IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
第19話 夏だ! 海だ! 結局それかい!
「海っ! 見えたぁぁ!!」
誰かが言った言葉で、バスに乗っている全員が窓の向こうを覗き込んだ。
このIS学園には臨海学校なる行事がある。表向きの目的としては『開放された非限定空間におけるIS装備の稼働試験』とされているが、2泊3日の日程で最終日は撤収作業、初日は完全に自由時間だ。要は海水浴を楽しみつつ、学園のアリーナ以外でISを動かしてみようというイベントなのだ。
そんなわけで、朝からバスに揺られた俺達IS学園1年生一行は、ようやっと目的地が見えて喜んでいるわけだ。
「にぃに! 海楽しみだね!」
「はいはい、落ち着け落ち着け」
「むむむ……怜二さんの隣、羨ましいですわ」
「まさか、ラウラがあんなにジャンケン強かったなんてねぇ」
「ホントだよ。ふぅ……」
「あの、私が隣で申し訳ありません……」
「ああいやっ! クロエが悪いわけじゃないんだよ!?」
バスに乗る前のじゃんけん大会によって、俺の隣がラウラ、セシリアの隣が清香、シャルの隣がクロエという並びになった。鈴は2組だから後ろの車両に乗ってるはずだ。
そして最前列の席には真耶さんと織斑先生が座り、通路を挟んで反対側には
「どうした箒? 気分が悪いのか?」
「な、なんでもない!」
「?」
一夏の肩に寄りかかろうか迷っている箒と、そんな乙女心など理解していない一夏のやりとりが。もはやじれったい。
(これじゃあ束も、あんなこと言い出すよなぁ……)
俺は呆れた視線を向けながら、昨晩束が提案した計画を思い出していた。
「明日、れっきゅん達は臨海学校に行きます!」
「そうだな」
「そして臨海学校2日目に、アメ公とユダ公が共同開発しているIS『
「ほう、それで?」
「束さんがその機体をジャックします!」
「は?」
「そしてジャックした機体を、臨海学校で泊まる宿に向けて飛ばします!」
「おい」
「そうしたら学園上層部から、れっきゅん達が対処するように指示が飛びます!」
「待て待て待て」
「そこでいっくんと箒ちゃんが銀の福音を討伐します!(ドンッ!)」
――ペチンッ!
「はぅ!❤ おっぱい叩くとか、れっきゅんひどぉい!」
「色々ツッコミどころが満載過ぎて、叩く場所を選定する余裕も無かったわ!」
「なんかさ~、いい加減箒ちゃんにもカンフル剤が必要かな~って思い始めてきたんだよね~」
「そこは同意するんだがな……」
束もとうとう、あの二人の進展の無さに焦りが出てきたんだろう。年頃の男女が同じ部屋で生活を始めて早3ヵ月、しかも女の方は男の方に片思い中。それでどうして何も進展がないのか。
男の方が朴念仁なのもそうだが、女の方がダメダメ過ぎる。
「だから、ここらで『吊り橋効果』ってやつを試そうと思ってね」
つまり、文字通り実戦に送り込んで緊張感を与えることで、戦いの高揚感を箒への恋愛感情と誤認させようってことか。
「けどそううまくいくのか? 仮に学園から指示が来たとしても、箒がその要員に選ばれるとは――」
「そこは大丈夫! 実は箒ちゃんからお願いされて、あげることにしたんだ」
「何を?」
「専用機」
「……」
――グニュゥ❤
「あぁぁんっ❤」
「そんな簡単にホイホイISをあげるんじゃありません!」
「だってぇ、箒ちゃんからお願いされることなんて、今まで無かったしぃ! あっ、そこぉ❤」
「はぁ……下手するとお前、周りから箒が妬まれるぞ。『身内贔屓で専用機を手に入れた奴』って」
「う~ん、まぁそこは何とかするよ。それに二人の安全だってちゃんと確保するし。だからさぁ……」
「はい、ここまで」
揉みしだいていた手をパッと離す。
「ええっ! なんでぇ! ここで寸止めなんてあんまりだよぉ!」
「今日はもう寝る。少しは反省しなさい」
「にぃに♪ 今日は一緒に寝よ!」
「うわぁ! ラーちゃんズルいよぉ!」
いいところで止められた束の放置して、俺は自分のベッドに潜り込んだ。……ラウラと、なぜか鈴がセットで。
「(それにしても、束さんもすごいこと考えるよねぇ)」
「(ですが、束さんならやりかねないと思えるのがまた……)」
「(け、結構過激な人なんだね、束さんって……)]
清香とセシリアは慣れたものだが、シャルは束のトンデモ行動の経験が浅く、思いきりドン引きしていた。
「それにしてもラウラさん、授業の時とのギャップが激しすぎますわね」
「ん、んっ! そうか?」
「ああそれそれ。怜二君と一緒だと、その口調が保てなくなるんだもんね」
「うっ! 仕方ないだろう。怜二と一緒にいると、心がポアポアしてきて……あ、ダメだ」
セシリア達と話している間は軍人調な、転入初日を思わせる口調のラウラだったが、俺の腕を掴んだ瞬間
「やっぱりにぃにと一緒の時は、こっちがいい♪」
「……」
「お、織斑先生、大丈夫ですか?」
ああ、こっちを見る織斑先生の目が、すっげぇ濁ってる……。
こうして目的地の旅館に着くまでの間、『信じて送り出した教え子が……』的な視線を送り続ける織斑先生だった。
――――――
―――
織斑先生の視線に耐え、やっとバスは目的地の旅館前に到着。4台のバスからそろぞろと、1年生が降車していく。
「ここが今日から3日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないよう注意しろ」
「「「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」」」
織斑先生の言葉に、全員が出迎えてくれた従業員の人達に挨拶する。それに対して、代表してか女将さんがお辞儀をした。
「こちらこそ。今年の生徒さんも元気があってよろしいですね」
「では、今年もよろしくお願いします」
女将さんと織斑先生のやり取りも終わり、生徒達が自分の荷物を持って旅館の中に入っていく。
さて、俺も自分の部屋に荷物を……
「ねーねーおりむ~」
「のほほんさん、どうかした?」
「おりむーって部屋どこ~? 一覧に書いて無かったよ~」
……なんか、すごい眠そうな顔した子だな。しかも袖がダボダボだし。てか一夏、お前おりむーなんて呼ばれてるのか。
「俺はたぶん、怜二と一緒だと思うぞ。だよな?」
「まあそうだろうな。ここで女子と同じ部屋にするとは……って、そうなると俺の部屋も一覧に書いて無いのか?」
「え? 怜二が知ってるんじゃねぇのか?」
「いや……」
てっきり一夏に聞けばいいやと思っていたら、向こうも同じことを考えていたという。詰んでるやん。
「いっそ廊下で寝るか?」
「最悪それだな」
「何を言っているんだ馬鹿共」
おっと、ここで織斑先生が登場か。それで、俺達の部屋が書かれてないっぽいんですが?
「お前達の部屋はこっちだ、付いて来い」
そう言われ、俺と一夏は織斑先生の後を付いて行った。そして一覧に載っていた部屋を全て素通りし、着いた先は……
「ここだ」
ドアにデカデカと貼られた『教員室』と書かれた紙。えーっとつまり、織斑先生達と同じ部屋ってこと?
「最初はお前達二人で固めようと思ったんだが、それだと就寝時間を過ぎて押しかけてくる女子がいるだろうということになった。……特に吾妻」
「あ、俺っすか」
「胸に手を当てて思い出してみろ」
言われた通り手を当ててみた。……クロエ以外は全員来そうな気がする。
「織斑、お前も心当たりがあるだろう?」
「俺? いやいやないって!」
「「はぁ……」」
思わず織斑先生と、ため息がシンクロしちまった。織斑先生も、箒のことは気付いてるのね……。
「織斑は私と、吾妻は山田先生とだ」
「はい。吾妻君はこっちです」
隣の部屋から真耶さんが顔だけを出して来た。俺の部屋はそっちですか。
そこで一夏達と別れ、俺は自分の荷物を持って部屋に入った。入った途端、スパンッと襖が閉まる。
「怜二君❤」
「んっ」
いきなり真耶さんにキスされる俺。うぁっ、しかも舌を入れるベロチューというやつでは……!
「んっ……❤ ……ぁむ……れろ……❤」
「むぐっ……ぷはぁ!」
「バスの中でお預けされて、もう私、我慢出来ません……!」
――たぷぅん!
ま、真耶さん、突然脱ぎ始めたと思ったら下に水着を……! 前に南の島で着てたのと別の、白のキーホール水着だけど、やっぱり胸がぱっつんぱっつん。
「怜二君……❤」
「いや、さすがに隣に織斑先生と一夏があぁぁぁぁぁっ!」
……まさかの旅館到着10分で、俺は真耶さんに搾り取られた。(意味深)
「にぃに、遅かったね?」
「お、おう……」
肌が艶々になったような気がする真耶さんに見送られ、水着に着替えて外に出れば、黒のレースアップ水着を着たラウラにしがみ付かれた。
やっべ、こいつ下手に裸よりもこっちの方が色気が……
「れーいじくん! 見てみてー!」
「どうでしょう?」
「あたし達の水着姿、興奮しちゃった?」
「ど、どうかな?」
「あぅ……」
紫のハイネックな清香、ブルーのビキニで腰にパレオを巻いたセシリア、白とオレンジのタンニキタイプの鈴、オレンジビキニのシャル、そして黒のフレアビキニのクロエ。
うん、なんていうかね。
「月並みだけど、みんなよく似合ってる」
「ふふんっ! とーぜんよね!」
「そう言ってもらえると嬉しいなぁ。あれ、でも怜二……」
「ん? どうしたシャル?」
突然シャルが俺の肩元に顔を近付けて……
「……怜二から、真耶さんの匂いがする……」
「「「「「っ!?」」」」」
「げほっ!」
どうしてそんなに鼻がいいのかなぁ!? あとそのブラックホールな目で見るのはやめてくれ!
「へぇ、さっそくお盛んなことで……」
「これはわたくし達も」
「怜二に可愛がってもらっても」
「罰は当たらないよねぇ……?」
「これはあれか。『泥棒猫がっ!』というやつか」
「きゅ~……///」
若干的外れなラウラと顔真っ赤なクロエを除き、4人はまるで、獲物に狙いを定めた猛禽類のような目で俺を……
「ちょっと待て! さすがに他の奴等に見られるかもしれない外でとかわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
……ああ、やっぱり今回も駄目だったよ。
「それでも、私達全員相手に出来る怜二君はすごいよぉ……❤」
「おふぅ……❤」
「これで真耶さんとの連戦直後とか……あふっ❤」
「あっ、溢れてくるよぉ……❤」
「にぃに、私にもやって♪」
「ら、ラウラっ! そんなお願いしちゃいけません!///」
せめてもの足掻きと、デカい岩場の陰で4人を相手取った俺は、ぐったりとした状態の体をラウラに揺すられ、それをクロエが止めようと頑張っていた。
え? 一夏はみんなとビーチバレーしてたって? いいな~。
――――――
―――
なーんかいつぞやみたいに、海らしいことが出来なかった夜。大広間を3つ繋げた大宴会場で出てきた夕食は、かなり豪勢なものだった。
「刺身に小鍋、山菜の和え物。しかも刺身はカワハギか」
「お~、豪勢だね~」
「サシミ、ですか……生のお魚はどうも……」
「あれ、これ何かな?(わさびをそのまま食べる)~~っ!?」
「美味いな、この白身魚の入ったアイントプフは」
「ラウラ、これは小鍋という料理で、アイントプフではありません」
みんな和気藹々と食べているが、俺の周りは特に賑やかだった。ほらシャル、お茶。
「あ、あひはほ……ぷはっ、ふ、風味があって、美味しいね……」
「いやぁ、さすがにそれは無理があるでしょ」
「怜二さん怜二さん! わたくし、怜二さんに食べさせていただければ、このサシミを克服できると思いますの!」
「あ~、にぃに、私も~!」
「あ、あの、兄様……出来れば私にも……///」
「お前達! 食事も静かに食えんのかっ!!」
はい、織斑先生の雷が落ちました。はーい、全員解散かいさーん!
――千冬side――
「まったく、あのガキ共は……」
ちょっと見回ってみればすぐこれだ。吾妻の周りは特にそうだ。
(あれで成績がキープ出来ているから、なお悩ましい……)
これで授業態度や成績が悪ければ、ガッツリ指導してやるというのに。なまじ『学業に支障をきたさない限り、口出ししない』と言ってしまった以上、ここで前言を撤回するわけにもいかん。
「一夏も、奴のこういう要領の良さを見習えばいいものを」
女誑しのところまでは似なくてもいいがな。……訂正、少しは似てもいい。あの朴念仁っぷりが緩和されるなら。
我が弟ながら、篠ノ之も大変な奴に片思いしたものだ。
それにしても吾妻だ。あいつを他の生徒と一緒の部屋にするのはマズすぎる。一夏とは別の意味でだ。
(山田先生と同じ部屋にしたのは正解だったな)
山田先生もあれで身持ちは固い方だし、さすがの吾妻も教員に手は出さないだろう。
――千冬side end――
<今日の一夏>
「一夏、ど、どうだろう……?」
「お、おう……似合ってるぞ、その水着」
「そ、そうか……///」
「……」
「……」
「お前達、お見合いでもあるまいに、何をしている」
「ち、千冬姉!」
「(ち、千冬さん……! ま、負けた……!)」
「ど、どうした箒!?」
「なんでもない……orz」
レゾナンスに水着を買いに行くシーンはカットになりました。申し訳ない。
本当はね? オリ主、ラウラ、クロエ、束(変装)の4人で手を繋ぐシーンとか考えたんですよ? ただ、書ける自信が無かったもんで……。
束、とうとう動く。細かいところは違うけど、これで原作通りの動きなんですよね~……。
ラウラ? たぶんこのまま。もうクロエが第2の保護者(&常識)枠に。
ちーちゃん、詰めが甘い。貴女の後輩、すでに教え子に手出してますよ。(搾り取る的に)
次回、紅椿。
「これ、箒は使いこなせるの?」