東西南北中央不敗フウウンサイキ   作:繭浮

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 みなさんお待ちかね!

 無事ウマ娘としての名を得た黒須 紅莉栖改め、フウウンサイキ。数日後の誕生日に、ついに彼女はもう1人の自分、ウマ娘トレーナー東方不敗マスターアジアと出会う事になるのです!

 しかし、運命の出会いはそれだけではなかったのです!

 彼女はマスターアジアに連れられて行ったレース場にて、1人の同い年くらいの少女と出会う事になります!

 この出会いが、彼女にもたらすものとは!

ウマ娘プリティーダービー!
「運命の出会い! その名はウマ娘・ゴッドインパクト!」
に、レディー、ゴーッ!


運命の出会い! その名はウマ娘・ゴッドインパクト

「誕生日おめでとう紅莉栖、改めフウウンサイキ!」

「ありがとうございます」

「無事ウマソウルの名前が浮かんで安心したわ。稀に浮かんで来ない娘もいるらしいのよ?」

「む、そうなのですね」

 

 ワシの6歳の誕生日。数日前に頭に名前が浮かんで来た事を報告したら、この日は朝からリビングが、毎年の誕生日以上に飾り付けられていた。

 電球なども取り付けられた室内は、さながらクリスマスのようで、正直やり過ぎ感が否めないが……それだけ両親に愛され、同時にウマ娘として期待されていたのだろう。

 

 ちなみに、部屋が飾り付けられてはいるが、朝食は大体いつも通りのメニューだった。

 

 今朝の献立は、白米、キャベツと人参のサラダ、ワカメとしじみの味噌汁、焼き鮭、ベーコンエッグだ。朝食はしっかり食べるべし、実に理想的なメニューだ。

 

《ヒヒーン!》

《うむ、今日もご機嫌な朝食だな、風雲再起よ》

「いただきます」

《ヒヒンヒン!》

 

 じっくり噛んで味を堪能してから飲み込む。うむ、今日も元気で朝食が美味い。

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

 残さず平らげ食休みを挟んで、いつもの鍛錬メニューをこなしてから、これまたいつも通り温室で昼食に呼ばれるまで瞑想。朝から賑やかに飾り付けられてはいたが、誕生日のパーティーは毎年夜に行なってくれる。

 ウマ娘名が判明したから、その記念でいつもより盛大にやるだろうが、違いはそのくらいか。両親の反応からして、他にもサプライズを計画しているようだが……まあ、聞くのは野暮だろう。

 

(しかし、6歳か……)

 

 ワシは今年4月に、小学校に入学した。ただし、我が家のある市内の学校ではなく、近隣の都市にある地方トレセンの小学校に通っている。ウマ娘は女子しかいないので、実質女子校だな。

 幼稚園や保育園には行っていない。前世で49年生きた大人ゆえ、流石に幼児と戯れるのは精神的にキツく、あまり行きたくなかったのだ。

 その気持ちを汲んでくれたのか、両親もワシが早熟利発幼女であると見てくれたため、メイド兼護衛兼教育係のウマ娘を数人雇ってくれていた。ので、この世界での一般常識はすでに粗方学習済みである。

 

 ウマ娘の名が何故カタカナなのかも、ウマ娘メイドから聞いた。詳しい理由は彼女等も知らなかったが、命名の法則は判明しているとの事。

 学会によると、ウマ娘の名は日本なら基本的にカタカナ9文字、アルファベットなら18文字までらしい。未だ謎の多いウマソウル由来の名なので「らしい」と言われているが、これまでのデータからほぼ確定らしい。詳細を知りたいなら、三女神に聞く以外なかろうな。

 

《まあ、カタカナ読みになっただけで、名前自体が変わった訳でもなし。ワシは引き続き風雲再起と漢字で呼ぶが、構わぬな?》

《ブルル……ヒヒン?》

《うむ、まあそういう考えも理解は出来るがな。ワシが親愛を込めてお前に付けた名なのだ、それを変えたくはない》

《ヒヒヒーンッ!》

《嬉しい事を言ってくれる。ありがとうな、風雲再起よ》

 

 さて。情報整理も済ませた、本格的に瞑想に入るとしよう。

 

 

 

 

 ❤︎ ❤︎ ❤︎

 

 

 

 

 ワシの名前は黒須 秋師。またの名を、東方不敗マスターアジア。身体の明確な衰えを感じたため、孫の出産にも顔を出さず鍛え直し。ついに明鏡止水の境地、武の真髄に達したゆえ。また、我が孫娘がウマ娘の名を賜ったゆえ、一時帰国する事にした。

 そして今は、孫の誕生祝いとウマ娘名発現祝いをするため、数年ぶりの我が家へと競歩で向かっている。もうそろそろ、我が家がハッキリと見えてくる頃だが……

 

(……ワシの長年鍛え上げて来た武闘家としての感、それにトレーナーとして築き上げて来た感覚。その両方が震え、何かを告げようとしておるわ……)

 

 そして、その感覚は、我が家を完全に視界に入れた瞬間、確信という名の元に告げた。

 

(何だこれは……魂消たな。我が家に、とんでもない者がおる……)

 

 ワシは居ても立っても居れず、引いていたキャリーカートを抱えて我が家へと駆け出した。

 

 

 我が家の前に着いた時、その気配の発生源が温室にあると見たワシは、母屋へは向かわず真っ直ぐ温室へと入った。

 

(……美しい)

 

 その者を見た瞬間に抱いた感想が、それだった。我が妻に良く似た、妻を幼くして凛々しさを足した容姿への感想。そして何より、その潜在能力に。

 

(何という事だ……此奴既に、明鏡止水の境地に後一歩の所まで辿り着いておる! それこそ、ワシが後少し背を押せば達せる程に!)

 

 6歳の肉体年齢の、身体の成長を阻害しないギリギリまで鍛え上げられた肉体と、揺らぎのない精神による深き瞑想。それでいて、その内なる魂は前髪の中心の紅毛が表すかのように烈火の如く。

 

 その様を見て。ワシの人生で積み重ねた経験が、感覚が。一つの未来を告げていた。

 

 ワシの孫は――フウウンサイキは、間違いなくウマ娘のレース界を震撼させる存在に成る!

 

「……。お祖父様でしょうか」

 

 いつからワシに気付いていたのか。ゆっくりと瞳を開き、半瞑想状態でそう問うて来た。

 

「……うむ。ワシがお前の祖父、黒須 秋師こと東方不敗マスターアジアである」

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

(……どうしてこうなった)

 

 サプライズとして、我が祖父東方不敗が祝辞を送るため帰国してくるのは予想通り。その祖父が、現在のワシの実力に驚愕するのも予想通り。

 

 であるが……

 

「速過ぎはしないか、フウウンサイキよ」

「いえ、問題ありません」

 

 祖父は両親への挨拶もそこそこに、ワシは小綺麗な動きやすいドレスに着替えさせられ、両親からランチバスケットを受け取ってからワシを抱き抱えて(俗に言うお姫様抱っこだな)全力疾走で家を飛び出した。

 

(ワシ、前世男どころかお主と同一人物なのだが……)

 

 それはともかく。せめて説明してからにして欲しいの……まあ、恐らく休まず走って時間ギリギリなのだろう。

 

 午後の予定は、両親から聞いていた。祖父と今日開催されるG1レースを見る、と聞かされていた。

 

 今日はワシの誕生日であると共に、5月初旬、世間ではゴールデンウィークと呼ばれている連休の日曜。開催されるは東京レース場、「NHKマイルカップ」。

 

(地方にある我が家からでは、法定速度を守っての車での移動では、開催時間の15時40分には間に合わない。ゆえに、TVで観戦するのかと思っていたが……まさか、人力移動とはな)

 

 弁当まで用意してあった事から、両親らの予定通りなのだろう。まあ、祖父が前世のワシの年齢47歳時と同等の身体能力を有しているならば、間に合うのだが……それでも、この移動方法には少々呆れた。

 

 しかし、足がブレて見える程の速度で走っておるのに、腕に抱かれているワシはほとんど揺れを感じぬ。これならば、走りながらの食事も不可能ではない。世界は違えど、流石ワシだ。

 

 と言う訳で、ワシは腕の中にあるランチバスケットを開け、サンドイッチを頬張る。サラダチキン・千切りキャベツ・人参ソースが奏でる絶妙な味のハーモニーに舌鼓を打つ。実に美味である。

 

「お祖父様、どうぞ」

「うむ、ありがとう」

 

 1つ食べ切ってからもう1つ取り、祖父の口元に差し出す。すると、好好爺のような笑みを浮かべてかぶり付き、小さめとはいえ一口で全て口内に収めて咀嚼する。幼児視点になって気付いたが、ワシの口デカいな。

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

 それを繰り返してサンドイッチを分け合って食べ終え、一度給水休憩のため3分程停止した以外はノンストップで駆け抜け。

 

「ふぅ……流石に、アスファルトの道を走るのは疲れるな……だが、15時10分。なんとか予定通りの時間に間に合ったな」

「……ですか」

 

 予想通りではあるが、やはり前世とほぼ変わりない身体能力を持っているようだ。

 今世的に言えば、ウマ娘と長距離レースを走って大差で勝ててしまえる。逆に言えば、心技体を極めれば、ヒトミミでもウマ娘を越える事は不可能ではない、と言う事。

 まあ、そんな才能を持った人間は本当に一握り、その己の才に気付き極めようと思い実行に移せる人間は、砂漠の砂粒の中から小さなダイヤモンドを見つけ出すような極低確率でしか存在し得ないであろうな。

 

 さて、それは今は置いておくとして。

 

「ワシはこういう者だ。VIPルームへ案内してくれ」

「と、東方不敗様……! はい、ご予約は承っております、どうぞこちらへ」

 

 祖父がトレーナー免許を提示するが、受付嬢はろくに確認もせず案内を始める。ふむ、顔パスというものだな。便利なものだ。

 

 ちなみに、祖父も道着の上からジャケットを羽織っている。身体能力は非常識だが、最低限のドレスコードを守る常識は持っているらしい。

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

《ヒヒーン! ヒヒヒーン!》

《これこれ風雲再起、気持ちは解るがあまり気を昂らせるでない。お前が走る訳ではないのだぞ》

《ブルブル……ヒンヒン》

 

 生のレース場の空気に興奮し、さっきから風雲再起の馬としての本能が昂っているようで少しうるさい。

 

 まあ、ワシとしては、愛馬が楽しそうで可愛いものだが……しかし。

 

「映像と生とでは、かなり違いますね」

「うむ。百聞は一見にしかずじゃ。フウウンサイキよ、これがワシからの誕生日プレゼントと思ってくれ」

「ふふ……ありがたく受け取らせていただきます」

《ヒヒーン!》

 

 ワシと風雲再起、両方が祖父に感謝を告げると、近付いて来る人物がいた。

 

「東方先生、お久しぶりです」

「これはこれは加朱(かしゅ)博士、このような場所で奇遇ですな。お久しゅう御座います」

 

 親しげに声をかけて来たのは……どことなく、前世のドモンの父親、カッシュ博士に似た風貌の男性だった。というか、名字の響きも似ている。

 この世界は、ウマ娘の世界だ。その世界でレース場のVIPルームにいる博士となると、ウマ娘の研究者なのだとうかがえる。

 

「そちらは、お孫さんですかな? どことなく、東方先生の奥様の面影があります」

「ええ。今日が誕生日でして、G1を生で見せてあげたく思い、来た次第です。そちらのお嬢さんも加朱博士のお孫さんですかな?」

 

 その博士の影に隠れるように、1人の幼女がおっかなびっくりと言った様子でこちらの顔をうかがっていた。歳の頃は今のワシと同じくらいの、黒鹿毛のウマ娘だった。

 

「みなさんからそう言われるのですが、その……実は、娘なのです」

「おぉ、それは失敬。相変わらず夫婦仲がよろしいようで、何よりですな」

「3月で5歳になりましてね、その時にウマ娘名も授かっています。さ、(とも)、ご挨拶なさい」

 

 父親に促されおずおずと前に出る、加朱博士の娘。智、というのは、ウマソウル名が頭に浮かぶ前に着けられた名だろう。

 

「わ、わたしはと……じゃなかった。ゴッドインパクトと言います。よっよろしくお願いします!」

 

 うむ。辿々しいながら、最後までキチンと挨拶の出来る、よく教育された娘じゃな。

 

 さて。挨拶されたのならば、返さねばなるまい。

 

 ワシはカーテシーをしつつ、挨拶を返す。

 

「東方不敗マスターアジアの孫、フウウンサイキと申します。以後お見知り置きを」

「わぁ……!」

 

 ワシの挨拶に、花が咲いたような笑顔を浮かべるゴッドインパクト。うむ、守りたいの、その笑顔。

 

 

 

 

 ……これが後に、ワシの今世における親友(とも)にして、最大の好敵手(とも)との初邂逅となった。




 皆様お察しかとは思いますが、新キャラの名前は「ゴッドガンダム」と、未実装ウマ娘「ディープインパクト」が合体したものです。今後ディープインパクトが実装されても問題ないよう、こうなりました。

































※来週は夕方5時00分からお送りします(仮)
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