東西南北中央不敗フウウンサイキ   作:繭浮

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 ※後半なので、毎回の前書きのストーカーさんによる次回予告風のヤツは今回ありません。


ついにG1! フウウンサイキ、伝説の始まり(後半)

「今はワシしかおらん、入ってよいぞ」

「おっじゃましま〜す!」

「お、お邪魔します!」

 

 うむ、やはりマヤとハナの気か。

 

 クラシックを駆け抜けて強者の気を放つようになった今の2人ならば、ワシなら扉越しでも判別出来る。心身共に強くなったの、2人共。

 

「うーん……予想はしてましたけど、G1なのに全然緊張してませんね。流石はフキさんです」

「ね、マヤの言った通りでしょー?」

「なんじゃ、それでは激励に来てくれた訳ではないのかの?」

「そんな事より!」

 

 ワザと寂しげに眉をひそめてみるが、流石に1年以上親友をやっている2人には効果はないようで流された。

 

「いいね〜フキちゃんの勝負服! カッコイイとカワイイと色っぽさが合体して、凄くいいよ!」

「ですね……! とても強そうで、連戦無敗のフウウンサイキに合っていると思います!」

「うむ、だいぶ悩んで決めたデザインだからの。そう言ってくれると実に嬉しい。ありがとう、2人共」

 

 ワシの今日の格好は今までの普段の体操着にゼッケンではなく、レースを走るウマ娘にとっての文字通りの勝負服。G1を走る事を許された者のみが着る事を許された、特別な衣装じゃな。

 

 東方不敗の道着やマスターガンダム要素を入れるかで、かなり迷ったが……この世界はガンダムファイトの世界ではなく、今のワシはフウウンサイキ。ならばフウウンサイキに合った衣装にしよう、と風雲再起との脳内会議で決まったのが、今日着ている勝負服じゃ。

 

 デザインとしては、柄無しの袖なし純白チャイナドレスで、袖がない代わりに袖口にフリルを付けて女子らしい可愛らしさを出しつつ、大胆なスリットの入ったロングスカートで、アダルトな雰囲気も取り入れている。

 そこに、腰紐や編み込んだ髪の先を結ぶリボンに朱色を採用し、ワシの前髪の一部の朱色を表している。

 最後に、モビルトレースシステムの時に風雲再起が着用していたファイティングスーツをイメージして、全身一繋ぎの黒インナーを着用している。それによって、可愛らしさやアダルトさを抑えつつ引き締め、纏まったデザインになった……と思っておる。

 

 かなり悩んだから満足はしているが、まだ改良の余地はあるやもしれん。ワシはデザイナーではないからのう。

 

「……ところで、来たのは2人だけかの?」

 

 まぁ、知っている気が近くに感じられぬから分かってはいるが……後日のホープフルSに出る予定のキンカはともかく、スイが来ないのは少し以外じゃな。

 

「あはは……実は、と言う訳でもないんですけど。インさんが興奮してここに突撃しそうだったので、スイさんが観客席で何とか引き留めてます。つまりはいつも通りです」

「またか。全く、普段は大人しいのに、ワシがレースに出るとなると途端に暴走するのは、いい加減直して欲しいのじゃが」

「インちゃんフキちゃんの事、好き過ぎだよね〜」

 

 デビュー戦から今日まで、インはワシが出走する全レースを観戦しに来てくれている。それは友として嬉しいのじゃがなぁ……レース開始時間が近付くと我慢出来なくなり、毎回控室に突撃(文字通り)宣言しては、スイやキンカらに毎回抑えられていたりする。

 

「今日はG1で、初の勝負服でのレースじゃ。いつも以上に興奮しておるじゃろう。スイ1人では荷が重い、2人は戻って抑えてくれぬか?」

「はい、そのつもりです」

「でも、やっぱりフキちゃん初のG1だからさ。どうしても直接一言言いたくて、来ちゃった⭐︎」

 

 そう言ってワシにウインクを飛ばすマヤ。可愛いの。

 

「でさ……マヤにはわかんないんだけどさ。フキちゃん、緊張してる?」

「フ。G1でも全く緊張しないは、ワシの知る限りマヤくらいじゃな」

 

 そう。ワシは緊張しておる。とはいえ、レース前に——真剣勝負前に緊張しなかった事など、前世を含めて一度もない。

 

「マヤはそれが強みではあるが。普通は多少緊張した方が、実力を引き出せるものなのだぞ?」

 

 緊張、即ち力み。無意識だったり強すぎたりすれば欠点となるが、意識的な緊張・力みは、己の能力を解放するのに重要じゃ。

 

「マヤのような捉え所のない強さというのもあるが。感情を高めた末に辿り着ける境地と言うモノもある」

「ふーん。やっぱりマヤにはよくわかんないや!」

 

 そう言いつつ、マヤは笑顔でご満悦の様子。どうやら、期待していた返答を出来たらしい。

 

「んじゃ、マヤ達はもういくね〜?」

「フキさん、頑張って下さい!」

「うむ、わざわざありがとう」

 

 そう言って笑顔で退出する2人。「勝って」とは言われない。ワシが負けぬと信じておるからじゃろうな。

 

 さて。問題は、今回の——初のG1での勝ち方じゃな。

 

《普段は接戦を演じておるが……どう思う、風雲再起よ?》

《ヒヒィーンッ!!》

《そうか、そうじゃな。ならばぁ!》

 

 デジタルの時以来じゃが。せっかくの初G1!

 

《少しだけ、本気でいこうか!》

《ブルブル!! ヒヒィーン!》

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

『さあゲートが開きまして綺麗にスタートを切りました、おっと3番フウウンサイキ選手! 真っ先に飛び出し先頭に踊り出ました!』

『今までのレースでは追込みか差しで行っていましたけど、初のG1という事で掛かってしまっているのかもしれません。冷静になれると良いのですが』

「プッアハハ! アイツが掛かり? あり得ないあり得ない!」

 

 解説の予想に、思わず吹き出す私、スイーピー。

 

「フキちゃんの事はなんでも知ってる、みたいな言い方やめて貰っていいですかスイープさん。まあ、あり得ないのは同意ですけど」

「変なトコで突っかかってこないでよ。ていうか、もう出会って半年以上経つのに、インはアタシにだけはずっと態度変えないわよね」

「スイープさんの事は嫌いではなくなりましたが、ワガママな部分はやっぱり嫌いですから」

「ま、アタシがG1勝ってから唐突に態度変えるヤツらより、よっぽど良いけどね」

「私は、2人が仲良しになってくれて嬉しいです!」

「んー? マヤから見たら、2人は最初から割と仲良かった気がするけど」

「そんな事よりフキちゃんが走っているんです集中して下さい見て学ぶのも経験値です」

「アタシ的には、フキが関わると唐突に早口になるのやめて欲しいわね。慣れて来たけどビックリするわ」

 

 文句を言いつつ、言われた通りフキの走りに注目する。

 

(逃げ寄りの先行、てとこかしら。何にしても——久しぶりに見れる、フキの「ちょっとだけ本気の走り」。しっかり見届けなくちゃね!)

 

 ……まあ、アイツが少しでも本気出した時点で、接戦決着消し飛び確定だけどね。

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

『コーナー抜けまして先頭はフウウンサイキ! 後続に2バ身以上差を付けていますがまだ伸びる! 驚異的な末脚で更に後続を引き離します!』

『いやあ、これはもう勝負がついたんじゃないでしょうか』

『後続必死の形相で追いすがりますが差は縮まりません! そのままジリジリと引き離して1人旅! 2着に圧倒的差を付けて1着はフウウンサイキ! 大差とは行きませんでしたが、2着に5バ身差は付けての文句なしの大勝利です!』

『今日の彼女の走りは圧倒的でしたね。流石にG1という事で最後は苦しい表情を見せましたが、全身全霊出し切ったようです。何にしても、目を見張る走りでした』

 

 知ってた。

 

「あれで、「ちょっと本気」なんだもんね〜。うーん、だとすると、「本気」のフキちゃんの実力は……どうやって勝とうかなぁ」

「……。「本気」でも、短距離なら、もしかしたら……」

 

 そして、本気出したフキに勝つ算段を建て始めた、クラシック2冠バとトリプルティアラの2人。アレに勝てる算段が建てられる時点で流石よね……

 

「で? 幼馴染みで親友のアンタとしては?」

「苦しげな表情のフキちゃんも格好良くて可愛い、勝負服と相まって相乗効果で魅力倍増」

「……ブレないわね、アンタも」

「今のフキちゃんに私が勝てる訳がない。私は本格化もまだですから」

「だから唐突に真面目に返すのやめてくれない? なんか脳がバグるわ」

「でも——」

「っ!!」

 

 そう呟いたインの——ゴッドインパクトの瞳に宿った炎を見て。

 

「——本格化が来たら。いつか、絶対勝つ」

 

その熱に、アタシの魂は大きく揺さぶられた。

 

(あははっ……流石、フキが最初に認めた「強者」ね……!)

 

 この子……間違いなく、フキに勝てる可能性を秘めている……!




 予定より1時間遅れました……他はだいたい思う通りに描けていましたが、悩んだのは勝負服の説明部分です。服のデザインを文字だけで表現するの、難し過ぎる……


 次回は来週8月25日夕方5時30分からお送りします(仮)

 ※リアルが忙しく描けていませんゆえ、次話は8月31日に延期致します……
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