ブレーザー/ゴジラ-WAVE   作:naogran

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第6章・誓いの翼

翌日の格納庫。

 

野田「は〜。しかし転んだにしては、また随分派手に腫れましたねえ。」

 

浩一の顔には、昨日橘に殴られた腫れが残っている。

 

浩一「面目ない。かなり酔っ払っていましたので、あんまり覚えていないんですよ。」

 

ゲント「昨日飲み過ぎたせいだな。全く、酒は程々にしておけよ?」

 

浩一「すみません・・・」

 

野田「まああれだけ拘った橘さんが見付かったんだから、そこまで浮かれるのも無理はないですがね。」

 

そんな会話をしていると。

 

橘「先尾翼機か!」

 

格納庫に齋藤と助手2人を連れた橘が、本物の震電を見て感動している。橘は髭を無くしスッキリした顔をしてる。

 

橘「噂には聞いていたが完成してたのか・・・!」

 

浩一「橘さん!齋藤さん!皆さんよく来てくれました!」

 

野田「あなたが橘さんですか?」

 

橘「ええ。これが・・・幻の局地戦闘機”震電”ですか!」

 

齋藤「海軍の知り合いから震電の噂を聞いてましたが、本物を見るのは初めてです・・・!」

 

野田「これを補修して飛べるように出来ますか?」

 

橘「我々に出来る限りの事はやってみます。」

 

野田「お願いします!」

 

浩一の方へ振り向く橘。浩一が頷くと、橘も頷いた。

 

 

 

 

 

 

逗子軍港。海神作戦の為の資材搬入が着々と行われていた。緊急改造を施された幸運艦雪風の後部には、東洋バルーンのフロンガスボンベと、強制浮上バルーン、そしてかの戦艦大和で使用された46センチ砲弾を組み合わせた機材が整然と並べられていた。その後ろには、船舶交差時に使う大型クレーンが、更にその前にワイヤーを幾重にも巻いた巨大なロールが鎮座していた。

 

野田「・・・・・・」

 

秋津「どうした?立案者様がそんな顔してちゃ士気に関わるぞ?」

 

野田「立案しておいてなんですが、あの作戦が成功するのは奇跡に等しい気がしてきました。」

 

秋津「そう言ってもな。何にもやらにゃその奇跡も起こりゃしないぜ?」

 

野田「そうですよね。」

 

秋津「それに見ろよアイツらの顔。」

 

資材搬入や機材チェックをしてる海神部隊のメンバーを見る。

 

秋津「アイツらだってバカじゃない。これが命懸けのしんどい作戦だって事がよーく分かってる。だがな、皆良い顔してるじゃねえか。嬉しいんだよ。今度は役に立てるかも知れないって事がな。」

 

野田「役に立つ・・・か。」

 

秋津「俺達は戦争を生き残っちまった。だからこそ”今度こそは”ってな!」

 

水島「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

芹沢の研究所。

 

新吉「芹沢博士。そっちの研究はどうですか?」

 

芹沢「もう少しで完成する。これが完成すれば、東京は救われる。」

 

異形な物が研究所にあった。

 

 

 

 

 

 

山根家。

 

尾形「もうすぐ作戦開始ですね。」

 

山根「そうだな。今度の戦いは過酷になるかも知れない。恵美子、お前は降りて貰う。」

 

恵美子「え?どうして?」

 

山根「この作戦は、いつ死んでも可笑しくないんだ。だから、愛する娘を戦場に送りたくないんだ。分かるか?」

 

恵美子「お父さん・・・分かった!私はお父さんと秀人さんや皆の帰りを待ってるよ!」

 

山根「よくぞ言った!それでこそ私の娘だ!」

 

 

 

 

 

 

格納庫の外。ゲントが滑走路を眺めている。

 

齋藤「ゲントさん。どうしたんですか?黄昏ちゃって。」

 

ゲント「本当にゴジラに勝てるのか、ちょっと心配になっちゃって。」

 

齋藤「大丈夫ですよ。俺達が一致団結すれば、怖いもの無しですから。」

 

ゲント「・・・ですね。」

 

齋藤「橘さん、ずっと後悔してたんですよ。」

 

ゲント「え?」

 

齋藤「大戸島で呉爾羅に襲われてる時、浩一さんに無理強いさせて仲間を死なせてしまったって。」

 

ゲント「じゃあ、ずっと姿を表さなかったのは?」

 

齋藤「その真実を、誰かに打ち明けるのが怖かったって。」

 

ゲント「・・・・」

 

齋藤「だから橘さん、浩一さんの為に張り切っているんです。今度は、誰も死なせたくないって。」

 

ゲント「橘さん・・・」

 

 

 

 

 

 

その夜。海上に設置されたガイガー計数管が反応した。

 

 

 

 

その一報を受けた野田達が特設災害對策の2階の会議室へ駆け込んだ。

 

乗組員「早くしろ!!」

 

 

 

 

第3会議室。

 

野田の助手「空けて下さい!」

 

机の上に海図を開いた。

 

野田「1時間前。八丈島東方沖、北緯33度10分、東経140度01分にて、設置されたガイガー計数管から反応があったと報告がありました。その後、こことここにも。」

 

定規を使って、ゴジラの予測到着地を計算する。鉛筆で予測到着地の線を引く。予測到着地は、東京のど真ん中。

 

野田「ゴジラが近付いています。この速度から逆算すると、ゴジラが相模湾の海溝上に到着するのが、明日の1100。それを迎え撃つ為、明朝0800をもって我々は出航します!」

 

乗組員達「よし!」

 

野田「しかし装置の完成がそれまでに間に合うかどうか・・・」

 

板垣「・・・我々も連れて行って下さい!現場に着くまでの3時間は貴重です!技術者としては完璧を期したい!」

 

野田「しかし、ゴジラとの戦いに巻き込まれるかも知れません。」

 

板垣「我々だって戦争帰りですよ。」

 

野田「・・・・・皆さん、可能な限り今夜は自宅に戻って家族と過ごして下さい。」

 

乗組員「覚悟しろって事ですよね?」

 

野田「思えば・・・思えば、この国は命を粗末にし過ぎてきました。脆弱な装甲の戦車。補給軽視の結果・・・餓死、病死が戦死の大半を占める戦場。戦闘機には、最低限の脱出装置すら付いていなかった。しまいに特攻だ玉砕だと・・・だからこそ今回の・・・民間主導の本作戦では、1人の犠牲者も出さない事を誇りとしたい!今度の戦いは、死ぬ為の戦いじゃない!未来を生きる為の戦いなんです!」

 

水島「よし・・・よし・・・やるぞ!!!」

 

乗組員達「よーし!やりましょう!」

 

 

 

 

会議室を出たゲントと浩一はバイクに跨る。

 

ゲント「浩一。俺は格納庫へ行ってる。明日にまた会おう。」

 

浩一「はい。」

 

ゲントは格納庫、浩一は家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

同じく会議室を出た水島、野田、秋津の3人。

 

水島「いよいよ明日か〜!武者震いしちゃいますね!」

 

秋津「お前は乗せねえ。」

 

水島「え?どう言う事ですか?」

 

野田「まあその手じゃ何の役にも立たないしな。」

 

水島「敷島やゲントさんだって行くんでしょ?俺が戦争経験がないからですか?使い物にならないってそう思ってるんですか!?」

 

秋津「小僧。戦争に行ってないってのはな、とても幸せな事なんだぞ。」

 

ショックで立ち止まる水島を置いて、野田と秋津が歩いて行った。

 

水島「俺だってこの国守りたいんです。何で乗せてくれないんですか!俺達ずっと一緒だったじゃないですか!!お願いです!!俺も乗せて下さい!!!俺も一緒に行きたいです!!!艇長!!!!野田さん!!!!」

 

 

 

 

何度も叫んで懇願する水島を聞いて、秋津は静かに微笑んだ。

 

秋津「この国はお前達に任せたぞ。」

 

 

 

 

 

 

格納庫。橘達整備士達が震電の補修・改修をしている。

 

齋藤「もうちょっと下げて。慎重に。」

 

橘「・・・」

 

そんな中、橘は震電のコックピットを見て何かを考えていた。

 

 

 

 

一方ゲントは、格納庫の外に立って、ブレーザーストーンを見ている。

 

ゲント「明日はいよいよ決戦だブレーザー。俺達でこの国の未来を救おうな。」

 

ブレーザーストーンが輝いた。

 

 

 

 

 

 

同じ頃。浩一は明子を迎えに澄子の所へ行った。

 

澄子「じゃあね。明ちゃん。」

 

明子を迎えに来た浩一に明子を引き渡した。

 

浩一「あの・・・いつも、ありがとうございます。」

 

澄子にお礼を言って家へ帰って行った。澄子は心配そうに浩一を見た。

 

 

 

 

家に帰った2人。

 

浩一「明子。おばちゃん家楽しかったか?」

 

明子「楽ちかった。」

 

浩一「そうか。よかったな。」

 

すると明子は、手に持ってる2つ折りの紙を浩一に差し出す。

 

浩一「くれるのか?ありがと。」

 

受け取った紙を開く。その紙には、4人の顔が描かれていた。

 

浩一「明子。」

 

明子「うん?」

 

浩一「これは、お母ちゃんと俺と明子か?」

 

明子「おかあもおじちゃんもいるんだよ。」

 

それは、家族といつも遊んでくれてるゲントの顔の絵だった。

 

浩一「そうか。上手に描けたな。」

 

すると、明子が鼻を啜った。

 

浩一「どうしてそんな顔をするんだ?」

 

明子「ああああああああ!」

 

突然明子が大声で泣き始めた。

 

浩一「どうした?明子。ほらほら。」

 

大泣きする明子を優しく抱く。

 

浩一「ほら。大丈夫。どこにも行かないから。」

 

 

 

 

 

 

明け方。浩一は早起きし、まだ寝ている明子の枕元に封筒を置いた。上着を着た後、眠ってる明子をしばらく見詰めてから家を出た。

 

 

 

 

 

 

バイクに乗って格納庫に到着した。

 

浩一「ハァ・・・」

 

バイクのエンジンを切り、スタンドを立てて停車した。

 

 

 

 

格納庫に入ると、橘達が休憩していた。近くにゲントが寝ている。

 

浩一「橘さん。出せますか?」

 

橘「ああ。すぐに用意する。」

 

震電の最終整備に取り掛かった。

 

ゲント「・・・ん?浩一。」

 

寝ていたゲントが目を覚ました。

 

ゲント「明子ちゃんは?」

 

浩一「眠っています。」

 

 

 

 

 

 

最終整備が終わり、浩一がコックピットの座席に座る。橘が震電に搭載された武装を説明する。

 

橘「注文の爆弾だ。機銃2門140キロ。機銃弾120発80キロ。そして、主燃料タンク分400キロを撤去し、代わりに機首にこの25番、胴体に50番爆弾を搭載した。」

 

25番と50番爆弾は共に主砲クラスの威力を有している。

 

浩一「これでようやく借りが返せるって訳ですね。」

 

あのトラウマが蘇ったのか、浩一の右手がまた震え始めた。

 

浩一「フッ・・・笑えますね。生きたいようです。俺は。」

 

橘「あの日死んだ奴らもそう思ってたよ。皆生きて帰って来たかった。それが願い叶わず、虫ケラみたいに殺されたんだ。」

 

浩一「分かってます・・・」

 

持ってる手帳から、橘に渡された写真の入った油紙を取り出した。そして、明子が描いた絵を見せる。

 

浩一「これを描いた子供、明子と言うんです。あいつの未来を守ってやりたい。ゴジラは刺し違えてでも必ず仕留めます!」

 

その決心が付いた時、浩一の震えていた手が自然と止まっていた。決心した浩一に橘が少し微笑んだ。

 

橘「ようやく覚悟が出来たようだな。よし、じゃあ大事な事を言うぞ。見ろ。これは爆弾の安全装置だ。奴に突っ込む直前に引き抜くんだ。いいな?そして・・・」

 

最も大事な事を浩一に話した。浩一は驚いて困惑したが、橘が浩一の肩に手を置いて何かを言った。

 

 

 

 

 

 

同じ頃。澄子が洗濯物を持って外へ出た時。

 

澄子「あれ?明ちゃん?どうしたの?1人かい?」

 

裸足のまま立っている明子を見て澄子が驚いた。

 

明子「これ。」

 

彼女が持っているのは、浩一が置いて行った封筒。澄子が封筒の中を出した。中には大量の札束と預金通帳。そして1枚の手紙。書かれているのは。

 

『明子を頼みます。この金は明子の為に使って下さい。』

 

それは、ゴジラとの戦いで玉砕覚悟で征った浩一からの遺書のように思えた。

 

澄子「・・・・・・!」

 

明子「お父ちゃん・・・」

 

澄子「え?お父ちゃん?お父ちゃん・・・大丈夫。大丈夫だよ。」

 

不安になる明子を優しく抱いて落ち着かせる。

 

 

 

 

 

 

三浦沖に特設掃海艇が停泊していた。甲板に立つ見張りが双眼鏡を覗いた時、ガイガー計数管を備えたブイが激しく反応し始めた。その周りには次々と深海魚が揚がってきた。急いで無線で本部に連絡する。

 

見張り「こちら黒潮12号!北緯35度03分、東経139度41分!大量の深海魚浮上を確認!」

 

 

 

 

水中拡声器を備えた駆潜艇が一斉に出動した。その後ろにワイヤーで引かれた水中拡声器があった。

 

水中拡声器『ーーーーーーーーーー!!!!』

 

その水中拡声器から、銀座襲撃時に録音されたゴジラの禍々しい咆哮が流され始めた。これは、ブレーザーによって救出された報道陣が持っていた物を借りているのだ。

 

 

 

 

 

 

逗子軍港が警報が鳴り響いた。

 

港湾放送『相模湾内でゴジラを発見。現在、水中拡声器部隊により作戦海域への誘導を試みている。』

 

藤田「最低限の荷物だけ持て!!急いで乗艦するぞ!!」

 

野田「急ぎましょう!」

 

野田と秋津が雪風に乗艦する。

 

恵美子「お父さん。秀人さん。気を付けて。」

 

芹沢「ご武運を。」

 

山根「ありがとう。尾形君行くぞ。」

 

尾形「はい!」

 

軍港に恵美子、芹沢、新吉を残して山根と尾形も雪風に乗艦する。

 

 

 

 

雪風。

 

野田「水島君は諦めたようですね。」

 

秋津「可哀想だが仕方が無いさ。」

 

野田「本当は敷さんにも飛んで欲しくないんです。敷さんって特攻の生き残りじゃないですか。無茶しそうで・・・」

 

秋津「明子が居るんだ。あいつはきっと帰って来るよ。それにゲントも居る。敷島を救出してくれるさ。」

 

すると、衝突音が聞こえた。

 

尾形「何だ!?」

 

軍港に、炎に包まれた駆潜艇が飛んで来た。駆潜艇が軍港にあるビルに直撃した。

 

山根「あれは・・・拡声器を搭載した駆潜艇か!?」

 

港湾放送『水中拡声器部隊壊滅。ゴジラが相模湾に侵入。海神隊直ちに出航せよ。』

 

秋津「おい・・・あれ!!!」

 

何かに気付いた秋津が沖合を指差した。そこには、波を掻き分けて進む巨大な背鰭・・・ゴジラだった。

 

野田「もうこんな所に!?」

 

港湾に仕掛けられた機雷が次々と爆発する。だがゴジラはそれに意に介さず軍港へと直進する。

 

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