IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
諸君ごきげんよう、吾妻怜二だ。
俺は今、日課である早朝のジョギングをしているところだ。何を突然と思うかもしれないが、前世の習慣というものは恐ろしく、やらないとモヤッとした気分になってしまうのだ。
諸君も……もういいや。みんなも若い内に運動する習慣をつけておかないと、30代を過ぎたあたりから急速に腹のぜい肉が落ちなくなってきて苦労することになるぞ。……と、前世でビール腹の営業部長が言ってた。
学校はどうしたって? 俺が通っている(覚えはないが)学校、進路が決まってる奴は卒業式まで登校しなくていいらしい。で、俺は指定校推薦を受けていて(覚えはないが)、その登校不要組に入っていると。
だからこうやって、朝っぱらから家の周りをジョギングする余裕があるわけだ。ちなみにこれは豆知識だが、あんまり長時間走るより、30~60分ぐらいを定期的に続ける方が体に良いって話だ。
ん? 前話で出てきたうさ耳女はどうなったって? ああ……それも説明しないといけないよな。
うさ耳女、篠ノ之束はどうしているかと言うと……
――ガチャ
「おかえりれっきゅん! 朝ごはん出来てるよー!」
……家に戻ったら、うさ耳付けてエプロンドレスの上からさらにエプロン付けた束が、おたまとフライパンを持ってお出迎えしてくれましたとさ。
――――――
―――
話は昨日の晩、つまり俺が束を手籠めにしたところまで遡る。
蕩け顔を晒していた束だったが、しばらくすると正気に戻ったのか、涙目になりながら部屋の隅に縮こまった。
「うぅぅ……! 束さんが汚されたぁぁ……!」
「汚されたって……」
「うるさいうるさいうるさーい! このエッチ! スケベ! 変態!」
「エッチとスケベは甘んじて受けるが、変態はやめろ」
さて、イーグル師匠の力でこいつの(俺を殺そうとする)心はへし折ったものの、この後については何も考えてなかったなぁ……。
「う~ん……とりあえず『もう帰っていいぞ』」
「え?」
「いやだから、帰っていいって。もう床に倒れ込むこともないぞ」
「……」
あれ? なんか俺の方をじっと見てるんですけどぉ……
「……やだ」
「は?」
「帰らない」
「はぁ?」
帰らないって……なして?
「束さん、ここに住む!」
「ファッ!?」
ここに、住む? え、この家に住むってこと? つまり俺と同居するって……
「あれだけ束さんのおっぱいを堪能しておいて、終わったらさっさとポイってことは無いよねぇ?」
「いやいやいや! 確かに揉みしだいたけど! そもそもお前ついさっきまで俺のこと殺そうとしてた奴だろ! 話が全然等価じゃねぇだろ!」
「束さんが君を殺そうとしたことより、君が束さんをお手付きにした方が重いに決まってるじゃん!」
「ええ~……」
「そ、それに、君言ったよね?『俺の
「いっ……たなぁ、確かに」
ええ、俺の中の
すると、束は突然もじもじし始めて
「だ、だから……せ、責任取ってよね……?///」
何その可愛い反応!?
「だ、だけどそんな上目遣いで訴えたところで頷くわけが……」
「……」
「……分かった、隣の客間が空いてる」
「わーい!」
……なぁ神様。転生初日から命狙われた上に、その殺し屋と同棲が始まったんだが、これも爺さんの思惑通りなのか?
――――――
―――
というのが、昨晩あった出来事。話の展開が急すぎないかって? 俺もそう思う。
「そんじゃ、いただきます」
「召し上がれ~♪」
まあその疑問は後にして、まずは朝飯を食おう。
出てきたのはトーストと目玉焼き、そして葉野菜をちぎったサラダとヨーグルト。よくあるモーニングセットだ。
「どうかな? どうかな?」
「うん、普通に美味い」
「よっし!」
あのー束? このメニューでお前の料理の腕が分かるようなものは無いはずなんだが?
……まあ、本人が喜んでるならいいか。
「ところでれっきゅん」
「Ok束ちょっと待て、その前にその"れっきゅん"ってなんだ」
「れっきゅんはれっきゅんだよ。怜二だかられっきゅん」
「俺のことかよ!?」
なんだその、某軍艦の擬人化ゲームで開幕先制雷撃してくる戦艦みたいなあだ名は!
「普通に名前で呼べよ」
「え~? いいじゃんれっきゅんで」
「いや、だから……」
「それでさ、れっきゅん」
「……もういいそれで。で、なんだ?」
「れっきゅんってさぁ……何者?」
「は?」
項垂れてた顔を上げると、食卓テーブルの向かいに座っていた束と目が合う。
その目は、疑心と好奇心が入り混じっているように感じた。
「この吾妻家だけどさぁ……本当は無かったんだよねぇ」
「無かった?」
「そう。数日前まで、ここには
「……」
俺の沈黙を後目に、束は話を続ける。
「きっかけは偶然からだった。いっくんがISを起動させたことからね」
「その、"いっくん"っていうのは?」
「そっか、知らないよね。テレビつけていい?」
「ああ」
どう話が繋がるか分からないが、俺が頷くと束はリビングのテレビの電源を入れた。
『速報です! 昨日未明、ISの、だ、男性操縦者が見つかりました! って本当に!?』
ニュースキャスターも動揺しているのか、持っていた原稿用紙を食い入るように見ている。
『し、失礼しました! 男性操縦者の名前は織斑一夏! あのモンド・グロッソ優勝者、織斑千冬の弟だそうです!』
なおも慌ただしく速報を伝えるニュースキャスターから、視線を束の方に戻す。
『主人公・織斑一夏は、男性でありながら偶然ISを起動させてしまったため、IS操縦者の育成機関『IS学園』に強制入学させられてしまう』
転生前、神様が説明していたことを思い出す。(○ikipediaの受け売りだが)
小説風にいえば、原作開始間近と言ったところか。
織斑一夏……ああ、なるほど。
「一夏だから、"いっくん"なのか」
「うん♪ で、どうしていっくんがISを起動できたのか知りたくて、とりあえず日本国内の同年代の男の子の情報を漁ってたんだ。比較用にね。そうしたら……」
ビッとヨーグルトを食べていたスプーンを俺の方に向ける。
「れっきゅんの情報が出てきたんだよねぇ。しかも驚いたことに、そのれっきゅんのデータにISコアが反応した」
「ISコア?」
またなんか分からん用語が出てきたな。と首を傾げたら、束から微妙な視線が飛んできた。いや、知らんもんは知らんがな。
「本当にISについて何も知らないんだね……。詳しい説明は省くけど、要はISの重要機関って認識でいいよ。で、そのコアがれっきゅんに反応した」
「それで束は、俺が織斑一夏と同じようにIS適性があると思ったのか」
「あ、IS適性は知っているんだ? なんか知識があべこべだねぇ」
なにせ、転生前に掻い摘んで得た情報だからな。虫食いどころか食べ溢しレベルだろう。
「話を戻すけど、そこからさらにれっきゅんの情報を調べてみたんだけど……無いんだよ」
「無い?」
「そう。本来あるべき過去の情報、
「……」
(神様のアホォ! 一番重要なところ手ぇ抜いてるじゃないですかー!)
それで束が不審に思った+「男性操縦者は織斑一夏だけでいい」理論で、俺のところに来たのか。
……ん?
「なあ、なんで織斑以外のIS適性者はいらないと思ったんだ? 今まで存在しなかった男性操縦者なんだろ? 自分で言うのも嫌だが、サンプルは多い方がいいんじゃないのか?」
遠回しに『なんで俺を殺そうとした?』と聞いたところ、束は難しい顔をしてテレビを指さした。
テレビから流れるニュース番組は、まだ織斑のことやISのことを話していたが
『各国政府は会見を開き、同世代の男性全員を対象に、IS適性の調査を行うと発表しました』
「こうなると、れっきゅんにIS適性があると世間に知られるのはほぼ確定。さて、ここでれっきゅんに問題。この後二人はどうなるでしょーか?」
「どうなるって……」
「ヒント! ISは女性にしか動かせない。それが原因で、女尊男卑なんてつまらない風潮が広がった。そしてその風潮をひっくり返したい奴は大勢いる」
そこまでを聞いて、俺の中で嫌な想像――十中八九正解だろう――が頭に浮かんだ。
「……ISを操縦できる理由を解明するため、研究所に送られてモルモットのち解剖」
「正解!」
「うげぇ……」
自分で言って気分が悪くなった。転生初日も酷かったが、なんだこの世界。
「とはいえ、男性操縦者の希少性とか倫理面とかから、二人はIS学園に強制入学辺りで手が打たれるんじゃないかな」
「IS学園……確か、IS操縦者の育成機関だよな?」
「そうそう。あの学園は一種の治外法権になってて、授業の一環としてISを操縦する機会も多い。だから二人にそこで生活させつつ、IS搭乗時のデータを得ようって形に落ち着くと思うよ」
「それを聞いて安心した。……で? 話の流れからすると、束は俺にIS学園へ入学して欲しくなかったってことか?」
「うん……」
そこで束はまた、昨晩のようにもじもじし始める。
「実は、ね。あの学園には箒ちゃん――束さんの妹が入学する予定なんだ」
「へぇ、お前に妹がいたのか」
「すっごく凛々しくて、それでいて可愛いんだよ! あとオッパイが大きい!」
「いや、それはいいから」
「あれ? れっきゅんはオッパイ星人だと思ってたんだけど」
「誰がオッパイ星人じゃい」
「でもでも! 可愛いのは本当なんだよ! ほら!」
そう言って見せてきた携帯端末には……うん、確かに凛々しい系のポニーテール美少女だな。目元とか、意外と束と似てるのは姉妹だからか。
って、話が変な方向に行ってるし。軌道修正だ修正!
「それで箒ちゃん、いっくんのことが昔から好きでね。束さんとしても、いっくんと箒ちゃんがくっ付いて欲しいなーって思ってて……」
「はぁ」
「でも、そこにれっきゅんが一緒に入学してきたら……」
「ちょっと待て、どうしてそこで俺が出て来る」
それがねぇ……と束は言いにくそうにしていたが、
「いっくん、すっごい朴念仁なんだよね……」
「朴念仁……え? まさか箒からの好意とか、織斑は……」
「うん……全然気付いてない。少なくとも、最後に二人があった時には」
「う~んこの」
つまりあれか。織斑一夏は恋愛イベントとか告白シーンとかを『なんか言ったか?』でスルーしちまう系主人公なのか。
だから万が一、箒が別の男の方に行かないように……っていやいや、無いから。それで殺そうは無いから。
「はぁ……とりあえず、お前が俺のIS学園入学を阻止したかった理由は分かった」
「それで話は最初に戻るんだけど、れっきゅんって何者なのかなぁ?」
「……忘れたままでよかったものを」
途中から話が脱線気味だったから、そのまま終わるかと思ってたんだが、そうは問屋が卸さないか。
さてどうしよう。転生云々を話してしまうか、適当な話をでっち上げるか。
……どうせ神様から口止めされてないし、いっか。
「分かった、話してやる。ただし、突拍子もない内容だから、後で嘘つき呼ばわりすんなよ」
「大丈夫だよ」
なんだよ、そんな満面の笑みでこっち見て。
「束さん、れっきゅんのこと信じてるから❤」
「それ卑怯」
そんな風に言われたら、マジで嘘つけねぇだろ。誰だよこんな可愛い生命体用意したの。
――――――
―――
「あはははははははっ!!」
俺がトラックされてからこの世界に転生するまでの話をしたら、束が腹抱えてリビングの床を転げ回ってるんだが。
「IS適性をもらったのはいいとして、『催眠種付けおじさん』の力ってwww」
「その力に、お前は陥落したんだがな」
「あ、うん……///」
そこでしおらしくなるな。さっきの馬鹿笑いしてたのとギャップが凄すぎる。ギャップ萌えでトゥンクしそうになるから。
「催眠術ねぇ。しかもそれでハーレム作りを推されるとか……れっきゅんって結構ムッツリ?」
「やめい」
「じゃあ興味ない?」
「……ちょっとは」
「ぷぷぷーっ! 正直ー」
可能性の獣を解放してから、どうも大切な心のタガが外れたのか『ハーレムかぁ、いいかも』とか思い始めてる自分がいる。大丈夫か俺の倫理観。
「でもそうかぁ、それなら……」
そこで言葉を区切って、何やら考え事を始める束。かと思えば
「ねぇれっきゅん、束さんと取引しない?」
と突然言い出した。
「取引?」
「そう。このままれっきゅんがIS学園に入学することになったら、束さんがあれこれサポートしてあげよう!」
「サポートねぇ」
「IS関係の勉強を見てあげたり、学園生活で何かトラブルがあった時に力を貸したり。なんだったら専用機を用意してあげてもいいよ」
「専用機?」
「うん、れっきゅん専用のISだよ」
つまり、量産型じゃないISをくれるってことか。
「この世界に転生したばかりのれっきゅんは知らないと思うけど、IS、正確にはISコアって全世界で467個しかないんだよ」
「はぁ!? そんだけしかないのか!?」
「まぁ束さんも昔色々あってね、それだけ作って出奔しちゃったんだ。しかも未だに誰もISコアの生成に成功してないっていうんだから、嘆かわしいよねぇ」
「あー、つまり世界中でその467個を使い回してると?」
「そういうこと。そしてれっきゅんには、その467個とは別のISをあげようってわけさ!」
なんだろう、相手が出して来た条件がめちゃくちゃ破格なのに気付いちまったんだが。
これ、俺何させられるん?
「その代わりれっきゅんには、いっくんに近付く
「駆除って……つまり織斑と箒の仲が進展する前に、他の女に取られないようにしろと」
「そゆこと」
聞いた限りでは、それほど難しい話でもなさそうだ。
要は、織斑に近付く女子生徒に催眠暗示をかけるなりして遠ざけろってことか。
「そ・れ・に」
わりと好条件だし受けようか、そう思っていたら、ニヤニヤしながら束が耳打ちしてきた。
「悪い虫の中で、れっきゅんが気に入った娘がいたらハーレムに加えちゃえばいいよ♪」
「げふんげふんっ!」
変なこと言うなよ一瞬『アリだな』とか思っちまったじゃねぇか!
「ああ、もしハーレムが出来たとしても束さんは大丈夫だよ」
「何が大丈夫なんだ何が」
「でも……」
「れっきゅんの
「……束」
「ちょ、ちょっとれっきゅん!? こんな明るい内からあぁぁぁん!❤」
朝から欲望を抑えられなくなった俺は学校が無いのをいいことに、束とイチャコラを始めたのだった。
それと取引だが、まずは受ける方向で。
「それを先に聞きたかったかなぁ。んっ❤」
「束が可愛いのが悪い」
「~~っ!?/// ど、どうしてそういうこと言っちゃうかなぁ!? れっきゅんのスケコマシ!」
「えー、そんなこと言われちゃ仕方ないなぁ。我慢してやめるか」
「……やめちゃやだ」
束、これでいいのか? 原作崩壊タグは付けたけど、本当にこれで大丈夫か?