ブラック企業勤務、アラサー女探索者の迷宮探索 作:Yunoko
《三尾の翼竜攻略》
ステラモールの第五階層に出てくる階層ボスのこいつは、割と強い。
攻撃手段もそれなりにあり、近接攻撃にも魔法攻撃にも耐性がある。
生命力もそこそこで自動回復もあるもんだから、結構手強い。
バランス良く、隙も少ない敵。
だが、探索者として上を目指すならコイツ程度は倒せないとお話にならない。
特に厄介な炎のブレスだが、魔法で壁を張る事で防ぐのが主流だ。
空を飛んで翼や三本の尻尾で巻き込む攻撃に対しては、まともに受けるのは危険。
しかし、ある程度近接戦闘に長けた探索者であれば、意外と見切れるらしい。
空を飛んでいる状況がほとんどなので、対空攻撃は必須。
もしくは、かなり無茶だが滑空してきているところを攻撃して、叩き落とすのが基本的な対策といえる。
実は三本の尻尾の付け根に弱点があり、そこを攻撃すると怯む事で知られており、風魔法などで切り落とすと飛行能力も目に見えて低下するらしい。
だが、空を飛んでばっかりの翼竜にどうやって当てるんだという問題が生じる。
結局、防御手段を整えておいての短期決戦でのゴリ押しが一番手っ取り早い。
探索者の総合力が問われる相手。
初級ダンジョンの中ボスにしては強い気もするが、中級以上のボスになると初見殺しや一撃必殺がデフォなので、分かりやすく防ぎやすいだけ、かなり優しい相手なのである。
レベル設定のひどい世界観だよ。
《ステラモールダンジョン》の第四階層、その床を姫華が爆破し、飛び降りる時の事。
白百合桃香は、静かに呟く。
風の精霊達に向けて、協力を仰ぐためだ。
桃香一人であれば、身体を宙に浮かせるくらいは難しくない。
しかし、自分以外にさらに二人浮かせるとなれば、そうもいかない。
ましてや、会社の上司であり、敬愛する先輩である姫華がそこに含まれるのだ。
失敗しないのは当たり前で、細心の注意を払ってでも丁寧に浮かせねばと集中するのであった。
「分かってる? 絶対に浮かせてちょうだい。失敗なんてありえないから。ホントにありえないから! 霜月さんもそうだけど、姫先輩はもう念入りにゆっくりと下ろして! 下手な魔法だなんて失望されたら、明日から顔見せれないよぉ……!!」
集中する。
自分の身体から力を抜く事からイメージし、両手をだらりと下げる。
無駄な力を一切合切入れず、自然に委ねるように。
「プレオ!」
極端に詠唱の節を要約するとこのようになる。
余人であれば、この一単語が聞こえる程度だが、精霊言語に長けた者であれば、高速で詠みつづける桃香の真音を聴きとれるだろう。
「私達の体重は軽いの。当たり前でしょ? まっさか、私達の誰かが太ってるなんて言うやついるっ? いないよねぇっ? 周りに聞くなり、女の子の平均体重調べてからそんなの言ってもらえる?? 50㎏超えたらデブとか思ってるやつは、ちょっとネットで調べるくらいしてから言ってくれる? ちなみに私は40前半……いや、背低いし、チビだし……あぁ、とにかく浮かせるように!! 落としたら怒るから!」
やけに感情の籠った詠唱を終えた時、桃香の額や頬を冷たい雫が流れた。
時間にすれば一分すら経っていない短時間、その僅かな時間にどれほどの集中を込めたのか、見て察するに余りあった。
「しゃぁっ……! あっ……」
桃香が思わずガッツポーズをし、慌てたように拳を引っ込める。
こちらを見やり、目をほんの少し瞬かせる姫華が見えてしまったからだ。
だが、身体を浮かせるための詠唱は成功した。
既に浮遊感を覚えているからだ。エレベーターに乗って上昇している時のような感覚。
ここから下に落ちれば、さらに強い感覚を味わうだろう。
「モモ、ありがと。上手に出来てる」
「えへへ……気合い入れましたよぉ~」
姫華が柔らかな笑みを浮かべ、感謝を述べる。
その言葉に、桃香は感極まる思いだった。おそらく顔も紅潮しているはずだ。
泣いていいなら、この場で喜びの涙を流していたかもしれない。
姫華はどんな些細なことでも、成功すれば褒めてくれるし、小さな助力であっても感謝の気持ちを伝える事を忘れなかった。
このくらいいつでもするのに~と水臭いなんて思いつつも、それでも褒められれば照れるし、「ありがとう」と言われる度に胸の中が温かくなるような気分になる。
姫華と一緒に探索をしている時は、120%のポテンシャルで動けていると桃香は自認している。
実際にそうであるかは真偽明らかではないが。
「モモは、下に行ったら霜月さんと一緒に動いてくれる?」
「分かりましたぁ!」
「で、騎士団の人達と合流したら、
「あの魔法……オッケーです! 頑張りますっ!」
「うん。頼りにしてる」
霜月がきょとんとしてはいるが、姫華が何を言わんとしているのか、桃香には伝わっている。
そんな事よりも。
姫華は今、なんといった?
頼りにしてる? 桃香だけが頼り? 桃香が私の無二の相棒?
聞き間違えだろうか? 桃香は己の聴覚を疑った。
事実聞き間違えであり、思い違いであり、勘違いが多分に含まれている。
だが、この思い込みはさらに彼女の高揚感を高めていく。
頬が熱くなり、頭の方も茹でるような感覚になりつつも、さらに気合いを込める桃香であった。
それから三人は姫華が並べた硝子玉の中心に立つ。
これから、直接第五階層へ突入するのだ。階段を用いず、床をぶち抜いていくという荒業によって。
「じゃ、行こうか…………貫き、破れっ!」
姫華がそう言うと、床に並べられていた硝子の玉達が輝き始める。
それから次いで、炸裂。
下へと爆ぜていくにつれ、衝撃が大きくなり、音も振動も強まっていく。
「そろそろ崩れるみたい。じゃ、二人とも。くれぐれも気をつけて」
床が崩れ落ちていき、暗闇の中をふわりとした浮遊感に包まれていくのは違和感でしかない。
(ひっ、お、落ちる。エレベーターが突然落ちる時もこんな感じなのっ??)
内心、恐怖や不安が募りつつ、見当違いな想像を膨らませる桃香。
ただ、そうした感情はいつまでも続かなかった。
一緒に落ちている先輩が表情一つ変えていないからだ。
(姫先輩がいるんだからっ。心配いらないっ。怖がるな、私っ)
姫華が傍にいる限りは、恐怖だの不安は抑え込める桃香であった。
さて、周囲一帯は暗闇だ。真上と真下だけに光が見える。
緩やかに、けれど着々と落ちていく。
真下に広がる光が近づくにつれ、第五階層の全容が見えてくる。
(ここが第五階層……!? 遊具みたいなのいっぱいあるけど……)
《ステラモール》の第五階層を直接見るのは初めての桃香。
そこはダンジョン化する前の、ステラモールの屋上遊園地そのものだった。
遊具が要所に置かれ、本来天井があるべき場所には澄み切った青空が、屋上の周囲にはかつての月見町の町並みが広がっている。
姫華であれば感慨に耽ったかもしれないが、生憎と桃香が物心つく前にダンジョン化した場所だ。
遊ぶ人のいない遊園地を見ても、微かに寂寥感を覚えるくらいだった。
(あれが三尾の翼竜!? あんなでかいのっ!?)
それよりも、向こうから飛んで接近してきている物体の方が気になった。
如何にもなドラゴンといった厳めしい頭部に、羽ばたく広い翼、鋭い棘が生えた三本の尻尾、巨大な体躯。
あれが、階層ボスである《三尾の翼竜》かと桃香は目を瞠る。
初めて見る階層ボスの姿に、そこから発せられる咆哮に、迫る威圧感に桃香は恐怖を感じ、思わずぶるりと肩を震わせた。
(怯むな! 私が自信をなくしたら、風の魔法が弱くなる!!)
負けるか、と桃香は瞳に、身体に力を入れる。
翼竜を見据え、次いで傍にいる姫華へと視線を向ける。
「……」
姫華は何も言わない。
ただ、小さく笑みを浮かべ、こくりと頷くのみだ。
だが、それで十分だった。
この状況でも、憧れの彼女に焦りだのは一切みられないからだ。
桃香は安心して、集中する。三人が緩やかに地面へと足を下せるように想像する。
「久しぶり……のご挨拶にまずは一発ッ!」
そうこう言っている内に、姫華がありったけのビー玉を翼竜目掛けて投擲する。
幾つもの色彩を伴ったそれらは、流星群さながらに飛来し、翼竜へと吸い込まれていく。
続く爆散。炸裂。轟音。
続けざまの爆発は大気を振動させ、轟音が追従するように響いていく。
燃え盛り、弾ける爆炎は見事に翼竜を包み、次なる行動の暇さえも与えぬ。
(綺麗……)
場違いな桃香の感想とは裏腹に、けたたましい破裂音が第五階層の空に響き渡る。
(もしかして……今ので倒したんじゃ……)
この一撃で翼竜が倒されたのではと、桃香は期待を込めた視線を姫華へと向ける。
しかし、当の姫華自身が警戒を解いていないのが見てとれ、自分の考えが甘い事を知った。
さらに姫華は掌に載せていたビー玉達へと声をかけている。
「ビー玉達、ここに私達以外の人間がいるから捜してくれる?」
「ア、ハ、ハイ……ワタクシビーダマ、サガシ、イキマス」
掌に載せたビー玉へと囁くと、姫華はそれらをゆっくりと下へ放っていく。
放たれたビー玉達がそれぞれに弧を描くような軌道を描きつつ、第五階層内を巡っていった。
(ビ……ビー玉が喋ってる…………!!)
ビー玉が片言で応じた事に、内心驚く桃香であった。
命なき物体にも命を吹き込む言霊、なんてフレーズを誰だったか言っていたが、実物を見てしまえば信じざるをえない。
それを容易く行ってみせる姫華にも、あらためて感歎の念を禁じえなかった。
「モモ」
「はっ、はいっ! どうしましたか、姫先輩?」
姫華から声をかけられ、桃香は弾かれたように応答する。
「探知魔法をかけたビー玉達が白の騎士団を捜してくれるから、あとはよろしくね」
「合点ですよぉっ!」
「霜月さんもお気をつけて」
「え、えぇ。如月さんもどうか、ご無事に」
内心で、ビー玉達が捜してくれたとして、どう教えてくれるのだろう? などと思いつつも、桃香は風の精霊達へと語りかける。
「そろそろいいよ。ありがとうね、無理させて」
身体に纏わっていた浮遊感が解け、桃香と霜月の二人が先に地面へと足を下ろす。
ととっ、と桃香が態勢を崩しかけたのは、急に重力が戻ってきた事への違和感だろう。
「あの遊具の下を通りつつ、確認しましょう」
「はっ、はい」
霜月の先導に従い、桃香も後ろを付いていく。
頼りなさげというか、優しくて戦いに向かなそうな印象の拭えぬ霜月であったが、翼竜と姫華が後方で戦闘をしている中で、動揺するそぶりも見せず、冷静に周囲へと視線を巡らせていた。
この状況において冷静さを失わないのはベテランゆえか、と桃香は思った。
初対面でのマイナスのイメージは既に払拭されつつある。
ここにいるはずの《白の騎士団》のメンバー達も、この状況を把握しているはずだ。
この機に乗じてどう動くべきか判断を下している頃だろう。
(姫先輩……)
姫華が負けるはずがないと確信に近い思いを抱いていても、やはり心配にならぬといえば嘘となる。
ほんの少しだけと振り返った時、姫華は小さな泡をいくつも連ね、幾重にも円を描くように纏わせていた。
「……あれって、水魔法ですかね」
「分かりません……あれだけの数を操作するのは、相当な魔力と技術が必要だとは思いますが……」
桃香が思わず問いかけ、霜月もそれに律儀に答えた。
実際、霜月の知っている騎士団達で、あれだけの水球(?)を同時に操る者は見た事がない。
水の柱を出すとか、高圧力でのレーザーじみた水魔法を放つ者であればいるが、それとは違う次元での高等技術が求められるはずだ。
なにせ、一つ操ればまとめて動くという類の魔法ではないのだから。
「えっと、モモさん?」
「へっ? はい?」
「あっ、すみません。そういえば、モモさんのお名前をキチンと聞いてなくて……モモさんとお呼びしてもよろしかったですか?」
この状況の中で暢気な事を……と思わなくもない桃香であったが、確かに自分の名前を名乗っていなかったと思い返す。
失礼といえば失礼な話だったかもしれない。霜月の方は丁寧に漢字に至るまで説明しつつ自己紹介をしたというのに。
「そういえば……ですね。私、白百合桃香っていいます。こんな時に言う事じゃないですけど、さっきは失礼な態度をとって、すみませんでした」
「白百合……桃香さん。なるほど、それでモモさんと呼ばれていたんですね」
「そうです。名前はモモでも、白百合でもいいです。呼びやすい方で」
本音をいえば、モモと呼ぶのは姫華だけが望ましい。
だが、流石にこの場面で「名乗ったからには白百合で呼ぶように」と言えるほど、桃香も厚かましくはない。
この探索が終われば、《白の騎士団》と関わる機会もないだろうし、今くらいは好きに呼んでもらっていいかという思いもあった。
その時であった。
後方から薙ぎ倒すような爆音が響いたのは。
翼竜が一帯まとめて翼や尻尾で吹き飛ばしながら、姫華へと迫るところであり。
それと同時に、小さく静かな声色で詠唱を詠む声がしたのは。
「軽く、軽く。羽よりも柔らかに、風のように軽やかに」
風の精霊達が騒ぐのを桃香は感じた。
我先にと、声の方向へと飛び交っていく精霊達。
声の主が誰であるかなど、桃香にとっては確認するまでもない事である。
離れた距離でこの声が聴こえたのは、ひとえに桃香が風の精霊との相性が良かったからであろう。
しかし、圧倒的な魔力を誇る姫華に風の精霊達が集うのは当然だと思いつつも、日頃から自分と馴染みのある風の精霊達が嬉々としながら姫華に集う姿に、どこか寂しさを感じるのは何故だろう。
「……ではお言葉に甘えてモモさんとお呼びします。モモさん、次はあの遊具へ行きましょう。ここにいると、巻き込まれそうです」
「あっ……はいっ!」
幾分焦りを伴った霜月の声で我にかえる桃香。
霜月と共に遊具から遊具へと移動しつつ隠れ、周囲を探して回る。
「ん……? これ、は……?」
「姫先輩のビー玉……」
小さな家を模したような遊具の下に隠れつつ、辺りを窺っていた時。
二人の足元へと転がってくる硝子の玉が目に映る。
先ほど姫華が命じたビー玉であった。
「もしかして、騎士団の人達見つけたの?」
「……」
ビー玉は答えない。
だが、態度で示すように浮き上がり、向こうへと飛んでいく。
飛んでいったその先には別の遊具。
いくつもの方角に伸びた滑り台の遊具、その柱の陰から覗く顔が見えた。
「……白石さん。皆もっ」
「あの人達が…………っ?」
喜びに笑みを浮かべた霜月と桃香が同時に違和感を抱く。
向こうへ動こうと思った瞬間、急に、身体の動きが緩やかになったような気がしたからだ。
身体が重くなった? 疲労感? いや、こんな急激に表れるものだろうか?
錆びついたように可動の悪くなった首を動かし、後方へと見やる。
気のせいでなければ、翼竜も動きが鈍くなっている気がする。
あちこちでごうごうと燃える炎の動きも、どこか不自然に感じられた。
「もし、かして。姫、先輩?」
声が途切れがちになりつつも、思わず呟く桃香。
そう発したのは、姫華だけはこの異常な状況の中で、特に変わらず動いていたからだ。
何の魔法?
動きを遅くする魔法? 時を操る魔法だろうか?
そういう魔法が存在する事は聞いていたが、まさか姫華自身が使うとは知らなかった桃香である。
凄いと尊敬する気持ちもあれど、びっくりするから教えてほしかったなぁとも思うのだった。
(いや、姫先輩の事だし……忘れてたんだろうなぁ。意外と天然なとこあるし)
悪意だとか、意地悪で桃香に言わなかったとは思わない。
仕事をそつなくこなす印象の強い姫華であるが、日頃から忘れやすい性格であると話していたからだ。
「手帳は欠かせないんだ。スマホにもメモしてるくらいだし。家でも会社でもあちこちでメモしてさ。それでも、メモした事すら忘れる事があるから、とんだポンコツだよ」
「そんな事……」
いつだったか、そう自嘲自虐していた事を思い出す桃香だった。
心から悲しそうにしており、慌ててフォローしたような記憶があるが、実際小さな物忘れを桃香も何度か目撃している。
それらはどれも些細な事であったが、どうしてか、姫華は小さなミス一つにしても、とても辛そうにしていた事が強く記憶に残っている。
立場が立場ゆえ、自分にもストイックなのだろう。
当時、桃香はそのように捉えていたし、今にしても「完璧っぽい人でも欠点があって可愛い」くらいにしか思わなかった。
「わっ」
「身体が元に」
鈍くなっていた身体の動きや、遅く感じていた感覚が、急速に戻っていく。
途端、急に手足が早く動くような錯覚を覚える桃香である。
霜月の方も多少驚きはしたが、見つけた白石達と合流すべく、タイミングを図る。
後方から雷鳴の轟く音がし、次いで翼竜の呻く声が聴こえる。
眩い光が背中越しでも届き、その威力の高さは確認せずとも察して余りある。
「ヘイ! お嬢様方がお二人でかくれんぼかい!?」
「っ!?」
いつの間にか、二人の隠れていた遊具に男がやってきており、桃香は声にならぬ声を上げる。
「出古井さん! いや、その喋り方は、魔法人形さんの方でしょうか」
「ご明察だぜ霜月お姉さん! そっちのお嬢さんはお初かな? 俺は出古井! 見ての通りの偽物さぁ! 本物もとい、俺っちの分霊箱*1はあっちだぜ!」
「は、はぁ……」
魔法人形という単語を聞き、桃香はマジマジと偽の出古井を見つめる。
どこから見ても本物の人間にしか見えないが、彼自身が語るように偽物であるらしい。
男が苦手な桃香であるが、魔法で出来た存在だと分かると若干気持ちに余裕もできた。
もっとも、魔法だとしてもこのテンションはどうにかならないかと思わなくもないが。
「お二人さんを迎えに行くように言われてんだ。何かあれば囮になるから、一緒に向こうへ行こうぜぇ!」
「行きましょう、モモさん」
「はっ、はいっ」
偽出古井が先頭を走り、そのあとを二人が続く。
翼竜の動向に不安はあったが、視界の端では爆発が幾重にも放たれ、それに翼竜が包まれている姿が見えた。
姫華の爆破魔法に押され、こちらへ攻撃する暇もなさそうだ。
(あの場で一緒に戦えれば、一気に倒せたなら良かったなぁ……)
今自分がしている事を無駄だなんて思わない。
自分に出来る事を、やれる範囲でしているはずだ。
手抜きなんてしないし、第一出来るだけの実力もありゃしない。
でも、尊敬する姫華一人に危険な役割を任せる事に申し訳なさと不甲斐なさが入り混じる。
もっと強くなりたい。あの人の隣に立てる位置まで。
相棒なんて呼ばれるくらいになれれば……。