『高度80、75、70――落着点に敵集団』
「処理する。した!」
『クリア。落着まで10』
ウヒョォ~~! 絶賛フリーフォール中のティエスちゃんだ。みんな元気してた? なんか自由落下中は集中しすぎて体感時間がバグるよな。パラシュート切り離してからもう半年くらい経った気がするぜ(白目)。
さて、そういう茶番は置いといてだ。もう地面は目と鼻の先まで迫っている。あと5秒もすればタッチダウンだ。ここからは気を張らないとな。このままの終端速度で突っ込んだらさすがの強化外骨格でも足がイカれちまうし、コクピット内の俺たちもカクテルになること請け合いである。じゃあなんでパラシュート切り離すときヨシって言ったんですか!?
『着地は任せるぞ、ティエス』
「あいよ。――いっぺん言ってみたかった台詞とられたな」
加速した思考の中で、オティカと短く言葉を交わす。はたから聞いたら早口すぎてキュルキュル言ってんじゃないかな。
ま、そんな事はいい。俺は精神を集中させ、イメージする。ちょっとした火魔法の応用だ。落着の直前、その落下速度が目に見えて緩む。
火魔法の真髄は炎熱にあらず。その本質はエネルギー操作なのだから、イメージさえできれば運動エネルギーだって弄れるってもんよ。
『業腹だが、規格外だな。お前は』
「だしょー?」
俺は額に滲む汗を流れるままにしてドやった。
ふわりと、まるで羽ほどの重さもないような柔らかさで、スーパーアーゼェンレギナは戦場に舞い降りる。拡張された足裏に慣れ親しんだ地面の感覚がフィードバックされ、ここ一時間の浮ついていた気分を引き締めてくれた。人は土を離れては生きられないのよ。ずん、という微かな振動がコクピットに伝わる。
「降臨、満を持して――って、やってる場合でもねーな!」
『囲まれているな。十字砲火が来るぞ』
着地した瞬間、俺はレギナを横っ飛びに跳ばせた。直前まで機体があった場所を、十字砲火の火線が舐める。十字っていうかなんだろうなコレ。*よりもっとトゲトゲの記号があったらそれ使いたいなって感じ。まあ避けるんだけども。
俺の動きに追従するように厭らしく付きまとってくるレーザーの雨をステップで振り切りながら、手近な的に向けてライフルの引鉄を弾く。
『誘いこまれたようだな』
「ま、これだけうじゃうじゃいればどこ撃っても当たるわな。イーズィーイーズィー」
ティエスとて、誘い込まれたのは重々承知である。わかったうえでこうして飛び込んだ。視界は今や青一色に染まっている。麻雀の役じゃねーんだぞ。周囲をぐるりと囲まれているおかげで逃げ場はないが、そのおかげでいちいち照準する必要もない。おそらく闘技場でハナッパシラ君が戦ったっていう敵の新型なんだろうが、数を揃えられても用兵がまるでなってないな。まぁ偏に俺が強すぎるだけかもわからんが!
「っと、ガンズゼロ、ちょっと揺れるぞ!」
『わたくしのっ、ことはっ、お気にっ、なさらず!』
「舌ァ噛まないようにな!」
ぴょんぴょん跳びながら敵を翻弄し、返す刀で敵の数を減らす。気分は五条大橋の源義経だ。とはいえ装備面から考えると武蔵坊弁慶だけどな。
俺は撃ちきったライフルを投棄して、使いきりのバズーカを背部に増設された武装プラットフォームから引っ張り出して発射した。重い反動が機体を揺らす。背中にいろいろ背負ってるせいで無反動砲に出来なかったんだろうな。
投射されたオーバーロード電源呪符弾頭は敵陣の一角に突き刺さり、炸裂する。わらわらと詰め寄せていた青い機体がひと塊となって吹き飛び、包囲網にぽっかりと穴が開いた。敵の物量を見るにしばらくすれば埋まる穴だろうが、それを俺が許すと思ったか?
「傷口を抉るぞ。オティカは後ろのカバーを頼む」
『了解した。残弾はまだ潤沢にある。景気よく行こう』
「お前もだいぶ人間臭くなりやがって。そういうのは普通、
あるいは、強化鎧骨格の操縦システムを介して繋がっている俺の影響も多分にあるのかもしれない。結構ヤバいテクノロジーかもな、これ。自意識大丈夫か? アイデンティファイしてる?
オティカは背部武装プラットフォームの
『レイフィール城正門まで980メートル』
「城下町を抜けるぞッ!」
青い群衆を鋭く割りながら、俺は遠くに見えるレイフィール城の城門を睨んだ。