ダンジョン武器   作:たか高菜

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続きました


炎竜討伐

作戦は決まった。

まずは前衛であるライオス達がレッドドラゴンを引き付ける。その間にレッドドラゴンの胃袋の隣にある燃料袋を空にさせ、レッドドラゴンの攻撃力を減衰させる。待機しているマルシルが予定ポイントにレッドドラゴンに誘導した時に建物を爆破。下敷きになったレッドドラゴンの喉元に攻撃を仕掛けるという流れだ

 

「気づいた、走れ!」

 

ライオスが鍋を叩いた音が響き、レッドドラゴンが此方に気づく。此方が直ぐに走ったというのに、向こうは直ぐに追いついてくる。

 

「因みに炎竜は最速で時速60キロ!」

 

具体的な数字を言うな!余計気圧されるだろう!

多少はこの入り組み狭い路地のおかげで制限されるだろうが、此方との速度差が決定的なのは明らかだ。

やがて直線の通路に差し掛かり、角から炎竜の顔がぬっと伸びる。予定ではこの直線でレッドドラゴンのブレスを誘う事になっている。瓦礫で拘束した時にブレスをされれば近づけないからだ。

 

カンカンカンッ

 

この規則的なタンギング音は、炎竜のものだ。口内で火花を起こし、燃料に引火させることで炎のブレスとして対象物を焼き尽くす。

ライオス達はセンシの鍋を楯替わりに身を守り、俺も大剣の影に隠れる様に身を縮める。

 

「―――――っ」

 

視界が真っ白に染まり、息も出来ないほどの炎の壁が襲い掛かる。防御魔法がなければ息も出来なかっただろうそれを受けても、赤いワイバーンから造られた大剣は持ち主を守り切った。

 

「走るぞ!」

 

合図を送れば、鍋を持ち直して全員が駆けだす。アダマンタイトで出来た鍋といっても炎を跳ね返すわけではない。均一に熱を通す為に高温で鍋を握れない事を危惧した俺は、持ち合わせの布をミトン代わりにしようと提案していたが功を奏したようだ。

 

「そら、もう一回だ!」

 

今度のブレスは丁度家の中に入る扉の前だったので、そこに突撃するように雪崩れ込む。すんでのさでブレスが過ぎ去り、一瞬肝を冷やしたがまだ走れる。

 

「あちち!素手で鍋に触っちまった!」

「よし、このまま燃料を空にしてやろう!」

 

ライオスの奮起と共に、四人は更に走り出す。此処迄は対炎竜討伐作戦は順調だ。あとはマルシルの魔法次第だが………

 

あとは二手に分かれてそれぞれ体力を温存させ炎竜の消耗を狙うはずだったのだが………

 

「あれ!?」

 

なんか、毎度毎度俺の方に来てないか!?

 

「おい!アイツなんかお前の方ばかり来てないか!?」

チルチャックも気づいたのだろう。奴の目は執拗に俺ばかりを狙ってくる。

 

「もしかしたら、これの所為かもな」

 

原因があるとすれば、俺の纏っている装備だろう。

この竜の鱗で出来た装備は並大抵のモンスターならば威圧する効果を持つが、炎竜のような強力な魔物に対しては相手を威嚇、挑発してしまう事が多々あった。

そのおかげで炎竜の注意が此方に向いてしまっているのだとしたら。

 

「そういう事は先に言え!」

 

チルチャックの罵倒を他所に、別れていたライオスとセンシに合流する。

 

「作戦変更だ!この鎧のおかげで、炎竜の奴コイツしか狙わない!」

「そうか……同じ竜に見えているから、俺達よりも警戒するのか」

 

ライオスが納得する。とにかくこのままでは俺だけが狙われて肝心の時に使い物にならなくなる。

災わいブレスを誘発させを繰り返し、十分威力を殺いだことを確認した。

マルシルの許へ向かう。屋根に上ってこちらの様子を伺う彼女にも、こっちの状況は確認できるはずだ。

 

「墜とせーっ!」

 

走りながら全員で身振り素振りでそう伝えるとその熱意が伝わったのは、通り過ぎた建物が爆発魔法によって崩壊し、轟音と共にその下を通ろうとした炎竜を巻き込んで落下する。

 

「よし!後は―――――」

 

竜の逆鱗を仕留めて終わりだ。

そう思って振り向き、大剣を突き立てようとした矢先にそれが目に入って身体が止まる。炎竜の身体は瓦礫に潰されて、微かにその鱗が見える程度だったのだ。

 

――――が、瓦礫の量が多すぎだ………!

 

しかも、炎竜がダメージを受けた様子もなく体を起こし、炎竜の身体に山積した瓦礫が一気に押し上げられて山のようなそれが雨の様にこちらに降りかかる。

 

「うわぁあああああっ!?」

 

幸い、瓦礫に押しつぶされる事は無くレンガが少し身体に被さっただけだ。炎竜は自分が起こした煙に俺達を見失い、地面に顔が着く近さでこちらを探している。

 

腹の一にいる俺では届かない。首元にいるライオスならば、あの剣を突き立てられる。頼むぞライオス―――――

 

パンっ!

 

あ?

 

ヒュンヒュンと空を切る音が響き、ライオスの剣が地面に落ちて金属音が空しく落ちる。まるで炎竜から逃げるような意思をもって、ライオスの手元から剣が弾けたのだ。

 

………は!?

 

 

「ライオス、チルチャック!上じゃ!」

 

炎竜が二人に気づき、慌てて二人は腹部へとやって来る。その間キレ散らかしたチルチャックはライオスに罵詈雑言を浴びせている。

 

「なんだよアレ!どういう事だ!?」

 

なんで剣が意思を持ってるんだよ!?

状況は最悪だ。唯一の有効打は俺の武器だけとなり、ライオス達は実質丸腰になってしまった。マルシルの爆発魔法も集中しなければ有効打を与えられない。

こうなったら………!

 

「すこし時間をかせいでくれ!」

「ちょ、オイ!?」

 

炎竜の目の前に飛び出すと、奴は狙いを澄ましてタンギングを始めるがその前にヤツの目の前にこぶし大のモノを放り投げる。

 

 

「伏せろ!」

 

次いで起こるのは、目を潰す程の閃光だ。炎竜はモロにそれを喰らい暴れまわり、周りの建物が崩れていく。

 

「うわぁっ」

 

瓦礫に当たらないよう必死になるライオスだが、まだ勝機を持っていた。

これで炎竜の視界を奪い、その間にヤツの喉元まで迫って大剣を叩きつける気だな。

そう期待して炎竜の前にいた男の方へと視界を向ければ

 

赤色の鎧をまとっていた男は、忽然と姿を消していた。

 

に………逃げやがった!

 

 

 

 

 

「マルシル!」

 

炎竜の視界から逃れて俺がたどり着いたのは、マルシルの許だ。

 

「ど、どうしよう!あの攻撃、全然効いてなかったみたいだし………」

 

自分の攻撃が有効打になっていない事実に動揺している彼女の頬を軽く叩き、落ち着けと諫める。

 

「まだ全滅する事が決まった訳じゃない!それより、炎竜に有効打を与えられる爆発魔法にかかる詠唱時間はどのくらいだ!?」

「えぇっ………た、多分三十秒くらい?」

 

かなり時間が掛かるな。だが俺が考え付く作戦を考えれば彼女の協力は必須だ。

 

「マルシル。これから伝える事をよく聞け」

 

覚悟を決めろよ。お前の力が成功の鍵なんだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

打ち合わせを終えて直ぐにマルシルは所定の位置に。俺は屋根に上って炎竜の背後から忍び寄っていた。閃光玉から回復した炎竜は再び腹部でウロチョロしているライオス達に襲い掛かっている。炎竜は下がる度にライオスも後退し、このままでは通路の先にある広場へと出てしまう。なるべく急いだほうがいいな。

 

ヤツの視線は足元に向いていて、屋根上にいる俺に気づいていない。反対側の建物にはマルシルが配置につき、詠唱の準備に入っている。

 

よし……行くぞっ!

 

屋根を滑り落ちないように駆けだし、炎竜へと接近する。チャンスは一度。失敗すれば建物から落下するだけだが………

 

「うおおおおおっ!」

 

全力で屋根から飛び出し、身体が空中を舞う。位置関係は完璧で目の前には炎竜の頭部が広がっている。背中の大剣に手を掛け、奴が俺に気づいて顔をあげた時にはもう遅い。

 

ガキン………ドオン!

 

全ての力を載せて叩きつけた大剣の一撃とマルシルの爆発魔法の最大火力がヤツの交互の角に直撃し、脳を揺さぶられた炎竜の身体がぐらりと揺れる。

炎竜はその身体を鱗で守られているが、無敵ではない。頭部から伸びる角は頭蓋骨に直接繋がっていて、そこに強い衝撃を叩き込めば脳震盪を起こす。

寝ている竜の頭部近くに爆弾を置くのも、同じ理由だ。

 

攻撃は成功した………だがこれで俺は使い物にならなくなる。

 

 

「グアッ…………!」

 

着地と同時に両足から嫌な音が響いて痛みが走る。流石にこの高さから降りれば防御魔法をもってしてもただでは済まない。恐らく足にひびが入ったのだろう。手の方もツノに弾かれないように力を込めたおかげで、しばらく剣を握れそうにない。

崩れ落ちる足の痛みを堪え、叫ぶ。

 

「剣を取れ!炎竜が崩れるぞ!」

 

上を見れば、炎竜の身体と頭部が壁に激突して堕ちていく。レンガが崩れる中でセンシはすぐさま駆け出して地面にへばりついていた剣を引きはがし、ライオスに投げ寄越してその身体は崩れ落ちる炎竜の身体の下敷きになってしまう。

 

「センシ!」

 

だが、ライオスは分かっている。仲間の救出よりも、今は炎竜を仕留めることが先決だと。

今度は逃げられないようにしっかり握りしめたライオスが瓦礫をよじ登り、その視界に炎竜の喉元を捕える。

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

逆鱗に突き立てられた剣の先は深々と竜の喉元に食い込んでいき、剣先から血が垂れていく。ライオスが顔を真っ赤になるまで力を込めて食い込ませた剣は致命傷に至り、竜の口からダラリと舌が垂れた。

さっきまでの喧騒から静寂が周囲を包み込み始め、微かにライオスの荒れた息が響く。

 

「や………やったのか?」

「あぁ………」

 

壁際まで俺の事を引きずっていたチルチャックが期待を込めて漏らす。少なくとも逆鱗を貫かれて死ななかった竜は聞いたことがない。

 

「大丈夫か………?」

 

疲労感丸出しのライオスが駆け寄って来る。炎竜から逃げ回りさっきまで炎竜を仕留める為に色々と奮闘した男の方がいろいろとヤバそうだが。

 

「センシがレッドドラゴンの下敷きになった。すぐに取り出して蘇生を――――」

 

彼が言い終わる前に、見た覚えのある手が炎竜の下から這い出て来た。

 

「センシ!?」

 

ライオスもまさか炎竜の下敷きになっていて生きているとは思わなかったのだろう。ドワーフの頑丈さ故か。それともマルシルの防御魔法の効果によるものか………どちらにせよ生きていてよかった。一足先にガルクがセンシの服を掴み、引きずり出そうとしている。

 

「ったく、無茶しやがって……正直逃げたかと思ったぜ」

「炎竜を倒すにはこれ位しか考えられなかったんだ」

 

実際、成功しただろ?そう応えるとチルチャックはため息をついて自身もセンシの様子を確かめにむかう。ついでに建物から降りて来たマルシルが近づいてくる。

 

「足にひびが入ったみたいだ。治療魔法をかけてくれないか」

「う、うん」

 

 

 

 

さて、炎竜討伐は成した。あとはファリンの救出と使える素材を剥ぎ取っていでででででででででっ!?

 

そ、そうだ!治癒魔法は急速に体の傷やダメージを回復するけど、中で戻ろうとするから激痛を伴うんだった!




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