破壊されたビル群。目を伏せたくなる被害者達の無惨な姿。そして、ボロボロになりながら何とか異生物を倒す鮮血の少女。この世界が魔法少女がいるファンタジーな世界だと気づいてから、一時間経たずの出来事だった。
「ごめんね、友達になれなくて」
彼女が何を言ってるのか分からない。きっと約束をしたんだろう。
「ごめんね、皆をまもれなくて。ごめん」
血だらけの少女が、息も絶え絶えにそう言う、何も言えない。何も分からない。
「……ありがとう」
何でだ。何で。俺は何もしてない。なのに、何でお礼を言うんだ?そう聞く事は永遠に出来なくなった。
クラクラする頭の中。何も分からない中で、俺はゆっくりと頭の中にぼんやり覚えている道筋を辿った。
『此処が、"魔法少女研究所"』
記憶によると俺の職場らしい、後は分からない。魔法少女関係の施設としか分からない。記憶が無いからそうとしか言いようが無い。
『よう、ロリポップ!何そんな顔してるんだよ?聴いたぜ、魔法少女がまた一人死んだんだってな』
研究所に入るとすぐ、一人の少女が俺に話しかけて来た。誰だ?
『まあ、慣れっこだろ?そんな顔するなよ。一人一人に感情移入してたら精神が壊れちまうよ、そんな奴を沢山見て来たから俺は学んだ。俺を見ろ。普通だろ?』
『精神が壊れそうになったら言えよ。その時はまた改造してやるからさ。あっ、後所長が呼んでたぜ。新たな担当だってよ』
所長だから所長室にいるだろうと思い、辺りを彷徨い少しすると見つけた。
ノックを三回すると、どうぞと言う声が聞こえ部屋に入る。
「ごきげんようロリポ』
白衣を纏って眼鏡を掛けたショートヘアーの女がそこに座っていた。部屋の中はゴチャゴチャしていた。
「早速だけど、君には新しい魔法少女の担当について貰う。雇用期限は一週間。その間に彼女を殺して貰う」
『は?』
思わず声が出てしまった。何を言ってるんだ?担当を殺す?あの少女と同じ様に?
「何驚いてるんだい?最近の需要と消費は激しい。その期限は約一週間だ。だから旬が過ぎたら捨てる。そうだろ?何か文句がある?」
寒気がする程、冷たい目でこちらを睨まれた。
『……無いです』
そう言う事しか出来なかった。すると、所長は笑顔になって扉に向かって声を掛けた。
「入って来て良いよ」
そう言うと、黒髪で長い少女が入って来た。俺がこの子を殺さなきゃいけないのか。
「この子がロリポの新しい担当。名前はえっと何だっけ」
「
表情を変えず、名前だけ言った彼女に所長は謝罪した。
「そうそうヒョーカちゃんだったごめんごめん」
「これからこのロリポップ君と一緒に戦って貰うから仲良くね!ほら二人とも握手握手〜」
「……」
『……』
無言で手と手と言えない様な、白いモノを重ね合わせる。そして所長はすぐに帰らせた。
「さぁ、顔合わせが終わったら培養室に行ってくれるかな。そこでサンデーが待ってるからさ」
そう促され、部屋に出て培養室とやらに向かった。
日が変わるまで良く分からない研究をして、変な生き物を産み出しては消す仕事をしていた。全く記憶に無いから、どうやら俺は記憶喪失らしい。
寮で仮眠を取って良いよって言われ、部屋に戻った。幸い、寮はすぐ近くにあって場所に迷う事は無かった。
「何だこれ」
部屋の中には色々なものが散乱していた。虹のヘアピン。未開封のドーナツ、少女雑誌。少女漫画。クッキーの袋。ぐちゃぐちゃになったメモ。そこには少女だと思われる名前が一面を埋めていた。途中途中、濡れて読みにくい箇所があり、最後には絶対忘れないと書いてあった。
『"一人一人に感情移入してたら精神が壊れちまうよ"』
まさか、俺に記憶が無い理由って。
これは俺が魔法少女を育てて、殺すだけの話だ。沢山の後悔が詰まって、死にそうになりながらそれでも俺はきっと殺さなきゃいけないんだろう。鏡に映った魔法生物みたいな見た目を見て俺はそう思った。