「かかってこいや、ド三流共がよォ!!」
ピンチの連続なティエスちゃんだ。俺が吠えるのと同時に、状況が動き出す。
ゲルべロッサの影から溢れ出したエヴィロンス・シリーズは、一斉に散開しこちらに襲いかかってきた。数は30ばかり。多いって!! シャスティン1人殺すのにどれだけの部隊動員してやがるんだ?
逆を言えば、これだけの仕事にこれだけ動員しても、連中の戦力には全然余裕があるってこった。ゲロゲロだな。
得物はオティカと同じく、手甲から展開した肉厚の短刀だ。杖持ちはいないから、もしやするとエヴィロンスは魔法を使えないのかもしれない。そういやオティカも使うそぶりなかったしな。こいつは良いニュースだ。
ゲルべロッサは転移封じ返しに忙しいらしく、仕掛けてくるそぶりはない。これも良いニュースだ。自動機械導入してワンマン運用したツケが出たな。ザマミロ。
副官とトーマスが動く。会議用のテーブルを蹴り倒して即席の遮蔽物を作り、ハラグロイゼ卿とリリィ姫の守りを固める。ハラグロイゼ卿も心得たもので、姫とエルヴィン少年を抱えてテーブルの奥に飛び込んだ。なかなかパワフルだ。宮廷貴族のくせに鍛えてらっしゃる。あ、ライカ君も奥に引っ張り込まれた。ナイス判断。
ニアとハンスが一目散に強化鎧骨格へ走る。これもいい判断だ。強化鎧骨格の足元では整備班が即席のバリケードをすでに展開し終えている。さすが最強技能者集団、判断と手が速い。マジ有能。とにかく機体を死守する構えだ。ニアたちが強化外骨格に乗り込めれば、趨勢は一気にこっちに傾く。となると、俺は。
「オティカ! ジャスティンを頼むぞ!」
「俺に命令をするな! お前は……」
「ゲルべロッサを殺る!」
言い捨てて、駆け出す。オティカは悪態をついたが、やるべきことは理解しているらしい。腕からお馴染みの短刀を展開して、ジャスティンに群がるエヴィロンスをバッタバッタと切り捨てていく。頼りになる!
「みなさん、気を付けてください! エヴィロンスには自爆装置が搭載されています!」
ジャスティンがオティカに庇われながらも叫ぶ。そういやそうだった、こいつら爆発するんだったな! 俺は襲いかかってきたエヴィロンスを唐竹に一刀両断しながら、叫ぶように聞き返した。
「無力化の方法は!?」
「胴体のペイロードに装置が! 本体と切り離せば爆発はしないはずです!!」
「なるほどね!!!」
あぶねー、2液型とかTNTとかだったら今ので爆発してたな! プラスチック爆弾みてーな仕組みなんだろう。甘いのかな。今はもう甘くないんだったか。いやそんな悠長なこと考えてる場合じゃねぇ!
くそう、一体一体爆弾処理してる時間はねーぞ。倒したやつを結界で封じ込めて、都度爆破処理するしか……いや無理だってただでさえ今は転移封じの広域結界張ってんだぞ! 流石の俺でもこの強度の結界のマルチタスクは脳が痺れる!!!
などと思ってたら、フッと脳みそにかかる負担が軽くなった。連中、レジストを諦めたか? いや、これは……!
「ティエス中隊長ッ!転移封じは私と観光局の皆さんで受け持ちます! 遠慮せず突っ込んでください!」
「ミッティ!」
「遅れました。領域管制はお任せを」
シビれるほど格好よくミッティが笑んだ。喋り方と雰囲気がまるきり違うから誰かと思ったぜ。頼もしすぎる。あのゆるふわお花畑ガールな所作も捨て難いが、俺は断然こっちの方が好みだね。かっこいい女は大好きだ。ミッティとその部下たちが電子戦をやってくれるなら、こっちも好き勝手暴れられる。
「聞いてたと思うが、連中腹に爆弾抱えてやがる! いざって時は頼むぞ!」
「いざって時が来ないことを願いたいですねぇ!」
ミッティの振るった鉄鞭が、迫っていたエヴィロンスの頭部を弾き飛ばした。ヒューッ! ステゴロもお強いときた! こりゃ後ろの心配はいらなさそうだ。
俺は後方視界を閉じて、前方、敵の首魁を見据えた。やっこさん必死な顔で転移のレジスト返しを頑張ってるようだが、捗ってねぇらしい。どうした三下、ずいぶん焦ってるみてェだなぁ!
俺はエヴィロンスの群れをバッサバッサと斬り伏せて、ついに目標へと踊り掛かった。
「かくごしやがれゲルべロッサァ!」
「ええい、忌々しい! なんなのだ貴様は!!」
ゲルべロッサが剣を抜く。知らザア言って聞かせてやろうじゃねえかこの野郎!
「王国陸軍中隊長、ティエス・イセカイジンだ! 冥土の土産におひとついかが!!」
へっ、一騎打ちで俺が負けるかよ!