ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
フーディンのサイコショックで体制を崩したハバタクカミ。
ここでアオイが動く。
ボール型の黒いアイテムを取り出しだし、額の高さまで掲げ、叫ぶ。
「ハバタクカミ! テラスタル!」
間違いない。
あれはテラスタルオーブ。
テラスタルオーブが輝きを放つ!
アオイはテラスタルオーブをハバタクカミの頭上に投げる。
その光に呼応するようにして、ハバタクカミを光る結晶が包み込んだ。
スタジアムの観客、誰もが初めて見る光景に言葉をなくし、その様子をただ見守ることしかできない。
巨大な結晶が割れ、そこから禍々しくも美しい紫色の輝きを纏ったハバタクカミが現れる。
頭上にはオバケのような結晶のオブジェを添えたテラスタル。
ゴーストテラスタルだ。
「テラスタルの力を見せてやれ!
『シャドーボール』!」
テラスタルの力で強化されたシャドーボールが放たれる。
先程までのものとは規模も威力も桁違いだ。
「フーディンかわせ!」
その威力を察知したグリーンがすぐさまフーディンに指示をするが、間に合わない。
シャドーボールが直撃してしまう。
膨大なゴーストエネルギーの爆発による爆煙が晴れると、そこには倒れているフーディンがいた。
「フーディン! 戦闘不能!」
審判の叫び声が轟き、観客が大きくどよめく。
俺も驚いてはいたが、それは別の意味でだ。
なぜ テラスタルがカントーで使える??
未来と古代のパラドックスを手持ちで持ち、カントーでテラスタルを使用する。
これがこの世界の常識なのか?
完全アウェーの状況で最強のジムリーダーと言われているグリーンから1勝をもぎ取った。
アオイはとても11歳とは思えない可愛くない邪悪な笑みを浮かべ、最強のジムリーダーであるグリーンに対してあくびのパフォーマンスを見せる。
スタジアムの大型スクリーンにその様子が映され、観客たちは大ブーイング。
本当にあの小娘いい性格してるな。
対してグリーンはフーディンをボールに戻すと優しく全力を尽くしたポケモンに声をかける。
そしてアオイに何を語りかけたが、スタジアムは人々の怒号が響いており、聞こえない。
だが、アオイには何か癪に障る言葉だったのだろう。
一気に顔を曇らせ、眉間にしわを寄せている。
グリーンは一敗しているにも関わらず、変わらぬ余裕の笑みを浮かべ、次のポケモンを繰り出した。
現れたのはカメックス!
スタジアムに爆音が鳴り響いたかのごとく、歓声が轟く。
隣に座っているジムの先輩トレーナーもなにやら興奮し絶叫している。
気持ちは分かる。
カメックスはグリーンが最初に選んだポケモンであり、パーティの切り札だ。
「いやぁ、あのカメックスはめちゃくちゃ強ぇなぁ」
グリーンのカメックスを見たヒメグマが呟く。
「分かるのか?」
「なんとなくな。少なくとも俺があの場にいたら尻尾巻いてトンズラするレベル」
スタジアムではカメックスとハバタクカミが距離を取り、向かい合う。
「そいつがアンタの切り札か。
楽しみだなぁ!?
そのご自慢のカメックスを今ここでボコした後のスタジアムの雰囲気を想像すると──笑えてくる!!」
会場が静まり、自分の声が通ると分かった途端にこの煽りの発言。
中々にイカれているな。
「その鈍そうな亀ポケモンをぶっ潰してやるよっ!!
やれぇ!! ハバタクカミ!」
動かないカメックスにハバタクカミが超スピードで襲いかかり技を繰り出す!
ゴーストテラスで強化された強力なシャドーボール!
カメックスは殻にこもり、駒のように、それこそガメラのように高速回転することで、それを弾き飛ばし、そのまま体当たりをお見舞いする。
ハバタクカミは弾き飛ばされ、力なく地面に伏した。
「ハバタクカミ! 戦闘不能!」
数秒の出来事だった。
たった一回の攻防でカメックスはハバタクカミに勝利を収めた。
「クッソがぁああ! まだまだ次だ!!」
続いてアオイが選出したのはテツノカイナ。
これも俺の予想通りだ。
タイプ相性で言うとテツノカイナが有利。
再び亀の如く動かないカメックス。
堂々とした佇まいでテツノカイナを見据えている。
「テツノカイナ! ブーストエナジー発動!
最大出力のサンダーダイブであの亀野郎を一撃で仕留めろ!!」
可愛い顔が台無しである。
醜く顔を歪め、アオイが叫ぶ。
テツノカイナは特性クォークチャージで未来の機関を躍動させ、能力値を上昇させる。
更に全身から雷エネルギーを放出し、パワーを溜める。
それでもカメックスは動かない。
スタジアムの半分を覆うほどの激しい雷エネルギーが充ちる。
電気を纏ったテツノカイナが轟音を放ち、
そして、体重を感じさせない動きで空高く上昇する。
大きく跳躍し、その高さ×雷エネルギーのパワーを最大にし、まるで雷の滝のような大技を繰り出す。
「ぶっ潰せぇえ!!
『サンダーダイブ』!!」
「カメックス。『しおふき』だ」
グリーンは静かに技を指示。
指示に応えノーモーションでカメックスは背中の2対のキャノン砲から激流の水砲を放出する。
それは一瞬にして自身に向い急降下するテツノカイナを呑み込んだ。
テツノカイナの巨体がスタジアムの上空高くまで吹き飛ばされ──落下する。
「テツノカイナ戦闘不能!!」
アオイが血がにじむほど下唇を噛む様子がスクリーンに映し出された。
「クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが!! このクソガキ! ゼッテェーに叩き潰す!!」
アオイは激しく喚き散らすと最後の一匹を繰り出した。
現れたのは巨大な古代の暴竜。
トドロクツキ。
カントーの人間もボーマンダは知っている。
だが、目の前にいるこの悪魔のような邪悪龍は知らない。
しかもこのトドロクツキはおそらく4メートル近くはあろうかという巨大な個体で、禍々しいオーラを放っていた。
ポケモンというか、もはや怪獣である。
あれだけ沸いていたスタジアムを静寂が包み込む。
パチパチパチパチ。
静寂を切り裂いたのはグリーンがした拍手の音。
「中々立派なポケモンだ。
よく育てられている。
正直ここまで楽しめるとは思っていなかったぜ。
お礼に良いものを見せてやろうか」
「なに寝言言ってんだ? これからが本ば──」
「メガシンカだ。カメックス」
グリーンの声を呼応するように首にぶら下げていたペンダントが輝き、振動する。
あれはキーストーンか?
カメックスも激しい光に包まれ、
二重螺旋のメガシンカマークと共に登場したのはメガカメックス。
「一撃で沈めろ──メガカメックス。
『ハイドロカノン』」
一瞬だった。
メガカメックスは両腕、そして背中の主砲から3種の水撃を放ち、そしてその混じり合った一撃はレーザーのようにスタジアムを一閃した。
トドロクツキはスタジアムから吹き飛ばされ、場外の壁に激しく打ち付けられ、力なく崩れ落ちた。
「トドロクツキ!戦闘不能!!
よって、勝者ジムリーダーグリーン!!」