ダンジョン武器   作:たか高菜

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寝不足とダンジョン飯最新話視聴で色々ラリッて書き上げてしまいました。
ダンジョン飯読者にあるまじき行動なので流石に寝なければ


卵焼き

 

「良かった。気が付いたか」

 

目覚めると、チルチャックが傍らにいた。周囲を見れば傷ついた皆の治癒や蘇生が行われている。

チルチャックは双剣の刃に着いた血を布の切れ端で拭っている。

 

「お前の双剣のおかげでハーピーを追い払えた………助かった」

 

そりゃどうも、と起き上がって、現状を聞くと色々と不味い事になっていた。

安全を確保した後、シュローがライオスに詰め寄ったのだ。なぜファリンがあんな姿になっているのかと

彼女の変容を目の当たりにしたシュローの剣幕に押され、ライオスは起った事実を話すしかなかった。

マルシルがファリンを黒魔術と炎竜の身体を使って蘇生させたことを、ライオスがそれを容認した事も。それを聞いてライオスの元に駆けつければ、シュローが彼の首元に刀を当てる現場を目撃した。

 

「狩人………」

「言いたいことはあるだろうが、剣を収めろ。シュロー」

 

例え彼が現場にいたとして何が出来ただろうか。黒魔術という忌むべき禁忌でファリンを蘇らせることに反対しただろうが、最後は折れていた可能性がある。

 

「現場に同席しながら、禁忌に手を伸ばしたことを見過ごした俺やチルチャックにも責任がある」

「分かっている……分かっているが………!」

 

納得は出来ないだろうな。こればかりは彼の中で時間を掛けて消化するしかない。

ひとまず怒りを抑え、シュローが剣を鞘に納めて座り込む。

 

「だが、何故彼女があんな姿に!お前が竜の肉で黒魔術を用いた所為じゃないのか!?」

「そんなはずない………あの魔術にそんな力はない」

 

マルシルの反論は正しい。

迷宮の主は迷宮とそこに住む魔物を支配している。それは迷宮に施したシステムによる間接的なものから、魔術による直接的なものと多岐にわたる。

ファリンを食べた炎竜は、明らかに通常の個体とは異なる行動をしてた。となれば直接迷宮の主……狂乱の魔術師の手が加わっている可能性が高い。

 

「迷宮の主というのは特別でな。それこそ魔物の魂を想いのままにする力がある。ファリンの蘇生時にその魂の一部が混ざる事は考えられない事じゃない」

 

経験則からの俺の言葉に、シュローが歯噛みしつつ目をつむる。何かを決意したような顔をしたシュローが同席していたマルシルに向く。

 

「マルシル………お前を西のエルフに引き渡す」

 

シュローの視線に射抜かれたマルシルの肩が震える。

 

「俺にはアレを殺せない……だが放置するつもりもない。魂だけでも迷宮から解放し、安らかに眠らせてやる手段をエルフたちなら知っているはずだ」

 

その対価として、黒魔術を使ったマルシルを差し出す。

彼の立場を考えれば、それが最善の手段だろう。仮に討伐隊を組織してファリンを殺すにしても、黒魔術によって蘇った魂がどうなるかは分からない。専門的な知識を持つエルフの助力を得ようとするのはおかしい事ではない。

 

「待ってくれ。別の方法があるはずだ」

 

無論、仲間を引き渡すと言われて黙っているライオスではない。マルシルを庇うようにシュローの間に入った彼を見て、シュローの眉間にしわが寄る。

 

「ふざけるな!どうするつもりだ!?彼女が元に戻るまであらゆる魔物の肉で蘇生を試すつもりか!それとも別の考えがあるとでも!?」

 

始めて会った時の疲労困憊の様子と打って変わって、シュローは怒気を込めて叫んだ。飯を食べたおかげか、それともファリンをあんな姿にしたライオスに対する怒りによるものかは分からないが。

流石に全ての魔物の肉を試すのは建設的じゃない。かといってファリンをあのままにしておけないのはライオスも同じだ。

シュローと違うのは、ライオスには何としてもファリンを救いたいという初志貫徹がある事だ。

 

「――――狂乱の魔術師を倒す!」

 

それが、ライオスに一つの回答を導き出させた。

 

あの炎竜は明らかに命令を受けて動いていた。それが出来るのはこの迷宮を造った狂乱の魔術師に他ならない。今その命令をファリンが縛っているのなら、書き換えて彼女を自由にすればいい。

その際、マルシルの知恵と魔術が必ず必要となる。故にマルシルを西のエルフに引き渡すことは出来ない。

持論を展開するライオスだが、筋は通っている。先ほどまで懐疑的だったカブルーの表情が変わるのを見れば、彼も検討の余地ありと思ったのだろうか。

 

「ふざけるのも大概にしろ!黒魔術で起きた問題を黒魔術で解決するつもりか!?」

 

本末転倒の返答に納得できないシュローは怒気を込めて言い返すが、そこから話し合いは泥沼化していった。

怒りが収まらないシュローに対して何を思ったのか、ライオスが平手打ちをぶちかましたのだ。すぐにハッとなったライオスが謝罪しようとした所をシュローの拳が壁にめり込み、互い罵倒を絡めた殴り合いが始まってしまう。

 

どうやらシュローは元々ライオスとは相性が良くないらしい。彼の主張をまとめるとライオスは出会った時から色々とおおざっぱで鈍感かつ間が悪く、しかも悪意がない分質が悪いと来ている。少し同意できる。

始めて指摘されたのか、ライオスはなんでもっと早く言わなかったと逆切れながら組み付き、察しが悪いだけだと言われて初めてできた友達で舞い上がっていたんだと答えながら拳を交える。

 

「あほらし」

 

まるで子供の喧嘩だ。こうなっては互いが気が済むまで殴り合わせるしかない。

 

「こんな事してる場合じゃないのに………」

 

争いの根源となってしまったマルシルが呟くが、同感だ。この状態で再びハーピーに襲われれば一たまりもない。

 

「マイヅル……だったか?仲間の治療の方は目途が付きそうか?」

「ノームと手分けしてやっているが、蘇生後に体力がなければ話にならん」

 

だろうな。蘇生や治癒を受けると身体のエネルギーをかなり使ってしまう。それを補填するにも飯がいる。今はセンシやチルチャックが共に食料を集めて軽食を用意してくれるという。暫く辛抱しているとセンシがお椀におにぎりと味噌汁を持ってやって来た。

 

「ありがとう」

 

礼を言っておにぎりと味噌汁を口に含む。少しずつ味わって全て食べ終える頃には、ライオスとシュローのマッチは最終局面を迎えていた。

 

ドカッ

 

「どうだシュロー!ここではしっかり飯を食って寝た俺の方が強い!」

 

どうやら終わったようだ。倒れたシュローとライオスの健闘を称える様にセンシが双方におにぎりを配っている。

 

「シュロー、お前はこれからどうする?」

「………地上に戻って、今回の事を島主に報告する。もうここには戻らないつもりだ」

 

普通の冒険者なら、そうするだろう。黒魔術の使用を秘匿する共犯者に進んでなろうという奴はいない。

シュローはその従者を見れば分かるが、元々いた国でもそれなりの家柄の人物なのだ。そんな彼がライオスに付き合って死地に赴いても利はあまりないだろうし。

 

「彼女と戻りたかった」

 

それから、シュローの独白が始まった。

ライオスに引きずられるようにパーティーに加入してから、とあるきっかけで彼女に恋をして一度は求婚までしたという。

彼女の魅力を赤裸々に語るのを見ると、それだけ心底惚れていたのだろう。それを伝えていなかった事を、心底悔んでいる。

 

「成程……ではそうファリンに伝えておく」

「…………」

 

あぁ、成程………確かにシュローにとってライオスは苦手だろうな。今のは俺でも色々とアレだと思う。

 

「……お前のそういう所が妬ましいよ」

 

ライオスとシュローの会話に一区切りがついたのを見計らって、シュローに再び声を掛ける。

 

「シュロー……一つ頼まれてくれないか?」

 

シュローの視線を受けて、俺は隣にいるガルクを撫でる。

 

「帰還の際、俺のガルクを連れて行ってほしい」

 

そう告げると、シュローは目を見開いた。

 

「いいのか?お前の従者だろうに」

「俺がこの迷宮に来たのは、とある調査依頼を受けての事だ」

 

予定ではもう地上に出て報告を送っているはずだったのだが随分と遅れてしまった。ガルクに報告書を持たせて到着しているだろう担当者に預ける位は出来る。これまでの活動の記録を送れば、報酬分の働きに応えられる。

 

「お前にはあの場で救われた恩もある。快く引き受けよう」

「ありがとう」

 

それからシュローの従者が帰還の術の準備に入るまで、待機する事になった。シュローとこうしてゆっくり話し合うのは、初めてだった。

 

「お前の戦いを見て………俺はああもファリンと切り結ぶことは出来なかっただろう」

「仕方ないだろ………相手が相手だ」

「いや………お前の戦いには、まるでその竜が乗り移っているような覇気があった」

 

シュローの目には、狩人の深紅の装備が映っている。ライオスから聞いたが、彼自身が討伐した竜の装備はまるで生きていた時代の竜の意志が宿っているようにも見えた。あの戦いはまるで竜同士の争いだ。

自分には、ああも命を投げ捨てるような戦い方はできないだろう。だから加勢する事も出来なかった。目の前にいる男は、恐らく迷宮の中でも屈指の実力を持つ冒険者で、自分よりも死地を超えて来たのだ。

 

「これから貴殿は?」

「暫くライオス達と行動を共にするつもりだ」

 

それを聞いて、シュローの中には安堵が広がった。

例え黒魔術でライオス達が迷宮に潜むことになっても、彼がそばにいれば魔物に殺されるような事は無いだろう。あわよくば、ファリンを打倒してこの迷宮から解放してくれるかもしれない。

 

「そうか」

 

 

 

 

 

 

 

それから皆の集まっているところに戻ると、ライオスが差し出した皿の上にある黄色い固形物をカブルーが受け取り、口に含もうとする現場だった。あれは………卵か?そんなものをどこから手に入れたのだろう。コカトリスを討伐した時に見つけたものだろうか。それとも合流したパーティーから分けてもらったとか?

 

「卵なんてどこから手に入れたんだ?」

「センシが見つけてきてくれたんだ――――――ハーピーの卵焼きだ」

 

…………………

 

キャハハハハハハハハ八!

 

四肢が鳥の醜いハーピーの汚らしい笑い声が脳に浮かんで過ぎ去っていく。アレを亜人系と形容するのは違うが、あれの卵を食べるとなると流石に抵抗がある。見れば、カブルーは表情が死にながらも口に含んだ卵焼きを噛みしめている。ライオスに取り入ろうとして魔物食に興味を示した振りを今更ながらに後悔したのか、既に遅い。彼を良く知る仲間は、背中から同情の視線を送っている。

まぁ、こればかりは弁護のしようもない。俺は丁重にライオスの誘いを断り、ハーピーの卵焼きを味わうイベントを回避してガルクの荷物を整理して必要なものだけを取り、報告書をまとめてガルクのバックにしまい込む。

 

「頼むな」

「バウッ!」

 

相棒とはしばしの別れだが、まぁやってくれるだろう。

 

 

マイヅルが帰還の術を完了して、治療や蘇生を終えた面々から次々に地上へと続く掛け軸に入っていく。地上では人間の蘇生は出来ない。致命的な傷を抱えたまま外に出れば蘇生できずに死んでしまうので、気を付けながら出ていくのを見送ると、シュローがライオスに一言かけて何かを渡してこちらに視線を向ける。

 

「………アイツの事を頼む」

 

基本的にライオスは悪い人間ではないのはシュローも分かっているのだろう。だからこうしてあっての日の浅い俺に頼んでいるのかもしれない。

シュローが去ると、次はカブルーがやって来る。

 

「色々とありがとう。貴方のおかげで死なずにすみました」

「あまり助けられた実感はないけど」

 

どうだろう。俺が出来た事など微々たるものだと思うが、こうして面と向かって感謝されることがあまりないので実感が湧かない。

 

 

対してカブルーは目の前の男……竜の鱗で出来た鎧を着こんだ狩人に対する警戒心が跳ね上がっていた。

彼の人間性に危険があるわけではない……いや、確かに魔物を素材にして装備品にする頭のおかしい所は確かに危険だが、ライオスの様に人に勧めないだけマシだ。

問題は、彼のもっと本質……根底に近い。

あの化け物と一人で対峙するだけの強さと覚悟、そして利があるならば討ち取った魔物すら素材として利用する合理性と躊躇わない狂気。

そんな彼がもしも狂乱の魔術師を倒した時……この迷宮に生きる全ての魔物を支配できる立場を得たなら、彼はこの迷宮を封じるだろうか。

迷宮を攻略する人間は、様々な欲を持ってくるものがいる。

日銭を稼ぐ者、迷宮の神秘を探求する者、地位と名誉を求める者。そういった人の欲望を迷宮は食らう。

 

一体彼は、どんな欲望を携えてこの迷宮を攻略するというのか。

 

………下手をすれば、ライオスよりもひどい状況になるのではないか?

 

『この魔物の毒は罠と組み合わせることで体内からわじわじわと侵食するな。採用』

『動く鎧の武装をもう少し強化しよう。此処にシーサーペントの毒があるからそれを剣に塗りたくって………』

『森ゴブリンに集団戦法とゲリラ戦を叩き込むか。ついでに魔物から造った武器と鎧を持たせて冒険者と戦えるように………』

『武器と装備は作っても使う人間がいないとなぁ………そうだ。オークに使ってもらおうかな』

『アハハ!竜の鎧の新作じゃあ――――っ!武器もあるぞ!』

 

これ以上考えるのは止そう。流石に初めて会った人にこんな想像をするのは流石に失礼だ。少なくともライオスと比べてもマトモそうだというのに。

 

「これから大変でしょうが……どうかお気を付けて」




モンハン童貞は2Gに捧げたので、ティガレックスには思い入れがあります。
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