学内の模擬レース含め、全てのレースで勝利し不敗を維持して来たフウウンサイキ。とはいえ、ジュニア期の公式レースでは、真に自身に喰らい付ける強者とはぶつかりませんでした。
ですが! 今回ついに、友人と同じレースでぶつかる事になったのです!
戦場は中山レース場! G3京成杯芝2000! 相手はマイル〜中距離を得意としたキングカナニ!
全力の友人に、強者と認めた好敵手に、フウウンサイキは無事勝利を掴む事が出来るのでしょうか!
ウマ娘プリティーダービー!
「優駿激突! フウウンサイキvsキングカナニ」
に、レディー、ゴー!
1月中旬。年が変わり、クラシック期ウマ娘として初のレース。ワシらはG3京成杯に出走するため、ウォーミングアップも兼ねて、学園から船橋にある中山レース場へと自らの足で駆けていた。
ちなみに、ワシ「ら」と言ったように、ワシを牽引するかのように先行している男が1人。当然、祖父であり契約トレーナーである、東方不敗である。
「スゥー……ハァー……ふぅ。着きましたな」
「……うむ、流石に本格化中じゃな。スタミナも大幅に上がっておるようだ」
「ええ、実に丁度良いウォーミングアップになりました、お祖父様」
しかし疲労度的に、これでもアヤツへのハンデと言える程ではないのぅ。
まぁそれでも、最近のアヤツも本格化による成長目覚ましいからの。「少し本気」を出さねば、足を掬われかねん程に実力が付いてきている。
《ふふ、楽しみだ。のう、風雲再起よ!》
《ヒヒィーーン!!》
そう。今日の京成杯では、友であり
(……とはいえ、懸念事項もある。本人は相変わらずのほほんとした態度じゃが……)
最近のキンカは、少々オーバートレーニングの回数が目立つ。
見かけたらやんわりと指摘し、丁寧にアイシングやマッサージなどを施してやったゆえ、事故でもない限り選手生命に関わる故障はせぬとは思うが……つまりはそれだけ、ワシに公式レースで「勝ちたい」という想いが強いのだろう。
だが、強すぎる。それゆえ気が逸って、ついオーバートレーニングになってしまうのだろう。
それだけ強い想いを向けてくれる事自体は、望外の喜びではあるが。それで故障でもしてしまったら、あまりに勿体無い。
今の所、故障の兆候は見られぬが……いや。
まだ見ぬ未来に気を揉みすぎれば、今が見えなくなる。それは今頑張っているキンカや、同じくライバル視してくれておる友の皆にも、無作法というもの。
「では、ワシは関係者席にて観戦させて貰う。くれぐれも油断せぬようにの」
「勿論ですとも」
不敵に微笑みながらそう返すと、祖父は満足気に一つ頷き去っていった。
控室でしばし座禅を組み瞑想していると、
コンコン ガチャ
扉をノックし、こちらが返事を返す間もなく開かれ、
「お邪魔するわよぉ」
「……うむ」
キンカが入って来た。ここに近付いてくる漲る闘気から察しておったから、特に咎めたりはせぬ。
しかし、うむ。口調はやはりいつも通りのノンキなものだが、それでも闘志が滲み出ている。調子は絶好調のようじゃな……良きレースになりそうじゃ。
「長居するつもりはないから、一言だけ。多分私が負けるだろうけど……負けるつもりはないわよぉ」
一見矛盾しているかのような一言。じゃが。
「ふふ、そうでなくてはつまらぬ」
レースにおいて、どれだけ実力が離れていても、限りなく勝率がゼロだとしても。天候・バ場の状態・他のウマ娘の動き等による運要素が複雑に絡み合い、完全にゼロとなる事はない。
ゆえに! 最初から最後まで諦めぬウマ娘に、三女神は微笑むのだ! レースが始まる前に膝を突いた時点で、ソヤツは敗者なのだ!
「友よ、キングカナニよ。おぬしはワシが本気で相手するに値する
「……ふふっ。フウウンサイキ……ほんと、素敵なウマ娘。じゃあ続きは——」
「うむ。レースにて——走りで語ろうぞ!」
『綺麗に晴れ上がっております中山レース場。ですが昨日の雨で、バ場は稍重となっております』
『この重さでどれ程自身のパフォーマンスを発揮出来るかが、勝利の分かれ目となるかもしれません』
『1番人気はやはりこのウマ娘、5枠10番フウウンサイキ! 今日も落ち着いた様子でターフに現れました!』
『流石、ここまで全ての出走レースが重賞、尚且つ無敗なだけありますね。強者独特の貫禄を感じます』
『その余裕を崩せるか2番人気、2枠4番キングカナニ!』
『勝利数こそフウウンサイキに軍配が上がりますが、彼女もここまで無敗のG1ウマ娘です。好レースを期待しましょう』
……さて。今回の出走者では、ワシを除けばやはりキンカが1番の強者だが。他のウマ娘も、流石にジュニア期を生き残ったクラシック級。多少は得られるモノがありそうじゃな。
《となると……やはり、追込みで行くかの》
《ヒヒィン!》
得られる経験値は全て平らげ、己が糧とする。ゆえに、ワシは追込みか差しの作戦をよく取る。
……つまるところ。1番得意とする作戦は、追込みでも差しでもないのだが……今はどうでも良い話か。
先にゲートインしていくウマ娘達を眺めつつ、心が昂り過ぎぬよう抑える。今日の出走者は10人、つまり10番のワシが最後じゃ。
そうしてワシが入って後戸が閉じ、皆がゲートが開くのを静かに待つ。
追込み作戦ゆえ1番に飛び出すつもりはないので、違う作戦のウマ娘程に力んではおらぬが……このひと時の静寂に、身体が緊張する。うむ、この緊張感はやはり心地良い……
ガコンッ!
♡ ♡ ♡
一斉にスタートを切るウマ娘達の中で、フウウンサイキのみやや遅れてゲートから飛び出す……ふむ。
「やはり今回も追込みか。相も変わらず、経験値取得に貪欲な孫じゃな」
「ふふっ。ですけど、フキちゃんらしいです」
関係者席にてワシはゴッドインパクトの共にレースの様子を見ていた。
「キンカさんは、いつも通りの先行策……師匠から見て、彼女はどうですか?」
なんとも抽象的な問いだな。聞きたいのは具体的な答えではなく、ワシの所感であろうな。
「フウウンサイキと同時期に本格化したのは、運が悪くもあり良くもある、と言ったところか」
「それはどういう……」
「なに、単純な話じゃ。フウウンサイキと切磋琢磨したからこそ張り合えるレベルの強敵に成長しておるが、同時にフウウンサイキがいるせいで、
「……つまり彼女は、フキちゃんと本格化年が重ならなければ、ウマ娘レース界の歴史に名を残す程の逸材になり得た、と言う事でしょうか」
「その可能性は高かったであろうな。ワシに師事しておらんかったならば、おぬしとも張り合える優駿であったであろうな」
「……やっぱりそうですか」
ワシの返答に満足気に、しかし同時にフウウンサイキへの闘志を漲らせながらレースへの注視を再会する。
(カッカッカ! 面白くなって来おったな、フウウンサイキよ! レースを存分に楽しみ、存分に学ぶと良い)
♡ ♡ ♡
最後尾のワシが直線に入った時点で先頭はキンカ、ワシとの差は約200m。流石にここから
《——見えた! ゆくぞ風雲再起ぃ!!》
《ブヒヒィーーンッッ!!》
—— 300mを切った地点、刹那の時間誰にも阻まれぬ一本道が出来た。
だがしかし、ワシらにとっては刹那で十分! それこそが、待ち構えていた勝利の一直線なり!!
「「超級覇王! 電・影・弾!!」」
❤︎ ❤︎ ❤︎
——最後方からの強烈なプレッシャーに、ゾクリとした。多分、同じターフにいるウマ娘全員が感じただろう超重圧。
目視確認しなくても解る。フウウンサイキが仕掛けた。
(みんなは唐突なプレッシャーに、多かれ少なかれ萎縮しちゃったかも、だけど……!)
「敗北」の二文字が浮かぶ——
(——負けない)
ゾクゾクは収まらないどころか、あっという間にプレッシャーは間近に迫っていて——
(——負けたくない)
チラと後ろを見ればフウウンサイキの姿、その瞳は私を見ていなくてまっすぐ前を——「勝利」のみを——!
「誰にも負けたくない! フウウンサイキにも自分自身にも! 負けを認めた時点で敗北者! それなら私はぁ!!」
誰かがゴール板を踏むまで、レースの勝者は決まってないのなら!
「「それが例えっ!
ハリケーンの中を突き進むような
無謀な行為だったとしてもぉ!!」」
私の想いが弾ける!世界に溢れ出す!力が漲る!
いつの間にか通り過ぎて1番前を走っていたフウウンサイキに追い縋る! いいえ! 勝つ、追い抜く!!
「うわああああ!!!!」
「領域展開見事なり、
——前から、声が流れて来た気がする。
「だがまだ足りぬ! 足りないぞお!!」
詰めた距離が、再びジリリと離され——
(所詮は付け焼き刃、か。悔しいわぁ)
『フウウンサイキ弾丸の如し!! 一気に先頭へブチ抜けました!! キングカナニ必死に粘りますっがぁ〜追い越せないっっ!! 勝ったのはフウウンサイキ!! まさかの最終直線最後尾から、圧巻の大逆転勝利です!! このウマ娘、本当に生涯無敗を貫くかもしれません!!』
1着フウウンサイキ 1バ身差
2着キングカナニ アタマ
3着フォーカスポイント 2バ身差
前回の投稿からだいぶ期間が開いてしまいました。大変お待たせしました。
しばらく心身共に執筆出来ない状態が続いていたので、書き溜めとかはありませんが……最低月一回の投稿を目指して再開致します。今後ともよろしくお願い致します。
ちなみに、超級覇王電影弾をゲームで当てはめると、だいたいこんな感じになります。
フウウンサイキ専用スキル
レア
○超級覇王電影弾
最終直線で持久力をものすごく使って爆発的に加速力をものすごく上げる(追込)