東西南北中央不敗フウウンサイキ   作:繭浮

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 みなさんお待ちかね!

 ついに中央トレセン学園の地に踏み込んだフウウンサイキ。ですが彼女は、待ち構えていた学園長達に半ば押し付けられる形で、新入生代表挨拶をするように頼まれます。

 事情を聞き、仕方なく引き受けたフウウンサイキですが、これを好機と見た彼女は、誰も予想の付かない大胆な行動に出るのです!

ウマ娘プリティーダービー!
「大胆不敵! フウウンサイキ、世界最強宣言」
に、レディー、ゴーッ!


大胆不敵! フウウンサイキ、世界最強宣言

(……まだ目立つつもりはなかったのだがな。はぁ、どうしてこうなった……)

 

 入学式。小学校の頃よりかなり大きい体育館にて、ワシは壇上に立ち、新入生代表挨拶をしていた。

 

 新入生代表に選ばれるのは、入試の際の単独模擬レース・筆記試験・面接の三点で総合的に最優秀の者らしい。その代表挨拶を、校門をくぐった先で待ち構えていた小さな理事長嬢と緑の理事長秘書嬢、生徒会長殿に連行され、学園長室にて頼みこまれたのだ。

 

 普通こういうものは、事前に連絡が来ているものだと思うのだが……なんでも、誰を代表にするかでかなり揉めたらしい。

 

 簡単に言うと。ワシは試験の模擬レースと面接は最優だったらしいが、筆記はせいぜい中の上だったらしく、筆記ほぼ満点で飛び級で入学する者がおり、ワシと其奴のどちらにするかで議論が白熱し、なかなか決まらなかったそうな。

 そうして、ようやっと結論が出たのが昨日。あまりにも遅すぎるが……まあ、流石に今回のような事態は異例らしい。

 

 ワシに決まった決定打だが。飛び級のウマ娘は飛び級、つまりは実年齢は未だ小学生、精神年齢的にも幼いと判断されたため。そんなウマ娘に、前日に頼む訳には、となったそうだ。

 

 逆にワシは、精神的に早熟と判断されたのと、ワシが小学校の卒業式で卒業生代表挨拶の経験があった事。更には、あのマスターアジアからの推薦者である事を加味し、ワシなら用意された挨拶文を読み上げるだけならイケるだろうと判断されたため、らしい。

 

(しかし、卒業式代表挨拶、か……)

 

 あの時の思い出として強く印象に残っているのは、壇上での挨拶よりも、それを終えた後にゴッドインパクトが号泣してしまったのが強い。そのせいで、在校生代表挨拶をする予定だったゴッドインパクトが使い物にならなくなり、代理のウマ娘が申し訳なさそうに挨拶する事になったのだ。

 

(ふ、一年学校で会えなくなるだけであの号泣は、しんみりしていた空気をぶち壊して笑えたな)

 

 話し始める前にそんな楽しい記憶を思い出して、ぶっつけ本番の緊張を解す。

 まあ、前世でもガンダムファイトの選手宣誓などをこなした経験がある、台本は渡されたが軽く目を通しただけで壇上には持って来ていない。何も問題ないからの。

 

 さて。壇上に立ってここまで思考したのに、時間にして二呼吸程。いい加減始めるかの。

 

『この度は新入生代表に選ばれ、こうして生徒の皆様に挨拶出来る事、大変栄誉に思います。代表者として、中央学園生として恥じない走りを披露できるよう、切磋琢磨する所存です』

 

 台本の序文を堂々と読み上げると、生徒会長がほう、と感心したように呟き声を出したのが聞こえた。掴みは十分か。

 

 さて。形式ばった挨拶はここまでじゃ。この学園に在籍するウマ娘が競争者として上澄み揃いならば!

 

 ワシは壇上で少し横にずれ、マイクも少し遠ざける。ここから先は、拡声器など不要!

 

「形式ばった挨拶はここまでぞ! この世界にウマ娘として生を受けたのならば、目指すは頂点!」

「ふ、フウウンサイキさん、何をーー」

 

 たづな嬢らが困惑しているが、構わず続ける。

 

 中央トレセンの入学式は、地方のトレセンと違い日本中から注目されており、更には記者やTV局のカメラも回っている。つまりはーー日本へ、世間への、ワシのこれからの偉業表明の場に出来る!

 

「日本よ! 世界よ! ウマ娘よ! ワシの名はフウウンサイキ! この名を己がウマソウルに刻め! この名が、この名こそが、世界最強のウマ娘になるウマ娘の名だ!」

 

 その宣誓、いや、宣戦布告に、会場は静まり返る。

 

 さて、最後に〆の言葉じゃ!

 

「ワシは出場するレース全てで見事に勝利を掴み、世界最強のウマ娘として君臨する! その暁に、真の王者たるワシの名はこう呼ばれるようになるのだ! 東西南北中央不敗フウウンサイキと!!」

「東」「西」「南」「北」「中央不敗だと!?」

 

 誰かが驚きの叫びを上げる。フフ、第13回ガンダムファイトの開会式を思い出すな!

 

「生涯無敗を貫くと、ここに宣言する! 己の走りに誇りあるウマ娘よ、臆さぬのならかかって来い! みんなまとめて叩き潰してくれようぞ!」

 

 そう言い切ってから壇上から飛び降り、体育館より駆け出る。

 

《ヒンヒン……》

《何を言う風雲再起よ。壇上から見下ろした限り、新入生にワシに必ず勝てる程の猛者は見当たらなかったのだ。発破をかけヤル気を引き出すならば、あのくらいせねば楽しいレースは望めぬぞ!》

 

 ……まあ、風雲再起の言う通り、少々やり過ぎな気はしたが……しかし、しかしだ。

 

《ウマ娘のワシと、この世界のワシ。両方があの二つ名で呼ばれる事が、ワシの望み。余命数年の祖父に孫から贈る、最後にして最高の餞別だとは思わぬか?》

《ブルル……ヒヒーン!》

《うむ、その意気だ風雲再起!》

 

 駆けながら風雲再起と会話し、校内に入ってからは競歩にして、ワシはまだ始業式が終わっておらず無人の教室へと先に入って席に座った。

 

 

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

 

 

「凄い自信……これが、中央トレセン……わ、私、飛び級したの判断ミスだったかなぁ……」

 

「ふふっ。とんでもなく面白いウマ娘がいたものね。ワクワクしちゃう♡」

 

「このスイーピーより先に目立つなんて、ナマイキ!」

 

「あの身のこなし、さっきの発言……あぁそっか、わかっちゃった」

 

「ッハハ! 口先だけじゃねえな、自信に満ちてやがった。だが……負けねぇ!」

 

 

 

 

 ♡ ♡ ♡

 

 

 

 

「あ、あの娘! 同じクラスだったんだ……ち、ちょっとこわい……」

「それよりも、あの東方不敗トレーナーが復帰するなんてねー!」

「あの宣言、絶対東方不敗トレーナー意識してるよね。もう東方先生がトレーナーになった気かしら!」

「髪型もマネしてるし、そーだろうねー」

 

 十数分後。始業式を終えた新入生が、近くのウマ娘と雑談しながら続々と教室に入って来た。一様に、ワシと目が合うと目線を逸らし、ワザとらしくワシの話題から別の話題へと切り替える……やはり少々やり過ぎたかの? まあ、後で理事長嬢と生徒会長殿は喜びそうだが、たづな殿からはお説教されるであろうな。

 

 と、思考に耽っている矢先。

 

「おー、同じクラスとはツイてるわぁ! 早くお話ししたかったのよぉ!」

 

 ほう……あの宣戦布告に臆する事なく、むしろ楽しげに話しかけてくるウマ娘がおるとはな……ふむ、パッと見た限り、なかなかの潜在能力を秘めておるようだ。

 

「私の名前はキングカナニよ。ふふっ、よろしくねー♡」

 

 肉体的にも話し方的にも、色気ムンムンだ。そのバストは豊満であった。というか、本当に同い年か疑わしいくらの色気じゃな。

 

 まあとにかく。挨拶は、返さねばならない。

 

「もう知っているだろうが、ワシの名はフウウンサイキだ。よろしくの」

「ええ!」

 

 そう言って握手の手を差し出すと、両手で柔らかに包み込むように握り、ゆったりと腕を上下させる黒に近い鹿毛のウマ娘。

 

 なんにしても。あの宣言を聞いて、平然と話かけられる胆力は気に入った。名はキングカナニか、覚えておこう。

 

 それに。ワシの感覚が告げるに、此奴とワシの本格化は同時期だろう。つまりは、ワシと鎬を削る事になる逸材。今は蕾の段階だが、花開けば皇帝ダリアのような大輪の花を咲かせるだろう潜在能力を感じる。うむ、実に楽しみだ。

 

「あー! 同じクラスだったのね、白毛三つ編みのアンタ!」

 

 今度は何やらキャンキャン騒がしいのが来た。いや、騒がしいのはともかく。

 

「……お主はなにゆえ、魔女のような帽子を被っておるのだ?」

「あら! 真っ先にそれを聞いてくるなんて、見所があるじゃない! あんだけ大見え切って大目立ちしただけあるわね!」

 

 そう言い、年相応……よりは色々とちんまいか? ともかく、いかにも中学生になりたての幼い自尊心で無い胸を張る、明るい鹿毛の魔女帽のウマ娘。

 

 ちなみに彼女の言う通り、ワシは長髪を緩めの三つ編みにしている。緩めなのは、祖父と丸かぶりの髪型にするのは、なんとなく前世の悪党な自身を思い出してしまうからだ。

 服は、トレセン学園の制服の下に、上下共に黒のスポーツインナーを着ている。黒は身体のシルエットを細く見せるからの、出来るだけ実力と筋肉を隠しておきたかったから黒色のインナーにした。能ある鷹は爪を隠す、じゃ。

 

「アタシの名前はスイープトウショウ……は、変身前の名前! トレセン学園生の姿も仮の姿よ! その正体は! 『魔法少女スイーピー!』」

 

 ……。ワシも大概変わり者だという自覚はあるが。また濃いのが来おったの……

 

 だがしかし。此奴の潜在能力も、なかなか……キングカナニよりも硬い蕾ではあるが、恐らく此奴も本格化はワシらと同時期であろうな。

 

 それはそれとして。

 

「なにゆえ魔女ではなく、魔法少女なのかの?」

「だってまだアタシ、少女だもの」

「ふむ、年齢の問題なのか」

「それだけじゃないわよ。アタシが魔女と名乗るべきは、レースで大勝利してから……ううん! 最低でもG1を勝つまでは、魔女なんて名乗れないわ!」

 

 ほほう。G1勝利宣言か。此奴も面白い。

 

「だから! アンタが東西なんとかって呼ばれる事はないわ! だってアタシがいるんだもん!」

「私も、負けないわよー?」

「うむ、その意気やヨシ! 是非ともワシの前に壁として立ちはだかってくれ!」

「誰の胸が壁よ! だいたいアンタもまな板じゃないの!」

「何の話じゃ、何の」

 

 胸とは一言も言ってない。好敵手なり得る面白さもあるが、性格も面白いウマ娘じゃな。ある意味気に入った。

 

 ちなみに、スイープトウショウ……愛称はスイーピーか、スイープかの。彼女の言う通り、ワシの胸部もまな板……と言う程ではないが、少し膨らんでいる程度のサイズだ。お陰で走る時バルバル動いたりせんので、成長しないでくれたのはありがたかった。

 逆に、キングカナニ……キンカでよいか。キンカの大きさだと、キツめのスポーツブラをせずに走ったら、激しく揺れて痛そうじゃな。

 

 さらにちなみに。現在のワシの身長は150cm程度。本格化したらもう少し伸びるであろうが、それでも平均身長を少し越える程度、かの。キンカは既に平均身長程、スイープは少し低めじゃな。

 

「……(こそこそ)」

(む? あれは……)

 

 スイープを適当にあしらいつつ他の有力ウマ娘がいないか観察していると、平均身長を大きく下回るおかっぱ黒鹿毛のウマ娘が、おっかなびっくり入室して来た。

 

(ああ、彼女が飛び級の……ふむ、成程の。飛び級が許される訳じゃな)

 

 ワシの感覚が正しければ、年齢的にも身長的にも低いが。彼女の蕾は既にほころびかけておるようだ。飛び級させなければ、本格化時期に適切な鍛錬を施せないだろう。

 

 要するに。彼女は恐らく、今年にはもうジュニア期のウマ娘として、レースの世界にワシらより先に、飛び込む事になる。

 

「フラワーちゃん、そんなビクビクしなくても大丈夫だよー。おっ、早速はっけーん!」

 

 それに続いて、人懐こい雰囲気を振り撒く、少し癖毛の明るい長い栗毛ウマ娘が此方を指差す。

 

「ま、マヤノさん、人を指差してはダメです」

「フラワーちゃんは真面目だなー。アイコピー」

 

 雰囲気通り性格も人懐こい性格らしく、すでにフラワーと呼ばれた小さなウマ娘と親しげに会話している。

 

(ふーむ。こやつも早熟なタイプかの。恐らくだが、彼女も今年にメイクデビューしそうじゃな)

 

 うむ、思ったより強者になり得るウマ娘のいるクラスに割り振られたようだな。思った以上に楽しい学園生活を送れそうだ。




 色々あって投稿が予定より少し遅れてしまいました。申し訳ありません。


 みなさんお察しの通り、キングカナニは未実装のウマ娘「キングカメハメハ」の代わりのオリジナルウマ娘です。ちなみに「カナニ」はハワイ語で「華麗な」「輝かしい」の意味があります。

 ちなみに、ネームドクラスメイトは、

キングカナニ(キングカメハメハ)
スイープトウショウ
ニシノフラワー
マヤノトップガン

となります。


































※来週は夕方5時30分からお送りします(仮)
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