「あらー、お知り合いですかー?」
「いやあまあ、色々ありましてェ」
笑顔のひきつるティエスちゃんだ。ミッティの語調は柔らかだが、裏に表に説明を求められている。どう答えろっちゅーねん。馬鹿正直に未成年に人生賭けた博打うたせた時に会いましたとか言えんわマジで。エライゾ卿の姫で推定公安の女だぞこいつ。下手すりゃ俺のキャリアが終わる。俺のキャリアが――ん?
あれ、ティエスちゃん気づいちゃったんだけどいっそここで評価をガツンと落とせばちらつかされてる昇進話もなくなるのでは? なんやかんやエルヴィン少年は大勝ちしてるわけで、 上からの心証がよろしくなくなるだけで降格人事食らうほどの不祥事ってわけでもなし。ヒョーイのことは……まあ、あいつももう大人だし自分で何とかするだろうん。我が弟ながらめっちゃ容量良いしね。俺は気楽になった。
「レイフェンの
「あー、あのエルヴィン君に人生賭けさせたというー?」
「お、怒った?」
「怒ってないよ」
よ、よかった怒ってなかった。てか知ってんじゃねぇかよも~! こんな意地悪さんはほっといて、俺は未だ軽薄な面を見せるアサイエルに向き直った。
「暫らくぶりだなアサイエル。店をたたんで真面目に働くことにでもしたのか?」
「ははは、おかげさまで営業中だよ。暫らくはVIPルームを閉めることにはしたが……そもそもあちらはもともと副業のようなものでね。本職はこちらさ」
皮肉を皮肉で返され、二人でニコニコしながら握手を交わす。どこからかミシィと何かが軋む音がしたが、きっと気のせいだ。こいつエルフのくせに握力つよいな。
「さて、失礼した。旧交を温めるのに夢中になってしまって、自己紹介もまだでしたな。この度みな様の案内を仰せつかった、アサイエル・スプリットと申します。お見知りおきを」
「これはご丁寧にー。王国のほうから来ました、ミッティ・エライゾでーす」
「リリィ・ル・リンです。スプリットということは、あなたも?」
「フン、末席ではあるがね。では、案内しよう。ついてきたまえ」
なんだろうなぁこのかんじ、エルフ相手にしてる~~って感じだ。賭場で会った時はもう少し不遜みが低かったのにな。やはり客相手とそうではないときでは態度も違うか。……いやいまも客だが!? なんだろう、体面とかもあんのかねぇ知らんけど。あまりにも舐めた態度とられたらぶっ飛ばせばいいだけだ。
アサイエルの後に続いてエルフの城に入る。アサイエルのすぐ後ろに姫、次にライカ君、ミッティ、エルヴィン少年、しんがりに俺という隊列だ。ぞろぞろしちゃうぜ。
さて、一応護衛だからな俺もな。あたりを見回してみるが、なんともオリエンタルな感じだ。広い吹き抜けホールのある一階部分はなんというか、市役所な感じで一般市民にも開放されている。3階から10階までは図書館になってる。さすがに魔法に詳しいだけあって蔵書量も豊富だぁね。恐ろしいのはこれが統合府が樹立して以後のコレクションってところだ。それ以前の書物はだいたい燃えちゃってるからな。ちなみに8割が持ち出し厳禁の禁書扱いで一般の開架はしてないらしい。元研究者としては気になるよなぁ。ちなみに許可なく忍び込んだら問答無用で死罪なんだって。こわぁい。まぁ読める権利あったとして、一生かけても読み切れる気はしねーが。長寿のエルフならそうでもねーんだろうけどな。俺も長生きしてぇ―。
ちなみに館内で目に付く人員は当たり前だが皆エルフで、一様にこちらに対して奇異の視線か、もしくは嘲ったような視線を向けてきている。見せもんじゃねぇぞ散れっ散れっ。俺はオラついた。
「なにしてんだよあんた……」
「いや、舐められねーように威嚇をな?」
「恥ずかしいからやめてくれ」
むぅ、エルヴィン少年に窘められてしまった。なんだかやれやれ系キャラが板についてきたな。俺はすごすごと列に続いた。
「さ、乗りたまえ。最上階まで直通になっている」
と、アサイエルがエレベーターの扉を開けてくれている。一応案内人としての仕事はちゃんとするつもりらしい。職務に忠実で大いに結構。
俺たちはエレベーターに乗り込む。この先に今回の交渉相手であるエルフの女王がいるわけだ。さて、堅物と噂の人物だが、どうなることかねぇ。