(case52:まきまき)
半年に一度の柱合会議。
そこに現れたミイラ男さながらの姿の冨岡義勇と、杖をつき右脚を引きずった胡蝶しのぶの姿に、集合した他の柱達は各々に反応した。
「おいおい大丈夫かよ、冨岡に胡蝶。派手にボロボロじゃねえか」
音柱 宇髄天元。
「上弦の鬼と戦ったそうだな! よく無事に戻った、2人とも!」
炎柱 煉獄杏寿郎。
(大丈夫かしら、しのぶちゃん。笑顔だけど、すっごく落ち込んでるみたい…)
恋柱 甘露寺蜜璃。
「生還出来たのはまさに、御仏の御加護の賜物だろう。南無阿弥陀仏…」
岩柱 悲鳴嶼行冥。
「柱が2人もいながら手も足も出なかったそうじゃないか。余りの不甲斐なさに目眩がする。どう申し開きする気だ」
蛇柱 伊黒小芭内。
「(・ω・)」
お馬鹿 竈門炭治郎。
(いま変なのがいなかった…? えっと、何だっけ)
霞柱 時透無一郎。
「皆さん、ご心配をお掛けしました」
「…………」
「謝罪など何の価値もない。どう責任を取る。どう償う。具体的に述べろ」
目を伏せるしのぶと、顔も向けない冨岡を睨め付ける伊黒。
「(・ω・)」
「よせよせ、せめても始まらねえ。それより、久方ぶりの上弦の鬼の情報だ。やっぱり派手にヤバかったのか?」
「……そうですね、聞きしに勝るものでした。相性が悪かったのもあったかもしれませんが、私も冨岡さんも、接敵の瞬間の一撃で戦闘不能となってしまいました」
「2人とも一撃って、マジかよ…」
柱の面々が息を呑む。
「フン…聞くに耐えない。柱にあるまじき体たらく。おい冨岡、なんとか言ったらどうだ」
「…………」
「…………(・ω・)」
皆の視線が集まるが、冨岡は顔も向けずに、しかしはっきりと言い放った。
「お前達に語る事は、何も無い」
「あ?」
「(・ω・)!!」
キシリ、と空気が軋む。
翻訳すると、『元よりお前達と違い柱に相応しくない俺だが、今回はなす術もなく鬼に敗北してしまった。そんな俺がお前達に対し言い訳の言葉などあるはずも無い』と言っている。
それが冨岡語になった途端、この驚きの短文詠唱である。
がんばれ、無詠唱まであと少しだ。
そんなだから皆に嫌われるんですよ、と内心で溜め息をつくしのぶ。
いつもなら他の柱達と一緒にキレ散らかす側なのだが、今回ばかりは冨岡の言わんとしている事が、半分くらいは分かってしまった。
「私達が上弦の参に惨敗したのは事実。それについて言い訳するつもりはありません。そして……」
冨岡が凍りつかせた空気がやや弛緩し、柱達はしのぶに注目する。
しのぶは唇を噛み締め、覚悟を決めたように1つ息をついて言った。
「(・ω・)」
「償い、とは申しませんが、わたし胡蝶しのぶは本日の柱合会議を以って、柱の座を返上させて頂きます」
「「「「「「!?」」」」」」
「え」
目をむく6人の柱。
それ以上にびっくりする冨岡義勇。
それは俺がいつか言おうと温めてきた台詞だぞ。
今しかない、と思ってたのに何で横取りするんだ。
「ま、待て、俺も…」
「なに地味なこと言ってんだ胡蝶っ。辞めるこたぁねえだろ!」
「俺…っ」
「その通りだ! 今回は残念だったが、傷を癒やして再起すればいい!!」
「お……っ」
「怖気付いたか胡蝶。巫山戯るな、巫山戯るな、俺は認めない。お前の様な役立たずでも新人どもよりは使える。柱として死ぬまで戦え」
「(・ω・)?」
「…………(´;ω;`)」
「皆待て。胡蝶にも考えがあるのだろう。まずは彼女の話を聞こうじゃないか」
冨岡の話も聞いてあげて、悲鳴嶼さん。
「ありがとうございます、悲鳴嶼さん。無論、死ぬのが怖くなったのではありません。私の考えは、この後お館様がいらっしゃってからお話ししようと思います」
「あのぉ〜…。しのぶちゃんの事はともかく、さっきから気になってたんですけど…」
しのぶへの追求が収まったところで、甘露寺が遠慮気味に手を挙げる。
「そこで鎖をグルグル巻かれてる男の子が、報告にあった、鬼を連れた隊律違反の子でいいんですか?」
「(・ω・)???」
「うおッ!? 何で鎖の束があんのかと思ってたが、よく見たら地味に人の顔が埋まってんじゃねえかっ!」
宇髄の言う通り。
それは何処からどう見ても、重量100kg以上はありそうな、丸々とした鎖の束だった。
柱達が居並ぶ中、お館様を迎える玉砂利の庭に、でん、と転がっていた。
しかしてその正体は、つま先から頭のてっぺんまで鎖で巻き巻きに巻き尽くされた竈門炭治郎だったのである。
縄で腕を縛るなんて可愛いもんじゃない。
仮に十二鬼月を生け捕りにしたって、もうちょっと優しく扱ってもらえそうである。
錚々たる面々。風柱を除く、8人の柱に囲まれる中、漸く気付いてもらえた炭治郎は、キッと見上げて叫んだ。
「こんにちはッッ!!」
はい、こんにちは。
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行冥「胡蝶が縛ったのか?」
しのぶ「念の為です」
蜜璃「隊律違反だからって、何もここまで…」
しのぶ「念の為です」
杏寿郎「うむ! 彼とは初対面だが、もうすでに俺は彼が可哀想だ!」
しのぶ「念の為です」
小芭内「何を大袈裟な。暴れるなら斬首するまで」
しのぶ「馬鹿言わないで下さいぶっとばしますよ念の為です」
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(case53:竈門と柱)
「こいつが鬼を連れてたってガキか。これもう派手か地味かわかんねえな」
「なるほど、これからこの少年の裁判をするのだな! 鬼を隠していたのは許せないが、もう少し鎖を解いてやれないか!? 見るに堪えない!」
「なんと色々な意味で可哀想な子供だ。南無阿弥陀仏…」
「………??(・Д・)」
あっ、これ何も分かってないな。
聡明な頭脳を持つしのぶは、お馬鹿な頭脳を持つ炭治郎の事が段々と分かってきてしまった。可哀想。
やれやれ、と溜め息ついて言う。
「ここは鬼殺隊の本部です」
「きさつたい?(・Д・)」
……おっと、そう来たか。
まさか自分が鬼殺隊員である事を忘れてる? しのぶの額が1つ小さくピキッた。
「ああっ、鬼殺隊!!(o(*゚▽゚*)o)」
よかった、思い出してくれた。しのぶの額がもう1つ小さくピキッた。
「貴方は昨夜の戦いの後、よっこらしょ、とその場で横になって、鬼の妹さんと一緒にグースカ眠ってしまったのです。疲労や負傷で気絶したのなら、まだ可愛げがありましたねぇ♪」
「マジか、こいつ…」と宇髄は呟く。
「俺、昨夜は確かにちゃんと布団で寝たはずなんですけど…」
心底不思議そうな顔をする炭治郎。確かとはいったい…。
しのぶの額がさらにもう1つピキッた。
「あはは、記憶を改竄しないで下さいねー? 脳みそ壊れてしまったんですかー?」
「(・ω・)?」
そんな無惨な目に遭ったのは、どこかの鬼の王だけである。
「功労者でもある貴方に心苦しいとは思ったのですが、ここへ連れて来るにあたり、軽く拘束させて頂きました」
軽く? まるで、鎖で出来た人間サイズの海老天なのですが?
「貴方は今から裁判を受けるのですよ。竈門炭治郎くん」
「「「竈門っ?」」」
「「「炭治郎っ?」」」
変な生き物を見るようだった、柱達の目の色が変わる。
「おいおい、その名は確か…っ」
「うむ! 上弦の壱を倒したという、信じ難い癸の隊士の名だ!」
「えぇーっ! こんな可愛い子が、あの凄い情報の隊士なんですか!?」
「信じるに値しない。誤報に決まってる。俺は認めない」
「……でも上弦の壱を倒したのは、お館様が認めた事だし…」
「待て。上弦の参が同胞である鬼に討たれたという、昨夜の奇怪な報告…。確か、その鬼の名も竈門ではなかったか?」
鬼を連れた隊士。まさか…っ。
驚愕と困惑が交錯する中、しのぶは告げる。
「その通りですよ、悲鳴嶼さん。鬼となった少女である彼の妹、竈門禰豆子さん。彼女の放った血鬼術の炎が上弦の参を焼き滅ぼす様を、私と冨岡さんは、この目で見ました」
冨岡も静かに頷く。誰も見ていなかった。
「おい、じゃあ何か? その鬼の強さは上弦に匹敵するってことか?」
宇髄の言葉に、多くの者が嫌悪感を抱く。禰豆子に対してだ。
「竈門くん。鬼の強さは基本的には喰った人間の数に比例します」
注がれる視線が冷たいものになっていく。
「この場にいる皆さんは、こう思っているのですよ。『そんなに強い竈門禰豆子は、とてつもない数の人間を喰っているに違いない』と」
強く頷く煉獄と悲鳴嶼。
「うむ! 断じて許してはおけない! 斬首以外あり得ないッ!!」
「哀れな兄妹だ。生まれてきたこと自体が可哀想だ。早く殺して解き放ってあげよう…」
「でもね」と続けるしのぶ。
「私と冨岡さんは、禰豆子さんが私達を…人間を守る為に、自発的に上弦の鬼に立ち向かう姿を見たのです」
冨岡も静かに頷く。誰も見ていなかった。
「その他にも、竈門禰豆子は人を喰わない良い鬼だという声が鬼殺隊内から、少ないながらも挙がってきています。今回、那田蜘蛛山で禰豆子さんに命を救われた、と主張する隊士達の声です。これは禰豆子さんの助命嘆願の数でもあります」
「む…」と小さく呻く悲鳴嶼。
「竈門くん。貴方は証明しなくてはいけません。禰豆子さんが人を喰わないということを。鬼殺隊として、人を守る為に戦えるということを」
しのぶは傷めた右脚を堪えて膝をつき、炭治郎の瞳を覗き込む。
彼女の脳裏に、亡き姉の理想がよぎったことは想像に難くない。
「出来ますか、竈門くん? 信じても、いいですか?」
鬼舞辻に自分の底はもう知られた。姉の仇を討つことは、もう出来ない。ならばせめて、姉の理想を心から信じながら死にたい。
しのぶの揺れる瞳には、言葉には、そんな儚い懇願が込められているかのようだった。
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「? ? ?(・ω・)? ? ?」
? ? ? ?
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懇願が……。
「ちゃんと聞いてますっ!? 私、信じていいんですか、これ!?」
しのぶ、魂の叫び。
炭治郎に長い話をするから…。
炭治郎に難しい話をするから…。
頭がパーン、てなって ? が飛び散ったのだ。
真面目に話した分だけ、しのぶが可哀想だった。
その時、
「おいおい、何だか面白いことになってるな」
敵意と憤怒に満ちた声と共に、最後の柱が現れた。
風柱 不死川実弥。
禰豆子が入っていた箱を左手で頭上に掲げていた。
そして箱の上には禰豆子が、ちょこんと正座していた。
禰豆子 on 風柱
「むぅ?」
いつの間にか口枷を付け直していて、大変お行儀がよろしい。
「鬼を連れた馬鹿隊員てのはソイツかい? いったいぜんたい、どういうつもりだ」
おまえもな。他の柱達は、一斉にそう思った。
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ちなみに、庭園はお日様燦々である。
水蟲岩音炎恋蛇霞「っっっ!!!??」
風「?」
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