東西南北中央不敗フウウンサイキ   作:繭浮

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 みなさんお待ちかね!

 ウマ娘として初の友人が出来たフウウンサイキですが、ゴッドインパクトはウマ娘としては気性が大人しく、ただ同年代の友人として見ていました。

 ですが、フウウンサイキはその考えをすぐに改める事になりました! レースのファンファーレが鳴り響くと同時、彼女の様子が一変したのです!

 一見気弱な少女に見えたゴッドインパクトですが、その魂は正しくウマ娘だったのです!

ウマ娘プリティーダービー!
「驚愕! ゴッドインパクト、その魂烈火の如く」
に、レディー、ゴーッ!


驚愕! ゴッドインパクト、その魂は烈火の如く

 ゴッドインパクトに挨拶をしてから。

 

「♪」

「……」

 

 ワシは、ニッコニコ笑顔の彼女に腕に抱きつかれていた。なぜだか懐かれたらしい。

 可愛らしい少女に無邪気に引っ付かれる事自体は、悪い気はせんが……どうしてこうなった。

 

「いつもは人見知りする、引っ込み思案な子なんですが。フウウンサイキさんの挨拶1つで懐いてしまうとは……親の私が言うのもなんですが、正直驚いています」

「ゴッドインパクト嬢が引っ込み思案なのは、他人から向けられる感情に敏感ゆえ、でしょうな。そんな彼女が、相手を真に敬う見事な淑女の挨拶を返されたのです、心を許すのも当然かと」

「なるほど……礼節が人を作るとは、よく言ったものですね」

(淑女……)

 

 確かに、意識して淑女の振る舞いはしたが……今世の性別に多少引っ張られてはいるものの、一応精神はまだ男のつもりだから、少々複雑な心境じゃな……

 

 ちなみに、ゴッドインパクトは楽しげに抱き付いて来てはいるが、会話はあまりしていない。ワシがこの状況に困惑しているのもあるが、そもそも此奴は、性格的に口数が少ないタイプなのだろう。

 

 ゆえに、交わした言葉といえば……

 

 

「えっと……お友達になって、欲しい」

「はい。こちらこそ、よろしくお願い致します」

 

「えっと……インって、呼んで欲しい」

「……確かに、ウマソウル由来だから仕方がないとはいえ、女の子の名前としては厳ついかもしれませんね。では、今後はインと」

「はいっ」

 

「えっと……あなたは、どうお呼びすれば……」

「フルネームでも構いませんが……では、頭と尻尾から取って、フキ、とでもお呼び下さい」

「は、はい、フキ様」

「友達に様付けは、距離を感じます。どうぞ、フキと呼び捨てでお願いします。年もほとんど変わりませんし」

「えっと……ふ、フキ?」

「ふふ、まだ堅いですね。ゆっくり慣れて下さい」

「はい♪」

 

 

……この程度かの。ワシの会話量の方が多い感じじゃな。しかし、この会話以降は笑顔で腕に抱き付くだけで、会話はない。

 相手から話しかけてくれるなら、返せるのだが……いかんせん前世が男どころか異世界出身なのもあり、この年代の一般女子の話題内容が未だよく分からぬ。女子小学生歴もひと月だしの。

 

 そうこうしている内に、遂にレースが始まるようで、ファンファーレが鳴り響いた。と同時。

 

「……」

(ぬっ!? 此奴……!)

 

 インの気配、顔付きが、別人かと思う程真面目なものに変わり、ゲートインしていくウマ娘達を凝視した。

 

 更には。

 

(先程までとはまるで違う……深く静かに、だが確かに燃え滾る心ーー此奴の魂が、ウマソウルが、太陽の如く熱くなっておる!)

 

 変わったのは、此奴のウマソウルだけではない。

 

《ヒヒーンッ!! ヒヒヒーンッ!!》

《……先程は宥めてすまなんだ、風雲再起よ。今はハッキリと感じるぞ、お前の熱き魂の昂りを! 成程、これがウマソウルの熱か!》

 

 風雲再起と肉体的に人馬一体となり、分かっていたつもりであったが。今こそ真に解った。

 

 ワシに足りないと感じていたもの、それはウマソウルへの理解! ウマソウルの「走りへの熱量」! 解った気になっていたワシは実に滑稽! それを理解せずして、何が人馬一体か!

 

(いや……前世の人間の感性ならば、今までも人馬一体と言って間違いではなかったのだろうが)

《ブルブル! ブヒヒーン!!》

《お前の持つ「魂の熱」を理解した今! ワシらは真なる「人馬一体」への道程を見出せた! 感謝するぞ、風雲再起よ》

《ヒヒーン!》

(そして、ゴッドインパクト。お主の「灼熱」に触れなければ、気付くのにもっと時間がかかったであろう。感謝するぞ、我が友よ)

 

 変わらず炎を宿した眼差しで、ゲートイン完了したウマ娘達を見つめるイン……美しい瞳だな。うむ、百聞は一見にしかずじゃな。

 

 さあ、思考はここまでだ。もう直ぐゲートが開く、火花散らすレースが始まる。これをウマ娘が上の空で生視聴するは愚の骨頂ぞ!

 

 

 

 

 ❤︎ ❤︎ ❤︎

 

 

 

 

「……これは凄い事ですぞ、加朱博士」

「どうされました急に」

「ワシの経験と感覚、その両方が、ゴッドインパクトに才覚を見出しました。身体能力は、幼い事もあり未だ未熟ですが……その魂、博士的にはウマソウル、でしたか。彼女のウマソウルは既に目覚めており、今現在レースを視聴して、烈火の如く燃え滾っています」

「なんと、智が……しかも東方先生が断言するとなると」

「ええ。ゴッドインパクトは間違いなく、ウマ娘のレース界に名を刻む名バとしての才覚を持っています。彼女は良きトレーナーに指導されれば、無敗の三冠を取るのも決して夢ではないでしょう」

「……ご自分のお孫さんの前で、そこまで他のウマ娘を評価なさいますか」

「フフ……勘違いしないで頂きたい。フウウンサイキの評価を、私はまだ述べておりませんぞ」

「では、先程の「凄い事」とは……」

「……確かゴッドインパクトは、2月生まれの5歳でしたな」

「はい。そうですが……ハッ! フウウンサイキ嬢は、5月の今日で6歳。つまりは学年が1つ違う!」

「うむ。ワシの見立てでは2人共、本格化の年齢は一般的なウマ娘の平均と同じ。つまりはーー」

「ゴッドインパクトがジュニア期の時、彼女はクラシック級……東方先生はこう見えているのですね。2年連続で無敗の三冠バが誕生すると!」

「然り!」

 

 今まで成し得なかった、「2年連続での無敗の三冠」。あの2人なら必ず成し遂げると、ワシは確信した。

 

 だが、敢えて口には出さないが……それだけでは済まない、とも確信していた。

 

(フウウンサイキ。彼奴は間違いなく、無敗の三冠「程度」では終わらぬ。それこそ前人未到、今まで日本のウマ娘が成し得なかった偉業すら達成し、ウマ娘のレース界を震撼させ得ると、一目見た時確信した。それこそ、世界を震撼させるようなーー!)

 

 その未来予想に内心の歓喜の震えを表に出さぬようにしたが、しかし顔には笑みが溢れてしまった。

 

 そしてこう思う。ゴッドインパクトを、無敗の三冠バへと仕立て上げるには! フウウンサイキと共に競い合い、高めあう好敵手(とも)にするには!

 

「東方先生。お頼みしたい事があるのですが」

「なんでしょう?」

「貴方に、ゴッドインパクトをお任せしたい!」

「喜んでお引き受けしましょう!」

 

 こうして、ワシはゴッドインパクトを鍛え上げる事を約束した。

 

(さあ、叶えておくれ……ワシの夢を。ワシの二つ名が、東方不敗マスターアジアではなく、東西南北中央不敗スーパーアジアとなるのを!)

 

 自身の欲と、ウマ娘の欲。両方を満たしてこその、名トレーナーというもの! 期待しておるぞ、フウウンサイキ、ゴッドインパクト!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴッドインパクトとの運命すら感じる出会いから、はや数年。ワシは小学6年生となり、すでに時は1月。4月には、ワシは中央トレセン学園の生徒になっているだろう。

 

 一応受験は受けるつもりだが、祖父が学園側に強くワシを推薦したらしいので、受かるのはほぼ確定だろう。クラスでも、ワシより速いウマ娘はおらぬしな。

 

 そんな訳で。ワシはここ数年の事を振り返ってみた。

 

 まず、ワシの祖父こと東方不敗マスターアジアだが。ワシが前世で死を迎えた年齢を越したが、未だ死んではいない。とはいえ、やはり世界は違えど祖父はワシらしい。

 

 NHKマイルカップの後、祖父は両親に押される形で、渋々健康診断を受けに言ったのだが……詳しい病名は明かしてくれなんだが、どうやら完治不可な程に、身体が難病で蝕まれていた事が発覚したらしい。それが、マスターアジアの避けられぬ運命なのだろう。

 

 だが、祖父は前世のワシの享年を超えて生きている。少し痩せて来てはいるが、恐らくワシがシニア級ウマ娘になるくらいまでは生き延びるのでは、と思っている。

 

 理由はいくつかあるが……1つとして、今世の地球環境が、前世とは比較にならぬ程良いため。自然を愛する祖父が自然破壊の心配のない世界で生きているゆえ、精神疲弊が少なく病気の侵攻が遅いのだろう。

 

 また、前世のワシの死因は、デビルガンダム細胞に侵されぬよう闘気を纏い続けたための疲弊と、ドモンとの最期の一騎打ちにより死期が早まってしまったせいだろう。それがない今世では、そう言った寿命を縮める要因がないゆえの延命だろうな。病は気から、とはよく言ったものだ。

 

 祖父の病状はこんなものだな。ワシに何か出来る訳ではないので、これ以上考えても仕方がない。

 

 次に、ワシとイン……ゴッドインパクトの関係について。

 

 ワシは夏休みなどの長期休暇に入ると、出された宿題を即片付け、祖父と共にギアナ高地で修行していた。そこで、祖父に出された課題を帰還日までこなしたのだが……

 

「フウウンサイキよ。ワシから教える事はもう何もない。お主も解っておろう」

「……そうですな。はい、ワシは祖父の教えを、もう十分に吸収出来たと自負しております」

 

 僅かひと月ちょっとで、免許皆伝を言い渡されてしまった。まあ同一人物じゃからな、当然と言えば当然だ。

 

「うむ……しかしまあ、なんだ。それは予想通りなのだが……口調まで吸収するのは、流石に予想外じゃな」

「この話し方の方が、自分には合っておると感じたので」

 

 ……と言うのは口実で、今まで令嬢らしい口調を意識的に行なっていただけで、素の口調に戻しただけなのだが。はー、今まで堅苦しかったわい。

 

「心配せずとも、目上の方には今まで通り丁寧な口調で話すので、勘弁して下され」

「……それなら良いがな」

 

 とまあ、祖父からの直接指導は最初の夏休みで完了したが、やはりここでの修行は性に合っているようなので、毎年夏冬の長期休み時はここで鍛錬してきた。

 

 そして最後に、インとの関係じゃが。

 

 学年が1年違うゆえ、学校での交流はワシが二年生になってからだったのだが……

 

「♪〜」

 

 授業時間以外は、あの時のVIPルームのようにニッコニコで腕に抱き付かれていた。教室のクラスメートからの、尊いモノを見るほわほわ視線がムズがゆかった。まあ、1年もすれば多少は慣れたが……未だにムズがゆく感じるのは何故なのだろうか……?

 

 インとの関係は、それだけではない。ワシが二年生の夏休み、昨年と同じくギアナ高地に祖父と共に向かったのだが、それにインも付いて来た。なんでも祖父は、加朱博士直々にインを鍛えて欲しいと頼まれていたらしく、毎回長期休暇の期間中、祖父はワシではなくほぼインのみに指導をしていた。

 

 まあ? ワシは既に教わる事はないので良いのだが。なーんとなく、疎外感は感じた。別に良いのじゃがの?

 

 そんなこんなでインは、小学校ではワシを除く上級生よりも速く走れる程に成長していた。此奴のウマソウルの熱量からして予想通りなので、ワシとしても嬉しい限りだった。

 

「フウウンサイキよ」

「……。どうされましたかな、お祖父様」

 

 瞑想半分過去回想半分で座禅を組んでいたところで、祖父に話しかけられた。時計を見ていないので、正確な時間は分からないが……空が明るくなり始めた事からして、後数分もすれば日の出を拝めるであろう。

 

 となると。

 

《ヒンヒン!》

《うむ。今日帰国するのだからな、アレをやりたいのだろう》

 

 風雲再起に促され、立ち上がって祖父を見やる。

 

「お前は、今日で帰国だ。そして来年からはトレセン学園生、恐らくここでの鍛錬は、今日で最後になろう。ならばーー!」

 

 祖父が拳を突き出す。挨拶は、返さねばならない!

 

「答えろフウウンサイキ! 流派・東方不敗はぁ!」

「王者の風よ!」

「全新!」「系裂!」

「「天破侠乱!!」」

 

「「見よっ! 東方は、赤く燃えているっっ!!!!」」

 

 拳を打ち合い、流派東方不敗免許皆伝者の挨拶を終えると同時、ワシ達の間に朝日が差し込み、背後が燃えているように見える。

 

「さらばだフウウンサイキ! 次は、トレセン学園で会おうぞ!」

「はい!」

 

 こうして、ワシの小学生時代のギアナ高地での修行は幕を閉じた。

 

《さぁて。強者の中でも上澄みが跋扈していると噂の中央トレセン学園。楽しみじゃなぁ、風雲再起よ!》

《ヒヒィーン!!》

 

 祖父からヤル気も受け取り、心身共にこれ以上ない程に充実状態。受験にも落ちる気がしない!




 次話から、ようやく舞台はトレセン学園に移ります。





































※来週は夕方5時30分からお送りします(仮)

※追記
体調不良なのとリアルが忙しいため、更新は20時に変更となります。
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