナナと手が触れ合う──その瞬間。
『小僧っ!!』
「バナナ!」
ギラティナとレッドが同時に叫ぶ。
バナナの背後には突如、黒と紫の渦巻き状の何かが出現し、そこからは禍々しい巨大な掌のような物体が現れる。
「ちっ!」
バナナは触れ合おうとしていた私の手の平を弾き飛ばした。
私は衝撃で後退りして尻もちをつく。
「バナナっ!!」
私の目の前でその掌の怪物はバナナを握り潰すように掴むと渦の中に戻っていく。
それと同時に小さくなる渦。
完全に閉じ切る前に何とか渦に入り込んだのはガチグマからヒメグマに戻り、小さくなったヒメグマだけだった。
残された私達にできるのは何もなくなった虚無の空間を呆然と見つめることだけだった。
第3章はこれで完結です!!
この章はミステリ要素に挑戦して見ましたが、文章力構成力不足で難しかったですね。。
今後の展開の為にも投稿済の話の編集をしばらくやった後、第4章を執筆できればと思います!
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