ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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5-71 合流

「ハナッパシラ君!? 死んだはずじゃあ……!」

 

「滅多なことを言わないでくださいよ、ニア小隊長……」

 

「でもマジで、生きててよかったぜハナッパシラ! ……っと、今は上官だった、いやぁ申し訳ないっス!」

 

「はは……気にしないでくださいよ、ハンス分隊長。肩書だけなんですから」

 

「そうか? ならそうさせてもらうわ! とにかく、マジで生きててよかったよ。ねぇ、ピーター隊長代理?」

 

「そうバシバシ叩いてやるな、ハンス。……ハナッパシラ臨時小隊長、無事で何よりだ」

 

「いえ……中隊長から預けられた機体を壊してしまって、そのうえ決勝戦は反則負けです。あわせる顔がありません」

 

「とはいえ、ハナッパシラが機転を利かせていなければ我々はあの青い強化鎧骨格にやられていたからな。中隊長殿もそう悪いようにはすまい」

 

「トマス小隊長も、ご無事で何より」

 

「ピーター小隊長もな。……とはいえ、護衛対象を放って単独行動していた俺が役目を果たせたかは、怪しいところだ。中隊長にお叱りをもらうのは、俺かもしれん」

 

「まぁ、それもこれもあいつが無事帰ってきてからの話だけどね」

 

「まぁたニア小隊長はそういうこと言う。良くないっスよ~それ」

 

「はは……でも、ニア小隊長らしいといえばらしいですね」

 

「おっ、言うようになったじゃんよ。ほら、もっと言ったれ言ったれ」

 

「こンの男子ども……!」

 

「まったく、若いのは元気があっていいな」

 

「エーリカ小隊長。ずいぶん活躍されたそうだな」

 

「なんの。敵の将を一人生け捕っただけです。大した情報も持っていませんでしたしね」

 

「それでも戦果は戦果だろうさ」

 

「そういうトマス小隊長も、あのマケン・ウルフマンを討ち取ったとか?」

 

「……いや、確かに勝負には勝ったが、討ち取るとまではいかん。それに身柄を抑えたのは青の武士団だ。俺の手柄といえるかは怪しいな」

 

「マケン殿の身柄はこちらに?」

 

「ああ。今は統合軍の監視下にある」

 

「あの犬の爺さん、情報とか吐くんスかね? なんていうか、いかにもな武士って感じでしたけど」

 

「吐かせるさ。今、ミッティ医官が統合軍に対して尋問の申請をしている。ハラグロイゼ卿の後押しもあるから、時間の問題だろう」

 

「へぇ、エライゾ領軍の公安課長様が直々に」

 

「知っていたのか、ニア小隊長?」

 

「知らないのなんてティエスくらいでしょ。あいつ、たまに鈍いのよね」

 

「え、俺初耳なんスけど」

 

「忘れなさい」

 

「ぐえーっ!? 物理で記憶飛ばそうとすんのやめてもらっていいっスかぁ!?」

 

「ははは……まあ、公言しないでいただけると……」

 

「ハナッパシラ君は知ってたのね」

 

「ええ、まぁ……父は領軍の総監でもありますから」

 

「私も初耳だったのだけどこれは胸に留めておくことにしよう。部下たちが居なくてよかったよ」

 

「まったく。迂闊だな、ニア小隊長」

 

「私!?」

 

「なに驚いてんスか。いらんこと言ったのはどー考えてもニア小隊長じゃないっスか」

 

「むむむ……!」

 

「ともあれ、マケン・ウルフマンは『野生の後継者』首魁であるウィドー・レイフィールの懐刀と目されていた人物。情報が詳らかになれば、この戦争もずいぶん楽になるかもしれんな」

 

「そしたら、隊長代理もだいぶ楽できますね?」

 

「言うじゃないかハンス。今からでもお前にすべて押し付けてやりたい気分だ。腕立て100回!」

 

「ヒエッ」

 

「クク、いらんことを言ったな」

 

「笑ってないで助けてくださいよトマス小隊長~~」

 

「泣き言言いながら高速腕立てこなすの、だいぶキショいわね……」

 

「ははは……」

 

 

///

 

 

「――まったく、パイロット連中はお気楽なもんですねー」

 

「盗み聞きかね?」

 

 要塞化された統合府防衛線の最奥、世界樹の一角に貸し出されたオフィスは、物理的にも魔法的にも完璧に防諜対策が施された密室である。

 そんな部屋のデスクで黙々と書類をこなすミッティ・エライゾが愚痴をこぼした。それを拾ったのは対面で優雅に紅茶をシバくワリトー・ハラグロイゼ伯爵だ。今、この部屋にはこの二人しかいない。

 ミッティは恨みがましい半目でハラグロイゼを見てから、すぐに視線を書類に戻す。

 

「こっちは統合府から嫌がらせじみた書類攻撃を受けているというのにね?」

 

「そう思うなら、ハラグロイゼ卿も手伝ってくださって構わないんですよー」

 

「ははは。素人が手を出して、書類に不備があってはいけないからね」

 

「どの口が」

 

「この口だとも」

 

 ハラグロイゼはしれっと答えて、優雅にカップを口許に運ぶ。ミッティ用に淹れたカップはすっかり冷めてしまっていた。ミッティはぶつくさと不平を漏らした。

 

「私、今回は医官として同行してるはずなんですけどねー。トマス小隊長の治療とか、色々後回しになってるんですけどー」

 

「と、言いつつ~~?」

 

 おちょくるようなハラグロイゼの態度に、ミッティはこめかみに青筋を浮かべて語気強く言い放った。

 

「こンのクソ兄貴……!」

 

「ははははは」

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