東西南北中央不敗フウウンサイキ   作:繭浮

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 みなさんお待ちかね!

 ついに選抜レースが始まりました!

 初めての実況・解説付きの本格的レースに緊張するウマ娘達。

 ですが、友であり好敵手であるマヤノトップガン、ニシノフラワー共に、プレッシャーに負けず好成績を残します。

 いよいよフウウンサイキの出走レースが近付きましたが、レース開始直前、彼女は新たなウマ娘と出会う事となるのです!

 果たして、やたらテンションの高い奇妙なウマ娘の実力やいかに!?

ウマ娘プリティーダービー!
「新たなる強者? 尊死のウマ娘アグネスデジタル」
に、レディー、ゴーッ!


新たなる強者? 尊死のウマ娘アグネスデジタル

 選抜レースでは、なんとトゥインクル・シリーズのレースさながらの実況・解説者付きでレースが行われる。これは、ウマ娘に本番の空気感を覚えてもらうためと、出走直前のウマ娘のテンションを上げるためらしい。

 

『さぁいよいよ始まりました、トレセン学園6月選抜レース。短距離の部・第一レースです!』

『今回が初めて本格的なレースを走るウマ娘が多いからですかね。やはり緊張の面持ちのウマ娘がちらほら見られますね』

『そんな中、1枠2番のマヤノトップガン選手、笑顔で観客席に手を振ります。動きも自然体に見えます、緊張は全く見受けられません!』

『ゲートにもすんなり入りましたね。新入生はゲート難なウマ娘が多いものですが、彼女は早くも期待の新星の貫禄を感じますね。きっと良い走りを見せてくれるでしょう』

 

 あくまでメイクデビュー前の学園内行事なので、何番人気だとかは流石にないが。それ以外は本格的な実況・解説だな。

 

 ちなみに、マヤが手を振っていたのは、観客席にいるワシらの集団じゃ。トレーナー陣に媚びを売る気はないらしい。

 

 初めての本格的なレースゆえ、解説が言っておったようにゲート入りするのを嫌がるウマ娘が複数人いたが、無事全員ゲートインが完了した。

 

 ……。数秒の静寂の後。

 

 ガコンッ!

 

 ゲートが開き、一斉に……は飛び出さない。2人程出遅れた。まぁ、現役でレースを走っているウマ娘でさえ割と出遅れる者は多い。初めての選抜レースならば、より多いといえよう。

 

 そんな中綺麗に飛び出したマヤは、

 

『1番に飛び出したのは2番、マヤノトップガン! そのまま先頭を駆け抜けます!』

『最初からトップスピードのような速さ、これは「逃げ」でしょうか』

『ドンドン後続を引き離していますマヤノトップガン、ですが表情から見てかかっている様子ではありません!』

 

 実況解説の予想通り、今回のマヤは「逃げ」だな。

 

 マヤは、ワシと同じくどんな作戦でも割と高水準でこなせるタイプだが、それでも1番得意な作戦はある。それが「逃げ」だ。

 

 まあ、元より短距離は逃げ・先行が有利な距離だ。マヤはわざわざ自ら苦戦を強いるような事をする質ではないから、逃げ一択だろうな。

 

『最終直線に入りまして、先頭は変わらずマヤノトップガン。ですが、スタート時程のスピードはありません! 後続、徐々に距離を縮めております!』

『短距離とはいえ、序盤でスピードを出し過ぎてしまったんでしょうか』

『ですが距離は残り僅か、距離は詰められましたが並ばない! 最後まで独走状態を維持し、マヤノトップガンゴーール!』

 

 終盤で少し詰められはしたが、危なげなく1着でゴール。2着とは、2バ身差といったところかの。

 

「ハァ……ハァ……あはは♪ マヤちん大勝利〜♪」

 

 少し息を切らせておるが、普段の自主練では主に中距離を走っているし、すぐに整うであろう。再びワシらに向かって手を振りながら、高らかに勝利の声を上げた。

 

 そんなマヤに複数人のトレーナーが集まり、勧誘合戦が始まった。

 

 

 

 

「マヤちゃん、おつかれさま〜」

「流石マヤ! 余裕の勝利だったわね!」

「ん〜、まあね〜」

 

 こちらに合流する頃には完全に息も整い、大して疲れを残した様子もなくワシらと歓談を始めるマヤ……ふむ、やはりか。

 

「……マヤさん、真面目に走ってはいましたけど、全力じゃなかったですよね?」

 

 その様子を見て、ハナがワシに耳打ちする。ふむ、ハナも短距離は得意距離なだけあって気付くか。

 

「そうじゃな。恐らく、「篩」にかけたのであろう」

「ふるい、ですが?」

「さっきのマヤの走りを見て本気でスカウトしてきたトレーナーは、割とハズレって事だね〜」

 

 事実、先程言い寄って来たトレーナー達は、マヤに袖にされていた。見ていた限り、多くは新人〜中堅トレーナーがほとんど、ベテラン勢は様子見していた。恐らく、別のタイミングでスカウトしに来るであろうな。

 

「ふーん……マヤなら直感でトレーナーの良し悪し見分けられるだろうに、まわりくどい事するのね」

「ていうか。今日見に来てるトレーナーでピンと来たの、2人くらいしかいないし。そんなレースで本気出す気は起きないかなー」

 

 恐らく、いや、間違いなくその2人とは、沖野と東方不敗の2人であろうな。

 

 

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

 

 

 さて。マヤのレースが終わり、短距離の部も全て終わったが……数人気になるウマ娘はおったが、マヤ程の才は感じられなかったので詳細は飛ばす。

 

 ちなみに、コースは秋川理事長が私財を投じて作らせたという大型整備車にて十数分で綺麗な芝コースへと整え、整備士の最終目視チェックも終わり、後数分でマイルの部が始まる。

 

 マイルの部が終わったら昼休憩を挟み、午後に中距離・ダートの流れになっている。

 

「うぅ、緊張しますー……」

「ハナちゃんの番は中盤くらいなんでしょう? 今から緊張してたら持たないわよ〜? ほら、リラックスリラック〜ス♡」

 

 そう言って、キンカはハナに密着して胸を押し付け、肩に手を置きモミモミと動かす。ハナの目から若干光が消える。

 

「……キンカ。それアタシにやったら絶交だから」

「アッハイダイジョブデスキンカ=サン。ワタシ、トビマシタカラ〜」

「……飛び級したって言いたかったのかな? 何が大丈夫なのかはわけわかんないけど」

「まぁ、本当に大丈夫じゃろう。ハナは一見気弱だが、本番に強いタイプだからの。番が近付けば、自然と緊張より気合が勝るだろう」

「つまり、何の心配もなくいつも通りって事ね」

「うむ」

 

 

 

 

 そうして仲睦まじく姦しくしておれば、あっという間にハナの出走となった。

 

『4枠7番、ニシノフラワー。かなり小柄なウマ娘ですが、情報によると飛び級生との事です』

 

 ふむ。位置は中央、可も不可もなしじゃな。

 

『見た目通り、まだ幼い年齢のウマ娘という事ですね。真剣な表情でしばらくゲートを見つめていましたが、入る時はすんなりでしたね。適度に緊張している、といったところでしょうか。実力は遺憾無く発揮出来ると見てよいでしょう』

 

 ……。

 

 ガコンッ

 

 今回のレースは誰も出遅れる事なく綺麗にスタート、ハナは先頭集団に紛れる。いつも通り、得意の先行スタイルじゃな。

 

 

 

 

『最終コーナーに入りまして、ここまで団子状態のレースになりました。動くのはコーナーを抜けてからか、誰が抜け出すのか!』

 

 うむうむ。ハナは現在2番手、前を走るウマ娘のすぐ後ろに陣取り風避け、いわゆるスリップストリームを上手く使って溜めておるな。

 

『最終コーナー抜けましてニシノフラワー動いた! 4番シックスパックを華麗にかわして前に躍り出た!』

『いやぁ、見事に抜け出しましたねぇ』

『そのまま加速するニシノフラワー、速い! 後続追いつけません! どんどん引き離してそのままゴーール!』

「うむ! 文句なしの完全勝利じゃな!」

 

 2着に4バ身差程で勝利し、体力的にまだ余裕も感じられる。ワシ達との併走訓練で中距離を走り込んでおるからの、まぁ当然じゃな。

 

「うふふっ随分嬉しそうねぇフキちゃん」

「アンタ、ハナの事大好きだものね」

「うむ、ハナとは趣味も合うからのぅ。とはいえ、おぬし達全員大好きじゃが?」

「うっ……それはまぁ、あ、アタシも……あぁ〜もうっ! 恥ずかしいセリフ禁止っ!」

「うふっ! 私も大好きよー♡」

「フキちゃん、やっぱり男前だよね〜」

 

 

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

 

 

 昼休憩……昼食を挟み、ようやくワシの番、ダートの部が始まろうとしていた。ダートは1600のみゆえ、直前の芝2000でコースが荒れていようと関係ないので、中距離が終わればそれ程間を置かずダートレースは始まる。だがまあ、トレーナーのアピールタイムがあるので全く間を置かず、という訳ではないがの。

 

 ちなみに中距離にて、まだ本格化が始まっていないだろうハーツスクリームが出ていたが、当然勝てるはずもなく、ある意味目立ってはいたが16人中9着だった。

 

 一応、本格化前で9着なら善戦した方ではあるが……ゲート難持ちに結構な気性難持ちの彼奴に声をかけるトレーナーは……筋肉筋肉〜と踊りながら近寄って行ったのが1人いたが、ハーツ的に生理的に無理だったようで蹴り飛ばしていた。

 

 それはそれとして。

 

 ワシの出走は、最後ではないが後半であったゆえ、コースは所々穴ボコのある荒れ具合であった。

 

《ま、この程度何も問題ないがの》

《ヒヒン!》

 

 ワシらにとっては、であるが。今回が初選抜レースの他のウマ娘にとっては厄介なバ場といえよう……と思っていたのだが。

 

「はうぅ〜! 生放送のTVで素晴らしき戦線布告をしたあのフウウンサイキさんとご一緒に走れるなんてえぇ……! う、嬉しい……嬉し過ぎましゅううう!!」

 

 ……なんか変なのと同じレースで走る事になった。

 

 とりあえず……うむ、潜在能力はなかなか高いと見た。ならば自己紹介して貰うか。

 

 自己紹介して欲しいなら、先にこちらから挨拶せねばなるまい。

 

「もう知っておるようだが。ワシの名はフウウンサイキ。近い内に、決して消せぬような偉業を世界に刻み込むウマ娘じゃ。おぬしの名はなんと言うのだ?」

「リ、リアルのじゃ系ウマ娘ちゃん様……! 生きている内に出会えた上に丁寧な挨拶まで賜れるとはっ! 感謝っ……三女神様に圧倒的感謝っ……! かっ……」

 

 ドサッ

 

 ……自己紹介をしたら、いきなり大興奮し出し突然三女神に感謝の祈りを捧げ初め、ついには鼻血を噴出し意識を手放し仰向けに倒れおった……なんじゃぁこれ……なんなんじゃ此奴……

 

(既に会話するのに疲れ始めたわ……前世含め、初めて会うタイプじゃな……)

 

 というか、棒立ちのまま真っ直ぐ仰向けに倒れたが、大丈夫——

 

「……っは!? 突然気絶するなど大変失礼致しましたアグネスデジタルですよろしくお願いしましま!」

 

——そうじゃの……マジでなんなんじゃ此奴。

 

 十人十色とは言うが。世の中ワシの知らぬ人種(?)はまだまだおるようじゃ……ともかく。

 

「忙しいウマ娘じゃの……まぁ、よろしくの、デジタル先輩殿」

 

 恐らく一学年上と思われるので先輩付けすると、

 

「そそそんな! わたくしごとき木端ウマ娘に東西南北中央不敗となられる方に先輩呼びされるなど、おお恐れ多いですぅ!?」

 

 ……あー……どうしろと。

 

「デジタル殿。これで良いかの?」

「アッハイ! 愛称呼びありがとうございましゅ!」

 

 ……。一周回ってなんか面白くなって来たの。これが若さゆえの順応力か……

 

『まもなく、ダート1600、第4レースが始まります。出走者は——』

「む、始まるか。では——」

「——はい! 正々堂々レース致しましょう!」

 

 ……流石にウマ娘、レースとなれば走者モードに切り替わるか。

 

(恐らく此奴が、今日のダート走者で1番の強者。間近で見せて貰おうか、本格化し出したウマ娘の走りを!)




 ダートでフウウンサイキをどのウマ娘と競い合わせるかで悩み、色々ダート馬を調べていたら遅くなりました。申し訳ありません。

 ……キンカメ世代の強い競走馬、大体未実装なのですよね。これ以上未実装ウマ娘を出したくないのもあり、無難?にデジたんとなりました。一応、割と世代的に近いダート走れる競走馬なのが、1番の決め手ですが。

 ……ほんとはクロフネさん出したかったけど、良い感じの名前改変が思い浮かばなかったのも理由の1つです。


※来週は、色々と予定があるのでまず間に合わないため、お休みとなります。多分、再来週の夕方5時30分(仮)となります。
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