少しだけ頭の悪い炭治郎のお話   作:MN2

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57と58

 

(case57:大乱闘 竈門ブラザーズ・飛翔編)

 

「いったい、どうしたというのかな?」

 

相変わらず穏やかな笑みを浮かべている耀哉。

しかし、当主・耀哉の前とは思えぬ程に、わーわー、ぎゃーぎゃー、きゃーきゃーと学級崩壊の様な大騒ぎ。

いま浮いているのは、間違いなく耀哉の方。

笑ってる場合じゃねーですよ、お館様。

 

目の見えぬ耀哉には、不死川が鬼の禰豆子に己の稀血を見せつけただろうところまでしか分からない。

側についていたひなきとにちかは、「あわわはわわ」と抱き合って震えている。

 

結論から言うと、

 

無事な柱が2名。

一応無事な柱が2名。

これから無事でなくなりそうな柱が1名。

無事じゃない柱が4名。

 

鬼殺隊の最高戦力、柱が半壊である。

いま無惨に攻め込まれたら、どうするの、これ?

 

「何があったんだい?」

 

耀哉に優しく問いかけられて、ひなきとにちかは、ハッと自分の役目を思い出す。

まだ小さいのに、よく出来たお子さんだった。

 

 

「鬼の女の子は不死川様に血を浴びせられましたが、我慢……いえ、物凄く嫌がりました」

「鬼の女の子はとても怒って、不死川様のお股間を蹴り上げました」

 

「……っ」

 

「同時に竈門炭治郎様が、全身を縛る鎖を内側から筋力で爆破させました」

「鎖の散弾を間近で浴びた伊黒様が、吹き飛んでボロ雑巾の様な姿になりました」

 

「………っ」

 

「さらに竈門炭治郎様は鬼の女の子と共に、不死川様に襲い掛かりました」

「不死川様は容赦なく蹴り回され、ボコボコにされてしまいました」 

 

「…………っ(吐血)」

 

「時透様が竈門炭治郎様に石礫を放ちましたが、竈門炭治郎様にそのまま投げ返されました」

「直撃を受けた時透様は、庭園の端まで縦回転しながら飛んで行きました。今は植木に突き刺さっております」

 

「…………っっ(吐血)」

 

「宇髄様が気配と姿を消して隙を伺おうとしましたが、何故か竈門炭治郎様にすぐ発見されました」

「宇髄様は竈門炭治郎様と鬼の女の子に追い回されて……あっ、いま捕まりました」

 

「…………っっっ(吐血)」

 

「甘露寺様は変わり果てた伊黒様に縋りついて泣いておられます」

「冨岡様はどさくさに紛れて立ち去ろうとしましたが、額をピキピキさせた胡蝶様に捕まり羽交締めにされています」

 

「はぁ、はぁ……ぎ、行冥はどうしたんだい?」

 

「悲鳴嶼様は最初に宙を舞っておりました」

「既に少し離れた所で物言わぬ姿になっております」

 

「グハァっっ(大吐血)」

 

「「お館様ぁーっ!!」」

 

ただ淡々と事実を告げただけなのに、娘2人が耀哉をフルボッコにしているかの様だった。

 

 

_______________________________________________

 

霞柱「   」ちーん

 

お館様「ぜーぜーっ、はーはー…っ」

 

ひなき・にちか「あわわわっ」

 

_______________________________________________

 

 

(case58:大乱闘 竈門ブラザーズ・完結編)

 

宇髄がピンチだ。

でもお館様も、ある意味ピンチだ。炭治郎を止めてくれそうにない。

とうとう5本目の柱がへし折られるかと思われた、その時だった。

 

 

「待て! そこまでだ、竈門少年!!」

 

 

炎を模した羽織をひるがえし、僕らの炎柱・煉獄杏寿郎が満を持して立ち上がった。

宇髄に袈裟固めしていた炭治郎と、足4の字固めしていた禰豆子が、ぐるん! と首を煉獄の方に向ける。怖い。

大丈夫、煉獄さん? 無茶しないで?

 

冨岡を捕まえながら、しのぶは更なる犠牲者の予感に震えた。

 

「た…助けてくれ、煉獄…」

 

力無く手を伸ばす宇髄に、煉獄は「うむ!」と頷く。

 

「竈門少年! 君の妹が人を喰わない事は証明された! 不死川の稀血にすら反応しない! これ以上ない証拠だ!」

 

うんうん、と同意するしのぶ。

 

「それに比べれば日光を浴びている事など、どうでもいい!」

 

どうでも良くありませんがっ!?

鬼舞辻無惨、1000年の悲願を何だと思ってんの!?

 

「これ以上暴れる必要はないはずだ! 何故そうも荒ぶるんだ!?」

 

一切責める意図はなく、ただ真っ直ぐに問うてくる煉獄に、炭治郎もまた真っ直ぐに見返して答えた。

 

「長男だからです!!」

 

なんて???

 

「なるほどッッ!!」

 

なんて???

 

何か通じ合った炭治郎と煉獄。

しのぶは目ざとく、このままじゃヤベェ流れを感じ取った。

 

「竈門くん竈門くん、どうして長男だと暴れるんですか? 理由を聞かせて下さい」

「はい! それは禰豆子が1人倒したからです!」

 

お股を蹴り上げられた不死川ね。

 

「なら俺は7人は倒さなきゃいけない! でないと長男じゃない!!」

 

妹と撃破スコア競ってんじゃないよっ! 思った以上に酷い理由だった!

しのぶの笑顔が一瞬引きつる。

 

「そうですか、7人ですか。でもそれだと私か冨岡さんのどちらか1人が入ってしまいます。私達、顔見知りですよね?」

「はいっ!」

 

炭治郎の返事は力強い。迷わず進む気だ。

しのぶはニッコリと笑って、冨岡を売る事を決意した。

 

「うむ! 良い心掛けだ!」

 

いいのっ!?

煉獄は腕を組み、力強い笑みで言う。

 

「だが、この場は俺の顔に免じて拳を収めて貰おう! 何故なら、俺も長男だからだ!!」

 

「……っ!?」

 

弾ける炎とほと走る落雷が幻視された。

 

炭治郎は今日一番の驚きに、思わず宇髄を放してしまう。

今の驚くところだったの?

だが、炭治郎は居住まいを正す様にして身を起こす。

煉獄は、わかっているぞ、と満足げに笑う。

 

「俺は君よりも歳上だ。当然、君よりも長く長男をしている!」

「う、うぅ……っ」

「つまり! 俺は君以上に長男だ!!」

 

「故に!」煉獄は、カッと目を見開く!

 

 

「俺は凄い長男だッ!!」

 

 

ドンッッッ!! 炎の如く、鮮烈な宣言だった!

 

「ちょうなんって何でしたっけ……?」

 

お目目グルグル。しのぶの中で長男がゲシュタルト崩壊する。男兄弟いないんだもの。

冨岡は遠くを見る様にして

 

「考えるな。馬鹿になるぞ」

 

お馬鹿は伝染する。怖い。

 

はたして。

炭治郎はもう宇髄になんか構っていられぬ、と投げ出して煉獄の前に正座し、禰豆子もそれに続いた。

 

そして2人は、恭しく両手を地に着いて頭を下げ、

 

「おみそれしました…………ッ!」

「むむぅ……ッ!」

 

「うむッ!!」

 

超綺麗な土下座であった。

 

「なにそれぇ……」

 

しのぶは疲れきってか、ペタンとへたり込む。

あの怪物小僧&娘を、力に依らず言葉で屈服させてしまうとは。煉獄を見る冨岡の目は、尊敬と憧れでキラッキラに輝いていた。

 

 

「竈門炭治郎様と鬼の女の子が、煉獄様に土下座しています」

「おそらくもう大丈夫です。流石は煉獄様」

 

「……げふぅっ(吐血)」 ぱたん

 

倒れた耀哉から、魂がちょっと抜けそうになっていた。

召されないで、お館様っ!

 

 

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ここで言う長男とは、ただ長く生きた長兄にあらず。

その使命と責務を全うするスゲェ奴のこと。

お馬鹿炭治郎の長男レーダーは、煉獄杏寿郎を極めて立派な男と感知したのである。

 

善逸「ただ強けりゃいいってもんじゃないんだよ。反省しろよ、炭治郎」

炭治郎「(´・ω・`)」

 

ただし、お馬鹿レーダーにも少しだけ反応があった。

 

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