ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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4-46 ティエスちゃんは引き合わせる

「ぶぇぇ……儂のゴリラちゃんがぁ」

 

「ったくいつまでも泣きごと言ってんじゃねぇよ大の大人がよ」

 

 ドワーフの鍛冶師たちをぞろぞろガーデンしながら歩くティエスちゃんだ。ドワーフらの先頭を行くのはさっきまで戦ってた……戦ってた? 鉄塊戦士団の団長カッチである。極太の筋肉で編み上げられたずんぐりむっくりな偉丈夫は、その髭だらけの顔面をしわしわピカチュウにしてしょげ返っていた。多分あったであろう威厳は今や欠片もない。

 

「そうだぞ親父。というかいい加減ドワーフの品位を落とすからやめてくれ」

 

 カッチのすぐ後ろを歩くドワーフからも苦言を呈されるほどである。たしか鉄塊戦士団の副団長で、コッチ・カチカチカだったか。たしかカッチの実子だったはずだ。こちらもまたカッチに負けぬ偉丈夫であり、髭は濃いが十分美丈夫ともいえた。こいつならまぁ……アリだな。ドワーフのあれそれはビッグなことで有名である。さぞアッチもカッチでコッチなんやろなぁ……。俺は邪な妄想をした。

 

「なんだ……? 悪寒が」

 

 コッチは二の腕をさすりながらぶるりと震えた。半裸だからじゃねーの? ドワーフ連中はみんな裸オーバーオールスタイルだからな。俺はそっぽを向いた。

 

「さ、ついたぞ。一応注意しとくが、ここでの行動の一切はウチの整備班長の指示に従ってもらう。地位協定ってヤツだ。勝手にそこらじゅう掘り返してみろ、容赦なく俺の剣が飛ぶぞ」

 

 到着したのは、王国軍に割り当てられた格納庫である。俺はリーダーにセキュリティカードをかざしてゲートを解錠しながら念を押した。この先は治外法権である。

 

「ふん、わかっているさ。……とりあえず親父がこの状態じゃ締まるもんも締まらないんでな。中へ案内してもらえるか」

 

 コッチがいまだぐずっているカッチを救いようのないものを見る目で見ながら言った。幾年かけて積み重ねてきた親としての親愛も上司としての信頼も、今や砂上の楼閣である。完全に崩れてはいないようだが、ここで基礎を固めなおさないとヤバそうだ。まぁ俺には関係のないことだが……。

 

「おう、時間通りだな」

 

 完全に開いたゲートの向こうでは、腕組みをしたおやっさんが待っていた。今日は機体を壊していないので、黒眼鏡の向こうの目も優しい。フランクに敬礼されたので、俺も敬礼して返す。

 

「ああ。ドワーフの鍛冶師どもを連れてきた。いろいろあって延び延びになってたが、技術交流会(エンジニアミーティング)の続きといこうや」

 

「ったく、整備班(こっち)としちゃあそのままお流れでもよかったんだがな」

 

 おやっさんが肩をすくめる。まぁ防諜とか技術漏洩とか盗難とかいろいろリスクはあるもんな。しかも今は近々起こるであろうクーデターに備えて整備班も忙しい。気持ちはわかる。

 

「そういうなって。一応これも当初予定にあった行事の一環だからな」

 

 王国と森域の技術交流は、もともとこの式典のプログラムに組み込まれていた。とはいえ王国の技術は素で森域の上を行っているから、交流とは名ばかりの教育(OJT)だがね。しかしこっちに来てから情勢が変わりに変わって、いまや当初よりもずっと比重の重い行事になっている。つまり技術という(アメ)で釣って、ドワーフを『野生の後継者』につかせないようにする工作なわけだ。あっちには無人自律稼働小型強化外骨格なんて言う匂い立つネタがあるわけで、技術屋はうっかり靡きかねない。

 

「わぁってるよそれくらいはな。それで、あー……そこでべそかいてんのが、ドワーフ技師団の団長さんってことで……いいのか?」

 

 おやっさんもその辺は重々承知だろう。至極面倒そうに小さくため息を挟む。そして視線を俺が引き連れてきたドワーフどもに向けて、なんともいたたまれない目をした。ドワーフの中で一番偉そうなのが延々「儂のゴリラちゃん……」って泣きべそかいてたらそうもなる。仕方ないね。

 

「ええ、ああ、はい、えぇ、はい……」

 

 コッチが力なくうなずいた。いや「頷いた」っていうか「項垂れた」だなあれは。かわうそ。

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