(case17:供養)
ちーん
線香を立て、手を合わせて仏壇を拝む炭治郎と禰豆子。
「それじゃあ、俺達はいきます」
「むー」
朝日を背に2人並び去っていく竈門兄妹を見送りながら、珠世は思う。
何故、私の家に上弦の壱の仏壇があるんだろう?
なんなら庭の片隅には黒死牟の墓まであった。
全て炭治郎の仕業である。仕事早くない?
「あの…珠世様」
「どうしました、愈史郎?」
躊躇いがちに話しかけてくる愈史郎に、珠世は疲れ切って煤けた目を向ける。
「その…禰豆子なんですけど……、あいつ朝日を浴びてませんか?」
「あれぇぇええーッ!!?」
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珠世「……」
愈史郎「……」
ちーん(一応拝む)
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(case18:道を踏み締めて歩け)
「たのむよぉー! 俺と結婚してくれよー!」
「や、やめて下さい! 放して!」
地面に寝そべり、女性の足に縋りついて渾身のプロポーズを決める男。
その様、悪い意味で男の中の男。
「俺はもうすぐ死ぬんだよ! だからその前に結婚してくれよぉ! 俺のこと好きなんだろ!?」
「違いますっ 顔色が悪かったから心配しただけです!」
「ほら、やっぱり好きじゃない!!」
「気持ち悪い!!」
ここが地獄か。
「カァーッ 南南東ー! 南南東ヘ向カエー! 南南東ニ鬼ノ住ム家ガアル! 南南東へ向カエー! カァーッ!」
スタスタ スタスタ
「わかったッ 南南東だな! 南南東へ向かおう! 南南東の家から鬼を追い出せばいいんだな!? 頑張ろう! 俺は出来る奴だ! 頑張れ炭治郎! 頑張れ!!」
スタスタ スタスタ
「カァー! ウルサイ! ワカッタカラ少シ静カニシロ! カァーッ!!」
「うん、ごめん! でも君も相当うるさいぞ!!」
スタスタ スタスタ
どっちもうるさい。
スタスタ
ぶぎゅ(足) ぐしゃ(尻)
べしっ(背中) ぐしゃっ(頭)「んぎゃ!」
スタスタ
「そうだ、鬼を家から追い出すなら豆を手に入れなきゃいけないな」
「節分ジャナイゾ、カァーッ …デハナク! イマ人ヲ踏ンダゾ! アレハ同ジ鬼殺隊ノ我妻善逸ダ! カァー! 謝レ炭治郎!」
「そうだ、まだ節分じゃない! 2月3日じゃないけどいいのかな…。豆をぶつけたりしたら、鬼に失礼じゃないだろうか…」
「鴉ノ話ヲ聞ケー、カァ! 謝レ、炭治郎! 人トシテ謝レ! カァーッ!!」
こっちも地獄だった。
一方、顔面を地面にめり込ませて善逸は戦慄に震えていた。
(う、嘘だろ、あいつ…)
善逸は非常に耳がいい。体の中の音を聞く事で人の感情を読み取る事も出来る。
だから炭治郎に悪気も悪意も無いとわかってしまった。
そう、炭治郎は何の悪気もなく、善逸の上を歩いて行ったのだ。
人に蹴られた事や踏まれた事ならある。でも、歩かれたのは産まれて初めてだった。
せめて人として違和感くらい覚えて欲しかった。
(ヤベェ奴だ、ヤベェ奴だ。関わっちゃ駄目な奴だ)
正解。
つい先日も、炭治郎と関わったばかりに、上弦の壱が自ら望んで切腹する羽目になったのだ。
体の上を歩かれるくらいですめば、全然ラッキー。
善逸は全身全霊の死んだフリで、この場をやり過ごすことにした。
結婚するはずの女性に逃げられた事に気付き、奇声を上げて炭治郎に掴み掛かるのは、この5秒後のことである。
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炭治郎「ごめん! 人間に見えなかったんだ!」
善逸「酷すぎないッ!?」
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(case19:パワハラ上司)
南南東の家に潜む鬼、元・十二鬼月 下弦の陸の響凱は、拐ってきた稀血の少年、清を追い回すことも投げ出して平伏した。
目の前には、数字を剥奪されて以来会っていない鬼舞辻無惨が、琵琶の音と共に、突然現れていた。
「黒死牟が死んだ。上弦の壱が、だ」
「…………ッ!?」
「黒死牟を倒した鬼狩りが間もなくここに来る」
「…………ッ!!?」
「なんとしても仕留めろ。そうすれば、空いた十二鬼月の席に貴様を戻してやる」
「…………ッ!!!?」
無理やん。響凱は口から出そうになる言葉を必死に飲み込んだ。
「他にも2匹鬼がいるな。そいつ等も使え」
「「……ッ!?」」
熱い流れ弾が偶々居合わせただけの、何の罪もある鬼達を襲う。
「失敗は許さん」
上弦の壱の仇討ちを元・下弦の陸にやらせるという、とんでもない無茶振り。
だが、鬼舞辻無惨は自分の為に響凱がそれを達成するのは当然の事だと思っている。
普通に考えれば分かる矛盾に、鬼舞辻無惨は気付かない。
彼の体内にあるという5つの脳は、実は大豆くらいの大きさなのかもしれない。
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響凱「 」(白目)
舌の鬼「 」(白目)
巨漢の鬼「 」(白目)