アイギスの開発者   作:ペルソナ3R楽しい

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昔々

アイギスには、消えない記憶があった。

ほとんど覚えていない十年以上前の、一時的に機能を停止するよりも前の記憶。

自身を作り上げた男との記憶だった。

 

──────────

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「……アイギス、聞こえるかい?」

 

こちらへの好意を含んだ優しげな声で瞼を開ける。

声の印象と変わらない優しげな顔をした、楕円形の眼鏡をかけた青年がこちらを覗き込んでいた。

 

「はい、聞こえます」

「……!おはよう。めでたく目覚めてくれた君に僕から色々と説明をしよう。まず君は、この桐条エルゴノミクス研究所で僕が作った、対シャドウ特別制圧兵装シリーズのナンバーセブンだ。ここまではわかるかい?」

「はい」

「よし、それなら重畳!機能テストをいくつか用意したから、君のペースでこなしてくれるかい?」

「了解しました」

 

それから、彼の研究室でもある狭い部屋の中で、いくつかの動作や知能のテストを行なった。

私が良い結果を出すたび、彼はまるで自分のことのように、飛び上がりそうな様子で喜んだ。

 

「……何故、そこまで喜ぶのですか?」

 

そう聞くと、彼は少し悩むような様子を見せたあと、椅子に座って話をしてくれた。

 

「実は、君の一つ前のナンバーの機体が出来上がった後、ほとんどの研研究員はこの部署から去ったんだよ。第六までの作り方は……、すこし残酷だったからね、嫌気が指す人も、単純にこの研究に意味がないと思った人もいたんだよ」

 

少し目を伏せて、悲しそうな表情で彼は語った。

それが、彼の言う残酷な手段を思ってなのか、いなくなった研究員を思い出してなのかはわからなかった。

 

「まぁ、そんなこんなで、君はほとんど僕一人で作ったんだ。あんな残酷なことなんかしなくても良かったと証明したかった……、要するに自己満足だよ。だから、君は兵器である以前に、僕の愛娘のようなものなんだよ」

 

そう言うと、彼はその表情を綻ばせて私の頭を優しく撫でた。

そして、思い出したように

 

「僕の名前は木崎亮介。木崎でも亮介でも、好きなように呼んでくれ」

「了解しました、木崎博士。これから、よろしくお願いします」

 

 

──────────

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「……博士は、なぜ私を作ったのですか?」

 

口を突いて出た疑問だった。

調べたところ、私が起動した頃には対シャドウ特別制圧兵装のシリーズに関するプロジェクトは凍結されていた。

なのに彼は私を作り上げた。

凍結されたはずのプロジェクトを完成させたその理由が聞きたかった。

 

「理由はいくつかあるけど……、その一つは個人的な欲望かな。自分が形作っていたそれが、意思を持って、そうやって話しかけてくれる瞬間を見てみたかった。」

 

そう言った彼は、いつもの優しい顔でこちらを見つめた。

 

「あとは、桐条さんからお許しが出たって言うのもある。『公には凍結と記録するが、このプロジェクトに最も貢献した君が作りたいのであれば、あと一機のみを認める』ってね」

「……そうですか。お言葉ですが、私は戦闘用の機械です。ですから、神話のガラティアのようには……」

「知ってるよ。それにしても、いつそんなものを学んだんだい?」

「あなたがこの研究室に忘れていった書籍からです」

「……あはは、そっか。面白かった?」

「大変、興味深い内容でした」

 

返答に困った私がそう返すと、彼は軽く笑った。

そして、真面目な顔で言う

 

「君はもうしばらくすれば実戦に配備されるだろう。身勝手だろうけど僕は、君で僕の研究を証明したいと思ってる。無駄じゃなかったってね。でも忘れないで、僕は君を家族だと思ってる。だから、お願いも悩みも、話しておくれよ」

「……了解しました。博士」

 

私がそう言うと、博士は少し困り気味の表情と共に、まあいいかと言って椅子に深く座り込んだ。

それが、私と博士の日々の始まりだった。

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