ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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4-47 ティエスちゃんはオタクだけどライトオタクなのでガチ勢の話にはついていけない

「いやさぁ、おかしいと思ってたんよ儂。どう考えても帝国製マッスルファイバーより王国製のが出力高いのに、組みあがった強化鎧骨格の定格出力はテンチュイオンのほうが若干高いのなんでだろうなって。したらなんじゃこれ安全率15て! 遊びありすぎて全力バケーションだろこんなの! 安全率なんてせいぜいが5あればいいもんじゃろがい!」

 

「うるせぇ自家用車作ってんじゃねぇんだぞこっちは! まあ俺も15はやりすぎだと思うからうちの隊のはみんな10そこらで調整してるが……」

 

「ほらぁ! やっぱおかしいって王国の安全基準!」

 

「うるせぇ王国安全神話なめんじゃねぇぞ!」

 

 さて、いい年したおっさんたちがキャッキャウフフしているのを後方で眺めているティエスちゃんだ。現在技術交換会の開催中である。森域の技術団代表であるカッチはさっきまでしょげ返っていたとは思えないほどのはしゃぎようで、おやっさんと唾を飛ばしあっている。現金なもんだ。

 俺も前世(むかし)は健全な少年だったのでロボとか大好物だし、何の因果か実際に人型巨大ロボが闊歩する世界に生まれた俺はさも当然のようにロボに乗れる軍人を目指しその任についたが、とはいえ俺はあくまでパイロットだ。装甲板の下やフレーム構造は俺の領分ではない。一応戦地で応急修理できるように最低限の構造は知識としてはあるがね。なので興奮した技術屋の口から飛び出してくる言葉は8割分からん。

 

「ったく、ガキみたいにはしゃぎやがってからに。おい、いいのかよアレ。お前の親父殿、現在進行形でドワーフの品位を落としてってる感じだぞ……って、あれ?」

 

「う、うおおおお!? 刃先の厚みが、10ナノメートルにも満たないだと!? どうなっとるんじゃこりゃぁ!!」

 

「剛性は……いやそもそも靭性はどうなっとるんじゃ!? こんなもん一回使えば刃がこぼれて……!」

 

「そもそも強化鎧骨格のつかう剣には過剰な切れ味じゃろこれ! 基本戦術がこわれる」

 

「変態じゃ……変態の仕事じゃ……」

 

「いやお前らもかい」

 

 コッチに投げた言葉がからぶったのであたりを見回すと、探していた人物は強化鎧骨格用の武装コーナーでキャッキャしていた。どこからか取り出した紙を刃に当てて「すごい切れ味だ!」とかはしゃいでいる。ちなみにそれは俺とおやっさんで国に黙って共同開発した俺専用の剣だからな。運用法が特殊すぎて多分なんも参考にならんぞ。解説役に配置されている整備班員(17歳女性)もむくけつき野郎どもに詰め寄られてたじたじだ。かわうそ。お仕事ご苦労様です。

 さて、そんなわけで俺は手持無沙汰である。話に適当に混ざろうにも内容が高度すぎて俺にはさっぱりだからな。細かいスペックとか調整の話とかさっぱり分かりましぇーん。

 そんな感じで格納庫内をぶらぶらしていると、ちょうど俺の愛機の前に通りすがる。愛機っても今のマ改造テンチュイオンⅡじゃなくて、王国から乗ってきたアーゼェンレギナのほうだ。今は砕けた手足を床に投げ出すように、コクピットブロックの抜き取られたがらんどうの胴体を晒している。なるほど、見れば見るほどおやっさんも匙を投げるわけだ。とてもじゃないが直す気は起きない。特に足がひどい。ショックアブソーバーなんかの保護機能まで操作するほど手が回らなかったからな……。

 

「――ずいぶんと酷い。ドンカッツ殿との戦いの激しさがわかるというものだ」

 

「まぁ、無茶させちまったからなぁ。……それで、アンタは? ここは非公開エリアだぜ?」

 

 苦笑しながらも、いつの間にか横に並び立っていた女には警戒の目を向ける。いや、近づいてきてたのは知ってたけどね。ただ、ここは見学コースからは外れている。

 

「おっと、すまない。君の姿を見かけたのでね、話をしたくてついてきてしまった」

 

「そいつはドーモ。サインなら後にしてくれるとありがたいね」

 

「サインか、ふふ、それも悪くない」

 

 女はさもおかしそうに、くすくすと笑んだ。ピコピコと、それに合せて笹穂の耳が震える。エルフだろうか。しかしその髪は、透き通るような昼の空の色をしていた。

 

「そろそろ名乗ってくれると助かる。さもないと、ちょっと手荒なファンサービスをすることになっちまうぜ」

 

「それもそれで興味があるが……いや、すまない。少しはしゃぎすぎたようだ」

 

 とぼけたことを言う女をジトリと睨んでやると、女はようやく体ごとこちらに向き直った。女は思ったよりも上背があり、またそのバストは豊満であった。

 

「私はアマリエル。アマリエル・エヴィロン・ラグラルキーンだ。ティエス卿には、お初にお目にかかるね」

 

 女――アマリエルはそういって、その少女の貌に似つかわしくない老獪な笑みを浮かべた。

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