ダンジョン武器   作:たか高菜

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新しいOPとED最高でしたね


夢魔とアイスゴーレム

マルシルを襲った彼女は、自らをイヅツミと名乗った。

元々はシュローの元にいたようだが、彼女は個人的な目的の為に古巣を離れてライオス達を付けていたようだ。

その目的は、自分の身体に懸けられた呪い―――自らを獣人と化した黒魔術を解き、人間に戻ろうというものだった。

何故ライオス達を狙ったかと言えば、その理由はファリンにあった。どうやら竜と融合した彼女を見て、マルシルが動物と人間の魂を掛け合わせた魔術に長けた人物だと誤認してしまったようだ。

そんな彼女なら自分の身体に懸けられた呪いも解けるだろうと希望を持ってきた彼女だったが、現実はそう甘くはない。

 

「ごめんなさい……それはできない」

 

魂とはよく卵に例えられる。肉体という殻が壊れてしまえば、中身の魂は漏れ出して二度と元には戻らない。

ファリンや彼女をこの例に当てはめると、一度混ざってしまった魂は二度と元の形にはならない。つまり―――――元の人間であった彼女には、もうできないのだ。

 

「え?は………え?じゃあなんでアンタ達は旅を続けてるんだ?」

 

てっきり彼女を人間に戻すものだと思っていたイヅツミは、自身の見当違いに困惑するしかなかった。

確かにファリンを元に戻すことは出来ないかもしれないが、あのまま狂乱の魔術師の命令に縛られた彼女を放っておけばいずれ冒険者を殺すかもしれない。ライオスとしても、あの状態のまま放っておけないというのが主な理由だ。

そしてイヅツミと出会う事で、迷宮の支配からファリンを開放すれば、元の人格を取り戻せるかもしれないとう可能性を見出せる。

そしてもう一つの希望は、マルシルよりも古代魔術の扱いに長けた狂乱の魔術師ならば、魂の分離に関する魔術に関して知っている事があるかもしれない。

そういう訳で、イヅツミもパーティーに同行する事になったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めでたく一人仲間が増えたにも関わらず、幸先はあまり良いものではなかった。

迷宮の深部へと進むにつれて、マルシルの体調が徐々に崩れていったのだ。目立った外傷はなく、精神的に衰弱しているような感じだ。

少しでも彼女を休ませようとライオスと共に見張りを変わったりもしたが、そのうち寝息は酷く魘される声に変わってしまう。

 

「これは……夢魔か」

 

睡眠中の人間に取り付いて悪夢を見せることで感情を喰う魔物だ。精神的に弱っている人間は格好の的で、なかなか夢から抜け出せなくなる。無理に起こそうとすると、精神面で障害が残る可能性がある為に叩き起こすと逆効果だ。

 

「ファリンの方法を試してみよう」

 

その対処法は、彼女を苦しめる夢の中に入って彼女を夢の中から呼び起こすという手法だった。鎧を外して彼女の布団に頭を載せたライオスは、そのまま眠りに落ちてしまう。

 

「………俺じゃなくてよかった」

 

マルシルには悪いが、そう思ってしまう。魔物の標的がマルシルでよかったと捉えられても仕方ない発言に訝し気な表情をするチルチャックやセンシに、弁明する羽目になってしまう。

 

「いや、悪夢というのは本人の一番のトラウマの追体験というのが常道だろ?」

 

俺の場合、それが常人のものと比べてかなり質悪いのではないかという自信だけが妙にあるのだ。多少の助けでは抜け出せないかもしれない。

 

「そんなにひどい目に遭ったのか」

「まぁ………な」

 

ここに来る前も、ほとんど迷宮で過ごしていたようなものだが。依頼を受けて他のパーティーと協力して強い魔物を討伐する。常に死と隣り合わせて、悪魔とも思える存在と対峙した事もあった。

 

「心当たりがあるのはとある魔物との戦いかな………そいつを討伐するのに一か月、いや、二か月かな?それくらいかかった」

「マジかよ………」

 

チルチャックが動揺を隠すことなく呟いてしまう。確かによくあれを生き残ったと思う。

無論、迷宮の外から来た多くの人々の助力を得て成した事だが、あの魔物は迷宮の中でも最上位………最高傑作とも呼ぶべき存在で、本当に死ぬ思いをした。

 

「この鎧も剣も、その戦いの道のりで生まれた産物なんだ」

 

目には目を、魔物には魔物を。

強力な魔物を討伐するには、俺には魔術的な知識も技術もなかった。出来ることと言えば知恵を絞って魔物という素材から武器を造り、自分の力を伸ばすことだけ。

普通の武器では通用しない存在でも同じ魔物なら有効打に成りうる。

魔物に魂を売ったのかと糾弾されようとも、化け物と蔑まれようと、誇れる俺の生き抜いてきた証だ。

 

「だけど、もう二度とあんな目に遭いたくない」

 

ライオスが眠っていてくれて助かった。あの魔物の事を質問攻めにされても、答えようがなかったから。

 

「そりゃそうだ」

「誰にでも、語りたくない思い出があるからな」

 

チルチャックもセンシも苦い記憶がよみがえったのか、苦笑を浮かべてライオスとマルシルを見守るしかない。

やがてライオスが起き、続いてマルシルが悪夢から目覚めた。二度寝に突入しようとする彼女を引き起こして彼女の枕を開くと、中から大量の貝が出てくる。

 

「コイツが人の枕に潜んで悪夢を見せたりするんだ」

 

それにしてもすごい量だ。小さいひと鍋分あるが、かなり前から潜んでマルシルの精神を蝕んていたのかもしれない。恐ろしい事だ。

念のためにみんなの枕の中身を確認した後に、新たに手に入ったその夢魔の調理に掛かる。

といっても、普通の貝と変わらない。砂抜きをした夢魔をバターとワインを足したフライパンで蒸し焼きにして、最後に醤油をひとさし。蓋を開くと湯気と共に何かの光景が現像される。

 

「夢魔が食べた夢が蜃気楼になったんだ」

「へぇ」

 

そんな生態があるとは知らなかった。つまりこれはマルシルの夢というワケか。

映像の中で本棚に囲まれた彼女は、今と比べて随分と幼い。人形を抱えて周囲を見渡す彼女の元に一匹の犬が現れ、共に駆け出していく。

 

「そうそう、何かか逃げ出してた時、一匹の犬が出てきてその子と宝物を探す冒険に出るの!」

 

楽しそうに語るマルシルは、さっきまで悪夢に苦しんでいた様子は全くない。ライオスによって悪夢からは解放されたようだが………悪夢の影がない所を見ると、夢魔によって喰い尽くされたのだろうか。

 

「夢魔にも好みがあるのかな」

「どうだろう………まぁ、楽しい夢観に貢献できたのならよかったよ」

 

ライオスはそう締めくくり、夢魔の酒蒸しを口に頬張った。

 

 

 

 

 

 

さて、話を旅に戻そう。

イヅツミと俺との関係だが、特にいいも悪いもない。

正体を明かした彼女は、確かに人間離れをした姿をしていた。全身に猫のような毛並みが出来上がり、尻尾もある。その相貌は猫と人間の中間にあって、戦闘中しなやかに飛んで攻撃を回避するその姿は猫そのものだ。

彼女の俊敏な動きに魔物が気を取られている隙に、俺が大剣で重い一撃を食らわせる。そういった戦略を立てられることに気づくとすぐに彼女との打ち合わせを行ったのだが、妙に警戒されている。

 

「魔物に魂を売るような奴は信用できない」

 

これはまたひどい言われようだ。

 

「その鎧も剣も、魔物から造ったのだろう?そんなものを着ていればいずれ呪い殺される」

 

あぁ、この類か。

穢れ信仰というか、魔物を食べたりすると自身も魔物になってしまうという怖れから発する信仰はこの世界に広く根付いている。

 

「俺の装備は確かに特殊だが……他にも魔物から造った装飾品はありきたりだろ」

 

例えば、ネックレスがある。竜の鱗から造られたネックレスは強靭で、鱗の放つ美しさから結束と繁栄の象徴として重宝される地域がある。

マンドレイクは様々な治療薬の材料として使われるし、スライムを使った特産品を出す地域もある。

無論、魔物から造っている分俺の装備は街で売られているものと比べて強力だ。その分扱いには最新の注意を払わなければいけないし、誤れば自分や仲間を傷つけることになる。その点を注視すれば、確かに呪われているかもしれない。

だが、所詮は武器だ。他のものと同様に使いようなのだ。

呪い殺された人間が一人でもいれば、話は違っていただろうけど。

 

「お前も試しに武器でもどうだ?」

「要らん!」

 

一蹴されてしまった。そんなに強く拒否しなくてもいいじゃないか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後一夜を明かして迷宮の最深部にたどり着くとそこは広いドーム状の広間になっていた。雪が降り積もる地面からライオス達がここで炎竜と遭遇して紛失した荷物を回収して野営できる場所を探していると突如地面から身体を氷で形成したアイスゴーレムが出現。

咆哮によって天井に出来た巨大なつららが剣となって降り注ぐのをライオスはマルシルを庇って負傷、俺は剣を盾にして防ぎ、ゴーレムの巨体を飛び跳ねるイヅツミに合わせて大剣を振るい、ひとつずつゴーレムの手足を切り溶かして最後はチルチャックが発見したコアを破壊し、ゴーレムは活動を停止する。

 

「ふむ」

 

イヅツミの機動力はかく乱に使えるが、如何せん攻撃力がないのが難点か。

その後、広間の一角にあった大きなくぼみに入った俺達は強い熱を発する魔法陣を囲うように寒さをしのぐことになる。先の戦闘で鎧の中にも雪が入り、皆全身が寒さで震えていたが、入り口を密閉する事で熱気がこもり、だいぶ楽になった。

その合間に、チルチャックに願い出た。

 

「その双剣、イヅツミに渡してもいいか?」

「確かに……俺が使うよりかはいいか」

 

チルチャックも自分よりイヅツミの方がこの双剣の威力を発揮できると判断したのか、渋る様子もなくこちらに双剣を返してくる。

チルチャックには悪いが、この双剣はイヅツミ用に調整して彼女に渡そう。代わりと言っては何だが、彼の使う弓をシーサーペントの骨から組み立てたものを使ってもらう事になった。

蛇類の骨はほとんど背骨で形成されていて、肋骨は柔軟な動きを可能にするためにしなり、強靭だ。その一つを削って形成し、弓として使う。弦が切れてしまっても打撃武器として使えるので、自衛に関しても問題ないと思う。

双剣の代金は、弓の改造費に立て替えられた。

 

そうやって料理を待っている途中、センシがアイスゴーレムの中にあった氷漬けの魚を解凍しようと魔法陣に近づけると大量の蒸気が発して洞窟の中がサウナと化す。暫く風呂にも入れなかったので、サウナとして利用しようというマルシルの提案で、全員が装備を脱ぐことになる。

 

「わっ………」

 

マルシルが声を上げてしまったのは、俺の身体を見た為だ。全身傷だらけで中には肉が抉れた傷跡も残っている。

魔物に噛みつかれたり、鎧ごと爪で抉られたりと、死にかけた思い出がたくさんある。

そのどれもが、まだ未熟者の時、迷宮に潜って魔物と戦ってきたときに出来た傷だ。

 

「まだ回復魔法が使えなかったんだ」

 

他人には不快に映るであろうそれらは、一つ一つ記憶として根付くものだ。それをさらけ出してしまう事には恥じらいは無いが、この場にいる人間をお目汚しになるのは少々申し訳ない気持ちになった。

イヅツミも性別では女性に当たるのだろうが、全身を毛皮に包まれた身体で裸になっても喜ぶ者はいないと隠す様子もなかったが、マルシルが慌てて彼女の身体を隠す。

如何せん、ここには魔物に対して異常な興味を示す変態がいるんだ。

 

「せめて乳首の数を………!」

 

うるせえ黙ってろお前。

センシとチルチャック、三人がかりでライオスを拘束し、幾重にも頭部に布を巻きつけて視界を潰し終えると、センシが調理を追えるのを待つ。

やる事と言えば、シェイプシフターの皮に残った脂を取り除くことや、チルチャックの弓製作シーサーペントの骨を削る事だ。

 

「これっ勝手に食べ始めてはいかん」

 

見れば、完成した蒸し魚をイヅツミが噛り付こうとした場面だった。自分が敵を仕留めたのだから、一番に食べる権利があるといきり立つ彼女に、センシは毅然としていた。

 

「私が仕留めたんだから、一番に食う権利がある!」

「食事は全員が揃って食べるものだ」

 

これまでの交流で分かった事だが、イヅツミは協調性というものが皆無だ。ロクな環境で育たなかったか、それとも矯正の声に聞く耳持たなかったのか、偏食家でセンシの目の前で料理を床に捨てたりもしていた。そういった態度を、センシは何とか正そうと努めている。

センシの食に対するこだわりは強い。イヅツミがこれ以上何を言ったとしても、曲がる事は無いだろう。

こうして出来上がったのは、シェイプシフターの肉が入った茶碗蒸しと魚の蒸し焼きだ。

 

「俺がこの前作った奴と同じか」

「少し違う。夢魔と魚の骨から取っただしを使っている」

 

成程、それならば魚介の新鮮な旨味が出ているだろうし、コップを使っているから瓶と比べて取りやすい。

有難く頂戴すると、確かに俺が造ったものと比べて格段に美味くなっている。茸にシェイプシフターの肉が噛み応えのアクセントになって、味に深みが増しているのもいい。

 

「おいイヅツミ」

 

その最中、チルチャックは発掘した荷物にあった破れたカバンを縫い合わせたものをイヅツミに手渡した。先ほどまでいがみ合っていた二人だが、ゴーレム退治の再協力したことで心境に変化が出たのだろうか。

 

「俺は口が悪くてね。知らない人間との団体行動なんて暫くは窮屈だろうが、慣れればいい面も出てくるぜ」

 

彼なりにイヅツミを迎え入れようというのだろう。それに合わせるように、俺もイヅツミに双剣を差し出す。

 

「コレ、魔物から造ったんだろ?」

「そうだ……気持ちは乗らないかもしれないが、これがあれば強い魔物とでも戦える」

 

先のゴーレム戦がいい例だ。

先の戦いを思い出したのか、イヅツミは渋々とそれを受け取った。

少しだが、イヅツミと距離が縮まったような気がした。




狩人が悪夢と形容する対峙したモンスターは一体何でしょうね。出典はモンハンですけど当てられる人はいないと思う。多分、恐らく、メイビー

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