ブレーザー/ゴジラ-WAVE   作:naogran

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第1章・大戸島伝説

大海原の上空を駆ける1機の零式艦上戦闘機(通称:零戦)。その零戦は爆弾を搭載されており、前方に見える小さな島へ向かっていた。

 

 

 

 

島にある穴だらけの滑走路に向かって少しずつ降下し、零戦のタイヤを出した。そして、凸凹の滑走路に慎重に着陸し、零戦が止まった。

 

浩一「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

零戦パイロット・敷島浩一。何とか着陸出来た彼は、少し呼吸が乱れてる。

 

1945年:大戦末期の大戸島飛行場

 

 

 

 

海軍大戸島分遣隊が零戦を調べる。

 

整備兵A「行くぞ!」

 

整備兵2人「せーの!」

 

2人の整備兵が、台車に乗せた零戦の爆弾を力一杯運ぶ。

 

稲垣「発動機異常無しです。」

 

整備兵の稲垣栄次郎。

 

橘「了解。」

 

齋藤「燃料系統異常ありません。」

 

整備兵の齋藤忠征。

 

橘「了解。」

 

浩一「・・・・・」

 

ベンチに座って俯いてる浩一に、橘が駆け寄る。

 

橘「敷島少尉ですよね?」

 

名前を呼ばれた浩一が立ち上がり、橘に敬礼する。橘も浩一に敬礼する。

 

橘「筑波海軍航空隊の整備分隊にいた橘です。覚えておられますか?」

 

大戸島守備隊長の橘宗作。

 

浩一「橘さん?勿論です!その節はお世話になりました。」

 

橘「いやー。この島の穴だらけの滑走路に、よくあんな粗悪品を降ろせましたね。相変わらず腕は確かなようだ。」

 

浩一「模擬空戦の成績が幾ら良くても、実戦を経験せずいきなり特攻ですから・・・」

 

そう。浩一は今特攻に向かってる最中だったが、零戦に故障箇所が発見し、この大戸島に降りたのだ。

 

橘「しかし、機体の故障で少しだけ猶予が出来た。実は、幾ら確認してもあなたの言う故障箇所が見付からないんですよ。」

 

隅々まで零戦の故障箇所を探したが、何処にも故障箇所は発見されなかったと浩一に言った。

 

浩一「・・・何が言いたいんです?」

 

バツが悪そうになった浩一は、何も言わず海岸の方へ行ってしまった。橘や他の整備士達は、浩一に疑問と少しの心配を抱いている。

 

橘「・・・・・・」

 

近くの茂みに隠れてるゲントは、さっきの一部始終を覗いていた。

 

ゲント(故障箇所が見付からない・・・もしかして、特攻から逃げた人なのか?いや、そんな事言ってる場合じゃない。この島を出て帰れる方法を探さないと・・・)

 

こっそりと茂みの中を歩くゲント。だが。

 

”バキッ!!”

 

橘「ん?誰だ!?」

 

ゲント「うわあっ!!」

 

枝を踏む音に気付いた橘が、音のした方に顔を向けた。びっくりしたゲントが立ち上がり、両手を上げた。

 

橘「・・・あなたは?」

 

ゲント「あ、えっと・・・ヒルマ・ゲント。元陸軍の・・・歩兵だ。」

 

咄嗟に思い付いた嘘で何とか誤魔化せた。

 

 

 

 

 

 

その頃浩一は、海岸の岩に座って俯いてる。

 

齋藤「いいんじゃないですか?あんたみたいなのが居たって。」

 

整備兵の齋藤がやって来た。

 

齋藤「死んで来いなんて命令、律儀に守ったってこの戦争の結果はとうに見えてる。」

 

そう言って齋藤は自分の持ち場に戻って行った。

 

浩一「・・・・・ん?」

 

すると浩一が、ある光景を目にした。それは、無数の魚が胃袋を吐き出して海岸に流れ着いた光景だった。

 

 

 

 

 

 

その日の晩、浩一は大戸島守備隊の基地で共に鍋を囲んだ。その中にゲントの姿もあった。

 

齋藤「ヒルマさんは陸軍の歩兵だったんですね。」

 

ゲント「ええ。でも1ヶ月前に負傷で撤退を余儀なくされて帰還したんです。負傷してしまって、周りに足を引っ張られると懸念して、自ら除隊したんです。」

 

実際ゲントはこの世界に迷い込んだ流れ者。自らの素性は語る事は出来ず、この世界の秩序に倣って元陸軍歩兵と偽ってる。

 

橘「そうか。大変だったんですね。」

 

稲垣「それで、ヒルマさん・・・」

 

ゲント「あ、俺の事はゲントって呼んで下さい。仲間にもそう呼ばせてましたので。」

 

稲垣「ゲントさんはどうしてこの大戸島に?」

 

ゲント「え?実は・・・俺の仲間がこの大戸島の出身でね。どんな島なのか、戦時中なのに行ってみたくなっちゃって・・・」

 

橘「肝が据わっていますね。その左手の指輪とブレスレットは?」

 

ゲント「これですか?妻との指輪と、息子が作ってくれたお守りなんです。肌身離さず持っているんです。」

 

齋藤「ご家族は何処に?」

 

ゲント「2人は今遠い所に居まして、今は会えないですが、何時か会えると信じています。」

 

齋藤「素敵なご家族ですね。」

 

ゲント「エヘヘ・・・しかし、この鍋美味いですね。」

 

齋藤「これは深海魚鍋で、この大戸島の名物みたいなんですよ。」

 

ゲント「初めて食べた味だけど、これは美味いですね。・・・そう言えば、敷島さんはどうしてこの島に?」

 

浩一「・・・俺は、特攻が嫌で逃げた人間なんです・・・」

 

ゲント「特攻・・・ですか。」

 

浩一「ええ。今頃特攻の皆さんは、戦場で・・・」

 

齋藤「敷島少尉、気持ちは分かりますよ。特攻で死んだら、家族に一生会えないんですから。ねぇ橘さん?」

 

橘「そうだな。俺の知り合いも特攻で吹っ飛んじゃったからな。」

 

浩一「・・・宮部さんも同じような事を言ってました。いつも俺達の命を重んじていました。」

 

ゲント「宮部さん?」

 

浩一「宮部久蔵さんって方です。零戦のパイロットでありながら兵達の教官も勤めているお人なんです。俺も宮部さんの教え子でもあります。」

 

齋藤「でも宮部さんは、陰で皆から『臆病者』と呼ばれているんです。」

 

ゲント「え?何でですか?」

 

稲垣「海兵の知り合いに聞いた所によれば、命を重んじる思考から上官に意見する事が何度かあったそうで。しかも、教官としては非常に厳しいらしく、訓練後の講評では容赦ないダメ出しするので、訓練生から反感を多く買ったそうなんです。」

 

ゲント「臆病者なのに、部下達には厳しかったんですね。」

 

橘「でも、宮部さんは弟子思いのある良いお人でもあるんです。実際、彼を信頼している人も結構居るそうなんです。」

 

ゲント「そんな人、一度会ってみたいですね。どんなお人なのか。」

 

齋藤「でもあの人、特攻を志願したと知り合いから聞いたんです。もしかしたらもう・・・」

 

ゲント「そう、ですか・・・」

 

 

 

 

深海魚鍋を堪能した後、ゲントは基地から出て海岸に来た。

 

ゲント「スマホはこの世界では使えないって言うか通用しない・・・」

 

ポケットからブレーザーストーンを取り出す。

 

ゲント「ブレーザー。俺達、何時までこの世界で過ごすんだろうな。でも帰れる方法が見付かるかも知れないしな。でもその前に、ファードランを探さないとダメだな。」

 

するとその時、ブレーザーストーンの点滅が早くなった。

 

ゲント「ん?ブレーザー?どうした?」

 

 

 

 

同じ頃浩一は、外の空気を吸い終えて基地に戻って来た。するとその時、大戸島に警報が鳴り響いた。

 

浩一「?」

 

稲垣「銃持って来い!!」

 

整備兵2人「はい!」

 

基地から守備隊が銃を持って急いで外に出た。

 

橘「敵襲か!?」

 

末次「分かりません!」

 

橘「どう言う事だ!?」

 

末次「何かデカいのが!」

 

橘「米軍の新兵器か?」

 

ゲント「どうしました!?」

 

そこにゲントも合流した。

 

末次「何かデカいのが来ます!」

 

ゲント「デカいの?米軍の戦車?戦艦か?」

 

”ーーーーーーーーー!!!!!”

 

突如響いた音。それは、戦車や戦艦等の兵器の駆動音ではなく獣の雄叫びのような声だった。

 

ゲント「何だ?鳴き声?」

 

橘「滝!滝!!海岸の方だ!!!」

 

滝「了解!!!」

 

見張り台に居る滝が、海岸の方へライトを向けた。そこに居たのは・・・

 

 

 

 

 

 

恐竜『ーーーーーーーーーーーー!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

15メートル程の巨体を持つ恐竜の姿をした黒色の獣だった。

 

滝「あっ!あっ!!うわあ!!!」

 

その恐竜は、ライトを向けてる見張り台に接近し、滝諸共見張り台を破壊した。

 

栗原「滝・・・!」

 

宮下「滝さん・・・!」

 

橘「何なんだコイツは!?」

 

加治木「呉爾羅って奴じゃ・・・」

 

稲垣「何だそりゃ?」

 

加治木「島の奴がそう言ってたんだ。今日みたいに深海魚が浮いた日は、呉爾羅が来るって!」

 

浩一「呉・・・呉爾羅?」

 

 

 

 

呉爾羅『ーーーーーーーーー!!!』

 

見張り台を破壊した呉爾羅が咆哮を上げる。

 

 

 

 

橘「ダメだ・・・逃げろ!逃げろ!」

 

整備兵達「逃げろ!逃げろ!」

 

浩一「・・・・・!!!」

 

整備兵達と浩一が急いで後ろの塹壕へ逃げ込む。

 

 

 

 

ゲント「・・・・・!」

 

一方のゲントは1人基地の裏側に隠れ、呉爾羅を覗く。

 

ゲント「何なんだあの怪獣・・・!?いや恐竜か・・・!?」

 

 

 

 

塹壕に身を潜める浩一達。

 

浩一「何なんですかあいつ・・・!?」

 

橘「我々にも分かりません・・・!」

 

呉爾羅が塹壕に向かってゆっくりと進んでいる。

 

橘「敷島少尉・・・!」

 

浩一「何でしょう・・・?」

 

橘が震える左手で零戦に指差す。

 

橘「彼処に行って20ミリを撃てますか・・・?あれを撃てるのはあなただけだ・・・ここには整備兵と元陸軍のゲントしか居ない・・・」

 

浩一「しかし、手負いにでもしたらマズイ事になりませんか・・・?」

 

橘「20ミリを食らって生きていられる生物なんて居ません・・・!急いで!奴が射線に入る前に!早く!早く!行け!早く!」

 

そう言われ、浩一は呉爾羅に見付からないように身を屈めながら零戦へ走る。

 

 

 

 

ゲント(敷島さん・・・まさか零戦であの呉爾羅を?けどあの呉爾羅、零戦で倒せるとは思えない・・・もし倒せなかったら、何か別の方法を・・・ん?)

 

後ろを見ると、戦闘機の予備の燃料タンクが置かれていた。

 

ゲント(零戦の燃料タンク?)

 

こめかみに右手の指を当てて作戦を考える。

 

ゲント(ッ!)

 

何かが閃いたゲントが行動を開始した。

 

 

 

 

同じ頃、呉爾羅に見付からず零戦に乗り込んだ浩一が機関砲の引き金を握る。

 

浩一「・・・・!」

 

呉爾羅が唸り声を出しながらゆっくりと前進し、浩一の前に立ち止まって浩一を見る。

 

浩一「・・・・・!?」

 

目の前の未知の生物を目の当たりにした浩一が恐怖心に圧倒され、引き金を握る手が震えてる。

 

 

 

 

塹壕。

 

橘「何やってるんだアイツは?」

 

 

 

 

浩一「はぁ・・・はぁ・・・」

 

あまりの恐怖に押されながらも、照準を見る。呉爾羅が射線上に入った。

 

 

 

 

塹壕。

 

橘「今だ!撃て!」

 

 

 

 

浩一「・・・・・・・!!」

 

20ミリを撃とうとするが、呉爾羅がこちらを睨む。

 

浩一「ッ・・・・・!!!」

 

睨まれた浩一は撃つ事が出来ず、右手で口を塞いで声を押し殺した。

 

呉爾羅『ーーーーーーーーー』

 

浩一を睨んだ呉爾羅は、浩一を攻撃せず再び塹壕に向かってゆっくりと進む。

 

 

 

 

塹壕。

 

冨田「こっちに来ます!」

 

稲垣「どうします橘さん!」

 

加治木「弾薬!」

 

栗原「弾持って来い!」

 

平岡「あ・・・ああ・・・ああああ・・・うわあああああああ!!!!!」

 

恐怖に耐え切れず、パニックになった整備兵の平岡が九九式短小銃を発砲した。弾丸がゴジラの顔に命中した。それが切っ掛けで次々と整備兵達の持つ短小銃が発砲された。

 

橘「バカ!撃つな!!バカ!止めろ!!止めろ!!!!」

 

呉爾羅『ーーーーーーーーーー!!!!!!』

 

弾丸を受けた呉爾羅が怒り狂い、大戸島の基地を破壊した。

 

橘「出ろ!出ろ!出ろ!」

 

齋藤「ああっ!」

 

出ようとした齋藤が塹壕で躓いてしまった。呉爾羅が足を上げて塹壕を踏み潰そうとした時、齋藤が何かに引っ張られた。それと同時に呉爾羅が塹壕を踏み潰した。

 

 

 

 

塹壕から脱出した橘達。

 

稲垣「橘さん!!!」

 

足を怪我して倒れ込む橘に稲垣が駆け寄る。だが、呉爾羅が稲垣を噛み付き後ろへ放り投げた。

 

整備兵達「ああ!ああっ!!」

 

他の整備兵達も、短小銃で呉爾羅に何度も発砲する。しかし呉爾羅は、3人の整備兵を踏み潰した。

 

呉爾羅『ーーーーーーーーー』

 

恐怖で動けない1人の整備兵を噛み付き、海岸の方へ放り投げた。

 

整備兵達「うわああああ!!!」

 

怯える声で何度も発砲する整備兵達。それでも呉爾羅の怒りは止まらない。尻尾で冨田を含む3人の整備兵を叩き潰した。

 

整備兵「冨田!!」

 

整備兵達「うわあああ!!」

 

呉爾羅が尻尾で他の整備兵達を薙ぎ払った。

 

橘「ああ・・・あああ・・・・!」

 

次々と殺られる整備兵達を見て、橘は嗚咽を上げる。

 

 

 

 

浩一「ハァハァハァ・・・!」

 

次々と殺されて行く整備兵達を見た浩一は、何も出来ずただ見てるだけだった。

 

栗原「前へ連れて行く!!奴を撃ち殺してくれ!!」

 

呉爾羅を誘導する栗原が零戦の前へ走って行くが、呉爾羅に噛み付かれ、海岸へ放り投げられた。

 

浩一「あっ・・・あっ・・・ああっ・・・ああっ・・・!!」

 

恐怖で零戦から降りて全力で逃げる。呉爾羅が浩一が降りた零戦を噛んで持ち上げ、浩一に向かって零戦を投げた。

 

浩一「うわああっ!!」

 

零戦の爆風に吹き飛ばされた浩一が地面に倒れ、朦朧とする意識の中、呉爾羅を見る。

 

呉爾羅『ーーーーーーーー!!!』

 

浩一は咆哮を挙げる呉爾羅を見ながら気を失った。

 

 

 

 

呉爾羅『ーーーーーーーー』

 

残る整備兵は橘。呉爾羅が橘を標的に定め、彼に接近する。

 

橘「や、やめろ・・・!!来るな・・・っ!!」

 

あまりの恐怖で橘は動けない。そして呉爾羅が右足で橘を踏み潰そうとしたその時。

 

”バァン!”

 

呉爾羅『ーーーーーーーー!!!!』

 

弾丸が呉爾羅の顔に命中。呉爾羅は右足を逸らして橘の横に着いた。

 

橘「っ!?」

 

それは、駆け付けたゲントの九九式短小銃の弾丸によるものだった。

 

橘「ゲント・・・?」

 

ゲント「・・・・!」

 

齋藤「橘さん!!」

 

そこに生き残りの齋藤が橘に駆け寄った。

 

橘「齋藤・・・!!無事だったのか・・・!!」

 

齋藤「ゲントさんに助けられました!」

 

 

 

 

先程塹壕で躓いた齋藤を助けたのは、ゲントだった。塹壕ごと潰される直前に後ろから彼に引っ張られ救出されたのだ。

 

 

 

 

ゲント「齋藤さん!橘さんを早く!」

 

齋藤「はい!こっちへ!」

 

急いで橘を連れて避難する。呉爾羅が橘と齋藤を追おうとしたが。

 

”バァンバァン!!”

 

九九式短小銃の弾丸2発が呉爾羅の胴体に命中した。

 

ゲント「おい呉爾羅!!俺はこっちだーッ!!」

 

”バァンバァンバァン!!!”

 

更に3発撃って呉爾羅の頭部に全て命中した。

 

呉爾羅『ーーーーーーーーー!!!!』

 

弾丸を受けた呉爾羅が激怒し、標的をゲントに変えた。

 

ゲント「ッ!」

 

九九式短小銃を捨てて呉爾羅から全力で逃げる。

 

 

 

 

 

 

海岸まで逃げるゲント。

 

ゲント「こっちだこっちーッ!!」

 

挑発するゲントを呉爾羅が追い続ける。

 

呉爾羅『ーーーーーーーー!!!』

 

逃げるゲントを噛み付こうとしたが、ブレーザーストーンが発光で合図をしてゲントがそれを見て横に避けた。

 

ゲント「良いぞそのまま!!」

 

斜面を滑り下りて海岸へ逃げる。

 

 

 

 

海岸まで来た呉爾羅が、逃げたゲントを探す。だがゲントの姿が何処にもない。

 

呉爾羅『ーーーーーーー?』

 

すると、岩陰で動く影を発見した。

 

呉爾羅『ーーーーーーーー!!!』

 

動く影を発見した呉爾羅が、それを噛んだ。

 

呉爾羅『ーーーーーーーーー??』

 

だが噛んだのは、ゲントではなく予備の燃料タンクだった。噛んだ衝撃でタンクが破壊され燃料が漏れ、呉爾羅の皮膚と体内に燃料が流れた。

 

ゲント「喰らえッ!!」

 

破壊された基地から持って来た松明を投げた。火が呉爾羅の皮膚と体内に付着した燃料に引火し燃えた。

 

呉爾羅『ーーーーーーーーーー!!!!!!!』

 

皮膚と体内が燃え、炎に包まれた呉爾羅が苦しむ。

 

ゲント「よし・・・ッ!」

 

呉爾羅『ーーーーーーーーーー!!!!!!!』

 

苦しむ呉爾羅が、海岸から海に入って火を鎮火させ、そのまま海へ潜り姿を消した。

 

ゲント「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

姿を消した呉爾羅を、ゲントは息を切らしながら眺めた。

 

 

 

 

 

 

明け方。浩一が目を覚ました。

 

浩一「・・・・!」

 

周囲を見る浩一。呉爾羅の姿は無く、破壊された零戦と崩壊した基地が残っている。

 

浩一「んっ・・・」

 

体を起こして、破壊された零戦の奥へ走った。

 

浩一「・・・!!」

 

そこで彼が見たのは、呉爾羅に殺された整備兵達の遺体が横たわっていた。

 

ゲント「・・・・・・」

 

その中に、ゲントが整備兵達の遺体に合掌して供養している。

 

橘「何でお前らがこんな・・・」

 

齋藤「皆・・・生きて帰ろうって・・・」

 

仲間の遺体を運ぶ橘と齋藤が戻って来た。

 

齋藤「あ・・・敷島少尉・・・」

 

橘「・・・!?」

 

立っている浩一に橘が睨み、怪我をした足を引き摺りながら浩一に迫る。

 

橘「おい!・・・皆死んだぞ!!死んだんだぞ!!おい!お前が撃たなかったからだ!!!!」

 

あの時20ミリを撃って呉爾羅を討伐出来たはずなのに、浩一はそれが出来なかった。橘は呉爾羅を撃たなかった浩一を責めた。

 

齋藤「橘さん!!止めて下さい!!」

 

ゲント「橘さん!!」

 

浩一を責める橘を齋藤とゲントが止める。

 

橘「・・・・・・チクショウ!!!!」

 

齋藤「少尉、大丈夫ですか?」

 

浩一「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

その僅か数日後。日本は無条件降伏し第二次世界大戦は終戦した。

 

 

 

 

 

 

大戸島に訪れた復員船に乗せられた浩一、橘、齋藤、そしてゲントは半年の航海をする事になる。ゲントは自分が元陸軍歩兵と説得し、特別に乗せて貰ってる。復員船には、浩一達の他に生き残った兵士達が乗ってる為、浩一達の満足出来るスペースはなく、甲板の上で過ごす事になった。

 

橘「おい!おい!」

 

浩一「・・・・・?」

 

俯いてる浩一に橘が来た。浩一はまた罵られるかと覚悟を決めた。だが橘は浩一を罵らず、手に持ってる油紙を浩一に渡した。油紙を浩一に渡した橘は無言のまま去って行った。

 

浩一「?」

 

渡された油紙の中を見る。

 

浩一「・・・!?」

 

中を見た浩一が声を失い、急いでポケットの中に仕舞った。

 

ゲント「・・・・・」

 

震える兵士達をゲントはただ見るしか出来ない。

 

 

 

 

 

 

1945年12月:東京

 

半年の航海を経て浩一が帰って来た。しかしそこには、幼い頃から見慣れていたあの風景は何も残っていなかった。浩一は歩き難い木炭だらけの道を、周りを確認しながら歩いていたが、次第に心を恐怖が占めていき、遂には走り出してしまった。

 

浩一「・・・・!!」

 

辿り着いた場所は、浩一の生家だったはず。しかし、高熱で焼かれ跡形も無くなっていた。塀で囲まれた敷地の中は、ほぼ消し炭となった瓦礫の山と化していた。

 

浩一「・・・・・」

 

呆然と立ち尽くし言葉を失った浩一の後ろから、不意に声を掛けられた。

 

???「浩一さん・・・かい?」

 

声を掛けた人物は、隣人の女性・太田澄子だった。

 

浩一「太田のお姉さん!?」

 

帰って来た浩一を見て、澄子は驚きを隠せなかった。

 

澄子「あんた特攻に行ったんじゃ・・・え?違うのかい?」

 

特攻から生きて帰って来た浩一に、澄子は驚いた顔から険しい顔をして浩一を責め始めた。

 

澄子「平気な顔をして帰って来たのか・・・この恥知らず!!!あんた達軍人が腑抜けなせいでこの有り様だよ!!あんたらさえしっかりしてれば・・・ウチの子達も死なずに済んだんだ・・・」

 

この辺りは戦時中の東京大空襲で焼かれてしまい、多くの民間人がその戦火に巻き込まれ犠牲になった。澄子の大切な家族も、その空襲で亡くなってしまったのだ。

 

浩一「・・・う・・・うちの親はどうなった知りませんか?」

 

澄子「・・・皆死んださ。この辺りはぐるっと火に囲まれたんだ。あんたの親も。ウチの子達とおんなじ運命だよ。」

 

彼の両親も、空襲で亡くなってしまったのだ。

 

浩一「・・・・・・」

 

ゲント「敷島少尉・・・」

 

浩一「・・・ゲントさん・・・?」

 

そこにゲントがやって来た。

 

浩一「ゲントさんは、ご家族に・・・会えたんですか・・・?」

 

ゲント「・・・・・」

 

首を横に振るゲントに、浩一は何も言えなかった。

 

ゲント「さっきの人は?」

 

浩一「・・・隣に住む太田澄子さんです。空襲で、家族を亡くしてしまったんです。」

 

ゲント「・・・そうか・・・」

 

 

 

 

 

 

夕暮れ時。ゲントが家を直している間、浩一は喧噪の中で、母からの手紙を読んでいた。

 

『必ず生きて帰ってきて下さい』

 

母の手紙の一文にはそう書かれていた。だが浩一の両親は、空襲で亡くなってしまい、もう家族に二度と会えない。

 

浩一「生きて帰って来いって・・・そう言いましたよね・・・」

 

ゲント「・・・・・」

 

天涯孤独となってしまった浩一にゲントは心配する顔をしながらも、懸命に家を直してあげる。

 

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