ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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4-42 ティエスちゃんはエルフの長老とお茶会?⑦

「きみ、オークの若大将を見事に討ち取って見せたろう。あれで反乱軍に乗り気だったオークの一部が、きみに乗り換えをしたんだよ。正確には、きみを擁する賢狼の姫(リトル・レイフィール)にね」

 

「あっなるほどね」

 

 身に覚えしかないティエスちゃんだ。いやでも待ってそれ昨日の話なんですけど!? あまりにドタキャンすぎて野生の後継者がちょっとかわいそうになるな……。いや同情の余地はないが……。

 

「それにしたって心変わりが過ぎるだろうよう。なに? ウチの諜報員が広域催眠でもかけたの?」

 

「そんなことはしませんよ」

 

 ミッティが呆れたように言うけどお前もだんだん隠さなくなってきたな!

 

「もともと、賢狼人が絵図を引いた今回の反乱に参加すること自体あまり乗り気ではなかったみたいですね」

 

「いや反乱ってそんな消極的なノリで始めるようなもんじゃねぇだろ……」

 

「件の若大将さん曰く、エルフに灸を据えるつもりだったが気が変わった、と」

 

「似てねぇー」

 

「むぅー」

 

 わざわざ声真似までしてくれたミッティだが、とりあえず物まねのセンスはないようだった。半笑いの俺に対し唇をとんがらせているが、俺が呆れてんのはどっちかといえばオークの根性だよ。なんやねん灸を据えるって日本の選挙か。

 

「まったく、彼らの奔放ぶりには困ったものだねぇ」

 

 ウィエルサードはそういってけらけらと笑っているが、その奔放さで村を焼かれそうになってたのわかってんのか? わかってんだろうなぁ……。

 

「ったく、なにが統合府だ何が。なんも統合出来てねーじゃねぇか」

 

「ひひひ、耳がいたい」

 

「ティエス卿、さすがにそれは……」

 

 俺の口さがなさに、さすがに姫からお咎めが入る。おっといけないついつい口が軽くなってた。統合府の一員である以上、姫にしても耳イタな話だろうしな。お口チャック。ウィエルサードはけらけら笑って耳を押さえていたがね。

 

「かまわないよ、賢狼の姫(リトル・レイフィール)。事実、我らは50年という年月を――それこそ、わたしたちエルフにとっても決して短くない年月を費やしてなお、まだ完全ないっこの統合府にはなっていない。嘆かわしいことだよ。王国や帝国のまとまりぶりがまぶしく見えるほどさ」

 

「それでも、各氏族が自主自立してこその統合府です。まとまり切らないことこそが、我ら統合府の強みなのではないでしょうか」

 

 ウィエルサードが笑みを顰めて言うのに対して、姫が毅然と抗弁した。中央集権と地方分権、まあ良し悪しだよな。帝国はがちがちの中央集権型だし、王国は封建制が残ってるところからわかる通りゆるい中央集権~地方分権型だ。森域は完全な地方分権型だな。規模をぎゅっとした国連みたいなもんだ。姫はこのやり方が森域の性に合ってると思っているんだろうし、ウィエルサード的にはゆくゆくは中央集権化したいという感じだろうな。まぁ前述の通り良し悪しだ。俺は政治学者じゃないから、一概にどっちがいいかは言えんがね。

 

「まぁ、そうだね。そういう向きもあるかもしれない。――少し話がそれてしまったね」

 

 ウィエルサードは再び笑みを戻すと、クッキーをひょいひょい口に放り込んで茶で流し込んだ。いち氏族の長としてははしたない所作だが、妙な緊張感を緩和したい狙いもあるんだろう。きっとメイビー。

 

「なのでね。万全といえないのは業腹だけども、統合軍は十分に動くことができる状態にあるわけだよ。ここでひとつ、統合憲章を思い出してほしい」

 

「『氏族間の調停は統合軍の専任とし、各々の氏族に在っては相争うことを禁ずる』……」

 

「そう、それだね。つまり」

 

 姫の諳んじた憲章の一節に対し、ウィエルサードはしたり顔でうなずくと、ティーカップを音もなくテーブルに下ろす。そして、細く長い指を一本立てて言った。

 

「私たちが賢狼王統軍(きみたち)に協力することはしないが、君たちが統合軍(わたしたち)に協力する分には一向にかまわないということだよ。もろ手を挙げて君たちを迎え入れるとも」

 

 ウィエルサードは不敵に笑んだ。詭弁じゃねーか、とは思ったが言わぬが花ってヤツだなこれは。

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