「さて、場もあったまったことだしどうだろう。そろそろ急な訪問のわけを聞かせてもらっていいかな、
「――はい。ではまず、改めてこうしてお時間を作っていただいたことに感謝を。まずは現状のご説明から……」
姫が新人営業職みたいにキリッとして話してるのを横目に茶をすするティエスちゃんだ。エルフの長老、ウィエルサードもまた、時折茶を口許に運びながら姫の話を聞いてくれている。その余裕ぶった笑みは若干気に入らねーけどな。あとチラチラこっち見てくんじゃねぇよ姫の話に集中しろや失礼だろ。まあ正確には熱視線を送っている相手は俺じゃなくてエルヴィン少年なんだがね。なんだぁショタコンかぁ? でも情欲っていう感じではないんだよな。アレはどっちかっていうとこう、親愛というかなんというか……。
「なるほど、用件はわかった」
おっと、そんな益体もないことを考えているうちに姫の説明タイムは終了していたらしい。まぁ内容については俺も既知のことだし、耳なじみのないワードが出れば俺の耳は自動で反応するだろう。つまり聞いてなくても大して問題はないというわけだ。
そして姫から話を聞いたウィエルサードはフムと一拍おいてから、何でもない風に言った。
「我々エルフが、君たちの反・反乱軍に参加することはないよ。まずこれは、前提として覚えといてね」
姫は息をのむ。断られるだろうとは思っていたろうが、こうもにべもないとは、って感じか。それでとっさに何かを言おうとしたのを、ウィエルサードが平手をずいと押し出してとどめた。
「件の反乱軍のことは、むろん我々エルフもつかんでいるとも。由々しき事態だ。まったく、統合府が樹立して50年という節目の年だというのに、これでは先代たちも浮かばれないね」
「あるいは、尊厳破壊目的ってのもあるんじゃねーの?」
「ああ、それもじゅうぶんかんがえられるねぇ」
俺が横から茶々を入れると、ウィエルサードは咎めるでもなくくつくつと笑った。ミッティからは鋭い視線を向けられたけどな。くわばらくわばら。俺は茶菓子をついばむ作業に戻った。うめぇなコレ。
「そこまで掴んでいて、それでもエルフは賢狼王統軍には協力なさらない、ということですか?」
「まあね。君の言うとおりだよ王国の」
ミッティの確認じみた問いかけに、ウィエルサードは鷹揚に頷いて見せた。
「とはいえ、
「それは……ありがとうございます。ですが」
「まぁききたまえって」
姫の言葉を封じて、ウィエルサードはまたもずずいと平手を押し出して見せる。姫はすっかりペースに飲まれちまってるな。経験の差は覆しがたいってか。これも一種の勉強だぁね。
ウィエルサードは茶を一口含んで喉を湿らせると、続けた。
「我々は各々の氏族である前に、いっこの国家であるということを忘れてはいけないよ。統合憲章に基づいて、氏族の乱を鎮めるのは統合軍の役目だ。姫も憲章は諳んじられるだろう? あれは氏族による私闘を許すようなものだったかい?」
「それは、しかし……」
「ああ、もちろん。統合軍の一派が反乱軍に与したという話も知っているとも。まったく、嘆かわしいことだけどねぇ」
ウィエルサードはそこで、ちらりとミッティに視線をやる。ミッティはその意をくんで、盛大に息を吐いた。
「まったく、エルフに隠し事をするのは疲れますね。……ええ。その点に関しては、こちらからもご報告があります。反乱軍に与したと目されるオーク軍閥のうち、複数の離反……いえ、この場合は復帰になるのかしら。ともかく、反乱軍の切り崩し工作は順調に進んでいます。ほかならぬ、このティエス中隊長さんのご活躍によってね」
「えっ!?」
急に水を向けられて、俺は口に詰め込んでいたケーキを盛大に吹き出しそうになるのを、必死にこらえた。えっ!? オークの切り崩し工作!? 俺なんかやっちゃいました!?
「おれ、なんかやっちゃいました?????」
「おや、自覚なしとはねぇ。まったく、英雄というのはこれだから困るよ」
ウィエルサードは口調とは裏腹に、けらけらと笑った。いや笑ってないで説明してくれよ全く身に覚えがない~~!!