「しっかしキリがねーな! なんつーか、原色すぎて目がチカチカするぜ」
『オレたちで作った道ももう埋まっている。どうやら欠員を転移で埋めているらしいな』
「戦力の逐次投入ってコトォ!? けーっ、俺も舐められたもんだぜ」
『初手からこれだけの物量を展開しているんだ。それを言うのは流石に敵が可哀想だ』
「それはそう。つまり俺たちが強すぎるだけってワケ!」
城下町を攻略中のティエスちゃんだ。オティカと軽妙な無駄口を叩きあうさなかにも、押し寄せる敵の波を捌きながらじりじりと歩を進めている。さすがに敵中突破は堪えるぜ。嵩張る実弾じゃなくて電源呪符を使うレーザー系で固めたのはいい判断だったな。それでも弾数は心もとないが……。
「しかし本当にうじゃうじゃいやがるな。おしくらまんじゅうじゃねーんだぞ」
『案外、それを狙っているのかもしれん。どうせ無人機だ。囲んで足を止めたところで自爆でもすれば、それで事足りると思っているのだろう』
「贅沢な使い方をしやがる」
敵の姿は幾重にも折り重なっており、あれでは味方が邪魔になって射線を通すのも難しいだろう。オティカの読みはほどほどに正鵠をついているように思える。物量で押しつぶすってそういうことじゃなくない?
俺は半笑いになりながら、いちいちライフルで狙うのも面倒になって、バズーカをぶっぱなす。前方に火柱が上がって、敵が紙きれみたいに吹き飛んだ。反動で足が止まったところを狙って撃ち込まれたレーザーには、投棄したバズーカを身代わりとして貫かせる。どうせ一発撃ちきりの装備だ。惜しくはない。ただこれで、バズーカは在庫切れだ。
「弾、足りると思うか?」
『すべてを相手にするつもりなら、足りないだろうな』
「さっき景気よく行こうって言ったじゃねぇかよえー!?」
『あの状態からさらに増援が出てくるとは思わなかった』
しれっと答えるオティカに、このぽんこつAIがよー! と悪態をつきながら引き金を弾く。
「しっかし、数は多いけど練度が高くないのは救いだな。オラッ!」
『お前が異常なだけだ。並みのパイロットなら今頃撃破されている』
迂闊に近接戦闘を仕掛けてきた一機を撃ち抜きながら、俺は軽口を叩く。オティカの言葉は称賛として受け取っておこう。
オティカは淡々と背後の敵を処理しながら続けた。
『おおかた、エヴィロンスの制御システムをそのまま載せているのだろう。強化鎧骨格用にアップデートできていないんだ』
「……ハカセが抜けてくれてマジで助かったな」
脳内で
『エヴィロンスの行動パターンがゲルベロッサ由来ならっ、それも一因でしょう。彼はっ、強化鎧骨格には乗れませんでしたからっ』
姫もこの変則ステップ機動に慣れてきたようで、そこそこの長文を話せるようになっていた。才能あるぜ。でも舌噛むと危ないからマジで注意してね。
「なるほどね。レイフィールにはほかに参考になりそうなパイロットはいなかったわけだ」
『我々賢狼人は統合府樹立以来、多氏族との武力衝突は起きていませんから……』
「良いことなんだがなぁ!」
しかしそう言われればこの煮え切らない戦い方もわかる。包囲したままずっと射撃してきたり、たまに近寄ってくる奴もいるが、1機1機はハンスよりも動きが悪いくらいだ。新型のスペックで練度をカバーしてる感じ? あれ、ベースは帝国の純正テンチュイオンって話だしな。なんで純正テンチュイオンがこんなに量産されてるんですか!?
『簡単にスキャンしてみたが、ここにいるのはすべてテンチュイオンⅡベースだ。闘技場に現れたという機体とは別物のようだな』
「あっなるほどね。さすがにね。さしずめ量産型ってところか。量産型……なんていったっけ、機体名」
『ヤーラ・レイアークだ。闘技場でそう名乗ったと記録にある』
「やられ役?」
『どうしてそうなる。ヤーラ・レイアークだ』
オティカがじとりとした声で訂正した。まぁそりゃそっか。大それた野望を実現するための尖兵に「やられ役」なんて名前つけないよなフツー。でも日本語と音が似すぎなんだよなぁ。偶然って怖いネ!
『闘技場に現れた個体が装備していた光の剣も、
「ああ、あのビームサーベルね?」
『ビームサーベル???』
全然サーベル状ではないが? というオティカの怪訝な声を聴く。確かにあれは原理的にもビームサーベルっていうよりエグゼキューターだな。ラインバレルの。
ちなみに当の装備はあのあと
「ま、持ってないなら重畳ってこった。このまま城下町を抜けるぞ。オティカ、あと何キロ!」
『残り520メートル。ペースを上げるか?』
「そうしよう。ガンズゼロ! 跳ぶぞ、備えろ!」
『は、はい!』
姫の返事を聞き終わるよりも先に、俺はスーパーアーゼェンレギナを大跳躍させた。八艘跳びだ。同時に、背面に増設したスラスターが火を噴く。ここに来るまでに使ったあのロケットブースターを小型にしたもので、短時間・低高度の飛行を可能にする隠し玉だ。いや飛行かなこれ? 投射って言ったほうが正しくない? オティカがいなかったら間違いなく地面とキスする羽目になるわ。
量産型ヤーラ・レイアークの頭上をフライパスし、置き土産に空中で切り離したスラスターユニットを落としておくのも忘れない。内部の電源呪符をオーバーロードさせれば爆弾にもなる。というか制御システムが急造品でちゃんとしてないので、一回火を入れたら必ず暴走する、のほうが正しい。ヅダかよ。
それでも、目的地までの距離は一瞬で詰まった。背後がスラスターユニットの爆発で明々と照らされる中、眼前に巨大な城門が飛び込んできた。
『城門前に敵部隊展開中。中央の一機は闘技場に現れたヤーラ・レイアークと推定』
「構わねぇ! つっこめ!!」
『了解』
まったく速度を落とさずに突っ込んでくるスーパーアーゼェンレギナを見て、敵部隊の1機だけがあからさまに身じろいだのが見れた。