少しだけ頭の悪い炭治郎のお話   作:MN2

29 / 32
59

 

(case59:胡蝶しのぶ・覚醒編)

 

上弦の参・累との戦いで日輪刀を失った炭治郎は、新たな刀を手配し届くのを待たねばならない。

その為、先に収容された善逸や伊之助と同じく、胡蝶しのぶの蝶屋敷で世話になる事になり、鬼殺隊本部・産屋敷邸をあとにした。

 

兄妹が去った後、深い深い、全集中の呼吸より深い安堵の息が漏れたのは言うまでもない。

美しかった庭園は、まるで爆撃でも受けた跡の様だった。酷い。

 

 

かくして、柱壊滅の危機を辛くも脱し、場所を邸内に移して本日の柱合会議を無事行う事になった。

 

……いや、無事じゃない。全然無事じゃない。

 

上弦の鬼との戦いで傷を負っていた冨岡としのぶは元より。

甘露寺と煉獄を除く全員が負傷していた。

 

「揃いも揃って、ボロボロだな…」

 

涙を流して言う悲鳴嶼(肋骨3本)に答える者はいなかった。

 

 

「改めて、みんなよく集まってくれたね。柱合会議を始めようか」

 

耀哉の号令に柱達は居住まいを正す。

 

「まずは、しのぶ.。柱を辞めたいという事だけど、理由を聞かせてくれないかな?」

「はい」

 

皆に注視される中、しのぶは一切ブレる事なく応える。彼女の諦観と決意の強さが伺えた。

 

「話は私の姉、元・花柱の胡蝶カナエの死にまで遡ります」

 

姉を殺した上弦の鬼。

上弦の参・累からの情報で、その名が童磨だと知った。

女性ばかりを好んで喰らうという、その嗜好。

姉の仇を討つ事を悲願としてきた。

しかし、自分の剣では首を切る事が出来ない。だから毒殺という手段を極めようとしてきた。

 

「しのぶちゃん…っ」

 

甘露寺は涙を湛えて絶句する。

己の体を致死量の700倍に相当する藤の花の毒で満たしており、敢えて食われる事で刺し違えようとしていた。

その事実を聞かされた柱達は少なからず苦い顔をする。

 

「しかし、姉の仇と相間見える事なく上弦の参に看破され、この情報は鬼舞辻の知るところとなりました。今後は警戒され、十二鬼月が私を喰うことはなく、私は柱として機能しなくなるでしょう。単純に戦力不足です」

 

「いや、そうと決まったもんじゃねぇだろう」

 

宇髄がしのぶの心情を慮りながらも、異を唱える。

 

「胡蝶の毒がまるで効かなくなった訳じゃねぇし、何より鬼殺隊で最速の身のこなしは充分に柱として通用するはずだ」

 

「今だけ、ですよ」

 

しのぶは透徹した揺るがぬ瞳で返す。

 

「花限定ではありませんが、藤は人間にとっても毒なんです。即座に重篤となる物ではありませんが、それも限度があります。正しい処理をせず過度に摂取すれば命に関わることもある。そして私は積極的に毒で体内を満たそうとしました」

 

「そいつぁ…」

 

忍びとして、続く言葉が想像できた宇髄は悼ましく唸る。

 

「正確には分かりませんが、私はそう長くありません。既に幾らかの不調を自覚しています。後は、時間と共に衰えていく一方でしょう。万全の体調なら自分がどのくらい動けていたかなんて、もう自分でも想像がつきません」

 

「おっと、泣き言になってしまいました、反省反省」とおどけて見せるしのぶ。

 

「新たな柱として私の継子、栗花落カナヲを推薦します。あの子は純粋な剣士としてなら、既に私に近く、もう少し鍛えれば必ず花柱として充分な実力を身につけるでしょう」

 

「胡蝶…」

 

悲鳴嶼は涙を流しながら数珠を擦り合わせる。

 

「無論、これを理由に戦いを降りる気はありません。剣を置いても毒の研究は続けますし、今後は蝶屋敷で負傷者の治療や訓練に注力して、最期まで鬼殺隊を支えていくつもりです。ですから、どうか恥を偲んで……」

 

「恥なんて誰が思うかよ」

 

それ以上は言わせない、と不死川の断じる声が、しのぶの言葉を遮った。

 

「それほどの覚悟で、死に方まで定めて戦ってきたんだ。今どれだけ無念か察するに余りある」

 

不死川は振り上げた拳を、激しく畳に打ち付ける。目は怒りで血走り、噛み締めた口の端から血が流れていた。

 

「別におまえの屋敷の連中だって、剣を持たねぇからって戦ってねぇ訳じゃねえ。戦い方が違うだけだろうが。だから安心して剣を置け。新しい戦いに専念しろ。醜い鬼共は俺らが一匹だっておまえらの所へは行かせねえ」

 

「そして」と不死川は狂笑を浮かべ

 

「その童磨ってクソ野郎は、俺達が必ずブッ殺してやる!」

 

柱全員が、深く頷いた。

しのぶの瞳が初めて揺らぐ。

しのぶは手を畳に着き、深く頭を下げ、震える声で言う。

 

「皆様、どうか、よろしくお願い、申し上げ…」

 

 

 

すっっっぱああぁぁぁぁんッッッ!!!

 

 

 

しのぶの背後の襖が、突然クッソ開いた!

 

「むぅーーーっ!」

 

禰豆子!! 参! 上!

 

って、君もう鬼殺隊本部から出て行ったんじゃなかったのっ!?

 

「すいません、ここはどこですか?」

 

お馬鹿も! 参! 上!

 

案内役の隠の人がきっと泣いてるから、早く帰ってあげて?

 

「え? え…っ?」

 

あまりの事に、涙を浮かべながらも、キョトンと困惑しているしのぶ。それがよかった。

 

周囲が動かないのをいいことに、禰豆子はズズイっとしのぶに寄って行き、その肩に手を置き

 

「むぅっ!」

「はわわあぁぁぁーっ!?」

 

ボウッ! 問答無用の炎がしのぶの全身を包む! 完全無比の火達磨だ!

 

「胡蝶ーーっ!?」

「おい、鬼っ! てめぇ、何しやがるッ!!」

 

すかさず抜刀しようとする不死川。しかし、

 

「ま、待って下さい、不死川さん!」

 

それを止めたのは、他でもないしのぶだった。

 

「よかった、火が消えていく…。しのぶちゃん、大丈夫?」

「いや、少し違う。消えるというより、炎が胡蝶の中に吸い込まれていった様に見える」

 

煉獄の指摘は正しい。

確かに禰豆子の炎はしのぶの肌に染み込む様にして、体内へと吸い込まれていった。

 

 

*・゜゚・*:.つやっ.:*・゜゚・*

 

 

なんか、しのぶの肌の質が爆上がりし、ぷるるん卵肌になった気がする。なんなら、ちょっぴり光を照り返してる。

恋柱・甘露寺蜜璃は見逃さなかった。

 

「これ…は……まさか…っ!?」

 

しのぶは我が手を見て、胸に手を当て、全集中常中の呼吸を普段よりも深くしてみる。苦しくない。

 

「なんか胡蝶、頬が紅色っつうか、滅茶苦茶血色が良くなってねえか?」

 

顔色より大事な事あるでしょっ? 忍者のくせに目節穴なのっ!?

恋柱・甘露寺蜜璃は入隊以来、最も鋭い目で内心叫ぶ。

 

「え。うそ。なにこれ。……体が、軽いっ!」

 

言って、しのぶはそれ程力を入れた風でもないのに、トンっと軽い跳躍で天井近くまで跳び、天井を優しく蹴ってフワリと静かに着地する。

一連の所作は、まるで羽でも舞っているかの様に軽やかなもの。

しかも、塁によって右脚を負傷させられている為、左脚のみで行われている。

それは武練極めた柱達(肌に大注目の恋柱を除く)に鳥肌を立たせる程のものだった。

 

「まるで翼でも生えたみたい…。間違いない。毒が消えてる……。身体中、全部…っ」

 

震え、呆然とするしのぶが禰豆子を見る。釣られる様にして柱達も一斉に禰豆子を見た。

 

てれっ 禰豆子は恥ずかしそうにもじもじする。

いや、照れてる場合じゃないのですが。

 

禰豆子の血鬼術が、他の鬼や血鬼術を燃やす炎であることは知られている。

だが先述した通り、禰豆子の炎が燃やすのは鬼だけに限らない。極め抜いた末にある本質は、燃やしたい物『だけ』を選んで燃やす事である。

 

確かに原作において、毒に侵された宇髄を焼いて解毒してはいた。

とは言え、時間をかけて血肉に染み込み、体の一部になるまで浸透した毒を綺麗に焼くなんて事が出来るものなのか。

 

「……気のせいかな、肌が綺麗になってない?」

「そう! それなのっ!」

 

時透の指摘に、ついに言ってくれた、と甘露寺が勢い込んで手を挙げる。

無理もない。鬼殺隊にいれば、厳しい訓練や鬼との戦闘、不規則な生活習慣など肌へのダメージは計り知れない。

肌荒れは鬼殺隊の職業病であり、女性隊士にとって永遠の悩みなのだ。

なのに今のしのぶの輝くばかりの美肌はどうだ。

 

「私思うんです! 禰豆子ちゃんの炎は、体の内も外も綺麗にする美肌の炎なんじゃないかって!」

「いや、温泉かよ」

 

白ける男性陣。

でも実は甘露寺さん、ある意味大正解。

 

禰豆子はしのぶを蝕む毒に気付いて助けてあげたいと考えた。しかし禰豆子に医学の知識は無く、毒や薬の成分がうんたらかんたらなんて分からない。

 

だから、とりあえず焼く事にしたのだ。

悪いもの全部。

 

結果、藤の毒のついでに、寝不足などにより蓄積した疲労物質・老廃物、さらに肌が負ったダメージまでもを焼き尽くし、恐るべき美肌を実現してしまった。

 

さらに、まだしのぶは気付いてないが、累にやられた右脚の負傷も、悪いものの1つとして焼いて、負傷自体を無かった事にされている。

 

言うなれば、究極の痛いの痛いの飛んでいけ。

日の呼吸による底上げと禰豆子の適当さが、概念すら焼くというアホみたいな奇跡を生んだのだ。

 

空間支配とかいう訳の分からない血鬼術も実在するとは言え、拡大解釈が過ぎない?

 

「禰豆子ちゃんっ!」

「む、むぅ?」

 

甘露寺は正座したまま、瞬間移動する様な速さで禰豆子の前に移動して、力強く手を握る。

 

「その炎で私も焼いて貰えないかなっ? 出来れば定期的に!」

「おいっ、甘露寺…!」

 

会議が脱線する。そう思い不死川が止めようとした時だった。

 

 

 

すっっっぱああぁぁぁぁんッッッ!!!

 

 

 

耀哉の背後の襖が、突然クッソ開いた!

 

「話は聞かせて貰いました!」

 

産屋敷あまね! 見! 参!

 

「あ、あまね…?」

 

突然乱入して来た妻に耀哉が呼びかける。

だが無視! 奥さん奥さん。その人、旦那ぞ?

あまねの後ろでは、3人の子供達、輝利哉、かなた、くいなが「あわわはわわ」している。

 

「禰豆子さんの力、大変興味深く存じます。どうでしょう? このお話、1度私に預けては頂けませんか?」

 

お肌の曲がり角が気になる27歳。目が超絶真剣だった。

 

「あ、あまね様! それはっ!」

「なにか?」

 

甘露寺とあまねの視線が絡み合う。

交差は一瞬。

 

ーーー 抜け駆けは許しませんよ、小娘 ーーー

 

「な、なんでもありましぇん……」

 

甘露寺は瞬で目を逸らした。強い。

 

「さあ、場所を変えて話しましょうか、禰豆子さん。ついでに炭治郎様」

「はい! ついでについて行きます!」

「むー?」

 

当然過ぎて今更繰り返すのもおっくうだが、やっぱり炭治郎は全然話についてきていなかった。

 

 

_______________________________________________

 

耀哉「えっと…しのぶ、柱続行で」

しのぶ「あ、はい」

 

 

アナウンスします

 

竈門禰豆子が鬼殺隊専属エステティシャンに就任しました。

鬼殺隊女性隊士が、みんな美肌美人になりました。

竈門禰豆子が女性陣から絶対的支持を得ました。

 

 

重ねてアナウンスします

 

胡蝶しのぶが完全回復しました。

胡蝶しのぶが回復によりパワーアップします。本来のパフォーマンスを発揮出来るようになりました。

 

条件を達成しました(2024.5.30)

胡蝶しのぶ魔改造タグを開放します。

 

悲鳴嶼行冥<真・胡蝶しのぶ

_______________________________________________

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。