(case13:しこめ)
愈史郎は竈門兄妹を珠世の屋敷に招くのは反対だった。
鬼狩りに接触するのが危険だというのはある。
珠世が炭治郎を見る瞳が少女の様にキラッキラしていたのが面白くないというのもある。
だがそれ以上に、愈史郎が少し言葉を交わしただけで解るほどに炭治郎は頭が悪かった。
数百年越しで珠世の前に現れた希望がこんなお馬鹿さんだなんて、あまりにも珠世が可哀想だった。
「珠世様、やはり俺は反対です」
「いいえ愈史郎。炭治郎さんこそ、鬼舞辻無惨を討つ為に御仏が遣わせてくれた方です」
気のせいでは?
「気のせいでは?」
愈史郎がきっと正しい。仮に珠世の言う通りだとしても、仏様だって人選ミスする事はあるだろう。
愈史郎はため息をつき、屋敷を包む姿隠しの結界を珍しそうにつついている竈門兄妹の元へ向かった。
「おい、いつまでもそんな所にいるな。結界だって完璧じゃないんだぞ」
「はい、すいません」
頭を下げる炭治郎に、フンっとそっぽ向く愈史郎。
そして傍らに立つ禰豆子を睨め付ける。
「それがおまえの妹か。し……ぷぺらァ!?」
バッチィィイイン!
いきなりのビンタ! 愈史郎は空中で4回転した。
「(・ω・)???」
「い、いきなり何をする!? 何で不思議そうな顔してるんだ! 人を殴っておきながら!?」
炭治郎は首を傾げて
「ごめん、わからない。でも何となく殴った方が良い気がしたから殴った!」
「何でッ!?」
愈史郎は慄いた。確かに自分は妹の悪口を言おうとした。でも、何も言う前に殴る事なくない?
後悔なんて欠片もなさそうな困惑顔をしてる炭治郎が怖い。
こいつ、ちょっと妹をしこバッチィィイイイインッ!
「もげぇっ!?」
「(・ω・)???」
愈史郎は空中で5回転した。地面で跳ねて、さらに3回転した。
「ごめん、大丈夫かっ?」
「……はい、禰豆子さんは美人です」
「知ってるけど? (・ω・)???」
愈史郎は日和った。無理もなかった。
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醜女なんていなかった。いいね?
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(case14:無理ゲー)
歩み寄って来る絶望に、珠世は無意識の内に後退りした。
禰豆子を人に戻すには、より無惨に近い血、強力な十二鬼月の血が必要だと説明したところ、禰豆子が血のベッタリついた両手を見せてきた。
さっきしこたま殴っていた無惨の返り血だった。
十二鬼月を通り越して、無惨そのものの血が手に入った。
禰豆子を人に戻す人間化薬は、そのまま無惨を弱体化させる毒となり得る。
運命が無惨を葬る為に動き出している。珠世が益々その確信を強くした、その時
愈史郎が張った結界諸共、屋敷の塀が切り裂かれた。
「日輪を模した耳飾り……縁壱の遺した物に相違ない…」
静かな憎悪を滲ませる声と共に、それは現れた。
「あ、ああ……」
珠世は力無く腰を落とす。
無惨が小心者だと知っているつもりだった。だが、即座にこの男を送り込んでくるとまでは思わなかった。
目の前の鬼の強さを知るからこそ珠世は思う。終わった、と。
「どちら様ですか?」
炭治郎はその六つ目の侍に問いかける。
「上弦の壱 黒死牟」
鬼としての格は無惨に及ばないが、戦う者としての力、特に一対一のそれは無惨をも上回りかねない存在。
十二鬼月の頂点。
流石の炭治郎も目を鋭くし
「珠世さんのお客さんですか?」
「……違う」
おまえ、話ちゃんと聞いてた?
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珠世「……(白目)」
愈史郎「……(白目)」