ポケモン フィクション 〜虫とり少年と反逆神〜 作:くまっくす
はじまりの街、マサラタウン。
ポケットモンスターのすべてがここから始まった。
こう述べても決して過言ではないだろう。
俺が初めてポケモンに触れたのは初代の青バージョン。
つまり、俺のポケモンもこの街から始まった。
そんなことを電車の窓から見える田園風景を眺めなら考えていた。
「おい、バナナ。マサラタウンに言って何をするつもりなんだっけ?」
4名がけのボックス席の対面に座っているヒメグマが喋りかけてくる。
周囲からの好奇の目が面倒なので正直あんまり話しかけてほしくはないが、そんな人間の目など気にも留めないな、こいつは。
「目的は3つ。一つ目はポケモン図鑑をもらうこと。もう1つはポケモンの生態について専門家の意見を聞きたい。最後の1つが、実は1番重要だ」
「勿体ぶるねぇ。最後の1つは何だよ」
「あるポケモンを博士にもらうためだ」
降り立ったマサラタウン。
そこまで大きな街ではなく、ハッキリ言えば田舎町ではあるが、この街を世界的有名な街として認知させているのがオーキド研究所とレッドの存在だろう。
レッドとはご存知の通り、マサラタウン出身のこの世界トップクラスの実力者である初代ポケモンの主人公だ。
あの桁違いの実力を見せたグリーンの永遠のライバルでもある。
せっかくマサラタウンに来たのだ。
レッドの実家も見ておくか。
「おおー・・・、マジか」
レッドの実家は大豪邸だった。
しかも、セキュリティバッチリ。
「まあ、チャンピオンだから金はもってるだろうな。 親御さんのためにリフォームしてあげたんじゃね? レッドっていいやつだな」
ヒメグマは言う通りだとは思うが、なんかリアル過ぎて複雑な気持ち。
***
気持ちを切り替えて、オーキド研究所に向かった。
オーキド博士とは事前にアポイントメントを取っていた為、スムーズに研究所に入り、会うことができた。
「おー、君がグリーンが話していた少年。バナナじゃな。それで?
話とはなんじゃ」
「初対面で不躾なお願いとなり申し訳ございません。2つお願いがあって参りました」
俺の言葉にキョトンとした博士だったが、しばらくすると大笑いする。
「カッハッハッ! 確かにグリーンが言うように変わった少年じゃな。とても10歳の少年とは思えん」
「まーな。実際中身おっさんだから仕方ねーよ」
「それに言葉を話すヒメグマか。本当に興味深い組み合わせじゃな」
しれっとヒメグマがとんでもないことを暴露するので、慌てて本題に移る。
「博士! 俺にポケモン図鑑を譲って欲しいのです。ポケモンをたくさん捕まえる、もっと強くするにはこの図鑑情報が必須なのです」
「ふむ」
博士は思案するかのように顎を指で撫でながら、俺を見る。
「分かった。ポケモン図鑑は1つ君に渡そう。そもそも図鑑は前途ある若者には積極的に渡すようにしている。グリーンからも推薦される話すヒメグマ連れの興味深い君なら尚更じゃ」
「ありがとうございます!!」
博士から手帳サイズの赤いハイテクの電子図鑑を貰い受けた俺は緊張しながら、さらに次のお願いをする。
そう、こっちの依頼のほうが、ある意味俺にとっては重要なのだ。
「博士、実はもう1つお願いがあるのです。
俺に・・・ゼニガメを譲って欲しいのです」
「ぜにがめぇ?! バナナのほしいポケモンってゼメガメだったのか!」
ヒメグマは驚くが、俺にとってゼニガメはそのへんの伝説のポケモンの数倍は価値がある。
「ゼニガメか。その目な本気のようじゃな」
当たり前だ。
俺がこの世界で本気でポケモンチャンピオンになりたいと思った理由。
それはグリーンの戦いを見て刺激を受けたからというのは事実。
だがその理由を補足するなら、俺はこの世界なら自分の好きなポケモンで、ポケモンバトルの頂点を狙えるんじゃないかと思ったからだ。
ここで初めて言うが、俺の一番好きなポケモンはカメックスだ。
初めて遊んだポケモンのジャケットポケモンであり、最初に選んだポケモンは当然ゼニガメ。
小学生から大人になるまでずっとカメックスは俺のパートナーだった。
だが、悲しきかな。
ポケモンの対戦環境においてカメックスが日の目を浴びたことはゼロと言っても良い。
俺はカメックス使いとして、カメックスを活躍させられない現実にいつもヤキモキしていた。
カメックスは悪くない。
悪いのは活躍させられない俺自身である。
カメックスがバトルで活躍する勇姿を見たいだけなのに、現実は非情なのだ。
だが、この世界で! グリーンのカメックスは強力なバラドックスポケモンたちを圧倒的な力でねじ伏せる光景を見せてくれた。
感動したし、心底この世界にやってきてよかったと思えた。
そして同時にカメックスとともにチャンピオンになりたい!!と強く思ったのだ。
だから、ここでゼニガメを手に入れられないと俺の冒険は始まらないと言っても過言ではない。
「バナナよ。頭を上げなさい」
ゆっくりと頭を上げた眼前にはモンスターボールがあった。
「ゼニガメが入っている。大切に育てなさい」
こうして、俺はこの世界における2匹目のポケモンをゲットした。
「博士! ありがとうございます! 必ずこのゼニガメと強くなってみせます!!」
「あのな、オレを忘れるなよな。流石に嫉妬するぜ」
不貞腐れるヒメグマ。
何を言う!
こんなに順調に何もかもうまく行っているのはヒメグマのおかげだ。
俺はヒメグマのふわふわボディを抱きしめ、頬擦りしてやる。
そんなふうにいつものようにヒメグマとの戯れをオーキド博士は興味深そうに観察している。
「ふーむ。本当に不思議なヒメグマじゃのお」
「正直このヒメグマのことは俺も全然わかっていません。それどころかポケモンのことも俺はわかっているようでまるで分かっていません」
「キミが分からないのも無理はない。ポケモンは不思議な生き物じゃ。ワシや世界中の研究者ですらポケモンのことを完全に理解しているものはおらん」
「博士、変な質問をします。
ポケモンはどうして人と一緒にいるのでしょう」
この世界ではあまりにも日常の光景としてポケモンがそこら中にいて、そして人と暮らしている。
だが、ポケモンのいない異世界からやってきた俺にとってそれは不可解なことに思えた。