IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
そして話の流れが超展開なのは気にしない。
ごきげんよう、吾妻怜二だ。
束の提案を受け入れてから半月ほどが過ぎ、我が家は少々ゴタゴタが続いている。
現在、家の窓には木製のパネルがはめ込まれ、昼間なのに照明を付けなければならない状態なのだ。
さらにインターホンを消音設定にして、外界からの音をシャットアウトしている。
そんな中、俺と束は何をしているかと言うと
「いただきます」
「いただきます」
ずるずる~
ずるずる~
やや季節外れの素麵をすすっている。
――――――
―――
俺が通っている(覚えはない)学校の卒業式、俺は初登校にして卒業というポルナレフ化しそうな状況を味わっていた。
とはいえ、束に頼んで俺の交友関係を調べてもらったから、担任(知らない)やクラスメイト(やっぱり知らない)に怪しまれることは無かった。一夜漬けで覚えた情報を思い出すために話がワンテンポ遅くなるせいで
『なんだよ吾妻、指定校推薦が通った後休み過ぎで頭がボケたか?www』
と揶揄われたぐらいか。
そんで卒業式も恙無く終わり、卒業祝いにカラオケでも行くかーみたいな雰囲気になったところで、担任から俺達男子生徒全員が呼び出された。
束が予期していた通り、ISの男性操縦者発見のニュースから2日ほどして、日本政府が男子中高生を対象にしたIS適性検査を開始すると発表。
この学校も、卒業式という生徒が集まる日を狙って検査を行うことにしたらしい。
そろぞろと会場となる体育館に入って行く俺達男子組。その中央に鎮座している、まるでゲームに出て来るパワードスーツのような金属の塊に、並んでいる生徒が手で触れ、そしてそのまま会場を後にしていく。
恐らくあれがISで、適性があれば触れた時に何らかの反応が取れるんだろう。
そうはいっても、そんなの出て来やしないとみんな思っているようだ。実際、ISとケーブルで繋がったPCのモニタを見ている係員(♀)も、『さっさと終わんないかなー』と顔に書いてあるし。まあ、それは並んでる俺達も一緒だからお相子だろう。……訂正、俺
「はい、次の人ー」
検査は流れ作業で進んでいき、俺の番が回ってきた。
「そこに手のひら乗せるだけでいいからねー」
こっちを見ずに指示だけ出す係員の言う通りに、俺はISの肩に当たる部分に手を置いた。
その瞬間、ブゥゥン……と低いノイズのような音が聞こえた気がした。
――皮膜装甲展開……完了
――推進機正常動作……確認
――近接ブレードおよび突撃銃……問題無し
――ハイパーセンサー最適化……完了
「う、あ……」
どこからともなく合成音声のような音が聞こえてきたと思ったら、なんだこの直接脳みそに情報叩き込まれるような感覚……! 束の奴、こんな風になるなんて聞いてねぇぞぉ……!
そして二日酔いほどではないが気持ち悪い頭痛が止むと、
「え……」
「う、そ……」
俺はさっきまで触れていたISに、乗っていた。
――――――
―――
「あれから激動だったねぇ」
「まったくだ」
会場となった体育館は騒然。直後、ガタイのいいグラサン黒服男の集団に囲まれたと思ったら、慌ててやってきた校長に
『君、今日はもう家に帰りなさい。寄り道せずに!』
と言われ帰宅。その途中、束からメールがきて『食べ物いっぱい買っておいた方がいいよ~』と言われるまま、スーパーに立ち寄って食料を買い溜めして帰って来た。
その翌日から、我が家は騒動の真っ只中に放り込まれた。
『吾妻怜二さん、ぜひ取材を!』
『倉持技研の者ですが、ぜひ我が社のISに乗っていただきたく――!』
『科学の発展のため、君を解剖させてくれ! ちょっとだけ! さきっちょだけでいいから!』
『男が神聖なISを動かすなんて許されない! 恥を知れ!』
後半2つは論外として、それ以外も相手をするのが億劫になり、冒頭にあった通り外界から騒音をシャットアウトすることにしたのだ。(主に束が頑張った)
まあ、ここまでしても強引に家に入って来ようとする奴等は後を絶たないんだが、そういう輩は……
『ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!』
「また一人掛かったな」
「ホント、学習しない連中だねー」
遠くから聞こえて来る悲鳴。玄関のドアを無理矢理開けようとして、束のトラップに引っ掛かるとああなる。
酷いって? いやいや、普通に不法侵入してくる連中相手に、殺傷しない程度のトラップで済ませてるのはむしろ有情だよ?
「それにしても、お前に言われた通り食料買い溜めしておいて正解だったな」
「えっへん!……もっと褒めてもいいんだよ?」
「分かった。もっと褒めてやろう」
「わーいってぇ! そういうことじゃぁぁぁぁん!❤」
あれ、違うのか? てっきり胸揉んで欲しいんだとばかり。
「れっきゅんってば、本当にスケベだよねぇ!」
「最近まったく否定できなくなってる。で、嫌だったのか?」
「……嫌じゃない」
チョロい。そして顔を赤くしながら口を尖らせるのが可愛い。
「でもそろそろ、強行突破してくる頃だと思うな」
「強行突破って、ここをか? お前のトラップを突破してくるような連中が――」
「来るよ。というか、来たよ」
「え?」
――ガンガンガンッ!
玄関のドアをたたきまくる音に、俺は一瞬ビクつく。あれ? なんで叩けんの? 束が仕掛けたトラップは?
「あ~……やっぱりちーちゃんか」
「え? ちーちゃん?」
「れっきゅん、束さんはしばらく隠れるから、対応よろ~」
「え、あ、おいぃ!?」
俺が止める間もなく束が2階に音もなく逃げたのと同時に、バァァァンッ! とどデカイ音が。
リビングを出てそっと玄関の方を覗き込むと、そこには『ケンカの話の時間だ!コラァ!!』と言わんばかりにドアを蹴破った姿勢のまま静止する、黒スーツ姿の女性が。ナニコレコワイ。
「え、あの……どちら様で?」
「ああ、君が吾妻怜二か。私は織斑千冬、日本政府およびIS学園の遣いの者だ」
「日本政府……IS学園……」
「君の今後について話がある。上がらせてもらうぞ?」
「はぁ……」
IS学園からってことは、おおよそこちらの想像通りの話だろう。なら断る必要もない。ただ……
「玄関のドア、ちゃんと直してから入ってください」
「……ああ、すまん」
そのままにされると、
玄関のドアをはめ直した織斑さんをリビングに通すと、俺はテーブルの反対側に座る。
「さて、どこから話したものか……まずは君の進路についてだが……残念ながら指定校推薦は取り消しになった」
「そう、ですか……」
「……もっと怒ったり憤ったりすると思っていたんだが」
俺の反応があまりに薄かったからだろうか。逆に疑問を持たれてしまった。
「先日のニュースは俺も見てましたからね、男がISを動かしたらどうなるかっていう前例を。……失礼ですが、織斑一夏は貴女の?」
「……ああ、弟だ」
「であれば、推薦取り消しも理解は出来ます。良くも悪くも世界から注目された人間を入れて、周りが巻き込まれる懸念があるでしょうから。……納得出来るかは別として」
ぶっちゃけここまで想定通りだから納得もしているが、一応その辺を知らない態で答えておく。突然自分の進路を変えられたんだから、納得なんか出来んよな。
「すまんが、これは決定済みの事項だ。納得できずとも諦めてくれ。……すまんな」
「別に貴女が謝る必要はないですよ。推薦校と、日本政府のお偉いさんが決めた事でしょうから。それで? 先ほど織斑さんは『日本政府およびIS学園』と言ってましたが」
俺が玄関でのことを口にすると、織斑さんは済まなそうな顔から咳払いを一つして
「吾妻怜二、君にはもう一人の男性操縦者と共に、IS学園に入学してもらう」
「IS学園に……」
IS学園入学。これでようやっと、神様が言っていたスタート地点ってことになるのか。
そんなことを考えていると、織斑さんが探るような目で俺の方を見てきた。え、何?
「……君は、もう一人の男性操縦者を……一夏を恨んだりしていないのか」
「恨む?」
「そうだ。一夏がIS学園に入ることになったのは奴のミス、自業自得だ。だが君は、それに巻き込まれただけだ。自分の人生を曲げられて腹は立たんのか?」
「ああ、そういうことですか」
立ちませんね。そもそも想定通りなので。(2回目)
とはいえ、ここも転生者じゃない態で対応しますか。
「もちろん何も思わないわけじゃないですけどね。ただ、相手の言い分も聞かずに一方的に恨むのも違うと思うんですよ。だから、入学したら彼と話してみてからどうするか決めます。それでいけ好かないやつだったら適当に一発ぶん殴りますよ」
「……そうか」
「そうです。まあ、IS学園がほぼ女子校ってのが不安ですが……入った後でどうにかしますよ」
「……分かった、君の考えは理解した」
気持ちが落ち着いたような顔をしてるところ申し訳ないですが、もしかしたらお宅の弟さんの朴念仁具合に我慢出来ず、手が出るかもしれません。その辺は悪しからず。
「それに、外でうろついてる連中に研究所へ拉致られて、解剖のちホルマリン漬けにされないだけマシですよ」
「そこは安心して欲しい。それを防ぐ意味でも学園入学だからな」
「確か、物理的にも法的にも鉄壁の要塞、でしたっけ?」
「ああ」
束から聞いた話曰く、IS学園は東京湾の人工島に建っていて、海上モノレールしか島外との出入りが出来ない。しかもIS運用協定、通称『アラスカ条約』によって、建前上はあらゆる国家機関にも属していない。まさに『孤島の要塞』なんだと。
確かにそんな場所なら、外のマッドサイエンティストや、あたおかな女(女性権利団体とかいう、女尊男卑バンザイな組織の人間らしい)に付きまとわれずに済むな。
「これが入学時に必要な書類だ。必要事項を記入して、入学式当日持って来るように。それと、これだ」
――ドンッ
「……これは?」
「IS理論の授業で使う参考書だ。他の新入生と違って、これまでISと関わったことが無いだろうからな、入学前に一読しておくこと」
一読って、確かに表紙に『必読』って赤字で書いてあるけど……なんだこの古い電話帳並みの厚さは。最盛期の『月刊少年ガ○ガ○』ぐらい分厚いぞこれ。
「それでは、私はこれで帰らせてもらおう。……おっとそうだ」
帰り支度をして玄関で靴を履いた織斑さんが、足を止めてこっちを振り向く。
「私はIS学園の教員をしている。向こうで顔を合わせることもあるだろう。その時はビシバシ鍛えてやるからそのつもりでな」
それだけ言い残すと、玄関のドアを開けて帰って行った。
そしてそれから少しもしない内に、2階から束が降りてくる。
「ちーちゃん、帰ったみたいだね」
「だな。で、なんで逃げたよ?」
「いやぁ、束さんってば有名人じゃん?」
「ああ、そういえば世界的なお尋ね者だったな」
ISコアは束にしか作れないから、世界中が挙って束の行方を捜してるんだったか。捕まえてISを作らせれば、世界のパワーバランスをちゃぶ台返し出来るらしいからな。
「お尋ね者言うなぁ! で、その世界的有名人の束さんがれっきゅんの家にいたらマズいでしょ? 最悪れっきゅん、束さんに対する人質にされちゃうよ」
「……やっぱお前捨てるか」
「やぁぁぁぁぁっ! 捨てないでぇぇぇぇぇ!!」
「嘘だよバカ」
「う~……! れっきゅんのいじめっ子!」
「はいはい、俺が悪かった悪かった」
頭撫ぜてやるから、ガチ泣きはやめろ。最近減り始めた俺の良心に刺さる。
「むふふ~♪ しかもちーちゃんとは幼馴染な関係だから、あの場に束さんが居たら……」
「あ~……入学前から警戒度MAXだな。あの人学園の教員だって話だし」
「うん。適当なカバーストーリーもすぐバレると思う。最悪、れっきゅんと束さんの取引がご破算になってたよ」
お尋ね者な幼馴染と一緒にいる怪しい奴を、弟に近付けようなんて思わんよな。そうなったら、織斑一夏に近付く女子を追い払うどころか、俺が悪い虫扱いされて終わりだ。
「お前が逃げた理由については、理解も納得もした」
「分かってくれて何より♪」
「それじゃあ、さっそくなんだが……」
「ISの勉強、よろしく頼む」
入学前に読めと渡された、人を殴り殺せそうな厚さの参考書の1ページ目を開いた。
――――――
―――
もちろんあの参考書を1日で読破する気はなく、読んで良く分からんところを束に質問する形で2,30ページほど読んで、今日のお勉強は終了にした。
窓にパネルをはめたせいで外の明るさが分からず、気付けば夜になっていた。ここ最近はいつもこうである。
晩飯を簡単に作って食べ、シャワーを浴びたところで、身体よりも頭が疲れた俺は自室のベッドに仰向けで倒れ込んだ。
「久々に参考書とか読んだから、余計に疲れたな」
「むふふ~、ご苦労様なのだ♪」
「束、どうしてここにいる?」
隣の客室にいるはずの束が、なぜか俺の上にのしかかっていた。
「これはあれか? 抱き締めて欲しいってことか」
「……そう、だよ」
「え」
冗談で言ったつもりが肯定されて、一瞬思考が停止した。
「IS学園に入学したら、れっきゅんは女の子に囲まれるんだよね」
「そ、そうなるな」
「そして、その中から催眠術を使って、ハーレムを作る」
「そう、なるのか。束との取引もあるからな」
篠ノ之箒以外の、織斑一夏に近付く女子を催眠術を使って遠ざける。それが俺から束への契約だ。
その過程で、気に入った子と仲良くなればいい。そう束が提案した。そうすれば、二度と織斑一夏に見向きすることも無くなるって寸法なんだろう。
断ればいいだろうって? いや、確かにそうなんだが……
(……告白する。この世界に転生して、初めて気付いた。俺の中に、
前世ではごく普通の人間だったから収まっていたのが、転生特典を得たことでその欲望が目覚めたんだろう。
「あれ、まだ世間体とか気にしてる?」
「……それもあるかもしれない。ちなみに束、お前は本当に俺がハーレム作っても気にしないのか?」
「気にしないし、むしろ誇っちゃうかも。『私の旦那様は、こんなにモテまくる男なんだぞー!』ってね♪」
「……そんなもんか?」
「そんなもんだよ。というか、束さんをそこら辺の心が狭い連中と一緒にしないで欲しいなーブーブー」
まあそれはそれとして、と言って、束が俺の顔に手を伸ばす。
「れっきゅん、まだドーテイだよね?」
「おい馬鹿何聞いてんだ」
突然下世話な話に持ってくんな、どうしてくれんだこの気持ち。
束とニャンニャンしてるだろうって? いやぁ、まだそこまでは、なぁ……(視線逸らし)
「ちなみに束さんも
「うぉぉい……」
「そんなれっきゅんは半月後には、束さんを置いてIS学園に行っちゃうんだよ。だから、さ……」
――ゴクリッ
思わず、生唾を飲み込んでしまった。今までの束とは、何かが違う。
初日に手籠めにした時、いい女だとは思った。だが、これは――
「れっきゅんと、"初めて"を交換したいな」
「――束っ!」
「ひゃっ!」
気付けば、俺は束を目一杯抱き締めていた。
「いいんだな?」
「うん、れっきゅんの好きにして」
恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうな束の顔が、視界いっぱいに広がる。
その顔で、俺にトドメを刺してきた。
「束さんを――れっきゅんの"一番"にして」
その後、俺達はお互いを求め合った。がむしゃらに、思ったままに。
(ああそうか、そういうことか……)
生唾を飲み込んだ時に思った。今までの束とは、何かが違うと。
違ったんだ。束が変わったんじゃない。俺が、
(いつの間にか俺、本気で束のことを好きになってたんだな……)
「束」
「何かな~……?」
「これからずっと、ずっと俺の
「……むふふ~、もちろんだよ~……❤」
少し息の上がっている束が、目尻に涙を溜めながらキスを求めて来る。それに俺は迷うことなく応じる。
「ん……」
「れっきゅん……ちゅぅ……っ❤」
その日俺は、本当の意味で束を自分の
「ところでれっきゅん、ハーレムにちーちゃんを入れる気はある?」
「ちーちゃんって、あの織斑さんか? 無理無理、一目会って確信した。あの人に催眠掛けても気合と根性で暗示破られてぶん殴られる未来しか見えない」
「あ~……ちーちゃん脳筋だからねぇ……」
……ここから催眠ハーレムルートに行けるのか?(自分で書いてて疑問)
でも束が可愛いからヨシ!
というわけで、次回辺りから原作開始します。