ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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Fragment.9 いわゆる一般的な異世界転生学園モノ主人公がこちら

 人生というのは、なかなか上手くいかないものだ。

 たかだか十六年程度しか生きていない私が言っても薄っぺらかもしれないけれど、それが正直な気持ち。とりあえず、この破かれてしまった化学の教科書をどう修繕したものか頭を巡らせている。

 きっかけは実に些細なことだった。私も人並みの正義感というのを持ち合わせていたから、クラスで除け者になっていた少女に手を差し伸べたらば、いつの間にか標的が私に移っていた、というありふれた話。

 なんならその少女も私を排斥する側にいつの間にか回っていたことを含めて、実にありきたりな話だ。まったく、無駄に正義感を発露させるべきではない。そういう教訓とトントンと言えるほどの被害規模はすでに超えてしまっていて、ひどくおっくうになる。TSUTAYAで爆弾の作り方の書いてある本でも買ってこようかしら。

 

「なんてね」

 

 一瞬胸中に去来するバカげた考えを鼻で笑う。傍観者は加害者だ、などという気は毛頭ない。そういう()()()()()()まで巻き込むようなのはダメだな。もっと範囲を絞って加害できる方法を模索しないと。

 物騒な話だけど、私はそういう妄想を捗らせることで心の平穏を保っている節がある。お目こぼし願いたいものだ。誰の?

 そんな益体もない考えが堂々巡りをしているうちに、私は車通りの多い道に出ていた。

 

「……」

 

 赤信号で立ち止まる。車はビュンビュンと行き交っているのに、人の数は実にまばらだ。大通りをはさんだ対岸で信号を待っているのも一人だけ。小太りの男がずいぶん真剣にスマホの画面をのぞき込んで、忙しなく指を動かしているのが見える。ゲームかな。

 

「スマホかぁ」

 

 私はスマホを持っていない。惹かれるものはあるけど、高い通信料を払えるだけの経済力は私にはない。月五千円の小遣いでやりくりするのは今でさえ大変だというのに、これ以上の支出を受け止める余裕はない。

 それに今のこんな状況だと、スマホなんて持っていった日のうちに盗られるか壊されるかしそうだしね。くたばり果てろ。

 歩行者信号が青になる。私は余計ないら立ちを生んだ対岸の男をひと睨みして、しかしそれがただのやつあたりだということも理解していたから、かぶりを振って溜息をついた。一歩、横断歩道に足を踏み入れる。

 

「……あっ」

 

 そこで、気づいてしまった。信号無視をした車が、交差点に突っ込んでくるのを。居眠りだろうか、減速するそぶりが微塵もない。

 とはいえ車線的に、急ハンドルを切りでもしなければ私には影響はない。眼前を素通りしていくだけだろう。危険ではあるが、命の危機はない。でも、そこで思い当って前を見る。

 歩きスマホの男は、暴走車の接近に全く気が付いていない!

 

「あっぶぁ!」

 

 咄嗟のことで言葉が紡げない。それでも足は動いていた。馬鹿がよ。誰が? 私がだ。私の足が、まるで無意識に、見ず知らずの男を庇わんがために駆けだしている。まったく、無駄に正義感を発露させるべきではないという教訓を得たのではなかったのか。

 男はその段になって、私に気づいた。言葉は紡げていなくても、声だけはデカかった自負がある。

 顔を上げた男は存外にイケメンだった。肉は付いているけど、パーツの造形がいい感じ? もう少し痩せればきっとモテるだろうな。そういう場違いな感想を私は抱いた。そのきょとんとした表情が、現状を理解できているとは到底思えなかった。

 まったく、駆け寄ってどうしようというのだろう。やけに引き延ばされた感覚の中で、私は自身の行動にひどく呆れた。私の体重でぶつかって、男を弾き飛ばせるだろうか。……無理だろうなぁ。そんな膂力が私にあるなら、今頃加害者どもを血祭りにあげているところだ。いや、今はそんなことはどうでもよくて。

 どん、と私の体が男に接触する。男はその勢いにぐらついて――そして、たたらをふんでその場に踏みとどまった。

 

「バカーーーーー!!!!」

 

 結局その罵倒が、私の辞世の言葉になった。

 

 

///

 

 

 気が付くと、真っ暗な空間の中にいた。上も下も、右も左もわからないほど真っ黒な空間にいた。

 

「あれ、私、車に轢かれた……んだよね」

 

 衝撃を受けた記憶がある。幸い、その瞬間に意識が飛んだのか、痛みの記憶はないようだ。

 

「……というか、今も全然痛くないな」

 

 声は出る。いや、出ているのかなこれ。自分のつぶやきは聞こえるけど、口で言って耳で聞いている、という感じではない。手をにぎにぎしてみる。……なんだろう、やっぱり感覚があいまいだ。暗すぎて手足がどういう状態なのか確認することもできないし……。

 

「というかあれか、失明したパターン?」

 

 視線を彷徨わせるが、周りが完全無欠の闇なのでどこを見ているのかも定かではない。身をよじってみる。やはりあやふやな感覚が返ってくる。

 

「……あっ」

 

 しばらく体をよじっていると、一瞬、視界の隅に微かな光点を見つけた。視界の中心にその光点を据えるように動いてみる。

 ……なるほど、どうやら自分は動けているし、視力を喪失したわけでもないらしい。それはこの状況においてかなり大きな朗報だった。

 

「……あっちに移動してみるか」

 

 正直なところ距離感も何もあったものではないが、ひとまずの目標ができたことは何よりだった。

 とりあえず、歩いてみる。相変わらず、足が何かを踏みしめる感覚はない。それでも身をよじって体勢を変えられたということは、この空間には少なくとも反作用を生み出すに足る物質が詰まっているということになる。なんだろう、息ができているから水ではないんだろうけど。

 

「あれ、そもそも私、息してんのかな」

 

 口元に手をやる。かなりあやふやだが、触感はある。ただ、呼気を感じられるほど繊細ではない。

 

「死後の世界がこれだとしたら、だいぶ地獄だな」

 

 私は半笑いになって、とりあえず余計な考えは脇に寄せた。今はとりあえず、無駄でも良いから光に向かって進んでみよう。蜘蛛の糸を登る犍陀多のように。さしあたり善行を重ねてきた自負はあるので。全部裏目に出たけどね。

 

 

///

 

 

 結局、どれだけ歩いたのだろう。時間の感覚が曖昧過ぎてさっぱりわからない。5分と言われればそうかも、となるし、5時間と言われても納得できてしまう。まるで夢の中のようだな、と思った。となるとこれはいわゆる明晰夢で、死にかけの私が見ている最後の夢なのだろうか。だとすればなんとも華のないことだ。私らしいって? うるさいな。

 

「お?」

 

 近づけど近づけど、遠くで光るだけだった光点に、有為な変化が見られたのはそれからしばらくしたころだった。

 

「ちょっと大きくなってきた?」

 

 最初、ピンホールほどもない大きさだった光が、今はコインほどの大きさにまで拡大していた。

 

「近づいてる、ってことでいいんだよね」

 

 誰に確認するでもなく言う。私は久しぶりに興奮していた。少なくとも、この行為が無為なものではなかったことが証明されたのだ。人間、目的があればなんだかんだと頑張れるものである。私は接近を続行することにした。

 

「うわ、どんどん大きくなるな……」

 

 さっきまでコイン大だった光が、ほんの少し歩いただけでボール大になり、今ではもう直径1メートルはある。まるで指数関数だ。このまま進めば、じきに視界が全部光で埋まるのではないだろうか。

 

「まあ、眩しいってわけじゃないからいいんだけど」

 

 どんどん大きくなっていく光はそれに比例して光量も強くなっていくのかと思いきや、目に感じる刺激としてはせいぜいがシーリングライトの常夜灯くらいのものだ。まぁそれでも見続けてたら目が疲れてきそうなものだけど、今の私はなぜか疲れ知らずなので問題はない。

 

「もう視界いっぱいが光になっちゃったな」

 

 そう時間もかからず、光は私の視界いっぱいを埋め尽くすようになった。とはいえ、距離感は未だ判然としない。少なくとも、光に触れられる距離ではないようだ。

 

「ん……?」

 

 そのとき、私は視界いっぱいの光の中に、ひときわ強い光を見つけた。明らかに周囲より強い光量を放つそれは、近づいていくうちに人型のシルエットをした何かだということがわかる。第一村人発見だ。人間と断定しなかったのは、その姿があまりに奇異だったからだ。

 おそらく、今私が見ているのはその背中なのだろう。なぜそう思うかといえば、翼が生えているからだ。少なくとも私の知る範囲で、翼が胸についている生き物というのは知らない。

 その翼はまばゆい光輝で編まれた、三対六枚の光の翼だ。表面には複雑な文様が刻まれ、それ自体が生きているように流動的に姿を変えている。

 悪いものではない、という直感があった。私の直感がどれほどあてになるのかはわからないけど、なぜかそう思えた。

 

「あ、あのー。すいません」

 

 私は控えめに、その御伽噺の天使を思わせる人型に声をかけた。我ながら呆れたクソ度胸だ。この時の私は正直怖いものなしだった。一から十まで意味不明だったからだ。

 人型はそれでようやく私の存在に気づいたように、ゆっくりと振り返った。

 ついに正対した人型は、全身を白を基調とし、ところどころに赤い刺し色の入った鎧を身に纏っていた。随所に施された金の装飾が、その存在の特別さを演出しているようだ。腰には刀……いや、あの差し方なら太刀か。太刀を佩いている。鎧の意匠は西洋のプレートメイルとも、東洋の大鎧とも違う独特な様式で、あえて言葉を飾らずに言うのならば。

 

「……ロボット?」

 

 それは、日本のテレビアニメに出てくるロボットに特徴がよく似ていた。

 

『――驚いた。まさかエーテルの海に溶けずにここまで来る魂がいるとは』

 

「うわっ喋ったぁ!?」

 

 目の前の人型が、喋った。いや、空気の振動ではない。こいつ、脳内に直接! というやつだ。いわゆる、テレパシー。

 

『驚かせたかな。すまない。私はカント……カガセだ』

 

「カント? カガセ?」

 

『カガセでいい』

 

 目の前の人型は、実に耳に心地いいナイスミドルめいた声帯でカガセと名乗った。当たり前だが、私はそんな単語に聞き覚えはない。私が頭をかしげていると、カガセはそういえばそうだった、とばかりにポンと手を打った。やけに人間臭い動きだった。

 

『知らないのも無理はない。もうずいぶん前の話だし、痕跡は彼らが徹底的に消して回ったからね』

 

「あの、話が見えないんですが」

 

『ああ、すまない。他人と話すのは随分久し振りでね』

 

「はぁ……?」

 

 カガセの言うことは正直要領を得ない。私は盛大に頭上に疑問符を浮かばせた。やはりこれは私の末期の夢なのではないだろうか。それならばこの支離滅裂な話にも納得ができる。

 

『さて、君にはあまり時間がないようだから簡単にまとめるとしよう。君は死んだ。その理由まではわからないがね。そして、魂だけの状態でエーテルの海を泳いでここまで来た』

 

「えっ」

 

『見たまえ、自分の体を。ここまで来たなら見えるはずだ』

 

 カガセに言われて、跳ねるように自分の体を改めた。なるほど、確かにあの光のおかげで自分の体の状況を確認できる。どうやら自分は裸でこの空間に浮かんでいるらしいということが分かった。そして、その素肌の境界線から少しずつ空間に溶けだして言っていることも。

 

「うわーーーー!?!?」

 

『浸透圧という言葉を知っているかな。いわば君は、大海に丸裸で放り込まれたに等しい。体内の水分が塩水にしみ出すように、今君の魂を構成しているエーテルはどんどんこのエーテルの海に溶けだして行っている』

 

「講釈垂れてる場合かァーー!!!」

 

 いっている間にも、どんどん私が空間に溶けだしている、おさえても止まらないどころか、そのおさえた腕からもどんどんしみだしている始末だ。私は恐慌状態になった。

 

『落ち着きなさい』

 

 落ち着いた。なんで落ち着いたのかはわからないけど、とにかく落ち着いた。何かされたのだろうか。

 

「ちなみにこれ、溶け切るとどうなるんですか?」

 

『魂が散逸すれば、個は個を保つことはできない。海水に溶けた真水だけを取り出すことができないようにね。つまり要約すると、君は消滅する』

 

「最悪だ!」

 

 まさか死んでからまた死の恐怖を味わうとは思わなかった。何なら車に轢かれた時より今のほうがずっと怖い。

 

「ちなみに、これを止める方法は」

 

『ない。いや、あるにはあるが君には無理だ。諦めなさい』

 

「畜生!」

 

 頭を抱える。なんだろう、これなら光を追わず、あの真っ暗な中でなにもわからないまま消えたほうがまだましだった。なまじっか猶予が与えられてしまったから、今更に命が惜しくて惜しくてたまらない。いや、命自体は今はもうないんだったか。魂だけの状態らしいしな!

 とにかく、このしみったれた自己が消えてしまうのが、今は何よりも恐ろしい。

 

『そこでだ。私は君に二つの道を提案できる。一つはこのまま消える道。そしてもう一つは、あの光の中で再び生きる道だ』

 

 私はがばりと顔を跳ね上げた。カガセはその厳めしい面頬の奥から覗く水晶の目で、私を見据えている。

 

「それって、どういう」

 

『あの光の中には、世界が入っている。私が守護している、ミルナーヴァという名の世界だ』

 

「世界!?」

 

 急に話が大きくなった気がする。世界の守護、ってことは、個のカガセという人物はいわゆる神様みたいなものなのだろうか。

 

『そんな大それたものじゃない。せいぜいが番人、衛士の類だよ』

 

 今ナチュラルに思考読んだな? 顔をそらすな。

 

『……もう一つの道というのは、つまり、君をミルナーヴァに転生させるということだ。君からすれば、異世界転生ということになるのかな』

 

「い、異世界転生……!!」

 

 なんてことだ。それを題材にした作品群について、私はそれなりに造詣が深い。ここ最近は友達とかいなかったし、自由時間はだいたいそれらを読み耽って過ごしていた。

 憧れがないではない。異世界転生チートハーレムでスローライフ、大いに結構。ただそれらの作品には大抵、冒険だとか戦争だとかが付きまとってくる。それを考えるとどうしてもしり込みしてしまうのも確かだ。

 

『申し訳ないが、とくべつチートなどは授けてやれない。そこは承知しておいてほしい』

 

「ですよね!」

 

 そうなるとますます不安が強くなる。私は本当にやっていけるのだろうか。文明レベルがどれくらいかとかも聞いてないし……

 

『決めるなら早く決めたほうが良い。エーテルの流出は総量が減れば減るほど速くなるからね』

 

「転生しまぁす!!」

 

 私はすべての不安を脇に退けて大声で宣言した。確かに不安はあるが、そもそも第二の生を得られるというだけで十分幸福なことなのだ。迷って消えてしまうよりよっぽどいいに決まっている。

 

『わかった。少々荒っぽくなるが、勘弁してくれたまえ』

 

「へっ?」

 

 カガセは鷹揚に頷くと、むんずと私の体を掴んだ。その段になって初めて、私はカガセがとても巨大であることを知った。私などは、カガセの掌に収まるほどだ。お釈迦様と孫悟空のようだ、と益体もなく思う。

 

『ピッチャー、振りかぶって……』

 

「えっ」

 

 グイッと、自分の意思によらない力が体を振り回す。魂だけの状態でよかった。生身だったら強烈な重力加速度で確実に失神していただろう。握りこまれた指の隙間から、やけにきれいな投球フォームをとるカガセの巨体が覗けた。

 私は叫ぶ準備をした。

 

『投げたァ!!!』

 

「うわああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 風を、エーテルを切る轟音とともに、私は最高速度でリリースされた。見る間に光が近づき、カガセが遠ざかっていく。生身であれば確実に失神していただろう。いっそ失神していたかった。

 

『グッドラック、よきセカンドライフを!』

 

 最後にそのようなカガセの声が聞こえて、私は光の中に突入した。そして――

 

 

///

 

 

 その日、フェンヴェール王国エライゾ領に属する農村の一家に、待望の第二子が誕生した。父と母、そして幼い姉は新しい家族の誕生を大いに喜び、その子供に「ヒョーイ」と名付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

///

 

 

「へっぷし」

 

「あら、風邪?」

 

「あーいや。誰かに噂でもされたのかな」

 

「? 変なヒョーイ」

 

 鼻の下を人差し指でこすっていると、隣に寝そべるアリナシカが怪訝そうな表情をした。しまったな、この世界には「噂されるとくしゃみが出る」みたいな迷信はない。気が緩むとすぐにこれだ。

 

「なんでもないよ。明日も早いし、そろそろ寝よう」

 

「あら、続きはなさらないの?」

 

 蠱惑的な笑みを浮かべ誘うアリナシカは、普段の楚々とした佇まいとは大きく異なっていて実にエロティックだ。これがいわゆるギャップ萌えという奴だろうか。正直ぐらぐらする煩悩を何とか収めて、その整ったかんばせにキスを落とす。

 

「だーめ。明日は一限から授業があるんだから」

 

「ン……本当、ヒョーイは真面目さんなんだから」

 

 アリナシカが拗ねたように唇を尖らせたので、キスで黙らせる。それでひとまずは満足したようで、アリナシカは私の腕に頭を預けた。しばらくすると、小さな寝息が聞こえてくる。

 この世界に来て、驚いたことは色々とある。前の自分にはなかったものがあったりとか、魔法とか、封建制とか、ロボットとか、でたらめな姉だとか。

 それでも一番の驚きは、と言われれば、きっとこの少女と出会えたことだ。この辺一帯を治める領主の息女と自分がまさかこういう関係になるなんて、「事実は小説より奇なり」とはまさにこのことだろう。

 これもまた、突発的な正義感の発露が招いた結果だったりするので、私はつくづく教訓とは縁遠い人間らしい。

 

「頑張らないとな……」

 

 横で寝息を立てるアリナシカの寝顔を見つめて、私は覚悟を新たにする。身分を捨ててまで自分と一緒になるという覚悟を見せつけられたのだ。これに応えなければ男《おんな》がすたるというものだ。こちらも相応の覚悟を決めねばならない。

 それに、今はこの少女が心からいとおしい。この少女を守り、幸せにするためなら、どんな困難も苦ではないと、本心から思える。

 

「まずは主席をとって、いいところに就職して。ねぇさんにも迷惑かけるだろうし、それも返せるようにならないと……ふぁ~ぁ」

 

 大あくびをする。考えること、やることは山ほどあるが、今はこの眠気に身をゆだねよう。休息は大切だと、ねぇさんも言っていたし……。

 眠りの淵に落ちる際で、そういえばこれはいわゆる百合に当たるのだろうか? などと益体もないことを思った。

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