少しだけ頭の悪い炭治郎のお話   作:MN2

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(case56:大乱闘 竈門ブラザーズ・立志編)

 

「俺が証明してやりますよ。鬼の醜さを!」

 

刀を抜く不死川。ひりついた緊張が場を満たす。

禰豆子も流石に棒立ちではいられず身構える為、肩に担いでいた竈門バズーカから手を離す。

 

「痛いっ!?」

 

放り出された炭治郎が、顔面から地面に激突して悲鳴をあげた。

もうちょっと優しく降ろしてあげて?

 

さらに、地面に転がった鎖巻き巻き炭治郎の上に、すかさず伊黒が飛び蹴りくれるようにして、ドシンとのし掛かった。

 

「痛いっっ!?」

 

眉を顰めるしのぶ。

 

「そこは危ないですよ、伊黒さん。もう少し離れて下さい」

「発射しないよう、押さえてるだけだ。悲鳴嶼さんの二の舞は御免だ」

 

蛇柱はこれから十二鬼月とでも戦わんばかりに、超真剣だった。

さっき陽華突(竈門ミサイル)に轢かれた悲鳴嶼さんは、まだピクリともしない。ちゃんと生きてる?

 

「おい、鬼ぃ。メシの時間だぞ。喰らいつけ」

 

不死川は狂犬染みた笑みを浮かべ、禰豆子に見せつけるようにして刀で自らの左腕を浅く斬り裂いた。

しとどに鮮血が零れ落ち、鬼ならば正気を保てぬ芳醇な香りがたちまち満ちた。しかし。

 

「むー?」

 

何してんの、コイツ? と小首を傾げる禰豆子。

この時点で冨岡としのぶは、とっても嫌な予感がしていた。特に冨岡。

 

「よせ、不死川。逃げろ」

 

誰も聞いてくれない。冨岡はちょっとだけ泣きたくなった。

 

「どうした、鬼。欲しいだろ? 来いよ。どんな鬼も夢中になってむしゃぶりついた、極上の稀血だ……ぜッッ!」

 

不死川が血の滴る腕を振るうと、飛散した血が禰豆子の顔面から着物までを真っ赤に汚した。

 

「禰豆子ッ!」

「むぅッ?」

 

額から滑り落ちた血が、口枷の縁を伝って禰豆子の口に入ってしまった。

 

「っ!? っっ!? むぅぅううーっっ!!」

 

眉間に皺を寄せて、堪らず口枷を外す禰豆子。

それを見て不死川は哄笑する。

 

「ハハハハハ! 無理することはねぇ。おまえの本性を出せばいい! 俺がここで叩き斬ってやるよッ!!」

「やめろぉぉおおーっっ!!」

 

炭治郎が叫ぶが、不死川は更に腕を振って禰豆子に血を浴びせていく。

ついに禰豆子は耐えられなくなり、

 

「ぺっ、ぺっ! ぺーっっ!」

 

すんごく嫌そうな顔で、お庭に「ぺっ」し始めてしまった。まあ、お行儀悪い。

 

「は?」

 

よほど信じられなかったか、狂笑のままに不死川は硬直した。

「あー、やっぱり」といった顔をする冨岡としのぶを除いた、他の柱達もだ。

鬼が稀血を我慢どころか嫌がるなど、有り得ざる事だ。

だが禰豆子は口に入った血が気持ち悪過ぎたのか、まだ「ぺっぺ」している。

 

やがて口枷を付け直した禰豆子は、ギン!! と物凄い目付きで不死川を睨む。

不死川は自分でも気付かぬ内に、ビクッと肩を跳ねさせた。

女の子の顔を汚した罪は重いのだ。

 

禰豆子はズカズカと足音も荒々しく近づくと、不死川を素通りして背後に回り、白地に『殺』一文字の羽織を乱暴にひっ掴んで、ゴシゴシと顔を拭き始めた。

 

「は? ……は?」

 

不死川は受け入れ難いのか、まだ硬直したまま現実に戻って来れずにいる。それがよくなかった。

 

顔は綺麗に拭けたが、着物はそうもいかない。

血で汚されたお気に入りの一張羅を悲しげに見ると、禰豆子は怨敵の背を睨みつけた。

 

お母さんがくれた着物をよくも。

 

「ぼーっとするなっ! 逃げろ、不死川!!」

 

冨岡が珍しく大声で叫ぶがもう遅い。

 

禰豆子はクワッと目を見開いて

 

「むーっ!!」

 

鬼の膂力で振り上げられる蹴り! 狙いは緩く開かれた股座!

その衝撃は肛門を突き抜け尾てい骨を揺るがし、不死川の不死川を激しく叩いた。

ドゴン、と重低音すら響かせる金的であった。

 

「フゥゥううんっッッ!!?」

 

風柱は体を丸め、ドウッと倒れる。

刀? 風の呼吸? そんなの手放したよ! 今手が離せないんだよ!!

 

冨岡は我が身に起きた事かのように、悲しい表情で腰が引けた。

 

「うおおおおおおッッッ!!!」

「ちょっ…!?」

 

今度は何だ!? 炭治郎だ!!

炭治郎を縛る鎖が、ギシギシ、ギシギシと悲鳴をあげると、内側からの圧力に耐えかねて、粉々に砕け散った!

マジか、こいつ。

 

「ぎゃあああああーっっ!?」

「きゃあああっ! 伊黒さぁーん!?」

 

砕けて散弾と化した鎖の欠片が、超至近距離にいた伊黒小芭内を、ボロ雑巾のようにメタクソに打ちすえて吹っ飛ばす。

 

だから危ないって言ったのに。しのぶは悼ましげに目を伏せた。

 

いま最も立ち上がってはいけない男、竈門炭治郎がついに自由を得て吼える。

 

「今だ、禰豆子!」

「むぅーっ!!」

 

逃げる? いいや、立ち向かう!

股間を押さえて転げ回る不死川へとダッシュする竈門兄妹。

そして繰り出されるスタンプスタンプ、蹴たぐり回す!

 

「ぐああああーーーっ!!?」

 

2人の蹴りは外れる事なく全弾命中。

ヘイ、パス! むー!

見る間にボッコボコになっていく不死川実弥。

鬼かな? (妹は)鬼だった。

 

 

「も、もう…許してくれ……」

 

「せいさつつよだの剣を他人にゆだねるな!!」

 

 

冨岡義勇は静かに涙をこぼす。

明日から不死川と仲良くなれそうな気がしていた。

 

 

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岩柱「   」ちーん

 

蛇柱「   」ちーん

 

風柱「   」ちーん

 

ひなき・にちか「あわわわっ」

 

しのぶ「大丈夫。豆撒いてないだけマシな方です」

 

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