少しだけ頭の悪い炭治郎のお話   作:MN2

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64と65

 

(case64:いわゆる修行回)

 

蝶屋敷プレゼンツ、機能回復訓練!

 

本日は療養明けで鈍った鬼殺隊士の体を叩き起こす、機能回復訓練の様子をお届けします。

 

本訓練は最近体調の全快により、なんか岩柱より強くなってね? と評判の蟲柱・胡蝶しのぶの提供でお送りします。

 

 

 

先に結論だけ言うと、体験者曰く「ある意味、柱稽古」「機能回復とは一体」「これもう修行だろ」「継子になった覚えはねーよ」と大絶賛。

運悪くこのタイミングで療養していた隊士は、ミディアムレアステーキ先輩を筆頭に脱走する者が続出。

結局、一部の真面目な隊士と、禰豆子の美肌エステを味わって、もう逃げられなくなった女性隊士しか完遂出来なかった。

だが、この訓練をやり切った者は、全員が全集中常中を会得し、十二鬼月の下弦とタイマン張れるぐらい強くなったそうな。

 

人間って凄いな。

 

 

 

さて、蟲柱の蝶回復にともない蝶サイコーになった蝶機能回復訓練。

その内容は、従来のものをアレンジして3つのメニューと4つの段階で構成されております。

さっそく紹介していきましょう。

 

 

レベル1

 

①地獄柔軟

 

蝶屋敷で働く看護師(の様なもの)である、きよ・すみ・なほの3人娘が、寝たきりで固くなった貴方の体を死ぬほど解します。

とても蝶痛いです。

 

「「「がんばります!」」」

 

 

 

「ぐああぁぁあッ! 猪突っああぁぁ猛、進! 強くなっでやる! 強ぐなっでやる! 俺は強ええぇぇああア゛ア゛ァァ!!」

 

「あははは、うふふふふっ。大丈夫大丈夫ぅー! 女の子に触れて幸せーっ!」

 

 

 

②反射訓練

 

ずらりと並んだ薬湯の入った湯呑み(とても臭い)をぶっかけ合うゲーム。早い者勝ち。ただし、上から押さえつけられた湯呑みは動かしてはいけません。

お相手は神崎アオイです。

 

 

 

「俺は女の子にお茶をかけたりしないぜ?」

「…………(イラぁ)」

 

手を揉み揉み握りながらキメ顔する善逸に、アオイは空いた手で湯呑みごと投げつけた。

 

「オラぁぁあッ! 猪突猛進、猪突猛進!」

「ちょっ、あばっ、一杯だけで、あばばばば!?」

 

流石は2刀使い。両手で湯呑みを取って薬湯グミ撃ちする伊之助。卓上の湯呑みを全部ぶっかけられてアオイは倒れた。

 

「ぬははははは! 俺は強ぇえッ!」

 

それでいいのか、おまえ。

 

 

 

③全身訓練

 

要は鬼ごっこ。逃げる相手を追いかけて触れれば勝ち。

お相手は神崎アオイです。

 

 

 

アオイの目の前から体ごと消える善逸。そして背後から、絡みつくように抱きついた!

全身薬湯でずぶ濡れなのに、お構い無し!

 

「俺は濡れることなんて気にしないぜ?」

「…………ふんぬッッ!」

 

耳元で、ふっと囁く善逸にアオイの反撃!

頭突きからの肘打ちで引き剥がされた善逸は、ボコボコに殴られた。

彼女も最終選別を突破してるのだから、舐めてはいけない。

 

「おらァッ!」

「きゃあっ! 痛い痛い!」

 

伊之助に足を掴まれて逆さ吊りにされたアオイは、床に頭をゴンゴンとぶつけられた。

 

「どうだァ! 俺は強ぇえ!!」

 

本当にそれでいいのか、おまえ。

とりあえずアオイは誓った。コイツら絶対許さない。

 

 

 

レベル2

 

②と③の難易度を上げます。

お相手は栗花落カナヲです。

 

 

「…………」

 

どしゃあっ

 

カナヲの反射速度に全くついていけず、卓上の湯呑みを全部ぶっかけられて伊之助は倒れた。

 

「…………」

 

どしゃあっ

 

霹靂一閃を駆使してもカナヲの髪の毛にすら触れられず、床の薬湯で足を滑らせて善逸は倒れた。そして踏まれた。

 

「アオイ、仇はとったよ」

「ありがとう、カナヲ! うふふふふ、ざまをみなさい!」

 

カナヲに抱きついて珍しくはしゃぐアオイ。

心のままに生きると決めたカナヲは、おもしれー女になりつつあった。アオイはそれが少し嬉しかった。

 

完敗。

しかし伊之助と善逸は、心折れることも腐ることもなかった。

伊之助はより燃え上がり、善逸も何となくそれに引きずられて燃えた。

 

(強くなってやる! 絶対に強くなってやる! 俺はまだまだこんなもんじゃねえ! そして炭治郎に勝つ!)

 

(触りたい! もっと触りたい! 合法的に女の子に触れる機会なんて2度とないんだ! せっかくだからカナヲちゃんにも触りたい!)

 

動機はともかく、2人は負け続ける訓練に逃げ出す事なく、何日も燃える眼で挑み続ける。

カナヲはちょっと2人が怖くなった。

 

 

 

レベル3

 

②と③の難易度を更に上げます。

お相手は竈門炭治郎です。

 

 

 

「ふざけんなよッッッ!? 出来るか、そんな訓練! 出来てたまるものかぁぁああああッッ!!」

 

あ、善逸が折れた。そしてキレた。

もっとも、2人はまだこの訓練には挑戦出来ない。

レベル3に挑めるのは、全集中常中を会得してレベル2を合格出来た者だけである。

そしてルールも少し変えてある。

 

②変則反射訓練

炭治郎に全ての湯呑みを使い切らせず、3分間生き延びれば勝ち。

 

③変則全身訓練

こちらが捕まえるのではなく、炭治郎が追いかけてくる。1分間逃げ切れば勝ち。

 

伊之助と善逸が見守る中、レベル2をクリアし目をギラギラさせた訓練者達(4割が女性)が炭治郎に挑んでは蹴散らされていく。

なおレベル3からはカナヲも挑戦者側で参加していた。

自分達が勝てないカナヲが、頭に湯呑みを5段積みされている姿を見て、流石に善逸も焦りを感じた様だ。

カナヲは身動きできず、涙目でプルプル震えていた。滅茶苦茶悔しそう。

 

 

 

レベル4

 

炭治郎とヒノカミファイト。説明不要。

お相手は竈門炭治郎です。

 

 

 

「ふっざ…ッ! ふっ……ッッ、ふざッッ……!」

 

激情のあまり善逸の言語中枢が死滅した。

 

心配せずとも、そのまま炭治郎に勝てなんてルールではない。

レベル3突破者が3人1組になって、3対1で炭治郎と戦う。5分後に1人でも立っていたら勝ち。

 

「え、これ、おまえの負担凄くない? 全部の挑戦受け止めてんの? やめたの? 人を」

「大丈夫だ、善逸! 俺も凄くいい訓練になってる! おかげで更に腕が上がったぞ!」

「やめたんだな、人を」

 

「上等だ、俺は3人がかりなんてやらねえ! 1人で勝ってやる!」

「いいぞ! 頑張れ伊之助! でもまずはカナヲに勝たなきゃ駄目だぞ!」

「ぬがぁァアアア! 今すぐ勝ってやるわッ!」

 

ちなみにレベル4ではかなりの頻度で怪我人が出るが、怪我も燃やして無くせる事に気付いた禰豆子が衛生兵として常駐しているので、安心して訓練中に大怪我出来るという親切設計になっている。

 

 

 

レベル5

 

炭治郎と1対1で戦います。

こちらは蟲柱・胡蝶しのぶしかやっていない裏メニューである為、表向きには存在しない事になってます。

しかし知る者は、毎日彼女がボロボロになっている事に気付いております。

 

以上が、蝶屋敷が提供する新たな機能回復訓練の全容です。

隊士の質の低下を嘆いていた風柱や蛇柱も、これにはきっとニッコリするでしょう。

              (鬼殺隊非公式広報部)

 

 

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しのぶ「ちょっと待って下さい! レベル3とか4とか知りませんよ!? 何ですかこの無茶な訓練は! 私がプロデュースしたみたいに言わないで下さいっ!」

 

もちろん炭治郎が勝手にやった事である。

 

ちなみに、たまたま善逸とニアミスしていた獪岳だが、軽傷だったこともあり、レベル1でステーキ先輩と一緒に機能回復訓練から脱走していた。

 

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(case65:バタフライエフェクト 蝶だけに)

 

「それまで!」

 

懐中時計を片手に、5分の経過を確認したアオイが訓練終了を宣言する。

 

ふう、と軽く息を吐く炭治郎。

それに対して、倒れた男性隊士が1人。膝を付いた男性隊士が1人。そして立ったままの女性隊士が1人。

 

3人は汗まみれで疲労困憊。ダメージも色濃い。だがレベル4・ヒノカミファイト訓練の合格者が、また1組現れたのだ。

自分達はやり遂げたのだ、と理解した3人が感涙に咽び泣く。

 

「むぅー!」

 

禰豆子がパチパチと拍手を贈る。

 

「ありがとうっ。ありがとう、禰豆子ちゃん…!」

 

女性隊士は泣きながら笑顔で応える。

那田蜘蛛山で禰豆子に命を救われた隊士だった。

彼女だけではない。共に訓練を乗り越えた2人も、あの時、炭治郎達に殺してくれと懇願していた隊士だ。

原作においては、母鬼の八つ当たりで惨たらしく首をへし折られて絶命していた者達だったが…。

 

「……凄ぇ」

 

訓練を見ていた伊之助が呟く。善逸も頷く。

 

「炭治郎がおかしいのはいつもの事だけど、あの3人も滅茶苦茶強いよ…。いや、この訓練を卒業してった人、みんなそうだけど…」

「ああ、負けてらんねぇッ! 行くぞ、マンモス! 全集中常中ってのを、さっさとモノにすんぞ!」

「善逸だよッ! おまえ炭治郎より酷いな!?」

 

禰豆子の炎『ヒノカミ爆血(癒し)』でダメージと疲れを焼かれ、全快した3人。

その佇まいは柱に限りなく近く、もはや上弦以外の鬼に敗北する事などあり得ない。

そこには、十二鬼月の手下に翻弄され死にかけていた姿はどこにもなかった。

 

「おめでとうございます」

 

新たな卒業者のもとへ、訓練責任者の1人としてカナヲが近づいて行く。蝶屋敷の者達と同じ、蝶の髪飾り3つを手に。

 

カナヲは考えた。このちょっと泣きたくなる様な苦行を乗り越えて、試練を達成した者は、みんな蝶屋敷の仲間ではないか、と。

だから卒業の証として、そして大切な仲間の証として、この蝶の髪飾りを贈ることにしたのだ。男にも。

 

なんでそれをチョイスした。

栗花落カナヲも、やっぱりどこかズレた子だった。

 

こうして仲間の証を身に付けて、蝶屋敷から(男を含む)新たな蝶が飛び立って行った。

 

これ以降、鬼殺隊の至る所で蝶の髪飾りを身に付けた、異様に強い剣士達の活躍が目撃される事になる。

 

男であろうと蝶の髪飾りを付けた、この恐るべき一団はやがて胡蝶一派と称されるようになるが、これはしのぶの全く与り知らぬ事であった。

全てはカナヲの、ヤベェ布教活動のせいである。

 

 

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行冥「最近耳にする胡蝶一派について話を聞きたい」

しのぶ「っっっ!?」

実弥「凄ぇ数だが、まさか全部継子か?」

しのぶ「っっっ!?!?」

天元「ちらっと見たがよ、ありゃほぼ柱だぜ」

しのぶ「っっっ!?!?!?」

 

しのぶ「し、しらない…。わたし、それ、しらない」

 

童磨をブッ殺す為、自分の修行に没頭してたせいである。勝ち目が出て来ちゃったんだもの、仕方ないね。

 

無惨「鬼共がどんどん殺されていく! あちらでもこちらでも! 私の鬼作りがまるで間に合わん! おのれっ、何なのだ!? あの忌々しい蝶どもはッ!?」

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