翌日も予定通りに授業を受けるつもりだったフウウンサイキですが、体育の授業の時にそれは起こります。なんと、戦意を漲らせたウマ娘に一騎打ち、野良レースを申し込まれたのです!
ウマ娘プリティーダービー!
「新たなる好敵手! その名はハーツスクリーム」
に、レディー、ゴーッ!
ネオユニヴァースと握手し、ゼンノロブロイとも握手して友になり。予定通り部屋で一休みし、部屋で軽く瞑想とストレッチと筋トレをしてから食堂へ行き、ハナ達友人4人と共に夕飯を食べ雑談し。風呂上がりに軽く筋トレとストレッチをしてから眠りに付いた。
色々とあったが、日々熟しているルーティーンも出来たな。環境は大幅に変わったが、その程度でルーティーンを崩すのはただの怠慢だ。
こうして、入学初日はだいたい予想通りの流れで終わった。
♡ ♡ ♡
翌朝早朝。日の出少し前に起き出し、日課のラジオ体操・ランニング・ストレッチを終えたらシャワーを浴び、植物に囲まれて……寮室では床に鉢植えサボテンを置いてその間に座り、瞑想。
これが、成長期に入ってからほぼ毎日続けている食事前のモーニングルーティーンだ。
そうして朝食の時間が迫ったら、軽く筋トレ(室内なので控えめで、スクワット300回×3セット程度じゃが)をしらた、タオルでざっと汗を拭い、消臭スプレー(シトラスの香り)を身体と制服にシュッとひと吹きかけてから制服に着替え、鏡台で服の乱れがないかチェックする。
《ヒヒンヒン?》
《……そうかの? とは言うても、今世のワシは間違えようもなく女じゃ。ならば、身嗜みには最低限気を使わねばな》
《ヒヒン、ヒンヒン……》
(「師匠がすっかり女になってしまった」、か……今更嘆かれてものぅ……)
まぁ確かに、前世ならばシャワーを浴びただけで済ませていただろうが。せっかく今世は女子になったのだ、ならば女子としての行動を楽しまねば、性別を変えられた三女神に対して無作法だと思うのだ。
と考えつつ、髪型を太めの三つ編みに編み込んで……もう一度鏡でチェック。うむ、ワシ可愛い。
《さて、食堂に行くかの》
《ヒン! ヒンヒン!》
《うむ。確かに、学生食堂の飯は質も量も、メニューも豊富じゃったな! 今朝は何にするかの!》
「朝といえば! やはり納豆じゃな!」
「アファーマティブ……納豆定食」
「そして納豆の原料と言えば、畑の肉!」
「大豆」
「そう言われるだけあって、納豆は良質なタンパク質を摂取するのに適した食材です」
「ゆえに朝納豆は良い選択、なのだが。納豆を食う点で最も適した時間は、夜と言われておる」
「納豆に含まれるナットウキナーゼは、血液をサラサラにする効果があります。血液は夜中から朝方にかけて固まりやすいと言われていますし、筋肉のダメージ回復力も、睡眠中が最も高まると言われています。だから夜に食べるのが良いんですね」
「即ち!」
「納豆は、いつ食べても良い。AWAK」
「なぁにこれぇ」
朝の学食にて。丁度昨日友となったユニ&ゼロとタイミングが合い、更に3人共に納豆定食だったゆえなんとなく嬉しくなり、ワシらのテンションが若干高い。それに対して、キンカのほんわかツッコミが入る。
「フキさん、いつの間にか上級生と仲良くなってる……」
「ん、まぁの。少し縁があっての」
「あー、マヤわかっちゃった。フキちゃん当然無敗の三冠狙いだしね!」
「どういう事よ?」
「ネオユニヴァースさん、今週末の皐月賞で1番人気なんだよ」
「あぁ、なるほどねぇ」
「ま、そんな所じゃ」
……転生やら転性やら関係の話をしても混乱させるだけじゃしな。ならば話を合わせるのが吉。完全に間違いと言う訳でもないしの。
「それよりスイよ。人参以外の野菜をのけるでない」
「何よ、悪い? だってにんじん以外美味しくないんだもん!」
「ふふっ。なんでも食べないとぉ、おっきくなれないわよぉ?」
キンカがそう言って腕を寄せて、強調してスイを煽る。そのバストはやはり豊満であった。
「……くっ! 見せつけるんじゃないわよ!」
「でも、偏食だと大きくなれないのは事実だよ? あむっ」
「えーと……ちょっとずつでも食べ続ければ、好きにはなれなくてもいつか食べられるようにはなりますよ! ぱくっ」
言いながら、マヤはブロッコリーを、ハナはプチトマトを口に入れて旨そうに咀嚼する。
「ふんっ! ヤダヤダッ絶対にんじん以外食べないもん! 特に納豆なんて食べるくらいなら、箱の方を食べる!」
「ふむ、納豆も嫌いか。まぁコレは普通に好き嫌いが激しく分かれるから仕方なしか」
しかし、逆に考えよう。人参は栄養豊富な野菜じゃ。更にこの世界での人参は頻繁に品種改良をしておるようで、前世にあったモノより甘みが強く癖も少なく、非常に食べやすい。
それでも、人によっては……かなり少数派なようじゃが、人参大好きウマ娘でも、嫌いな奴はおるらしい。
「ならば、野菜は人参だけを食えばよい。野菜を一切食わないよりは余程健全じゃ」
「えっ?」
他の野菜も食え、と言われるとでも思ったのじゃろう。いや、言われ続けたのだろうな。間の抜けた顔をしてこちらを見るスイ。
「無理して嫌いなモノを食うなど、食材に対しても生産者に対しても失礼というもの」
そう話しつつ、スイが皿の端に避けた野菜達をぴょいぴょいと箸でワシの茶碗に入れる。
「スイの「嫌い」は、ワシが纏めて食らい尽くしてやるわ。その代わり、量はしっかり食べるのじゃ」
そうしてニッと笑い、茶碗に移した野菜をかき込むように頬張り、高速で噛み砕き飲み込む。
「……っ。 ま、まあ……あ、ありがと」
「なに、友の嫌がる姿を見たくなかっただけじゃ」
赤くなって感謝を述べるスイにそう言って再びニッと笑いかけると、更に顔を赤くしてソッポを向いてしまった。可愛いのぅ、前世でも女運に恵まれ孫が出来ていたら、こんな感情を抱いたのだろうか。
「にしてもフキちゃん、朝はメッチャ食べるんだね〜。夕食は、ちょっと多めなくらいだったよね?」
「食事は強靭な身体作りのためには必須じゃからな。ワシは朝大量に食い、他4食は普通の量を食べるようにしておる」
『他4……?』
……何故か、ユニとゼロ以外の全員に不思議な顔をされてしまった。いや、ユニは普段から不思議な表情な気がするが……何かおかしな事を言ったかの?
「補食、という考え方ですね。一般的には朝昼晩の3食ですが、アスリート、特にウマ娘なら知っておいて損はないですよ」
「あっマヤわかっちゃった! 要するに、10時のおやつと3時のおやつで、合わせて5食! だよね!」
「ふむ、確かにおやつと言った方が分かりやすいか」
……そのような感じに楽しく食事と雑談をして、朝の時間は過ぎて言った。
(やはり、気軽に雑談出来る友というものは良いな。これも、三女神様に生まれ変わらせて貰わなければ知らなかった感情じゃな。誠、感謝じゃ)
さて。今日は入学してから二日目じゃが。早速今日から授業が始まる。トレセン学園は名の通り学舎、トレーニングだけをする場ではない。
と言っても、やはり「トレセン」。三分の一くらいは普通の勉学だが、残りは走る事の知識、レースに関する知識、そして体育……トレーニングじゃ。
時間割としてざっくり言えば、基本的に午前1、2限は国語や数学等の一般科目、3〜6限は走りに関する座学や体育となっている。
でじゃ。初日の3限目はレースの座学、4限目は体育の授業。だったのじゃが。
「よう。やっと会えたな、東西南北中央不敗サマよぉ!」
今日は隣の組との合同授業だったのだが。何やらいきなり闘志を滾らせた目つきの鋭いショートボブ黒鹿毛のウマ娘に、顔面が接触しそうな距離に急接近され絡まれた。
(ふむ、いい闘志じゃ。潜在能力も高そうじゃな。見立てだが恐らく、ワシと同年くらいに本格化を迎えそうじゃな。となると、ジュニア期でぶつかれる!)
内心で強者候補を見つけられた事に歓喜しつつ、凄みを効かせた笑みを向けてくる彼奴に対し、ワシも口端を上げて不適な笑みで返して自己紹介する。
「いかにも。ワシは東西南北中央不敗フウウンサイキじゃ。おぬしの名はなんと言うのだ?」
「ッハ! アタシが凄んで笑みで返したのは、お前が初めてだ。そうでなくっちゃなあ!」
実に楽しそうに笑いながらそう言い、一度ワシから離れる。
「アタシの名前はハーツスクリーム。お前に敗北の味を覚えさせるウマ娘の名前だ、よぉく覚えとけ!」
ふむ、ハーツスクリーム……
「で、ワシに何用かの?」
「今は自由時間だ。余程のアホな行動しなけりゃ、どんな運動をしても構わねえって言われてるだろ?」
「うむ、そうじゃの」
……なるほどの。この闘志、この煽り。つまりは、
「併走訓練をしたい、という事かの?」
「ッハ! なぁにヌルい事言ってんだ?」
「そうじゃな、確かに温い表現じゃった。その熱量からしてお望みは――一騎打ち、かの?」
「クッハハハハッ良いねぇ、そう来なくっちゃなぁ!」
快活な、心底楽しそうな笑い声を上げ。再び獰猛な笑みに変えて、
「お前に野良レースを申し込む! 生涯無敗を貫くってんなら、受けるのは当たり前だよなあ?」
宣戦布告をされた。ハッハッハ! 愉快愉快!
「その意気やヨシ! 当然受けて立とうぞ!」
こうしてワシは、将来同期として鎬を削るだろうウマ娘――ハーツスクリームと1対1の野良レースをする事になった。
(さぁて。やるからには真面目にやるが……何割出せば、良い感じに折れずに糧としてくれるかの?)
鉄は熱いうちに打て。よく熱し、叩いて叩いて鍛え上げて、鋼鉄は生まれる。受けぬ理由は、何一つとしてない!
恐らくみなさんお察しの通り、ハーツスクリームは未実装ウマ娘、競走馬「ハーツクライ」を元にしたオリジナルウマ娘です。意味的には似ていますが、実際の馬が気性の荒い馬だったとの事で、このような性格と、より好戦的な名前へと変更致しました。
追記※
急な体調不良より頭が回らず、今日中に描き終えられそうにないため、本日の投稿はお休みになります。クシャミハナミズトマラナイ、ツライ。
※来週は夕方5時00分からお送りします(仮)。