ティエスちゃんは中隊長   作:永多真澄

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4-23 ティエスちゃんは姐御と会う①

「……倉庫街の物流倉庫8棟が全損、10棟が半壊、他20棟に軽微な被害が出た。半壊以上の倉庫はもちろん中の商品もパァ。ウチからも人死にが出てる。繁華街のほうの混乱もひどいもんサ。事態の収拾にゃずいぶんな手間とカネを浪費しちまった。一体どうオトシマエつけてくれようってンだい、賢狼の姫」

 

「…………」

 

「黙ってたんじゃ、わからないねェ」

 

 戦闘を終えて事後処理へとりかかるティエスちゃん達。不注意からか、不幸にも敵の自爆に巻き込まれてしまう。オティカをかばいすべての責任を負ったリリィ姫に対し、中央市場の主、商会長ガメッツィーゼ・ガメッツィーに言い渡された示談の条件とは……?

 というわけでティエスちゃんだ。いやあ大変だったぜ。急に爆発するんだもんな。何とか姫とかライカ君とかを守るシールド(土と風の合わせ技だ)は張れたから俺達には被害なかったけど、爆発が収まってみたらあたりが更地になってたんだもんな。どんな高性能爆薬だよおい。おかげで敵の自立小型強化鎧骨格の物証も消し飛んじまった。そのあと騒ぎを聞きつけた商会の私兵とやらがわんさと来て、なんやかんやで現在やくざ屋さんのお宅訪問中。逃げるタイミングを完全に失ったオティカも一緒なのはちょっとウケるな。

 しっかし、威圧的な櫓門やら破風の造形やら、見るからにTHE・ジャパニーズやくざ! って感じの邸宅だ。敷地内外にはゴブリンのみならず、森域中からかき集められた多様性豊かなスジモンの姿を観察することができる。さしずめスジモン動物園だな。

 どいつもこいつも首を一定の角度に傾げ、"!?(マガジンマーク)"を頭上に浮かべて厳つさアピールに必死だ。かわいいね。顔芸ばかり達者なトーシロばかりよく集めたもんですな。俺とメイトリクスなら5分で殲滅できる。確実に国際問題に発展するからしないけど。しかしヒヒヒって笑いながらナイフ舐めるやつとかマジでいるんだね。ちょっと感動した。大丈夫? そのナイフ毒とか塗ってない?

 で、そんなスジモンたちの所属する"商会"――ガメッツィード・ファミリーを束ねているのが、俺たちの前で偉そうにふんぞり返っているゴブリン、すなわちガメッツィーゼ・ガメッツィーその人である。

 ふつうゴブリンは成体でも小柄で、身長160センチを超えるような個体はまずいない。しかしどうだ。ガメッツィーゼは170センチを超えるほどの長躯で、姐御で、そして豊満であった。あと顔もいい。ウヒョーたまんねぇな。まあグリーンスキンなので性欲は減衰するが。

 

「アタシも十年ばっかしこの世界で生きちゃいるが、ここまで派手にやったのはアンタが初めてだよ、えぇ?」

 

 なおガメッツィーゼ・ガメッツィーは御年9歳である。ぅゎょぅι゛ょっょぃ。

 なんで知ってんのかって、そりゃガメッツィード・ファミリーの公式出版物に生誕年がばっちり記載してあったからやね。まあ四捨五入すれば10年か。ゴブリンの寿命は短く、平均30歳程度。なので10年というのは人生の1/3に相当する長さだ。つまりゴブリンの9歳は、人間でいうところのアラサー相当って感じかな。これを若いとみるかババァとみるかは、まあその人の判断基準如何だろう。俺から見れば、若いのに海千山千乗り越えてきてんなって感じが強い。顔立ちは幼さが残る感じなのに、貫禄とかすごいしな。だてに数百の荒くれどもをまとめちゃいないってところだ。

 

「ハァ、埒が明かないね。……それで、なんでアンタまで一緒にここにいるんだい、ティエス・イセカイジン」

 

 コォーンと鹿威しのいい音が鳴る。庭も見事だねぇ。俺がのんきによそ見をしていると、ふいに水を向けられた。おや、初対面のはずだが向こうは俺のことを知ってるらしい。有名人ってのはつらいね。

 

「さすが、森域の経済を牛耳ってる首魁ともなれば、俺の顔も割れてるか。やれやれ、有名人ってのはつらいね」

 

 俺が半笑いでそうこたえると、姐御のそばに控えていたスジモンがにわかに殺気立つ。ガメッツィーゼはつまらなさそうにフンと鼻を鳴らすと、いきりたった部下どもを片手で制止した。

 

「……覚えちゃいないようだね」

 

「ん? なんて?」

 

「何でもないよ。それよりアタシの質問に答えてもらおうか。ティエス・イセカイジン。なぜ、アンタがここにいるんだい」

 

 ガメッツィーゼはキセルをぷかぁと吹かすと、コーンと灰を落とす。それが響くほどには、この場は静かだった。姫を見やると、こくりとうなづく。話しちまってもいいってことらしい。解釈違いだったらすまんね。

 

「ホントは森域の蛮族どもを()()()()にきたんだがな」

 

「………………続けな」

 

 たまらずスタンダップした側近のスジモンたちが口々に罵倒を飛ばすのを、ガメッツィーゼがこめかみを抑えつつも制止する。ありがたい。別に俺も喧嘩するつもりで来たわけじゃないからな。

 

「それがそうもいかなくなった。今の俺は賢狼族首長の護衛騎士でもあるからな。……荒れるぜぇ、この国は」

 

「…………どういうコトだい?」

 

 食いついた、ってことで良いだろう。さ、あとは姫の役目だぜ。

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