ダンジョン武器   作:たか高菜

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やっつけで書いたので続くかどうかはわかりません


地下五階までの道のり

ダンジョンが存在する町には、冒険者を管理する組合がある。ダンジョンに潜る冒険者は大抵そこに申請しなければならず、避けては通れない。

組合がある酒場に入ると、周囲からの視線が痛い。それを無視して組合に書類を提出すると、几帳面な男の視線が此方を射抜く。

 

「それ、魔物の素材を使ってるのかい?すっげぇな……始めて見たぜそんなもの」

 

 

そう。いま俺の全身は赤色の鱗で出来た鎧に包まれているのだ。その背中には巨大な大剣が背負われている。

 

「その色と鱗……レッドドラゴンか?」

「いや……僕の居た所では赤いワイバーンがいてね」

 

地元ではリオレウスと呼ばれる火竜だ。

そのダンジョンに巣食っていた竜を退治した時に得た素材から武器や防具やらを制作したのだ。それなりの年月と金がかかったが、悔いはないと言える程のものに仕上がっている。

 

「ライオスがいれば、アンタの事を質問攻めにしただろうな」

 

聞けば、魔物に関して強い興味と知識欲を示す冒険者がいるという。他の所でも……特にドワーフにはこの装備についてよく質問攻めにされるので、遭遇しない内に迷宮に潜りたいものだ。

 

魔物の素材を使った鎧はとにかく人目を惹く。そのおかげで街に出るととにかく同業からのパーティー勧誘が多く、もの好きの金持ちからはいくらでも払うから譲ってくれ!と交渉を受けてしまう。挙句の果てに盗賊から装備を奪われそうになったり、色々と面倒は多いが俺自身はこの装備を気に入ってる。

まぁ、好意的なモノばかりではなく魔物を忌避する人間からは異常者だというレッテルを張られるのが常なのだが。

鋼程の強度を持ちながらも革で出来た装備程に軽い。一瞬の判断が求められるダンジョン攻略においては、俊敏に動き、魔物の攻撃から守る強度を保てる総合力が重視される。

 

「で、パーティーはどうする?募集はあるが」

「いや、一人でいい」

 

すると、組合員はしかめっ面をする。普通ならっパーティーを組んでダンジョンに潜る方がセオリーだ。それなりの人数がいれば死亡するリスクが低くなる。

 

「こんな装備をしていると、仲間よりこれを狙う盗人が寄ってくるものでね」

 

そう答えると、同情しつつもじゃあしなければいいじゃんという目が来る。ほっとけ

まぁ、自分の場合一匹なのだから、別に一人ではないが。

横に置いた大剣を背負いなおし、組合の酒場から出て入り口で待っていたワーグ程の大きさの狼の頭を撫でる。

 

「行こうか」

「バウッ!」

 

文字通り、番犬を連れている訳でして。

 

 

 

 

地下一階で魔物に遭遇する事はまずない。この装備をしていると鱗に残留する魔力の所為か小型の魔物は大抵逃げ出してしまうのだ。

 

「あの!すみません!俺のパーティーに入ってくれませんか!?」

「ちょっとお兄さん!その装備俺に売ってくれ!」

 

代わりに、冒険者が行く手を阻むわけだが。

魔物をわざわざ鎧に加工して装備するもの好きなんて早々ない。それにその魔物の装備=自分で狩ったという図式が出来上がり、冒険者としての実力が言わずと示されてしまう。

 

「わるいけど、先を急いでるから」

 

魔物は弱いが、油断していると寝首をかかれることもある。大サソリから得られる神経毒は相手を麻痺させることができるので、投げナイフに塗れば効果が出る。レッドドラゴンを相手にするには心許ないが、道中遭遇する中型モンスターの攻略を容易にしてくれる。

 

 

 

それらをかき分けて第二層まで進むと、今度は森が出現する。

尖塔から生え出た巨大樹の森は自然のダンジョンを形成し、至る所に魔物の植物が自生している。判断をミスれば食人植物に捕まり、そのまま食われることもある。

 

「ギャーっ!?」

 

このように。

 

「死体屋かな?」

 

来た道を双眼鏡で確認すると、食人植物に捕まっている人影がある。此方を付けていた所を見ると、俺が死んだときに蘇生の対価として俺の装備を要求するつもりだったか。

装備した大剣は切り口から発火するものなので、植物に対して相性がいい。ただ攻撃しすぎると木の実や葉っぱが焼けてしまうので、素材を取るにはあまり不向きなのが難点だ。

別に助ける義理もないし、このまま行こう。

また、攻略の道中マンドレイクといった薬の素材となる魔物を狩猟。マンドレイクは叫ぶ前に首を落とせばいいので、狩猟難易度は低い。

どっかの本ではマンドレイクを抜き取る際に犬を使うらしいが、きっと経験者が書いたものではない。マンドレイク1本と犬では採算が合わないしね。

 

「あ、ありがとうございました」

 

その道中、どこかのパーティーが森ゴブリンの群れに襲われていたので救出ついでに狩猟。ドニという青年がリーダーらしく、助けてくれた礼として晩飯を共にすることになり、俺の装備に関して色々と質問してきた。どうやらパーティを組んでみたもののいつもこの階層で全滅してしまうそうだ。確かに第一層と違い魔物が強くなるし。

 

「その装備は、一体どこで?」

 

大概冒険者にどこで売っているのか?とも聞かれることがある。遠く離れた大陸の堅物ドワーフに頼んだから、同じようなものを調達できない旨を応えた。

 

「それに、いい事ばかりじゃないんだ。どこかの村に泊まった時は周囲が魔物信仰の狂信者だと思って、村総出で縛り首にされそうになったから」

 

ドン引きの顔をされたが、事実だ。実際こんなドラゴンの鱗で作った鎧なんて来ている奴がいればそう思われるかもしれないけど、いくら何でも寝ているところを襲撃は酷くないか?

 

「ど、どうやって赤いワイバーンを狩猟したんですか!?」

「流石に飛ばれると厄介だから、死角から閃光魔法で目をくらませて翼を集中攻撃するんだ」

 

ワイバーンは流石に飛ばれたアウトだ。どんな強力な魔物でも、自分の土俵まで相手を引きずり落とせば、後は機転でどうにかなるという旨の説明をすると、彼らは興味津々で聞き入ってくれた。

 

「先ほどの大剣さばきもすごかったです。あんなに重そうなのに」

「この大剣?大きな魔物用だけど見た目よりかは軽いよ」

 

試しにドニに持たせると、一振りするだけでも息切れしてしまった。大剣は全身の筋肉を使わないと一気にバテるから、自分に合う武器を使った方がいいと助言しておいた。

彼が冒険者になったのは、広い世界を知りたいからだそうだ。ダンジョンという閉鎖空間を広い世界と形容すべきかは分からないが、ここでの経験が彼の人生の糧になってくれればいいが

あと気になったのはメンバーのハーフエルフの子だ。俺がこの迷宮の攻略を依頼されたのは確か迷宮外の報告するはずだったエルフがぱったり報告を途絶えたからだけど………流石に気のせいか。

 

「大事なのは、やっぱり一つの武器を極める事だよ」

 

どれだけ使える武器を増やしても、極めた一つの武器に負けることがある。冒険者を続けるなら、それを心に武器を良く知ることも大事だ。

 

その翌日、別れ惜しいが彼らとは別れて再び一人一匹でのダンジョン攻略を再開する。元々目的が違うし、彼らを守っていてはその成長を阻害して互いの為にならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンがある街では情報屋が地図を売っていて、ある程度までルートが開拓されている場合がある。此処も外に漏れず、元々金が豊富な為に金をはぎ取る事を目的とした人が多く行きかい、それなりにルートが確立していた。

 

中でも確実に行ける正規ルートは大コウモリの妨害に会うらしかったが、この装備に気圧されてほとんどのコウモリは隠れ、襲われる事は無く尖塔の内部へと侵入する事が出来た。

 

その道中では歩く鎧に遭遇。甲冑に剣というシンプルな構成の魔物だが、如何せん数が多いので捕まると逃げるのに苦労する。

一時期はコイツ等の鎧をはぎ取って鋳造し改めて装備を造れるのではないかと思ったが、分解した装備がいつの間にかくっ付いたりして袋が破けるといった輸送に難点があったので断念した。そもそも鎧といっても見た目に反して鉄の純度が低く、ほとんど石膏に近い成分なので加工もクソも無いのだが。

 

『なに魔物持って来てんだテメェ!鉱石寄越せ!』

 

唯一持ってきた動く鎧の一部をマジ切れしたドワーフが投げ返してきたのはが随分と懐かしい。

魔物を素材化して武器に出来ないかと色々模索していたものの、地表に近い魔物は装備品にするには強度が足りず、逆に強度が足りる素材を探せば大概が最下層かその付近になってしまう。

魔物の装備化を普及させる道のりは、果てしなく遠い。

 

 

 

昔は黄金に覆われて栄華を誇っていたのだろうが、今となっては錆びれた城内………かつての住人だった者がグールになって徘徊しており、度々妨害に会った。これらは大剣で勢いのままに真っ二つにすれば肉の焼ける匂いと共に障害はなくなるので楽だ。

中でも印象的なのが、ゴーレムだった。他のダンジョンでも遭遇した経験があり、振り下ろされる拳の直撃を受ければ全身の骨が砕けてしまう。しかも素材が土だから相手にするだけ無駄だ。

故に、攻略方法は懐に飛び込んで大剣の横薙ぎで足を潰し、相手の機動性を奪ったところで勢力圏から逃げるに限る。

ここで遭遇したゴーレムは背中だけが妙に生い茂っていたけど………しかもあの葉っぱの形は見覚えがある。村の畑の葉っぱにそっくりで………アレは、畑なのか?嘘だよな?魔物の背中を畑にするってどういう神経してるんだよ。

土に紛れていたタネが自発的に発芽してしまったんだろうな。そうに違いない。

 

そこから離れていない場所には宿が設営されていたが、こういった宿に集まる輩は宿主含め地上には戻れない所以……いわば犯罪者が多い。過去に同じような場所に泊まり装備を奪われそうになり、ガルクが盗人の足の骨をかみ砕く事件があったので断念。

幸いにも誰かのキャンプ場があり、ありがたくそこを借りた。食材も備蓄されていて、いくつかを拝借し相場の代金を置いていった。

ジャガイモと人参のスープという簡素なものだったが、ダンジョンでの常の食事が干し肉かこんがり肉、干した野菜であることを考えると随分と贅沢をさせてもらった。

恐らくあの階層に暮らしている人間だろうが、よく整備されていた。ここら辺の便所が綺麗なのもこの人物が管理しているからだろうか。農作業用の道具があったのが謎だったが。

 

「次の階層までの案内役が欲しいのだが、誰か居ないだろうか」

 

翌日、例の酒場で次の階層までの案内役を探す為に酒場を立ち寄った。

此処以降になると並みの冒険者では立ち入ることもままならず、情報屋から得た地図も当てにならない。確実に次の階層に行くための措置ではあったが、心当たりのある人物は此処にはいないそうだ。

 

「この辺りにセンシとかいうドワーフがいるんだが、時々地表に戻るからタイミング悪かったな。兄ちゃん」

「いつ戻るかもわからないのか?」

「そうだな………その剣を売ってくれるなら、こっちから出向いて呼びに言ってもいいぜ?」

 

これ以上の収穫は無しと見て、早々にその場を立ち去った。残ってセンシという人物を待っていても、その間に俺の装備を目当てに襲撃してくる人間が出てくるのが目に見えているので早々に下層に向かった方がいい。

仲間がいれば幻覚魔法で同士討ちという手もあるだろうが、ガルクは匂いで判別するので効果ないから俺達にかけてもあまり意味はない。

 

「って、言ってる傍から………」

 

酒場を出てから直ぐに5,6人に取り囲まれてしまった。目的は俺の装備。モンスターの素材を使っている物珍しさから高値で売れると見たのだろう。

 

「へっそんなデカい獲物でどうやって戦うつもりだよ」

 

大剣のおかげで動きが鈍いという算段も付けての事だろうが、残念当てが外れたな。

 

「バウッ!」

 

横で唸り声をあげていたガルクが駆けだして翻弄し始める。気を取られ隙が出来た攻撃射程に入っていた男に向かって、大剣を振り下ろす。

 

「ぎゃああああああ!!」

 

腕を切られた男の傷口から発火し、一瞬で全身が炎に包まれる。足りない手数は投げナイフによる投擲で相手の動きを制限し、大剣の質量のまま相手を壁に叩きつける。

 

「おい何してる!早く爆破呪文を――――」

「やってる!やってるが!」

 

爆破呪文?そんなもの効くわけがない。ワイバーンの鱗に残留する魔力が天然のバリアを形成し、並みの呪文なら弾き返してしまうからだ。

無論これは想定された機能じゃない。偶然の副産物だが、装備を狙う人間に対しては十分に効果を発揮してくれる。

残ったのは、バラバラに焦げた焼死体と散乱する荷物だ。流石に襲い掛かった盗賊に情もなく、なけなしの金だけ頂いて先を進む。あとは魔物が処理してくれるだろう。

 

こう度々災難に遭うと思うが、どうして魔物を使った装備が普及しないのだろう。

確かにスライムや歩きキノコといったモンスターの加工利用は難しいのかもしれない。けれど中級モンスターの素材ならば十分加工、装備し運用に耐えられる。ドラゴンの鱗は防具として最高だ。鉄よりも強く、魔力で自然と呪文を弾く能力すらある。武器にすれば切った際に発火する強力な武器にもできるし、楯にもできるこれだけの機能を備えているのに、こうも魔物の素材で武器を作る事を忌避する人間がいようとは。宗教観や生理的に受け付けないというのもあるのだろうが、もうすこし機能に目を向けてもいいと思う。

 

「難儀なものだ」

 

また、この戦闘のおかげで周囲の魔物を引き寄せてしまった為に隠密行動を強いられてしまい、地下三階の突破に少々時間を要する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれアンタ………!その武器みせてくれないか!」

 

今度はドワーフかよ!もういいよ!

 

地下三階で足止めを喰らっていると、ある冒険者一行と遭遇した。どうやら率いているのはノームの夫婦

のようだ。トールマンの双子は彼らの養子で、ドワーフの女………ナマリと呼ばれる女性は彼らに雇われた冒険者だという。

彼らはダンジョンに隠された謎を探求する研究者らしく、これから下層に行こうとしている風だった。俺もそれに肖って安全に地下四階へとたどり着くために彼らとの同行兼護衛を担う事になった。

問題だったのは、進むたびにナマリから色々と質問攻めに会った事だ。休憩の時なんて武器を持たせてくれと興奮した様子で懇願され、防具を撫で繰り回されて正直気色悪かった。

刃部分はどんな鉱石を?金属と魔物の素材の継ぎ目は?手入れはどうしている?その武器トールマンには重いだろ?アタシに譲る気ないか?………などなど、色々と聞かれたものだ

 

「魔物を素材にして装備品にするだなんて、よく考えついたもんだ」

「一度は考えないか?」

「あるわけなかろう!」

 

パーティーを率いるタンス氏が、何故か怒りながら答えて来た。

 

「魔物の皮で装備を造るなどすれば、時代が時代ならば異端審問会に掛けられて処刑されるのがオチだ。よくそんなものを被って生きて来られたものだ」

 

どうやらノームの老父、タンス殿は俺の装備がお気に召さないらしい。

 

「勿論、これを造るのには苦労したよ」

 

流石に手作りというワケにもいかず、あらゆるドワーフの職人の許を訪れて頼み込んだ。大概は断られたりしてこの国で唯一という職人の許もたどり着いたが最初は断られた。

神聖な火事場にモンスターのものを入れてしまうと穢れてしまうのではないか。というドワーフ独自の信仰心が障壁となってしまっていたようだったが、今はそこまで宗教が強い時代でもない。上等なドラゴンの素材を前にしてその目はあと一押しで作るという確信めいたものが有って、俺は一つの挑戦を行った。

 

「へぇ………そっか……出来ないんですか……ふうん………根性なしめ」

『今なんつったクラぁ!!?』

 

とまぁ、そんな感じに

 

その一部始終を語ると、ナマリは随分と青い顔をするしダンス殿も複雑な顔をする。

相手の鍛冶師としてのプライドを利用させてもらったのは認めるが、そうしなければいけない事情があったし後に装備が完成すると手付金と精いっぱいの謝罪をしたので、今となっては良い関係になっている。

 

「しかし……魔物を素材として加工して装備を造る………これってもしかして冒険者にいい稼ぎになるんじゃないか?」

 

ナマリはその考えに行きつくと一人ぶつぶつと商売にした場合の採算や需要を考え始めた。どうやら親の所為で色々と苦労していて、金が必要とのことだ。

 

「ああっクソ!ライオスがいればいい素材になる魔

物を知ってただろうに!」

 

またライオスだ。聞けば彼女が前に所属していたパーティーのリーダーだったそうだ。冒険者としての能力は突出しないが、持ち前の魔物に関する知識で難なく下層までの攻略を可能にしていたそうな。

………そんな人間がいるのならそいつのパーティーに入れてもらえばよかったか?いや、どうやら彼女がパーティーを離れたのは訳アリのようだし、今はどこにいるのかも知らないそうだから、過ぎた事は仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に地下四階にたどり着くと、彼らと別れた。彼らは遺跡の調査、俺は更に深部に潜るという目的の違いがあり、どうしてもルートが異なってしまう為だ。

 

「じゃあな!地上であったら一杯やろう!」

 

武器に関しては色々としつこかったが、本質的には気のいいやつであることは間違いない。何時かは酒を飲み交わしたいものだ。

 

すこし回り道ではあったが第四層までたどり着くと、そこは巨大な湖があった。岩盤から漏れ出した地下水が地下湖を形成。魔力を含んだ水は発光し、遥か水底の城下町を微かに見せている。

此処では水上歩行が必須である。魔法に関しては必要最低限のモノしか習得していないが、こういった際に自分で施せるならそれに越した事は無い。

 

「それにしても………」

 

途中、色々な妨害を受けた為に進行に遅れが生じたために食料が不足してしまった。この当たりで魚か何かを調達しなければいけないのだが………

 

刃魚かぁ。

水面から飛び出してはすれ違いざまに冒険者を攻撃しようとしてくる魔物だ。鋭いヒレは人の皮なんて簡単に切り裂くことができる。コイツ等は水面から出てくるのに合わせて剣で叩き墜とせば死ぬ脆い魔物だが、そのおかげで素材にすることは出来ない。どこかの地方では身をじっくり燻すことでハムやスープのだしの素になるそうだが、流石にここではそんな手間はかけられない。

それよりも強力な魔物が、ここにはいるのだ。

 

「シーサーペント!」

 

刃魚の群れが過ぎると水中から現れたのは巨大な海蛇だ。群れを追って水面まで来たのだろうが、ここでこいつに会うなんて最悪だ。

巻き起こされる巨大な波によって足場は不安定。水面から襲い掛かるせいで不規則な攻撃に対応が難しい。しかも大剣では相性が悪い。

中でも脅威なのは、シーサーペントの牙だ。牙から出る猛毒は一傷で一瞬の内に死に至る。喰らうのは願い下げだ!

 

 

――――ドォォン――――

 

 

「ギャアアアア!」

 

水の中は衝撃が伝わりやすい。爆破魔法で水面を爆発させて周囲の浮かんできた魚を取る漁すらあるほどだ。そしてそれは、シーサーペントも変わらない。水中ですごす為に視力は弱く、感覚器官の殆どを鼻に頼っている。

水中に堕とした手投げ爆弾の爆発の衝撃で動きが鈍ったところを四足歩行のガルクの安定性に懸けて接近。狙うは――――首!

 

鱗の面していない腹の内側に大剣を振り上げ、確かな手応えと共に血が噴き出してシーサーペントの身体が崩れ落ちる。

 

「ハァ………!」

 

何とか長期戦に持ち込まずに済んだけど、今のでかなりの体力を消耗してしまった。少し休みたいが流石に水面では他の魔物から襲われる危険性があるので離れなければいけない。

 

「その前に………」

 

シーサーペントの毒を頂こう。流石に鱗や牙を取る時間は無いので、毒袋を慎重に抜き取って瓶の中で潰し、内容物だけを取り出す。

これで手持ちの爆薬の半分を消費してしまった。残るは回復薬と兵糧丸に二日分の食料………投げナイフ数本に大サソリとシーサーペントの毒位だ

………これだけではレッドドラゴンに遭遇しても撃退できるかどうか怪しくなってきた。

 

依頼はこの迷宮の最深部の調査なので、レッドドラゴンに遭遇する確率は五分五分だ。

 

レッドドラゴンと戦えるパーティーが近くにいればなぁ

 

地下五階を前に、そう思わずにはいられなかった。




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