IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~   作:シシカバブP

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今回も短めです。次回からまた6000字ぐらいに戻したい所存。


第20話 紅椿 ~今ならもう1個ついてくる!!~

  臨海学校2日目。昨晩も真耶さんに搾り取られた(しかも清香が防衛線を突破して乱入してきた)俺は、今朝は全裸清香の掛布団で目が覚めた。なんぞこれ……。

 

「怜二君、おはよっ」

「おう……」

「テンション低いなぁ。こんな美少女が一緒に寝てるんだよ?」

「そうだな」

 

――ムニュンッ❤

 

「ひゃあんっ❤」

 

 尻を揉みつつ清香を横にずらして起き上がると、真耶さんが指をくわえてこっちを見ていた。なんでさ。

 

「う~、私も朝の挨拶がしたかったですぅ……」

「もう勘弁してください。今日の試験に支障が出ます。というか、よく織斑先生にバレなかったなおい」

 

 隣の部屋にいたはずの織斑先生からは、昨晩は何も苦情が来なかった。正直、清香の声が大きくて(ペチンッ)いてっ!

 

「織斑先生は昨日お酒飲んでましたから、こちらに気付かないぐらいぐっすりだったと思いますよ」

「酒飲んだのかよあの教師……」

 

 修学旅行で見回りを終えた先生方が酒盛りするって話はよく聞くが、織斑先生もその口かよ。

 

 

――――――

―――

 

 

「……怜二から、真耶さんと清香の匂いがする……」

 

「もう勘弁してくれ……」

「へぇ……」

(ビクンッ)

 

 1学年全員がIS試験用のビーチ――四方を切り立った崖に囲まれた、秘密基地のような場所――に集合している中、専用機持ちだけはみんなから少し離れた位置で集まっていた。

 

「それでは各班ごとに、振り分けられたISの装備試験を行う。専用機持ちは専用パーツのテストだ」

 

 これが俺達だけが別グループになっている理由だ。専用機持ちは開発元が作った装備のテストを行うから、班単位で試験をするみんなより忙しくなるのだ。もちろん俺も……と言いたいところだが。

 

「先生。俺のところには専用パーツが届いてないんですけど」

「何? 山田先生」

「はい。R&Tに問い合わせたところ、現時点でテストするべき専用装備等は無いそうです」

「つまり、吾妻は今日一日ニートということか」

「ニート言うな!」

 

 まあ確かに、俺の専用機は元々束が通信機代わりにくれたもんだし、あいつの性格からして、作った物に改良とか追加とかしないだろう。絶対全部新規で作り直すと思う。

 

「しかしそうなると、吾妻には他の連中の手伝いを……」

 

「ちーちゃ~~~~~んっ!!」

 

――ドドドドドドッ

 

 砂煙を上げながら、何かがこっちに向かってくる。しかもあの声って、まさか……

 

「会いたかったよちーちゃん! さあハグを――ぶへっ」

「うるさいぞ、束」

 

 ああやっぱり……砂浜を猛スピードで爆走しながら、織斑先生に向かってルパンダイブしたところをアイアンクローで迎撃されたのは、どこからどう見ても束だった。

 

「ぐぬぬ……相変わらず容赦ない攻撃だね~。あっ、箒ちゃーん!!」

「……どうも」

「いやぁ、こうして会うのは数年ぶりかな。大きくなったね、箒ちゃん。……胸が」

 

――ゴンッ

 

「殴りますよ」

「殴ってから言ったぁ! まあ、刀の鞘で無かっただけまだいいけど」

「それで姉さん」

「ああ、もちろん準備出来てるよ。箒ちゃんの――」

「おい束。勝手に話を進めないで、自己紹介ぐらいしろ。他の生徒達が困っている」

「ええ~? 面倒だな~」

 

 箒との話を中断されて不機嫌そうな顔になった束が、訓練機の装備を運ぼうとしていたみんなの方を向く。

 

「私が天才の束さんだよ~。はい、自己紹介終わり♪」

「一夏並みの適当さだな」

「はっ!? どうして俺が」

「確かに、入学日の自己紹介で一夏さんも名前だけでしたわね」

「あ……」

 

 俺に食いつく前に、セシリアの精密射撃で撃墜された一夏であった。

 

「それで姉さん、頼んでいたものは……」

「そうだったそうだった! それじゃあ大空をご覧あれ!」

 

――ヒュゥゥゥゥゥ……

 

 おいおい、なんか昼から流れ星が……ってなんか降って来る!?

 

――ズズーンッ!!

 

 激しい衝撃を伴って、金属の塊が砂浜に突き刺さった。と思ったら、その金属の表面が板のようにばたんと倒れ、その中身を俺達に見せる。

 

「じゃじゃーん! これが箒ちゃんの専用機、『紅椿』だよー!!」

「し、篠ノ之さんの専用機!?」

「しかも、篠ノ之博士のお手製!?」

 

 姿を見せたのは、真紅の装甲に覆われたISだった。ほ、本当に用意してたのかよ……箒の専用機。

 

「それじゃあ箒ちゃん、さっそく最適化を始めようか!」

「……それでは、頼みます」

「ほいほい」

 

 箒のやつ、おねだりした割にはえらく他人行儀だなぁ。束も束で、よくそれで専用機を用意したな。俺だったら頼まれてこの態度だったら、気が変わっちまうかもしれんぞ。

 そうしている内に、箒が紅椿に乗り、束が空中投影のキーボードを猛烈な勢いでタイピングしていく。

 

「ほいっ! あとは全自動で終わるから、そのまま乗っててね♪」

「……どうも」

 

 まじで素っ気ねぇ……。篠ノ之家の闇は深い……。

 

「あの専用機を、篠ノ之さんが? 身内ってだけで?」

「なんかずるいよねぇ」

 

 ああやっぱり、箒が妬まれてるだろ。『身内贔屓で専用機を手に入れた奴』って。

 

「おやおや、歴史の勉強をしたことがないのかな? 有史以来、世の中が平等だったことなんて一度も無いよ」

「っ……」

 

 おっと、ピンポイントで口撃された女子生徒が、苦虫潰したような顔して作業に戻っていった。ああ、そうやってお前が箒の代わりにヘイトを集める気なのな。

 

「そんじゃ紅椿の最適化が終わるまで……1年1組、出席番号1番! 手ぇ上げろ!」

「え、ええ?」

 

 突然何を言い出すんだ? そして清香が良く分からない顔で手を上げていた。

 

「君だね。ほいこれ」

「え、ええ?」

 

 さっきと同じセリフしか出ないぐらい動揺している清香に、束はネックレスのようなものを首に掛けた。

 

「おい束、それはなんだ?」

「これ? 箒ちゃんの紅椿を作ったついでに出来た、試作機だよ。データ取りしたいと思ってたから、この子に乗ってもらおうと思ってね。確か、専用機持ちって言うんだっけ?」

「はへぇ!?」

 

「「「えええええええっ!?」」」

 

「き、清香も専用機持ち!?」

「うらやまし~!」

「出席番号1番が、こんなところで効いてくるなんて……!」

「にゃ、にゃんでわたひが!?」

 

 おまりに驚き過ぎて呂律が回らない清香。おい束、どういうつもりだよ。

 

「束、お前……」

「ちなみに首に掛けた時点で登録が完了してるから、他の人間が起動した瞬間自壊するようにプログラムされてるからね。束さん印は、セキュリティも万全なのさ☆」

「ということは、あれは完全に清香さん専用ということですのね」

「だね。自壊するってことは、初期化して別の機体にすることも出来ないだろうし」

「なんつー……」

 

 他の専用機持ちも呆れる中、束が俺の方を見てきた。しかも睨みながら。

 

「お前、ちょっと顔貸して」

「は?」

「おい、束」

「大丈夫だよちーちゃん。別に危害を加えようってわけじゃないから」

「その言葉、信用できるとでも?」

 

 な、なんか束と織斑先生の睨み合いに発展してるんだが……というかなんで俺、束に睨まれたん?

 

「あ、あの、私が一緒に行くのはどうですか?」

「監視役ってこと? ……いいよ、そこの眼鏡ちゃんも借りるね」

「はぁ……好きにしろ。吾妻、付いて行け」

「ええ~……」

 

 なんか、俺の身柄が勝手に引き渡されたんですが。

 そんなこんなで、俺は束と真耶さんに前後を挟まれた状態で試験用のビーチを離れ、みんなから目も耳も届かない岩陰へ。

 

「れっきゅぅぅぅぅん!!」

「うおぁ!?」

「さっきは睨んでごめんよぉ! でもああしなきゃ、ちーちゃんに疑われちゃうから仕方なくて……」

「あの、束さんがここに来たのは……」

「箒ちゃんに紅椿を引き渡すためが主だけど、今朝れっきゅん成分が切れて、束さんもう限界……!」

 

 着くなり突然ハグされて何かと思ったら、そういうことかい。というか、俺成分ってなんだよ。

 

「ああ、分かります。怜二君と3日触れてないだけで、体中がムズムズしてくるというか」

「まーやんは分ってくれるよね!?」

「はい! たぶん、他のメンバーも同じだと思います」

「……それ、夏休みの帰省は大丈夫なのか?」

「1週間もしたら禁断症状が出て、日本行きの航空チケット買ってるんじゃないかな? 無意識に」

「俺は麻薬か何かかよ」

 

 マジかー……。責任は取るって言ってるけどさぁ……さすがにここまで深刻だとは思って無かったぞ。

 さて、束をハグしながら確認するか。

 

「それで、箒に専用機を渡したってことは、本当にやるつもりなのか? あの杜撰な計画を」

「杜撰って言うなぁ! もちろんやるよ。実はもう『銀の福音』の制御は奪ってあるんだ♪」

「ファッ!?」

「今頃、太平洋を横断しながら日本に近付いてるんじゃないかな」

 

――ピピピッ

 

 束のあっけらかんとした説明の途中、真耶さんの持っている端末からアラームが鳴った。

 

「……」

「真耶さん、マジですか」

「マジです……」

 

 そう返事をして、俺に端末の画面を見せる。

 そこには『ハワイ沖で試験稼働中だったアメリカ・イスラエル共同開発の軍用IS『銀の福音』が暴走、監視空域より離脱した』と表示されていた。

 さらに下へスクロールすると、『織斑千冬指揮の下、専用機持ちがこの事態に対処せよ』とも書かれていた。

 

「あんな杜撰な計画通りに踊る学園上層部って……」

「だから杜撰って言わないでよぉ!」

「と、とにかく、私は織斑先生に報告してきますね!」

 

 束が意図したものとはいえ、軍用ISが暴走したのは事実。真耶さんは対応を検討するために、織斑先生の下に走っていった。

 

「……再度確認するが束、ちゃんと()()出来るんだろうな?」

「だいじょーぶ♪ 今もこうやって制御出来てるからね☆」

 

 そう言って空中投影ディスプレイを表示すると、銀の福音の現在位置、操縦者のバイタル等の情報が表示されていた。なるほど、そこはキチンと掌握してるってことだな。

 

「目的は一夏に福音を倒させること、それでいいんだな?」

「うん♪ 実は、それに加えて副目的もあるんだ」

「何?」

 

 一昨日はそんなこと言って無かったはずだが?

 

「福音を乗っ取る時に、操縦者のパーソナル・データも手に入ったんだけど。これだね」

 

 もう一枚出てきたディスプレイには軍服を着た、二十歳ぐらいの金髪ロングヘアな女性が映っていた。

 

「ナターシャ・ファイルス。アメリカの軍人で、さっき言った通り福音の操縦者だね」

「はぁ。それで、この人がどうしたんだ?」

 

 別段、俺にも束にも縁があるとは思えないんだが。

 

「れっきゅん、金髪の女性、好きでしょ?」

「は? いきなり何言い出すんだ?」

「しかも、年上のお姉さんが好きでしょ?」

「いやだから……」

「さらにさらに、性格が明るい子が好きだよね?」

「……何が言いたい?」

 

「このナターシャって子、れっきゅんの力で()()()()()()()!」

 

「そういうことかよ……」

「でも好みでしょ?」

「……はい」

 

 こんな時、正直に答えてしまう自分の性格が悲しい……。

 でもこれ、一夏云々は関係無いような……。

 

「あ、でも清香に専用機を渡したのは?」

「だってハーレムの中で、きよぴーだけ専用機持ってないから。可哀想だと思って」

「それで、清香が他の生徒から妬まれる可能性は?」

「……あ」

 

――ズビシッ

 

「ぐはっ! れっきゅん、デコピンじゃなくてパイぺちの方が良かったなって」

「もうエサはやらん」

 

 

 

「はっ! また怜二君のハーレムが増える気配がする!」

「えぇ?」

「清香の勘は当たるから、まず間違いないわね……」

「なんだと? つまり怜二の家族が増えるのか。めでたいことではないか」

「そ、そうなんでしょうか……?」

「あの、ラウラさん? 家族とハーレムはニュアンスが違う気が……ですが、将来的には怜二さんとわたくし達は全員夫婦になるわけで、つまり家族でも間違いでは……」

「おーいセシリアー、帰って来なさーい」

 

 

 

 

 

<今日の箒>

「た、大変です! お、おお、織斑先生っ!」

「どうした?」

「こ、これをっ!」

「……全員注目! 現時刻より、IS学園教員は特殊任務行動へと移る。テスト稼働は中止、各員ISを片付けて旅館に戻り、連絡あるまで各自室内待機。以上だ!」

「専用機持ちは全員集合してください! 篠ノ之さんもです!」

「「「了解!」」」

「えっ、あのっ! ……姉さん! まだ最適化は終わらないんですかぁ!?」

「束さーんっ! どこ行ったんだよー!?」




本作では、清香は優遇されています。だから一人だけ専用機が無いのはダメだよね?

束の杜撰な計画、始動。マンガ版で福音が倒された時、ナターシャがたおやかな姿で墜ちてきたので、本作でも堕ちてもらうことにしました。(イミフ)


次回、銀の福音戦
「俺、安全は万全でって言ったよね!」

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