(case54:大乱闘 竈門ブラザーズ・開幕編)
禰豆子 on 風柱
禰豆子が正座する箱を頭上に掲げて、不死川実弥が颯爽と登場した。
「!」
注目されていることに小首を傾げていた禰豆子だが、何かに気づいたように、ハッとすると、箱の上で立ち上がり、両腕を左右にピンと伸ばした直立姿勢でポーズを取る。
トーテムポールだ。
下から順に、狂笑する不死川、箱、禰豆子。
お日様の下で輝く、美しきトーテムポーズだった。
「いや、鬼っ! 日光っ! そりゃいくら何でも派手すぎんだろ!!」
この場の柱を代表して、宇髄が目玉飛び出さんばかりに叫んだ。あまりにも真っ当。
「鬼が何だって、胡蝶?」
だが無視!
不死川はしのぶに憤怒で血走った目を向ける。
しのぶは私に絡まないで、と目を逸らした。
「鬼殺隊として人を守る為に戦える? そんなことはなァ…」
素早く抜刀して切っ先を箱に向ける不死川。続く凶行に気付き炭治郎は「やめろッ」と叫ぶ。だが遅かった。
「あり得ねえんだよッ!! 馬鹿がッッ!!」
ドスッ、と貫通する刃。箱が串刺しにされた。
「ハハハハハッッ!」
「禰豆子ぉーっ!!」
箱だってば。
「不死川…。おい、不死川……。その、不死川…」
若干震える手で不死川を指差す伊黒。指摘することが多過ぎて、ネチっこい台詞すら出て来なかった。
「アァ? なんだァ?」
不死川が怪訝に思い頭上を見上げると、不思議そうに土台を見下ろしてくる禰豆子と目が合ってしまった。
ヨッ、と手を振る禰豆子。
「何ィィいいいいッッッ!!?」
何ィ、じゃないよ。他の柱達は一斉に思った。
「よくも禰豆子をっ!」
地面に置かれた鎖束(炭治郎)が、ゴゴンゴゴンと小刻みに振動する。
「俺の妹を傷付ける奴は、柱だろうが何だろうが許さないッッ!!」
だから箱だってば!
ゴゴンゴゴン、ゴゴンゴゴンっ。ゴゴゴゴゴンっ!
振動は炭治郎がブレて見えるほど、早く細かくなり、やがて
ゴドゴぉーンッッッ!!
地面が弾け、鎖巻き炭治郎がミサイルの如く発射された!
どうやったの、それ!?
「ヒノカミ神楽! 陽華突!!」
嘘をつけぇっ!
「野郎ッ! くっ、刀が!?」
悪夢の竈門ミサイルを斬り落とそうとする不死川だったが、運悪く刀が箱に食い込んで抜けない。
「むぅー」
運じゃなかった! 禰豆子が刀の切っ先を指でつまんで邪魔してた!
意地悪するのやめたげて?
あ、駄目だ。風柱死んだ。しのぶと冨岡が、早々に諦めて黙祷を捧げようとした、その時。
ズザッ、と鬼殺隊最強の巨躯、悲鳴嶼行冥がミサイルを迎え撃たんと、不死川を庇って立ちはだかった。
なんという頼もしさか。
悲鳴嶼は巌の如き右手刀を振り上げ、
「南無阿弥だぶっっだ!!??」
「「「「「「悲鳴嶼さぁーん!!?」」」」」」
ーーお館様の、御成ですーー
当主・産屋敷耀哉を支えながら現れた2人の子供、ひなきとにちかが見たものは。
トラックにはねられたみたいに、錐揉みして宙を舞う岩柱の姿だった。
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炭治郎「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんかやめてしまえ!!」
しのぶ「そう言う君は、箱と妹を区別しましょう?」
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(case55:大乱闘 竈門ブラザーズ・黎明編)
お館様の登場を受けて、集まった面々の動きは素早かった。
縁側に立つ耀哉の前に列を成して並び膝をつく8人の柱。
不死川の隣には、炭治郎の顔を耀哉に向けて、鎖巻き巻きをバズーカ砲のように担ぐ禰豆子。
だいぶ離れた所で遺体発見現場になってる悲鳴嶼氏。
素早いだけでは取り繕い切れぬ、酷い絵面だった。
「おはよう、みんな。今日はとてもいい天気だね。空は青いのかな? 顔ぶれが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられた事、嬉しく思うよ」
顔ぶれが1人変わりそうになってます! ひなきちゃんとにちかちゃんは、ガクガク震えながら内心で叫んだ。
「恐れながら」
不死川が顔を上げる。
本来なら耀哉にまずは挨拶から入るのだが、ちょっと今はそれどころではないのだ。
「柱合会議の前に、竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士と、そこにいる鬼の娘についてご説明頂きたく存じますが、宜しいでしょうか?」
詰問にも近しい不死川の問いを受けても尚、耀哉は静かに笑みを浮かべる。
「そうだね。驚かせてしまってすまなかった」
驚いたどころじゃないのですがっ!?
両隣の娘達も含め、柱達(岩柱以外)の視線が耀哉に突き刺さる。お館様は動じない。
「炭治郎と禰豆子の事は、私が容認していた」
これをっ!?
いまだに竈門バズーカを耀哉に向けている禰豆子を、みんなが一斉に見る。お館様は動じない。
「そして、みんなにも認めて欲しいと思ってーー。待ってくれ、実弥。今、何と? 禰豆子がそこにいるのかい?」
「「はい」」
耀哉の問いには、ひなきとにちかが答えた。
気を強く持って、と父の手を握りながら。
「鬼の女の子は、柱の皆様の隣に並んでいます」
「鬼の女の子は、思いきり陽の光を浴びています」
耀哉は柔和に笑みを浮かべた。
「…………そうか(吐血っ)」
柔らかく弧を描いた口の端から、ゴブフゥッと血を吐く耀哉。
「「お館様ぁーッ!!」」
「だ、大丈夫だよ。少し心臓が取り乱してしまったみたいだ」
竈門兄妹は心臓に悪い。当たり前の事である。
「…どうやら禰豆子には鬼舞辻にとっても我々にとっても、予想外の何かが起きているみたいだね」
「あの、すいません。さっきから禰豆子禰豆子と、俺の妹を呼び捨てにするのをやめてもらえませんか? 初対面なのに失礼です」
おまえぇー! お馬鹿野郎ーっ!
確かに正論だけども、空気と立場を把握してっ!?
当然、不死川の拳骨が炭治郎に振り下ろされた。
「黙ってろ、ガキ!」
「痛いっ!」
耀哉は、ゴホンと咳払いして気を取り直す。
「それに、もう1つ聞いて欲しい事がある。この炭治郎は鬼舞辻と遭遇している」
ざわっ、と場そのものが総毛立った。
「まさか…っ。柱ですら誰も会った事がないのに、こいつが!?」
驚愕のままに柱達(岩柱を除く)が炭治郎を注視する。
「どんな姿だったッ? 能力はッ!? 場所は何処だッ!?」
「…戦ったの?」
「奴は何をしていた!? 根城は突き止めたんだろうな!?」
「( °ω° )」
「何だその顔は!? 馬鹿にしてんのかッ!?」
不死川さん。貴方が黙ってろって言ったからですよ…。
この子、馬鹿なんです。
「炭治郎、みんなに話してあげるんだ。私も君の口から詳しく聞かせて欲しい」
「( °ω° )! わかりました!」
気を利かせた禰豆子は、竈門バズーカの顔を柱達(岩柱ないなった)に向けた。
真剣な目で見てくる彼らを見渡し、炭治郎ははっきりと言った。
「奴には妻子がいました!」
「はあっ!?」
何でそこから入るのっ?
「きれいな奥さんと可愛い娘さんでした!」
「なんでだよッ!?」
「浅草という町で、家族3人仲良く散歩してました!」
「幸せな家族か? ふざけるな、俺は認めない」
「だから禰豆子と2人でボコボコに殴りました!」
「よぉし、派手によくやった!」
「そしたら妻子を捨てて逃げて行きました!」
「最低だな! 穴があったら入るべきだ!!」
「すぐに追いついて首を斬りました! でも死にませんでした!!」
「……こふっ(吐血)」
「「お館様ぁーッ!!」」
「首と体が爆散して、小さな肉片がいろんな方向に走って逃げてしまいました!」
「しぶと過ぎる…。どうやったら殺せるの、ソレ?」
「手に入れた返り血を珠世さんにあげたら、奴を殺す毒が作れるとはしゃいでました!」
「竈門くん! その話、詳しくっ!」
「そこにジョーゲン・ノイチさんが尋ねて来て切腹しました!」
「…………そうか(困惑)」
話を聞いてるだけで瀕死の様相になった耀哉が、娘達に支えられながら言う。
「き、聞いての通りだ。私は初めて掴んだ鬼舞辻の尻尾を離したくない。それに炭治郎と禰豆子は、上弦の鬼と互角以上に戦える凄い子達だ。理解して欲しい」
「理解できません」
不死川は表情も険しく、はっきりと言った。
竈門兄妹を憎しみすら込めて睨みつける。
「人間ならいい。だが鬼は駄目です。俺達鬼殺隊がこれまでどんな思いで鬼と戦い、どれだけの者が犠牲になってきたことか!」
「実弥……」
不死川は立ち上がって日輪刀を抜き放ち、狂笑を浮かべて禰豆子に向き合う。
「俺が証明してやりますよ。鬼の醜さを!」
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行冥「………………」
返事がない。まるでしかばねのようだ。
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