ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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5-88 ティエスちゃんは駆け抜ける

「しっかしキリがねーな! なんつーか、原色すぎて目がチカチカするぜ」

 

『オレたちで作った道ももう埋まっている。どうやら欠員を転移で埋めているらしいな』

 

「戦力の逐次投入ってコトォ!? けーっ、俺も舐められたもんだぜ」

 

『初手からこれだけの物量を展開しているんだ。それを言うのは流石に敵が可哀想だ』

 

「それはそう。つまり俺たちが強すぎるだけってワケ!」

 

 城下町を攻略中のティエスちゃんだ。オティカと軽妙な無駄口を叩きあうさなかにも、押し寄せる敵の波を捌きながらじりじりと歩を進めている。さすがに敵中突破は堪えるぜ。嵩張る実弾じゃなくて電源呪符を使うレーザー系で固めたのはいい判断だったな。それでも弾数は心もとないが……。

 

「しかし本当にうじゃうじゃいやがるな。おしくらまんじゅうじゃねーんだぞ」

 

『案外、それを狙っているのかもしれん。どうせ無人機だ。囲んで足を止めたところで自爆でもすれば、それで事足りると思っているのだろう』

 

「贅沢な使い方をしやがる」

 

 敵の姿は幾重にも折り重なっており、あれでは味方が邪魔になって射線を通すのも難しいだろう。オティカの読みはほどほどに正鵠をついているように思える。物量で押しつぶすってそういうことじゃなくない?

 俺は半笑いになりながら、いちいちライフルで狙うのも面倒になって、バズーカをぶっぱなす。前方に火柱が上がって、敵が紙きれみたいに吹き飛んだ。反動で足が止まったところを狙って撃ち込まれたレーザーには、投棄したバズーカを身代わりとして貫かせる。どうせ一発撃ちきりの装備だ。惜しくはない。ただこれで、バズーカは在庫切れだ。

 

「弾、足りると思うか?」

 

『すべてを相手にするつもりなら、足りないだろうな』

 

「さっき景気よく行こうって言ったじゃねぇかよえー!?」

 

『あの状態からさらに増援が出てくるとは思わなかった』

 

 しれっと答えるオティカに、このぽんこつAIがよー! と悪態をつきながら引き金を弾く。

 

「しっかし、数は多いけど練度が高くないのは救いだな。オラッ!」

 

『お前が異常なだけだ。並みのパイロットなら今頃撃破されている』

 

 迂闊に近接戦闘を仕掛けてきた一機を撃ち抜きながら、俺は軽口を叩く。オティカの言葉は称賛として受け取っておこう。

 オティカは淡々と背後の敵を処理しながら続けた。

 

『おおかた、エヴィロンスの制御システムをそのまま載せているのだろう。強化鎧骨格用にアップデートできていないんだ』

 

「……ハカセが抜けてくれてマジで助かったな」

 

 脳内であの半魚人(ジャスティン)が「私が作りました」とドヤ顔ダブルピースしている姿を幻視して冷や汗をかいた。いやまあそんなキャラじゃないけどね。あのまま彼が「野生の後継者」に居残っていたら、マジで手が付けられないことになってたかもな。残ってる連中が大したことなくて助かったぜ。どうせプライド先行してヒスった挙句に優秀な部下を撃ち殺しちゃうような奴がトップなんだろうなぁ(名推理)。

 

『エヴィロンスの行動パターンがゲルベロッサ由来ならっ、それも一因でしょう。彼はっ、強化鎧骨格には乗れませんでしたからっ』

 

 姫もこの変則ステップ機動に慣れてきたようで、そこそこの長文を話せるようになっていた。才能あるぜ。でも舌噛むと危ないからマジで注意してね。

 

「なるほどね。レイフィールにはほかに参考になりそうなパイロットはいなかったわけだ」

 

『我々賢狼人は統合府樹立以来、多氏族との武力衝突は起きていませんから……』

 

「良いことなんだがなぁ!」

 

 しかしそう言われればこの煮え切らない戦い方もわかる。包囲したままずっと射撃してきたり、たまに近寄ってくる奴もいるが、1機1機はハンスよりも動きが悪いくらいだ。新型のスペックで練度をカバーしてる感じ? あれ、ベースは帝国の純正テンチュイオンって話だしな。なんで純正テンチュイオンがこんなに量産されてるんですか!?

 

『簡単にスキャンしてみたが、ここにいるのはすべてテンチュイオンⅡベースだ。闘技場に現れたという機体とは別物のようだな』

 

「あっなるほどね。さすがにね。さしずめ量産型ってところか。量産型……なんていったっけ、機体名」

 

『ヤーラ・レイアークだ。闘技場でそう名乗ったと記録にある』

 

「やられ役?」

 

『どうしてそうなる。ヤーラ・レイアークだ』

 

 オティカがじとりとした声で訂正した。まぁそりゃそっか。大それた野望を実現するための尖兵に「やられ役」なんて名前つけないよなフツー。でも日本語と音が似すぎなんだよなぁ。偶然って怖いネ!

 

『闘技場に現れた個体が装備していた光の剣も、量産型(こいつら)は装備していないようだな』

 

「ああ、あのビームサーベルね?」

 

『ビームサーベル???』

 

 全然サーベル状ではないが? というオティカの怪訝な声を聴く。確かにあれは原理的にもビームサーベルっていうよりエグゼキューターだな。ラインバレルの。

 ちなみに当の装備はあのあと白竜師団(パイロン)が回収し、ハナッパシラが借用したバイパーⅢと交換する形で王国(こちら)に譲渡され、実は今も背部兵装担架に引っ掛けてある。電力をドカ食いする性質上、使うタイミングがあるかはわからんがね。

 

「ま、持ってないなら重畳ってこった。このまま城下町を抜けるぞ。オティカ、あと何キロ!」

 

『残り520メートル。ペースを上げるか?』

 

「そうしよう。ガンズゼロ! 跳ぶぞ、備えろ!」

 

『は、はい!』

 

 姫の返事を聞き終わるよりも先に、俺はスーパーアーゼェンレギナを大跳躍させた。八艘跳びだ。同時に、背面に増設したスラスターが火を噴く。ここに来るまでに使ったあのロケットブースターを小型にしたもので、短時間・低高度の飛行を可能にする隠し玉だ。いや飛行かなこれ? 投射って言ったほうが正しくない? オティカがいなかったら間違いなく地面とキスする羽目になるわ。

 量産型ヤーラ・レイアークの頭上をフライパスし、置き土産に空中で切り離したスラスターユニットを落としておくのも忘れない。内部の電源呪符をオーバーロードさせれば爆弾にもなる。というか制御システムが急造品でちゃんとしてないので、一回火を入れたら必ず暴走する、のほうが正しい。ヅダかよ。

 それでも、目的地までの距離は一瞬で詰まった。背後がスラスターユニットの爆発で明々と照らされる中、眼前に巨大な城門が飛び込んできた。

 

『城門前に敵部隊展開中。中央の一機は闘技場に現れたヤーラ・レイアークと推定』

 

「構わねぇ! つっこめ!!」

 

『了解』

 

 まったく速度を落とさずに突っ込んでくるスーパーアーゼェンレギナを見て、敵部隊の1機だけがあからさまに身じろいだのが見れた。

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