「や……や……やかん!」
「味噌」
「また『る』ですか!? お。オティカ~」
『……「アジフライ」』
「フェンヴェール」
「また『る』~~!?」
キャッキャッ。相変わらず飛行中のティエスちゃんだ。現在しりとりで暇つぶし中。ククク、『る』責めで対戦相手を泣かせるのは格別だぜぇ~~! ……尻を取れてないじゃないかって? そりゃおめぇ、ここは異世界だからな。日本語に訳しちゃうとそうなる。固有名詞とかはそのまんまだけどな。翻訳のしようもないし。
『……ティエス、いくら姫の緊張を解すためとはいえ、これは緩みすぎだろう』
「仕方ねーだろ暇なんだから。おめーが優秀過ぎるのが悪い」
『コイツ……!』
物理的なアームがあったら
「俺だって、せっかく磨いたテクを披露できないのは悲しいんだぜ? わかるかなぁこの気持ち。わっかんねぇだろうなぁ」
『……(# ゚Д゚)』
おっと脳内に流れ込んでくる怒りのアスキーアート。器用なことをする。お茶目だね。そんなにリソース有り余ってんのか? 有り余ってんだろうなぁ。
「『野生の後継者』の連中、実にでかい魚を逃しやがったな」
『それについてはオレも同感だ。先生はすごい人だからな』
オティカは得意げにふふんと鼻を鳴らした。急に語彙力下がってない? こいつ姫とハカセには徹底して甘いよな。信頼してるというか。最近はライカ君もか?
……まぁ仕方のないことだろう。オティカの生まれた研究所ってところが、そんなアットホームな環境だったとは考えにくいしな。秘密結社だぞおめぇ。
なに、友達なんてのはこれからどんどん増やして行きゃあいいんだ。そう難しいことじゃない。広がれ友達の輪!
さて。もちろんそこには俺も入れてもらいたいところだが、ひとまずさっきのオティカ発言には不足があったから訂正しとかねーとな。
「バァカ、オメーもだよオティカ。てめーを勘定に入れ忘れてどうする」
『ム』
「お前が居なきゃ、今この時の状況はもっと悪かったろうさ。自分の性能に自信持てや」
『……言われるまでもない』
おっ、照れてやんの。可愛いところもあるじゃねーか。オメーが肉の体を持ってたら、ベッドにお誘いしていたところだったぜ。こんどハカセに頼んで人間を完璧に模倣したヒューマノイドでも作らせてみようかな。表面に生体スキンとか張ってさ。あいつならなんかできそうな気がする。ぐへへ、妄想が膨らむぜぇ。
『お前の頭の中には煩悩と肉欲しかないのか……?』
「そんなナチュラルにドン引きしたようなトーンで聞くなよ。それにさ、肉欲を始めとした欲望は生命の原動力だぜ? 人一倍強い自負はあるよ。ハッピーバースディ!」
『意味が分からん。なんで急に誕生日を祝った』
「うけうりだよ。俺にもわからん」
『つくづく度し難いな』
フン、とオティカは鼻を鳴らす。にしてもだいぶ態度が軟化してきたな。良い傾向だ。ぎすぎすしたまま背中を預けるのは怖いからなぁ。姫様さまさまだ。
「うーんうーん……あっ、扇風機! せんぷうき!」
「ミサイル」
「ぐああ……!」
俺たちの会話をよそに悩みに悩んでいた姫が、ついに答えをひねり出す。だいぶ素が出てきたな。年ごろの少女然とした姿というか。緊張もほぐれたようで大いに結構。
俺がにっこりと笑って『る』で返してやると、姫は貴人にあるまじき声を発して頭を抱えた。可愛いね。おいお前んところの姫様だぞ。
『姫ェ……』
オティカはそんな姫の様子に、複雑な声音を発した。