ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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3-14 ティエスちゃんはフードコートがお好き

「んじゃあこの旅の前途を祈って。カンパーイ」

 

「かんぱーい!」

 

 景気よくジョッキをかち合わせるティエスちゃんだ。風呂上がりの小宴会なう。

 

「っっっくぁ~~~~~~~!! この一杯のために生きてるっ!」

 

「ほどほどにしとけよ。明日はまた移動だぞ」

 

 ニアがジョッキに並々注がれていた琥珀色のシュワシュワを半分以上腹に流し込んでから、どんと机を鳴らした。ったく他のお客もいるんだからな。もうちょっと気を遣いなさいよ。

 

「なぁ中隊長。ニア小隊長って下戸じゃなかったのか? めっちゃ旨そうに呑んでるけど」

 

「ああ。こいつな、隊の飲み会とかのオフィシャルな場では下戸ってことにしてんだわ。飲みに誘われたりするのが面倒くさいらしくてな。本性はうわばみだよ」

 

 小麦色のシュワシュワ(ジンジャーエール)のジョッキをちびちび傾けるエルヴィン少年の問いに、烏龍茶を喉に流し込みながら答える。休憩時間なだけでふつうに仕事中だからね、俺ら。自覚しろ自覚を。

 ちなみにニアは俺とサシ飲みになると一晩でボトル空にするような飲み方するからな。それでいて次の日もケロッとしてんだわ。どういう肝臓してんだか。

 

「下戸騙りってそんな効果あんの?」

 

「ふつうはないが、ニアはあれで貴族令嬢だからな。どうしても遠慮が生まれる。無理に誘おうとするやつはいねーよ」

 

「はー、貴族って便利だなぁ……」

 

「使いようだな。お前もよく勉強しとけ」

 

 エルヴィンが渋い顔をしたのは、決してジンジャーエールの炭酸がきつかったからではないだろう。まぁがんばれ将来の大貴族サマ。

 

「それより食え食え。今日は俺のおごりだ」

 

「こんな安飯で威張られてもねぇ」

 

「ンなこと言うなら食わんで良い」

 

「あー! 私のから揚げ!!」

 

 ニアの狙っていたげんこつ唐揚げを横からヒョイとかすめ取ってむしゃり。あふれる肉汁と油。うーんこの不健康を極めたようなジャンキーな味わい、嫌いじゃないわ! やっぱ体に悪いもんは美味いというのが世の理やね。

 輝星信仰では食い物のタブーはない。酒も肉も、むしろ飲めや歌えやが教義みたいなもんだ。だから神殿には必ずフードコートが併設されてるし、老若男女みんな大好きなジャンク飯が販売されている。

 テーブルに並んでいるのはどれもこれもがそんな感じだ。唐揚げをはじめ、フライドポテトにコロッケ、極太フランクフルト、イカリング、揚げたこ焼き、焼きそばと、見事に真っ茶色。ちなみにコロッケは昔ながらの通好みなお肉屋さんのポテトコロッケとナウなヤングにバカ受けのカニクリームコロッケの両方を購入してある。われながらこの心ばかしの配慮がニクいぜ。

 なお、この世界では普通にジャガイモもトマトも生産されているのであしからず。最近うるさいからね、この辺の話題。最近……??

 なんで地球と同じ作物が存在してんだって? 知らんがな。そも人間が繁殖してる時点で今更だろ。収斂進化とかそういうやつじゃないの?

 

「もうちょっと野菜とかも食ったほうがいいんじゃねぇ?」

 

「野菜ならほれ、ポテトにかかってるだろ」

 

「……もしかしてケチャップのこと言ってる??」

 

 やめろやめろ。そんな心からドン引きしたような目で見るんじゃない。冗談に決まってるだろうが。

 あと、俺は別に野菜が嫌いなわけじゃない。むしろ好きなほうだぞ。特にブロッコリーとかトマトとかエノキとか。そもそも軍人やってると飯の好き嫌いなんか言えなくなるからな。極限状態で嫌いなもんしかなかったら餓死すんの? って話だ。なおセロリしか食うもんがない状態になったら俺は死を選ぶと思う。

 

「別にたまには好きなもんだけ食ったっていいだろがよ。平生から栄養管理完璧な飯を食ってんだ。チートデイってヤツだよ」

 

「そりゃそうか」

 

「そーよそーよ。だからたまにたくさん呑むくらい許されてしかるべき」

 

「うわっいつの間にこんなに!?」

 

 気が付くとテーブルには空のジョッキが6つばかり。アルコール耐性を脇においても、3リットル近い液体が一体その細い体のどこに入っていっているというのか。胃の中にブラックホールでも飼ってんのか?

 

「いつものことだから気にスンナ。まだまだ序の口みて―なもんだ」

 

「むしろこの酒豪アピールしたほうがヒトが寄ってこないんじゃねぇ……?」

 

「いえてる」

 

 うーんフランクフルトうめぇ。

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