あまりにも大胆過ぎる宣戦布告をしたフウウンサイキでしたが、踏み込んだのは上澄みの跋扈する中央。彼女の不敵さに臆する事なく近付くウマ娘が、なんと複数名も現れたではありませんか!
いずれも特異な才能を秘めた上澄み中の上澄みと見抜いたフウウンサイキは、悦んで彼女達と友人になるのです!
しかし、入学式での予定外の行動に、フウウンサイキは理事長室に呼び出されてしまいました!
そこで明かした、彼女の計画とは!?
ウマ娘プリティーダービー!
「優駿揃う! 新たな友と、無謀な挑戦」
に、レディー、ゴーッ!
入学式以降の今日の予定は、教室ではクラス役員等を決めるホームルーム程度。後は、学園の敷地外にさえ出なければ、寮の門限まで基本何処へ行っても構わない事になっている。
と言う訳で、だ。まだ会話出来ていなかった、フラワーと呼ばれていたウマ娘、HRの時にニシノフラワーと自己紹介していたな。是非彼女と会話したく思い、HR終了後に即刻近付く。
「ニシノフラワー嬢。少し良いか?」
「改めて近くで見ても、アタシより小さいわね」
「ちっちゃ可愛くていいじゃなーい♡」
……何故か当然のようにスイープとキンカが付いて来たが、まぁ良いか。愛称呼びで良いかと聞いて了承されたのだから、彼女達とは友人と言っても良いだろう。
「あっ! ふ、フウウンサイキさん! わっ私何か失礼をしてしまったでしょうか?」
そう言い、椅子から慌てて立ち上がりつつも綺麗なお辞儀をされる。飛び級で年齢的には小学生のはずだが、礼儀正しくお淑やかな性格なのだな。うむ、好感が持てる。
しかし、まるで喧嘩を売って回っている不良に絡まれたような反応に、少し気落ちする。まあ、入学式で全日本のウマ娘に喧嘩売ったようなものじゃしの、この反応も致し方なしか。
だが、彼女へ声をかけたのは、強者になりうるウマ娘だから……もあるが。別の、ワシ個人の趣味的理由からだ。
「いやなに、先程ニシノフラワー嬢が自己紹介の折、「花が好き」と言っていたのでな。ワシも、実家に温室があって植物に囲まれて育ったゆえ、花は好きでな。親近感を感じての」
「えっ温室ですか!? 羨ましいです!」
おお、食い付いて来たの。最初のオドオドした態度から一変、花のような笑顔になった。愛らしいな。
「えっとえっと、それじゃあ! お好きなお花を教えて下さい!」
「ふむ……植物全般好きじゃからの。どれかに絞るとなると悩むが……あえて言うなら、サボテンじゃな。学園の寮部屋にも、鉢植えのウチワサボテンを二鉢持ちこんでいるでな」
「バニーカクタスちゃんですか! 黄色いお花も可愛いですし、ウサギさんみたいな見た目も可愛いですよね!」
「ちなみに私はぁ、プルメリアが好きよ♡」
「……え、これ順に答える感じ? えっとアタシは……す、スイートピー?」
「お主、自身の名がスイープトウショウだから、咄嗟に似た名前言ったじゃろ?」
「な、何よ、悪い? 可愛いからいいじゃない、スイートピー! 文句あるの?」
「マヤ的にはー、スイープちゃんツンツンしてるから、ストレリチアの印象かなー?」
「ああ、分かるな。花の一部が紫がかっているのも、魔女帽に見立てられるしの」
「だよね!」
「何よそれ?」
「鳥さんみたいな可愛いお花ですよ!」
「暑さにも寒さにも強いからの、日本でも育て易い部類じゃな。ほれ、我が家で咲いていたのを撮ったものじゃ」
「へぇ、これがストレリチア。良いわね……ていうか、微妙に話題変わってない?」
「というか、自然にしれっと会話に混ざって来たわねぇ、マヤノトップガンちゃん」
「そうじゃなぁ」
「んー? マヤ、なにかおかしかった?」
さもここにいるのが当然と言った顔で、途中から話に混じっていたマヤノトップガン。厳つい強そうな名だが、本人はのほほんとしており自然体なウマ娘じゃの。
……新シャッフル同盟の、サイ・サイシーを思い出すな。こういうタイプは、一度何かの切っ掛けでヤル気スイッチが入ったならば、途端に怪物と化す。
(クラシック期でぶつかれないのが残念じゃな)
マヤノトップガンか。本人の一人称から取って、拒否されなければマヤと呼ぶかの。
♡ ♡ ♡
『新入生のフウウンサイキさん。フウウンサイキさん。至急理事長室までお越し下さい。繰り返します――』
「む?」
「あらぁ、理事長室に呼び出されるだなんて、フキちゃん何したのぉ?」
「思いっきりやらかしたじゃない! むしろ遅い呼び出しね?」
「あ、あはは……」
「マヤ的にはアレ、チョーカッコイイと思ったよ!」
あの後。友人となったキンカ・スイ・ハナ・マヤと共に、校内探索や先輩ウマ娘の鍛錬を見学したり、学食で一緒に昼飯を食べたり等して親睦を深めていたのだが。スイの言う通り、遅いお呼ばれじゃの。
「そういう訳じゃからの。すまんがワシは外れる。夕飯の時にでもまた会おう」
「いってらっしゃ〜い」
「せいぜいタップリ絞られて来なさい。アタシなら逃げるけどね」
「ふ、ファイトです、フキさん!」
それぞれの送り出す言葉に押され、理事長室へと――
「あっそうだ! 当たってるかどうか聞くの忘れてた!」
――歩き出したのだが、マヤが腕に抱き付いてきて、耳元で囁いて来た。
「バレたくないかもって思ったから、こんなカタチで急にゴメンね? フキちゃんって、東方不敗トレーナーのお孫さんだよね?」
「……まぁの」
「やっぱそうなんだー。やった、当ったりー♪」
その内バレる、というか、祖父所属のトレーナーになった辺りで祖父自身から発表があるだろうが。流石に、初日でズバリ言い当てて来るのがいるのは予想外じゃな。
《マヤ――マヤノトップガン。此奴、予想以上に頭が切れるようだ。ますますクラシックで競えないのが惜しいのぅ》
《ヒンヒン!》
《確かにの。シニア期まで楽しみは取っておくとしよう》
風雲再起の言う通り、クラシック期のマヤには負ける気がしない。果報は寝て待て……は少し違うか? ともかく、後のお楽しみじゃな。
「引き止めてゴメンねー。じゃ、たづなちゃんに叱られた感想、聞かせてねー?」
「叱られた感想聞きたいとか、お主も変わり者じゃなぁ」
「んー、フキちゃんには負けるかなー? 色んな意味で!」
「ふ。ではまたの」
……やはり、のほほんとしているのに頭が切れる。直感型の天才タイプじゃな。
♡ ♡ ♡
「――ですので。ウマ娘として向上心が高いのは大変結構ですけれど、今後は常識を弁えた行動を心がけて下さい。分かりましたか、フウウンサイキさん?」
「はい、承知しました。やるにしても、事前にお伝えしてからにします」
「よろしい」
……ふう。ようやくお説教が終わったか。まあ、予想よりは短かったが……長引かなかったのは、突然代表挨拶を頼んだ負い目もあるのかの。
「痛快ッ! あそこまでの啖呵を切れる者もそうそういないぞ! たづなのお小言はあまり重くとらえずとも良いからな!」
「はぁ、理事長ったら……まあ、彼女のあの宣誓自体は、みなさんの良い刺激になったとは思いますが」
「それは確かに。大胆不敵でありながら傲岸不遜ではないフウウンサイキ君、私は大変好ましく思います。宣誓で先制……ふふっ」
思った通り、待ち構えていたのはやよい理事長とたづな秘書、生徒会長のシンボリルドルフ殿だった……何故か最後、少し体感気温が下がった気がするが、何故かの?
ああ、それともう1人。
「ワシも、早々に何かやらかすとは思っておりましたが。まさか入学式で全国のウマ娘に宣戦布告をするとは、ワシの目を持ってしても見抜けなかったわ! ぬぁっはっはっは!!」
東方不敗マスターアジアこと黒須秋師トレーナーこと、ワシの祖父がいた。ワシは宣戦布告をしてすぐに体育館から飛び出してしまったから見てはいないが、あの後壇上にて、今年から中央のトレーナーとして復帰する旨を本人の口から発表したらしい。中央トレセン学園の入学式はTV放送もされているため、ワシの宣戦布告と合わせて、ウマ娘界はしばらくお祭り状態になるであろうな。
……まあ、ワシは祖父が復帰するのは既に知っていたがな。だって孫じゃし。
「さて。アレだけ大胆に宣誓したのですから、当然東方先生に必殺の秘策……ふふっ……など、おありなのでしょう?」
「うむ、それは当然――」
そこで一度切って、ワシの方を見る祖父。ふむ、合わせろと。まあ、確かにそれをすれば、愉快痛快じゃな。
ワシと祖父は、同時にルドルフ会長殿に顔を向けて、告げる。
「「――そんなものは無い!」」
「「「ぽかーん」」」
おぉ、現実に声を出してポカーンとする者を見れるとは。まあ、やよい嬢は「困惑ッ!?」と書かれた扇子を広げているが。
とりあえず。ワシも祖父も、ふざけている訳ではない。
「世の中、「必ず」と言えるモノなど存在せんよ」
「ですな。あり得ないなどという事は、あり得ない」
「シンボリルドルフ。それはお主が一番よく理解しておろう」
「――それは」
それまで、不可能と言われ続けていた「無敗の三冠」を成し遂げたウマ娘は、祖父の指摘に二の句を告げられないようじゃな。
「ですが逆に言えば、「絶対に不可能な事などこの世には存在し得ない」、とも言えます。自信があったからこその宣戦布告です!」
「うむ、よくぞ言った。それでこそ、ワシの愛孫にして愛弟子よ!」
「「はーっはっはっは!」」
そうして、2人して見事に息の合った高笑いをかまして見せる。まぁ祖父という血縁関係ではあるが、魂は同一人物だからの、簡単に息は合わせられる。
「激熱ッ! 流石は東方不敗マスターアジアに、もう1人の流派東方不敗伝承者!!」
「そうまで自信満々に言われては、何も言えませんね」
ふむ。反応からして、「流石に生涯無敗宣言は無謀なのでは?」とでも言いたかったのであろうな。だが、先も口に出した通り、「あり得ない事などあり得ない」のだ。
それをワシはよく知っている。しかも2度じゃ。
1度目は、風雲再起と肉体的にも魂的にも人馬一体となって、ウマ娘としてこの世界に転生した時に。2度目は、この世界でワシの平行世界の同一人物とでも言うべき祖父と出会った時に。
事実は小説よりも奇なりとは、まさにワシの人生の事じゃな。まったく、どうしてこうなった! はっはっは!
「ですがフウウンサイキさん。東西南北中央不敗とまで言って大見栄を切ったんです。まったく何の計算もなく、アレほどの宣戦布告をするとは思えません」
「流石は理事長秘書を勤めているだけはありますな。当然、メイクデビュー後の出走予定を祖父と相談して決めてあるからこそ、断言したのです」
「そしてこれが、フウウンサイキの出走予定表です。あくまで暫定的な物ですが、予想外のトラブルでもなければ、この予定通りに出走させるつもりです」
何かの料理番組のようなテンポで祖父が出走予定の記載された用紙を3枚、3人に渡す。3枚なのは、ジュニア期、クラシック期、シニア期、だからだな。
さてさて。ふふ、どの様な反応をしてくれるか、見ものじゃな。
「納得ッ! さて、どんな予定なのかワクワクだな!」
「ですね。あれだけの大胆不敵な宣言ならば、無敗の三冠は目指すのでしょう」
「ふむふむ………………」
……見ていく内に、3人の表情が面白いようにコロコロと変わる。
「……これは本気で? いや……正気で?」
「ふ」
ルドルフ殿の質問に、ワシは当然とばかりに返す。
「狂気の沙汰程面白い。そうは思いませんかな?」
まあ、誰もがその出走予定を見れば、正気を疑うような旅順じゃからな!
「名付けて、東西南北中央不敗スーパーアジアローテ! これを成し遂げた暁には、誰もその二つ名に異議を唱えられませぬ!」
詳細は伏す。だが、一言で簡単に言うならば――このローテを普通のウマ娘がやろうとすれば、間違いなく道半ばで肉体か精神のどちらかが崩壊する。
予約投稿忘れていて少し遅れました、本当に申し訳ない。
※来週は夕方5時30分からお送りします(仮)