ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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2-25 ティエスちゃんは訓練する(ダイジェスト)①

「負けたほうが訓練2倍とは言ったが、勝ったほうを2倍にしないとは言ってない。さあてめーら、ちゃきちゃき訓練はじめっぞ」

 

「ちょっと!?」

 

「いやーそれは流石に詭弁にもなってねっスよ中隊長」

 

 翌日のブリーフィングルームでニアとハンスに食って掛かられているティエスちゃんだ。とはいえプンスコしてるのはこの二人だけで、他3名は何とも言えない半笑いだ。

 

「まぁ、チームとして訓練する以上、最初から分かっていた結果ではありますなぁ」

 

 副官は苦笑しながら肩をすくめ。

 

「然り然り。ぶつくさ言っておらんで、さっさと練兵場に行くぞ」

 

 トーマスはそういってハンスの背をばしんと叩き。

 

「ハハ……俄然、腕がなります」

 

 ハナッパシラ君はドン引きしながらも意気込みを見せていた。こらこらドン引きは余計だぞ。

 

「まぁ、中隊長だしなぁ」

 

「あっ裏切者! あーもう、納得できなーい!」

 

 ハンスも大きなため息をつきつつ肩をすくめる傍ら、ニアの往生際の悪い悲鳴がブリーフィングルームに響いた。オラっ、そんな元気があるなら走り込み行くぞ!!

 

 

1.基礎体力作り

 

「さーてまずは基礎体力作りだ。技術をいくら磨こうが、最後は体力の差がものをいうからな。この世界はマッチョの理論で回ってるわけやね。ということで走り込みだ。手始めに10キロ!」

 

『サー・イエッサー!』

 

 訓練の定番ということで、まずは走り込みである。さっき言ったとおり、最後まで走れる奴が最後の勝者だ。それは強化鎧骨格っていうマシーンに乗って戦う俺たちにも等しく言えることである。

 というわけで第一練兵場の1キロメートルトラックにやってきました。

 ま、そう意気込んでは見たものの、10キロ程度のランニングなんて俺たちにとっちゃ日課だ。出動してないときの軍人さんって何やってんの? ってよく近所のちびっ子たちに聞かれることがあるが、ほぼほぼ訓練で走ったり筋トレしたりしてるというと露骨に憧れを失った目をされるので、最近はウソにならない程度にもっと華々しいことをいうコトにしてる。強化鎧骨格同士の模擬戦とかね。

 そんなわけで今更文句を言うやつもいないが、ただそれだけじゃァ張り合いがねーよなぁ?

 

「エルヴィン、例のものを」

 

「はいかしこまりましたーっと」

 

 俺が指ぱっちんをスカると、カートをひいてきたエルヴィンがそれに積まれた荷物を隊員たちに配っていく、見た目は単なるリュックサックだが、それを見た全員がげんなりとした顔をした。

 

「行きわたったな? よろしい」

 

「えぇ……何キロ設定?」

 

 ニアが心の底からいやそうな声を出した。

 このリュックサックは優れもので、魔法の応用で重量を自在に調節できるようになっている。いわゆるマジックバッグって奴な。このバッグに満タンになるまで重量物――それこそ鉛だろうが劣化ウランだろうが――をぶち込んでも、バッグについてるつまみを回して重量調整すれば羽より軽くなる。慣性なんかも見かけの重量に従う感じだ。ちなみに内容量の拡張まではやらない廉価モデル。

 そんな便利グッズを渡されてなぜ皆がげんなりしているかといえば、まあ軽く調整できるならそりゃ逆に重くもできるってわけで。

 

「30キロだ。ずるしたやつは倍荷重だからな」

 

「なかなか、老骨には堪えますな」

 

「わるいな。シルバー割引は無しだ」

 

「でしょうなぁ」

 

 トーマスが苦笑しながらつまみを回した。俺は目がいいのでわかるのだが、こいつしれっと荷重を40キロに設定しやがったな? いや重い分にはなんも言わんけど、ジジイ無理すんな?? まぁそれを軽々担いでケロッとしてるわけだから、心配はいらんのだろうけども。俺も負けじと荷重を50キロに設定した。へへ、ずっしりくるぜ。

 

「エルヴィン、全員の荷重設定を確認しろ。……ああ、重くしてるやつにはなんも言わんでいいかんな」

 

「了解。……てか、そんな重くしてるような酔狂な奴なんているのか? いたわ」

 

 マジかこいつ、みたいな目で見てくるんじゃねぇ。さっさとほかの連中の確認に行ってこい。

 うん、エルヴィンの反応を見る限り、トーマスのほかにハナッパシラ君も重めみたいだな。副官の奴は……まぁやらんわな、あいつの性格なら。

 ハンスあたりなら誤魔化してくるかとも思ったが、思いのほかみな従順で助かる。そんじゃ、走りますか。

 

「エルヴィン。んっ」

 

「うぉっ……えっ?」

 

 確認を終え、完全に見送る気でいたエルヴィン少年にもリュックを投げ渡してやると、ハトが豆鉄砲食らったような顔をして受け取っていた。なにボケてんだ、おまえも一緒に走るんだよ。

 

「15キロで良いぞ。やさしい俺に感謝するんだな」

 

「えっ、えぇ~~~!?」

 

 ええいうるさい。叫んでる元気があったら足を動かせ。そんじゃあ10キロランニング、レッツ・ラ・ゴー!!

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